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Posted by ブクログ
作者が強調する原爆の恐ろしさは、その破壊力や被爆だけはない。それは今までにない爆弾だった。人々の想像力を超えていた。そして突然の未知の力による破壊は、肉体のみならず人々の精神内部にまで及ぶ-
まさに体験した者だけが言えることだが、原爆の最大の恐怖は、人々の気力を奪い去り、表情を消し、魂を蒼ざめさせることだという。「じっさいは人も草木も一度に皆死んだのかと思うほど、気味悪い静寂さがおそったのだった」「裂傷や火傷もなく、けろりとしていた人が、ぞくぞくと死にはじめたのは、八月二十四日すぎからであった」
見渡す限りの焼け野原を見た喪失感、そして生存者が日をおいて発症して死んでいく、という不可解な死 -
Posted by ブクログ
広島で被爆した作家の私小説。
原爆小説としては井伏鱒二の『黒い雨』などが有名だが、この作品は描写が淡々としていて悲惨さを感じない。
苦しいとか悲しいとか、そんな人間的な感情さえ、原爆という悪魔の兵器は破壊してしまったということがわかる。
現代人の目から見れば作家が見ている情景はまさに悲惨そのものだ。しかしそれを悲惨なものととらえることすらできず、まるで電車の窓から外の風景を眺めているかのような描写はどこまでも冷めている。
人間が痛みを感じることができなくなることほど深い病があるだろうか。
屍の街に書き記されている世界は、まさに痛みを痛いとも感じることのできない地獄で