作品一覧
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3.6第45回野間文芸新人賞受賞作 「東京都同情塔」が芥川賞を受賞して更なる注目を集める著者が、 ほとばしる想像力で描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。 太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、 驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで 移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。 そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、 しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。 現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を 取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、 両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと 「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
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4.1
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
せつねーーー!!!
牧名沙羅は限りなく非人間な性格で数学が得意の女の子や。少しづつ大人になるにつれ、本来人間の持つ肉欲であったり色々な論理じゃ解決できない欲求を知っていくお話や。
かつて数学少女だった女の子が、沙羅が沙羅であるために選んだ道なのに、サラとして消費されていくかわいそうかわいいの建築家やね。
そんな沙羅を見てくれないことにモンモンしちゃう沙羅ちゃん。ソーキュート
だけど沙羅が拓人に持つ感情は、造形が綺麗とかどれも拓人の外面ばかりで、
沙羅は拓人が好きよりも
サラは拓人を通して沙羅の汚いとこを見ている
のが近いんじゃね?
一方拓人は人間社会においての一般社会通念に懐疑的で -
Posted by ブクログ
「バベルの塔の再現。」で始まり、バベルの塔と東京都同情塔を重ね合わせて表現しているのが面白かった。
旧約聖書の創世記にあるバベルの塔の物語を完璧にオマージュしているという訳ではなく、キリストとも取れる描き方をしている。「この人を見よ(エッケ・ホモ)」を牧名に対して使っていたり、そもそも牧名という名前を建築家の女性につけている(=マキナ、machine。救いの手、機械。)などがそれにあたる。東京都同情塔の説明をする場面をみると、牧名はAIであるとも捉えられる。
生成AIを作中で5%程度そのまま使用しているのも小説のなかでは珍しい。
またキャラクター各々の強い個性が文体にまで綺麗に表現されている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久しぶりに小説を読んだ。
同じ芥川賞で比較すると、本作『東京都同情塔』は上田岳大の『ニムロッド』にちょっと雰囲気が似ていて、どこか無機的・機械的な雰囲気の小説だった。実際はニムロッドをもっとよくした感じで、僕はニムロッドに星4をつけているので、同情塔は星5にした。
読後に不思議な満足感があって、『同情塔』はたぶん自分の日常生活での意識外、アンテナの外の情報が入ってきたから、常日頃から社会問題みたいなことを考えてそうな人がそれを全面に出した小説ってこういうものになるのかなと新鮮だった。例えばこれまでヴィーガンと普通に肉を食べる人との対立や、環境活動家とそれ以外の環境にあまり気を払わない人との対