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フーコーは、私たちが自明視する世界のありようを、全く違ったしかたで見せる。最高傑作『監獄の誕生』を糸口にフーコーの思考の強靱さと魅力を描き出す。正常と異常の区分を生み出す「知」の体系と結びつき、巧妙に作用する「権力」。そうした秩序が社会の隅々にまで浸透する近現代の先に何を見定めたのか。革命的入門書。
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Posted by ブクログ
フーコーにフォーカスした新書は、中山元氏の『フーコー入門』、慎改氏の『ミシェル・フーコー 自己から脱け出すための哲学』、箱田氏の『ミシェル・フーコー 権力の言いなりにならない生き方』があるが(内田氏の『フーコー 主体の系譜学』は現在講談社学術文庫化)、そのなかでもっとも彼のたくらみに触れやすい書籍...続きを読むだと思う。 フーコーの書籍を「読む」ことに重きを起き、そこから彼の思想を他の書籍なども引きながら紹介していく本書は、後半になるにつれて著者のギアがあがっている印象はあるが、ライトな書き口で読みやすかったし、唸らされた。 現代社会が大きな監獄に見えてくるので、漠然とした生きづらさを抱えている人はその根本要因が言語化されていて気持ちいいかも。
一見は軽妙な語り口。『監獄の誕生』を淀みなく読んでいる気持ちになってしまう。 著者が示すフーコーを読む「作法」がなにより参考になる。特に終章のことばが頂門の一針という言葉以外思い浮かばなかったほど、フーコーから権力との付き合い方を教わろうと思っていた私には深く刺さった。 フーコーを読みたい。そし...続きを読むて自分と社会の今を考えよう、そう思えた。 ・P192:フーコー自身、権力について「何が」「誰が」ではなく「どのように」を問うべきだとくり返していた。これは言いかえれば、権力にどちらの側から接近するべきかについて、その接近方法をなぜとるのかの意図だけでなく、そこから何がどのように見えてくるのかの帰結も含めて常に敏感であれということだ。 ・P209:(監獄の失敗から)フーコー:警察なんて最近できたうっとうしい制度、犯罪者集団がいなきゃ誰も認めませんよ。 ・P213:権力は人の相互作用を通じて、戦略的に作用する。 ・P230:系譜学とは著述の方法というより、むしろそれ以前のところ、政治的直観に基づく「立ち位置」に関係している。 ・P234:流行は消費されるが、時代とまともに向き合うとは、それ自体消費に抗う営み。それは現実を、人々の痛みや軋みを、それが逃げ去ってしまう前に一瞬でとらえようとする熱意の言いかえなのだ。 ・P238:彼の著作はまさに理解に抗うところがある。結局何が言いたいのか、どんな「オチ」なのかよく分からない。・・・なぜなら現実の世界には明確なストーリーもオチもないからだ。
解説書であれ一般への紹介書であれ、フーコーをテーマとする本を読んだのは初めて。 この重田という明治大学の先生の名前は、初めて見た。ずいぶん若いし、校内暴力で中学校が荒れていた世代、しかも悪名高い愛知県管理教育を受けた人。だから「監獄の誕生」に魅せられているのか。 重田の個人的想いがいたるところに横...続きを読む溢しており、堅苦しくなくて面白い。読み流す中で「フーコーの思索・思想」についての興味が出てくるということで、思想・政治・社会についての100%素人でも興味深く読めるという点でオススメと思う。
ミシェル・フーコーの持つ魅力を、「監獄の歴史」を中心に、できる限り分かりやすくならないように、でも分かりやすく伝えてくれている本。 著者が、フーコーをこよなく愛していることがすごく分かりました。 「監獄の歴史」を頑張って読んでみようと思います。
チラチラとハゲ頭がちらつく、などのユーモアや著者のフーコー愛が伝わってくる。フーコーの、というより、監獄の誕生を通じたフーコー入門書。 国家理性論のあたりから難しくなったが、おおむね理解できた気がする。権力の狡知。非常事態とシュミット。
内容はさておき、たぶん好みが分かれる書き方で「実はさっき気づいた」とか出てくる。個人的にはこういう雰囲気は嫌いではない。 内容については入門書としてある程度指標になってくれてる気がするのでよかった。 何よりこちら側にもフーコー読んでみよかなと思わせてくれるのがいい。
社会で正常者と異常者を区別し規律を守る為の道具として、監獄は非常に有用だというお話し。特に反体制的な思想と暴力とが共鳴しないよう、ブルジョアが監獄を生み出したと。ニーチェ以来の系譜学とか考古学とかそっちの方面から見るとそういう意見もあるのだろう。 ただもっと素直に見ればいいのにと思う。確かに啓蒙主義...続きを読む的な観点から身体刑から自由刑に変化したというのは胡散臭そう。そんなことより納得しやすいのは、政治の民主化が進み体制の変更が選挙で行われ、そもそも体制保持のための見せしめの身体刑が不要となったこと。実際に、体制を死守しようとする旧社会主義国では大量に粛清が行われ、死刑としての身体刑はあったわけだし。また、以前は社会が物質的に貧しく罪人を禁固にしても養えないためやむを得ず死刑にしていたが、社会が物質的に豊かになり、食料や看守や監獄などのシステムを罪人に対して与えることができるようになったこと。 社会の網の目のような互いを互いに監視するような社会に不満がある人は、そのようなシステムが無くても自分が絶対に不正をしない、犯罪者にならないという自信のあるものだけだ。もし、他者の自由を侵害しない限りにおいて自己の自由を保障するという原則を前提とする限り。 仮に、自己が自己を律することができるという目標に向かって突き進むのであれば、それはむしろフーコーが批判しかねない近代的な理性の視座ではないだろうか。 だから個人的に子供パトロールは必要だと思っているのです。
著者はフーコーに惚れている。あとがきにて、「大好きな人の大好きな本についてなぜ好きかを書いて出版できるということは、それ自体とても幸運なことだ」(p.268)、と書いてしまうほどだ。フーコーという巨人の肩に乗って遠くを見通したいという願望があるのだと思う。 フーコーの数多い著作の中で、著者は『監...続きを読む獄の誕生』を特別視している。この本も最初は『監獄の誕生』についての本を書こうという目論見であったのが、そこに収まりきらなかったため結局『ミシェル・フーコー』というタイトルにしたとあるが、この本はやはり『監獄の誕生』に関する本として読んだ方がいい。『言葉と物』なんて『監獄の誕生』可愛さ(?)に巻末の参考文献説明で、「この本がさっぱり分からなくても落ち込むことはない。分かったところで、生きる指針を与えてくれるような内容でもない」(p.249)なんて言ってしまうほどだ(正しい?)。 フーコーは、過去の断層の向こう側の文献/言説を丹念に掘り起こすことで、すでに回りにあってあまりに当然と思っているが突き詰めて考えると全く当然でも何でもないものだということを炙りだすという手法を採る。『狂気の歴史』も『言葉と物』もそうだし、『性の歴史』もそうだ。『知の考古学』ではそのやり方について自ら解説もしている。その魅力については、著者の次の文章がよく言い表している。 「フーコーの著作はどれも古い時代から説き起こし、独特の迂回路を経て現在へとつながっている。かといって現実との関係が薄いかというとむしろ逆で、なぜこんな昔のことを書いているのに強烈に「今」が浮かび上がるのか不思議なほどだ。それが彼の人気の秘密なのだろう」(p.229) 「監獄」や「刑罰」はその最たるものであり、『監獄の誕生』は著作の順番からいってもその集大成とも言える。突き詰めて考えると「犯罪」を犯して「監獄」に入れられる根拠をは正義にもよらないし、社会的効用の最大化という理由でもない。それは「主権」、「自由」、「責任」さらには「身体」というものを通した内面化した権力による統治の仕組みに関連するものだ(と思う)。 今後、一定以下の世代においては、ほぼ全ての人がひとつ以上のソーシャルネットワークのアカウントを持つであろう時代において、フーコーが描写した「生権力」や「規律」というものがどのようにその意味を変えることになるのかは検討に値する課題であるように思う。ソーシャルネットワークに実名で向かうことで「規律」はより精緻に内面化されるとともにコントロールされ、自ら書き込むという所作を通して強化されるようなものではないかと思う。それは、かつて「権力」という言葉によって誰もが想像するような権力とは違うものだ。その意味でも、今現在においてフーコーが言う「断層」が多くの地点で発生しつつあるのではないか。分析対象としてのアルシーヴはかってないレベルの量とアクセス容易性を備えている。そういう観点でフーコーと今とをつないでくれる考察はないものかと思う。ちなみにタイトルから、ジョン・キムの『逆パノプティコン社会の到来』はその種のことを扱っているのかと思ったら全く期待外れであった(勝手な期待ではあったのだけれども)。 フーコーを研究するものは、フーコーが試みたことを読み解くだけでなく、フーコーが試みたことを現在の課題に適用して鮮やかに切り取ることも試みてくれないかと思う。著者はきっとこの世界では脂がのった新進気鋭の若手女性研究者と目されているのだと思う。次は肩に乗った先に見た景色を描写してくれることを期待している。 さて次は積ん読本になりつつある中山元を読もうかな。
『監獄の誕生』生涯読むことはあるまいと思っていましたが、読んでみようかなという気持ちにさせられました。
フーコー好きな人のブログを読んでる感じ。フーコー読んでわかんないとこあってもいいんだ、と思えたので挑戦したい。
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ミシェル・フーコー ――近代を裏から読む
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重田園江
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