藤田和日郎先生インタビュー&50ptバック

名作『うしおととら』、『からくりサーカス』を世に送り出し、 20年以上の間、週刊連載というハードな環境の中で今なお作品を描き続ける藤田和日郎先生の情熱と素顔に、漫画家 田中圭一が対談形式のインタビューで迫る!

藤田和日郎流 コーチング術!

田中:現在、アシスタントさんは何人くらいいらっしゃるんですか?

藤田:今は3人いるんですよ。ウチはオレを含めて4人なんですけど、ちょうど4人くらいが動きやすくて。
アシスタントがそれ以上増えてしまうと、全員の話を聞けないって思うんですよ。

田中:アシスタントさんを選ばれる際に何か基準はあるんですか?

藤田:アシスタントを選ぶ基準として最初に話をするのは、「漫画の背景をキレイに描くことより、アシスタント同士仲良くしていてね」ってお願いするんですよ。「オレの前ではみんな仲良く喋っていて」って。
テレビを観て笑っていても良いし、何かくだらないことでも良いから喋っていてもらえると、オレは安心して漫画が描けるんです。
逆に、"シーン"ってみんなが黙っていて、誰も何も喋らないっていう状況になると「なんだぁコイツらわぁ!」って邪悪な気持ちになって、"ドカーン!"ってなっちゃうんです。
だから最初に、「ゴメンね。理不尽だと思うけど、キミたちに黙っていられるとオレの機嫌が悪くなるから、先ずは口を動かして欲しいんだ」って話をします。

田中:手を動かすより先に、口を動かして欲しいですか?

藤田:漫画家になりたい人って、話すのが苦手な人が多いと思うんですよ。作品を描くことで一杯一杯な人もいると思うし。
それをわかった上で「オレの前ではみんな仲良く喋っていて」って、「誰か一人が言ったことに対してもみんなで反応してね」って。本当にコミュニケーションを強制するんですわ(笑)。
けどそれって、彼らにとっては一番ツライいことかもしれませんね。

田中:この話って組織論でもありますね。サラリーマンにとっても重要な話ですね。

藤田:サラリーマンの組織論としては、オレは尖り過ぎだと思いますね(笑)。
オレの単行本に付いている四コマ漫画を読むと、アシスタントって楽しそうにやっている雰囲気があると思うんですよ。だけど実際は「お前らの会話でオレを気持ち良くさせてくれよ」ってことなんで、強制みたいなモンですよね(笑)。

でも、ただ黙って背景を描いていても意味がないんですよね。喋らないと。
漫画家は、編集さんから、「何が欲しいのか、どんな作品を描いて欲しいのか、読者は何を喜ぶのかって聞き出さなきゃいけない立場なのに、身内に対して口ごもってどうするんだよ!」って思うんですよね。

田中:確かに、プロ漫画家として活動しようと思ったら、まず、出版社の担当さんに対して営業を行わないといけませんからね。コミュニケーション能力の訓練をアシスタントさんにした結果、みなさん独り立ちしてデビューされているっていうのも頷けますね。勿論、漫画家として基礎テクニックができていることが前提ですが。

藤田:相手が何を欲しているか、自分が何をやりたいのかって、漫画の世界はやっぱり口で説明できますからね。根気良く相手に接すれば面白さを伝えられますから。
だから最低限のコミュニケーション能力があれば、まずは描かせてもらうところまでは何とか行けると思うんですよね。

田中:なるほど!これはどこも教えていないノウハウですね。キャラクター作りとかコマ割りとかペン入れとかってのは教えてくれても、一番重要な編集者さんや読者との向き合い方を説明したマンガの入門書ってありませんよね。編集者さんとのコミュニケーションの中で自分が本当に描きたいものの本質が見えてくることってありますものね。

藤田: そうですね。よく、どうすれば面白いキャラクターを作れるのかって聞かれるんだけど、大抵の場合はノートの上で自分の思いだけで描いてるから、いざネームにしてみると活き活きとしてこない。そんな時は「こいつはどういうキャラクターなのよ?」って聞いてあげて、それをアシスタントに「こうかな?」って考えて言語化させることで、描いてる本人が自覚できる部分ってあるんですね。

田中:「このキャラクターは、こういうやつです」って説明ができたら、自分の意識の中にキャラを定着させられるってことですよね。

藤田:この前どうしても断り切れなくて美術学校で講師をやったんですが、その時に「これだけは覚えて帰って欲しい」って言ったのが、「君達は編集者から自分の作品に対して酷いことを言われるだろう、そこで編集者さんが一通りしゃべり終わったら、『私がちゃんと理解するために、あなたの言ったことを私の言葉でもう一度復唱させてください。それで間違ったことがあれば教えてください』って言ってやれ」と。そうすれば、その時の経験が自分の中に残るし、自分自身も作品に足りない部分を理解できるから必ず復唱して来いと。編集に反論なんてしなくて良いし、自分の主張を押し通すなんてことは、新人にはできないから。新人にとって編集さんと打合せするって、もう銃殺刑って言う方が近いでしょ。戦場なんてことはカッコつけた漫画家が言ってるだけで、実際には向こうから撃ってくる弾をなんとか避けながら、時折、「ヤラレタ~!」ってなるだけで(笑)。その時にできることといえば、「僕はココをこうヤラレましたね」って確認してもらうくらいで。そこでちゃんと復唱して、どうすれば良いのか会話になるようにって。だから復唱だけはしてきてちょうだいねって。

田中:復唱することで問題点の整理ができますからね。それと同時に、相手の言いたいことの本質も理解できる。それを持ち帰って、もう一度描いてみるって手順ですよね。

藤田:だからそれがとても重要で、新人にはぜひやって欲しいなぁって。オレは具体的に何が欲しいの?ってちゃんと聞きかなきゃ気持ち悪い。聞いて咀嚼しないと自分の実にはならないし、実にできなきゃイヤですもん。そのために根掘り葉掘り聞くんですよね。オレはやっぱり色々と質問して理解したいから。

田中:藤田先生の作品が面白い理由も、多くの漫画家さんたちを輩出している理由も納得できました!


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