「せっかくの善意を、わたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない。」
温かい両親の元で幸せな暮らしを送っていた家内更紗(かないさらさ)は
ある事情で両親を失い、伯母の家に引き取られることになった。
自分の居場所がないと感じるようになった更紗は、ある日公園で一人の青年・文(ふみ)に家に来ないかと誘われーー……。
男と女。大人と子供。加害者と被害者。
人をカテゴライズし、勝手な解釈で物事を把握してしまうことの危うさに気づかされる作品です。人を「かわいそうな人」だとラベリングし、保護しようとすることが本当に正義なのか。善意は無条件に正しいものなのか。当事者たちにしかわからない「本当」があるのではないだろうか。
主人公二人の静かな幸せを祈りたくなるような、そんな一冊です。
ぜひ読んでみてください。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
この作品の描く「居心地の良い存在」という関係性に深く共感しました。
性的なことをしない、歳の離れた男女の関係。
周囲の人は性犯罪と呼ぶかもしれないけれど、当人達の気持ちや関係性は至って純粋。
「ただ居心地が良い」という理由だけで一緒に居る関係性も認められて良いのではないかと思いました。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた一冊。やっぱりというか……とても良かった。映像ではなく小説で読むことの方がしみる作品だと思う。
世間的には誘拐事件の加害者と被害者である2人だが、世間で認識されている事実と、真実は大きくかけ離れている。そこに起因する認識の隔たりが、事件当時も15年後も、2人を追い詰めていく。一般的な優しさに救われながらも、その常識的な優しさに突き落とされるのは苦しい。理解されないことに対して、更紗が引き潮や静かで暗い川など、水にまつわる比喩をしていたのが印象的だった。
2人を取り巻くしんどい状況に反して、更紗の幼少期の幸せな記憶や、2人の生活は、明るさに彩られている。家内夫妻が作り上げていた小さく幸福な世界は、特に色鮮やかで読んでいる私もうっとりしてしまった。そんなバックボーンがある更紗だからこそ、文の救いにもなったんだろう。そして危うい均衡ながらも丁寧に積み上げられた文の生活空間も、更紗の拠り所になっていた。この環境描写が、恋愛関係とはまた違う、相互補完の関係がすっと入り込む一助になったんだと思う。
更紗の感性は、個人的にけっこう好みである。その視点を介した物語描写を追えたのが、読後感の気持ちよさにつながってるんだろうなあ。
Posted by ブクログ
ずっと読みたくて、読めた。
2日で読み終わってしまった。
すごく引き込まれて、寝るのも忘れて読んでた。
さらとふみ。
世間は真実とは異なるものを事実として作り上げ、無意識にみんな傷つけてる。
読んでてつらくなった。
さらとふみの関係がすごく素敵に思えた。これも語弊がありそうだけど。
自分をわかってくれる誰かがいるだけで、すごく幸せなんだと再確認できた感じ。
Posted by ブクログ
真実と事実。これってやっぱり、それぞれが存在し、人の数だけ真実と事実があると思う。
人は自分の頭で整理できる都合の良い方に真実と事実を作っていく、文とサラサにしか理解できない真実と事実があるのに周りが勝手に想像し、形づくり、干渉し、傷つけていく。
でも、人は自分より他人に興味があるんだよね。
ラストは真実と事実を超えた二人だけの真実と事実を生きていく。そこに梨花が加わることもとても素敵。
Posted by ブクログ
凄く重たくて、考えさせられる物語だったので上手く感想が思い浮かばない。。。
物凄く大きな悩みを抱えている人にとって、"1人じゃない"ということがどれだけ支えになるのか、人と人が繋がることがどれだけ強大な力を持つのかを知ることができた。ほんのちょっと被るところがあったのか、「正欲」を思い出した。
自分は更紗や文のような経験や思いをしたことがないのでどんなに頑張っても気持ちを想像することしかできないけれど、凪良ゆうさん特有の繊細な人物の心情の描き方によってより鮮明に想像することができた。
更紗にも文にも幸せになって欲しい。
Posted by ブクログ
新しい人間関係への旅立ち、こんな関係もあっていいと思う。むしろ私はこの関係に一種の憧れみたいなのを抱いてしまった。汝、星のごとく、からだけど、普通とはなんなのかを考えさせられますね...。とても面白かったです。
Posted by ブクログ
悲しくて苦しくて優しい、きれいなお話。
途中まで「亮の野郎どうしてやろうか」ってはらわた煮えくり返る思いで読んでたけど、そんな自分が恥ずかしくなるぐらい清々しい最後だった。復讐とか因果応報とかじゃなくて、ただただ自分たちが別のところで幸せに暮らせたらいいよね。
追記
ぶっ通しで映画も観た。
俳優陣の表情で心情を語る演技力がすごかった。
文役にはもっと中性的で童顔な人がよかったなーってのと、亮が暴力性に加えて性欲モンスターなあたりも気持ち悪いなーってのと、最後スッポンポンになったのがちょっといやだった(´Д` )
最高でした…!
凪良ゆう先生は美しい彼きっかけで読み始めるようになったのですが、この本もめちゃくちゃ良かったです。本当にこの作者の本はハズレがないです。更紗と文の物語が実際に身近で起きているかのように感じられ、何度も感情移入し、感情を揺さぶられました。紡がれていく文章がとても美しく、読んでから一日だった今でも、いくつか好きな文章を思い出せるほどです。非BLで激しい内容も少ないため、他人に気兼ねなくおすすめしやすいところも良いです。
Posted by ブクログ
このことは社会的な事件について扱っていたけれど、日常の些細なことにおいても同じで、当人しか知り得ないことを周りの人が勝手に判断してしまう状況はあるのだろうと思った。
描写も綺麗で、何回も読み返している大切な作品だけど、未だに自分の中で考えることに対しての答えが出ない!読む度に色々なことを考えなおすきっかけになる
Posted by ブクログ
事実と真実
事実は外から見てもわかるけど、真実は当事者にしかわからない。
事実だけを見て勝手に決めつけ、判断をして、善良な人間であるかのように批評してないか。
真実を共有しあえる関係はきっと固いつながりで結ばれると思う。
そんなつながりを自分は持てているのかなぁ。
Posted by ブクログ
恋とか、愛ではなく、ただ一緒にいたいだけ。安らげる居場所を求めてるだけなのに。。
それが叶わない。
上辺だけ切り取られた憶測や想像から、当事者の声が届かないのが、読んでいて辛い。
二人に贈られた「たくさん幸せになってね」の言葉がこれ以上ないくらい嬉しい。
Posted by ブクログ
"ひとりのほうが楽だけど、ひとりはやっぱり怖い"
何気ない言葉に涙が止まらかった。
言葉にできない感情が胸を渦巻いている。
苦しいけど美しい物語でした。
calicoの名前の由来が明かされた時、私は動けなくなった
Posted by ブクログ
「夕ご飯にアイスクリームを食べては行けない」不思議がる更紗にとても親近感を感じた。夕ご飯を作るのがめんどくさくてポテトチップスで終わらせたこと、1人で暮らしていると自由で思い通りにできるがこれを周りに話した時、文のように「いいんじゃない」と共感してくれる人はいない。更紗と文しか分かり合えない関係性がとてと心地よく、意外と皆んな秘密を抱えながら生きているとも感じさせられた作品
Posted by ブクログ
世間からの事実と当事者からの事実にはこんなにも差があるのだと、そして自分を守るために起こした行動であっても、人々の固定観念はそれを簡単に覆してしまうんだと痛感しました。
デジタルタトゥーとして残り続ける罪はいつまでも追い続けて、穏やかな日常を壊しているんだと思いました。
Posted by ブクログ
進撃の巨人や映画wonderでもあった、物事には二面性があるということについて改めて考えさせられた。
「彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわならない」
この考え方ができる人でありたい。けど難しい。
Posted by ブクログ
映画を観たことがあったので迷ったが、
読んで良かったです
2人が過ごした2カ月間は原作の方が濃い
更紗と文の関係は言葉で表現できない
だからこそ理解されず、傷つけられる
本人たちにも確かなものはきっと分からない
分からないからただ一緒にいる
もうそれでいいのではないか
一人一人の荷物
「彼女の話Ⅱ」、「彼の話Ⅰ」までを
一気に読んだ。
こういうことかと思った。
私たち人間は一人一人が自分にしか
上手く扱えない荷物を持っている。
自分の弱さが相手を傷つける。
だが、そうそう荷物に見合った力が
与えられる、あるいは力があることに
気づけるものでもない。
この話には、一番意地悪なめぐり合わせがある。
でも、一面では最上の相手に会ったともいえる。
結末は明日読もう。
更紗の思いや事件の真実が、世の中に受け入れられず違った解釈のままである事に対してもどかしさを感じると同時に、これが現実なんだというやりきれない思いで複雑な心境になった。
そんな事件を経験した後で、共に生きて行くという選択をした2人を誇りに思う。
堂々と生きていって欲しいと願う。
良い作品と出会えました
真実を聞いてくれる誰かが現れないか、この2人が自分らしく生きることは許されないのか、読みながらとにかくもどかしくて苦しい気持ちでした。自身の物事の見方や考え方、受け取り方を考えさせられる場面が幾度もあり、また、言葉選びに良い意味で何度も衝撃を受け、読了後は何とも言い難い気持ちになりました。良い作品に出会えました。
せつないけど優しい
優しかった世界に、近づいてきた黒いもの。そこから逃れようとしても落ちていく闇。ただ静かな場所に居たかっただけなのに許されなくて壊される。
最後に辿り着いた場所はいつまで優しく静かにいられるのだろう。
そんなことをしみじみおもいました。
Posted by ブクログ
読み終えて、感情を言葉にできないに尽きる。
優しさって相手にとっては優しさじゃないかもしれないし、当たり前は当たり前じゃないかもしれない。けど、なかなか気付かないし気付けない。
二人が一緒にいる未来があって良かった。
流浪の月
文と更紗、お互いが支えとなり生きてこれた事、2人の思いが同じだった時、ホッとし泣きそうになった。世間の目は辛いものだったけど。
読み終わるのがもったいなくて途中で読むスピードをゆっくりにした。凪良ゆうさんの他の作品も読んでみようと思う。久々にハマった作品でした。
Posted by ブクログ
気になっててようやく読めた
私の目の前に2人が現れたらどうするだろうと考えた。事実を知った上で会った時、真実を告げられたら100%信じて話を聞けるのか。法は守らなくてはいけないのでそれ自体を肯定することはできないが、それでもその事実があったとしても本人達にしかわからないことはあって、それを話された時私は小説の登場人物達みたいなことを少しでも思ってしまうのではないか。優しさでしたこと言ったことが逆に傷つけてしまうこともある。
現実でもあることだと思う。どうしても先入観から何を言っても○○だからこんなことを言ってるんだね、とわかった気になって勝手に解釈をしてしまう、当事者にしかわからないのに知ってる気になって同情したり叩いたり…というのはネットでも見る。
自分自身も無意識にしてしまってるかもしれない。人の話は先入観持たずに聞きたい、人伝に聞いた話は鵜呑みにしないと思った。
それぞれがそれぞれに思うことがあって、それをみんな全てを理解してもらうことは難しいと思う。分かり合えないこともある。諦めなくてはいけないこともあるかもしれない。でも1人でも少しでも理解してくれる、理解したいと思い思ってくれる人がいたら素敵だと思った。
Posted by ブクログ
かつて小学生の少女を誘拐した大学生が逮捕された、という事件があった。
後に再び、その事件で「被害者」と言われた女性と「加害者」と呼ばれた男性が出会ったときに、二人の間にはどのような関係が気づかれるのか?
世間が考える二人の関係性と、実際に2か月同じ時間を過ごした当人が考える関係性のギャップがすごい。
「事実」と「真実」の違いにフォーカスされる。
引き込まれて一気に読んでしまった。
面白かった!
Posted by ブクログ
事実と真実は異なる。出来事というのは立場によって解釈がバラバラである。そのことを痛感させられた。
「ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神さまはどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう」
Posted by ブクログ
苦しい話でした。
理解してもらうのを諦めた感じがなお辛い。
でも実際そーよなーって思ってしまうところもある。そんな中で少しでもわかってくれる人がおることに救われるって気持ちもわかる。
生きるって難しくないか。
Posted by ブクログ
優しさがテーマになっている物語。
ほとんどの優しさが虚構であり自己満であり、想像力に欠けたものであることが分かる。その優しさが見えずらい暴力になっている事も。自分の優しさも課題だらけであることが分かった。
Posted by ブクログ
読み易いし、先がどうなるのか不安な気持ちであっという間に読み終わった。
肉体関係なし。人死に無し。で、印象良かった。
誰か死んじゃうんじゃないかとヒヤヒヤしながら読んだよ…良かった誰も死ななくて
最初と最後が
最新時間で繋がっているのが良かった。
途中、最初を読み直して誰が誰か確認した…
良作です
現実に対するもどかしさは残るものの、そこはリアリティーとして受け入れれば良作だと思います。
でも思う。
「それでは世界はあまりに救いがないではないかと」
切実な女の子の話を読んで
文章が優しめな表現によって構成されているため非常に読みやすい。主人公の心情描写にも心惹かれるが、彼女を取り巻く人間関係にも注目して欲しい。
居場所
居場所がどこにも無い、二人の物語。心の置き所や平穏な生活を与えられない二人の行き着く先はお互いを理解し、赦しあえばそこが二人にとっての安住の地であり最良の居場所を見つけた二人の物語。
Posted by ブクログ
アップダウンはありつつも始終、わりと淡々とスピード感をもって進むし読みやすい文体と展開の読みづらさもあり、さくさくと読めた。
こういう愛の形があって然るべきなのはとても同感するし、狂人的なほどの悪はいないので没入しやすいかも。
やや更紗に苛立つところはあれどまあ事情が事情なので仕方ないよなあ〜
でも正直2.5〜3の間かな…という感想ですがあくまで個人的な意見です。
女性なら多くの人が一度は求めるかも。同性的で性交の要らない、自分だけを求めてくれる見目よい男性。
嗜好のマイノリティは結果として無かったからそのあたりの「相手の性欲について深めるべき理解」は必要無く、恨まれるどころか長い時間お互い知らずに依存しあっていたというwin-winな…いや、文はまあまあ壮絶だったけど。
そして自分たちの事情を知って気持ちを理解してくれている他人の子どももできて…
なんだろうなあ読後の「よかったねえ〜!」パチパチ がなかったんだよなあ個人的に。
更紗目線というか自分に置き換えて読んでると、なんか都合いいな自分に…と思ってしまうんですよね。
Posted by ブクログ
2020年本屋大賞受賞作。
事実と真実は異なる。
同じようで違う、事実と真実の言葉の意味が深い。
出てくる登場人物は、
基本みんなヤバいやつだと思う笑。
まともなのは谷さんくらい。
Posted by ブクログ
フラグ立ちまくりの展開だけど、スピード感がよくてページを捲る手が止まらない!
くるぞくるぞ、とゾクゾクしながら読んだ。
最後はいろんな愛の形があるよね、、とほっこり。
Posted by ブクログ
凪良ゆうさんの作品の読ませる力は本当にすごい。
しんどい話ながら、2晩で読み切ってしまった。
性被害という苦手なテーマを抱えながら、この読みやすさは流石。
文と更紗の関係は美しいけど、実際にこんな事件があったら先入観で同情してしまう自分もいる。
読む前からあらすじを知っていたが故に、過去に近いあらすじの話を読んだ時に誘拐を正当化、美化している作品を読んで胸糞だったのもあり不安だったけど、どうしてこの作品は平気だったんだろう?
文のストーリーで、文にとっても更紗が特別だったことが分かった時、嬉しくなった。
Posted by ブクログ
すごく読みやすい。著者の言葉がすっと頭に入ってくる
更紗も文も亮もみんなうまく生きられていなくて、けど、この人たちの最良を選べたなら良かったと思う
悲しくて切ないが、すがすがしい
かなり特殊なシチュエーションだが、15年後のいろんな展開の中にあっても、更紗のフェアな考え方がすばらしい。
匿名
本屋大賞だから買ってみたけど
私は夢中になって読むことはできなかった。途中で真面目に読むのをやめた。登場人物の行動や思考の流れに共感することはできずなんでそうなるの?と疑問が湧いた。思ってたのと違う方向に進んでいく物語は読むことに疲れた。多数派の感想が面白いと支持してる内容なので面白いのだろうと期待していたが勢いで購入して後悔を感じ泣きたい気持ちになった。私は少数派の読者だった模様。本屋大賞が面白い本ではなく売りたい本を推すということであればこれを売りたいという事なんだろう。今後本を選ぶ時は受賞作品よりも自分の信用に値する人の声を参考にしようと思う。この作品がつまらない訳ではなく自分には合わなかった。それだけです。人にはオススメしない泣ける作品