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妄想に近いたわごと。言葉になりかける寸前でぐずぐずになってしまう想い。ワードプロセッサーの中でのたうち回る私の思念が現実を浸食する。やめてくれないか。そういうことは。と思ったけれども、それでもほつほつ続けるうち私自身が因果そのものとなり果て…。町田節爆発、クールでキュートなエッセイ。
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Posted by ブクログ
歌うように物語をつづる。芥川賞作家。町田康がつづるエッセイ集です。こういう本よりもビジネス書を読んだほうがすぐに役に立つと思いますがすぐに役立つものはすぐに役立たなくなります。視点を変えたい方はぜひ。 すでにこのときから『町田節』と呼ばれる独特の文体で語られる筆者のエッセイは笑いのツボからその視...続きを読む点にまつわるところまで、自分の感覚に重大な影響を与えてくれました。確か、この本を読んだのは大学時代~漂白の時期を送っていたころだと記憶せられますが、今回この本を再読して、当時の気持ちを思い出して、『もう二度とこんな時期には帰りたくない!』というのと『いざ、戻ったところでこういう精神があれば何とか乗り越えられるんじゃないのか?』 というなんとも複雑な気持ちがない交ぜになっています。 どうも筆者はこのエッセイが書かれた時期に結婚をしているのですが、彼らはどのようにして『夫婦となりしか?』ということがあまり語れている文献が無いので、彼ら夫婦の紡ぐ『物語』というのはオリジナリティー溢れるものだろうなということを、この本を読みながら勝手に想像してしまいました。 一番僕が読んでいて『おっ?』と思った箇所は『人間の屑と聖書』と銘打たれたとある場所で行われた講演を文字に起したもので、筆者が室内警備の夜間仕事をやっていたときのことがつづられていて、詳しいことは書きませんが、彼の語っている同僚の様子が、昔、某所で経験したまったく同じ施設警備の職種に集ってきた人間たちと同じ人たちだということに、ウーン、と考え込まざるを得ませんでした。 そして、その続きである「勝者の傲慢、敗者の堕落」という箇所で、つづられているロックに対する彼の見方が本当に鋭く、現在読んでもまったく古びていないな、という驚きがありました。ほかにも、彼のつづる『日常』は本当に独特の世界観でつづられていて、この本を読んでもビジネスなどにはまったく役には経たないと思いますが、こういう本の中にこそ、むしろ『喜び』や『救い』があるのだと、確信を持っていえることが現在ではできます。
【泣いたり、笑ったり、考えたり】 名前は知ってるけど、町田康って誰やねん。バンドマン?小説家?検索して顔を見てもピンとこない。ただ、なんとなく手に取った一冊。バンドマンでしかも、パンクで、怠惰な生活を送っていたのに?芥川賞を受賞して、エッセイも小説もヒットして?そんな奇跡ってあるの?と穿って読み始...続きを読むめた。 最初はクセが強くて豚骨を極限まで煮詰めたようなこてこてな文体だと思って、2、3ページづつしか読めなかったのに、なんだろうか。芥川賞を受賞した作家のエッセイとは思えないほど、哀愁がそこにはあって、終盤に向けては次よ次よと駆け足で読み進めてしまった。 リズムなのか、なんなのかわからないけど、読んでいてとっても面白くて、でも時には考えさせられて。一気に引き込まれて、久しぶりに良い読書体験をした。解説を中島らもが書いていて、それもとても良かった。 本当に凄い人もいるもんだ。他の作品も読んでみたくなった。
『そしてたぶん自分は、今日も涙で明日も涙。明後日涙で、明明後日うすら笑い。その後のことはようわからん。』 『拙宅にも猫が二匹いて…、ー 思い切って申し上げると、私としては、これを、匹、と言いたくないのであって、じゃあなんなんだ、と言われても困るのだけれども、うーん。困った。じゃあ、本当の本当の本当...続きを読むの事を言うと、恥を申し上げるようだけれども、言いますと、「私はこれを二人と言いたい」うぐぐぐ。とうとう言ってしまった。』 『こうしてすべてを告白してしまい、余計な虚栄心を捨ててしまったいま現在、私は大変安らかな気分である。誰に対してでも、堂々と、「拙宅には猫が二人います」と言えそうな心持ちがする。』 『休日。精神的な快楽と肉体的な快楽とどっちにしよう? つって、やっぱり精神的快楽。ー それに精神つったほうがなんか高尚な感じがするし。イエイー、てって精神的快楽といえばやはり 読書』 『だいたいにおいて文字というのは威嚇的である。例えば、脅迫状や不幸の手紙なども、字で書いてあるからこそ、所期の目的を達成する可能性があるのであって、もし仮にこれが、紙に悪漢の顔が書いてあって、その横に、「六千万円もってきてちょんまげ」などと書き添えてあったとしたら、なにかの冗談だと思って誰も本気で対応しようとはせず、人質は殺害されてしまうだろう。』 『それじゃまるで××じゃないか。そういう××は一刻も早く、××××に××にしてしまわないと、××だよ。』 『自分のような人間とて人並みにいただく御飯もいただかんければ生きていかれず、その、米代、味噌代、醤油代を支払うための最低限の金子は稼がんければ相成らぬからで、しょうがない』 『まったく仏語を解さぬ自分はパリで三歳児にも劣る状態であり、煙草ひとつ買うにもふたりの人間の介助を要するといった体たらくであったが、まあそこはなんとかなった。』 『俺は切手しか買わぬ。最低のブタ野郎だ。クソ野郎だ。ケチ、ケチ、ケチ、ケチ野郎なんだよ。貴様はよ。ロール・オーバー・シャイロック。エブリバディレッツ貯蓄』 『しかしそれもまた不自由な話で、進むも不自由、引くのも不自由、不自由の泥沼の中で人は生き、そして死んでいくのだ、終わっていくのだ。腐っていくのだ、なんてことを考え自分は猫を抱きしめ踊り狂った。』 『ほどなくして運ばれてきた蕎麦、わーい。実にうまそうだ。食べよ食べよ。しかしながらその前にやはりもう一杯飲もうかな。なんてって、脇に蒸篭を置いたところ、手元が狂って蕎麦を床にぶちまけてしまう。しかし僕らはプラス思考。いいじゃないか。蕎麦くらい。人間だもの。』 『僕は、あなたに、水戸黄門のテーマを日に五度聴けばいいと思う。そして有名な、「人生楽ありゃ苦もあるさー」という歌詞を「人生、苦もありゃ苦もあるさ。苦もありゃ苦もあるさ。苦もあーりゃー、苦もありゃ苦もあるさ。苦もありゃ苦もありゃ苦もあるさ」と歌い替えてごらんなさい。やがて結婚なんて大した苦じゃないと思えるようになり、そのうちある点を超えると、うそのようにいい加減な人間になる』 『音楽というものは論文ではないのであって、言いたいことなどあるわけがないし、一言に要約できるような種類のものではない。』 『親に背いてパンク歌手に成り下がった身の因果を思い、来世ではきっと堅気になろうと心に誓う』 『回転式鼻毛剃りを全世界に普及させるためです』
巻末の中島らもの解説が、町田康の作品を上手く表現していると思うので抜粋。「何の役にも立たない。意味がない。これはとても重要なことだ。ここに有るのは文体だけであって、それが何のベクトルも持たずに上下左右東西南北と暴れまくる。どこへも辿り着かない。この無意味さが素晴らしい」。う〜む、流石はらもさん、仰る...続きを読む通り。町田康の魅力は、その徹底した無意味性・虚無性にあると思うのです。
自分のエッセイの好き嫌いの判断基準の一つに文章の勢いがあるのだが、このエッセイはその点では十分に満足のいくものであった。やや落語的であり、随所に散りばめられるユーモアも流れの中でスムーズに現れ、即興要素が強いジャズの演奏のような印象を受けた。 途中、他の作家の作品の解説を集めた部分があったが、やはり...続きを読む解説は作品と共に読まないと掴み難く、その部分だけ損をした気分になった。掲載した意図を図りかねる。
解説を中島らもが書いている、というだけで町田康と中島らもの繋がりを感じて嬉しくなってしまう。長野五輪のことが書いてあったりと、なかなか古い作品だが、新鮮な気持ちで読める随筆。
帯がいいんですよね。 「おめぇら生きててつらいだろ?」 ドキッとくる一言。 でもこの本読んでる時は、あんまりつらくなくなる。 町田康のエッセイは不思議な虚脱かんと厭世感に包まれている。
クールでキュートな町田節が炸裂!日々の事々から文学までを語った傑作エッセー。 …という帯付きのこの文庫、「日々の事々」の中身には猫もアリ。文学以外にも音楽をも語っておりましてぇ〜音楽音痴の私には大変ありがたいことでございました。ほうほう?にゃるほどぉ?ロックってぇのはぁ〜そういう捉え方なわけね〜パン...続きを読むクってぇのはぁ〜フーンそうなんだぁ… ってね。 全体に「うふうふ、そうだね、うんうん」と同感なところ多数であったのですが…てことはぁもしかしてひょっとしてたぶんアタシもクールでキュート?!ウハハ(-_-;(相当偏屈…。。) この人の小説も好きですよ〜、小説。 この前読んだ「けものがれ、俺らの猿と」とても面白かったですぅ。 「きれぎれ」の一節なんてしびれちゃったしぃ〜「くっすん大黒」はガツンとやられたかんじ! ねこ好きさんへのお奨め度★★★★★ *自分は世渡り上手のキレモノであると自認していらっしゃる方にはお奨めできません。意味わかんないかもしれないし…(笑)
文庫の帯にヤられました。「おめぇら生きてて辛ぇだろ?」 ハイ!全く以ってその通り!ごもっともでございまス。 小粋で清潔なエッセイでございます。あとがきが中島らもっちうのがまた。
感想 思念の暴走。脳内の電気信号は止まらないが外に出るのは恥ずかしがる。無理矢理紙に落とし込めば。もはや自分の内側にあったものとは違う。
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