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「小さかった頃にはまだ町ん中に原っぱがあって……」先輩の原口さんが、呑み屋で知り合った男と思い出話に意気投合しているのを、ぼくはぼんやりと聞いていた。中年男二人の他愛ない話と思っていたのだが、その日から原口さんはおかしくなっていった――少年時代の記憶に潜む恐怖を描いた表題作ほか、130年ぶりに地球に戻った宇宙飛行士の過酷な運命を物語る「ウラシマの帰還」など、美しくも哀しい8篇を収録したSF作品集。
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Posted by ブクログ
リリカルSFホラー。 「何とも言えない心細さ、たよりなさ、心もとなさ……夕ぐれどきの泣きたいようなやるせなさがぼくをとらえていた。まだ、まっ昼間、光あかるいビルの谷間の、都会の大群衆の中にいるというのに。ぼくは原っぱなど知らない。青白い顔の少女も、白い古ぼけた洋館もない、ぼくはそんな幽霊などとは縁...続きを読むがないのだ。だのになぜ……ぼくはこんなにも淋しいのだろう?」
「さらしなにっき」 「忘れないで」 「峠の茶屋」 「ウラシマの帰還」 「走馬灯」 「最後の夏」 「パソコン日記」 「隣の宇宙人」 「さらしなにっき」 先輩の子どもの頃の思い出に登場する原っぱと洋館と窓から見える少女。これ、語り手がその記憶を持つ当人だったら、高橋克彦の記憶シリーズになりそう。当人...続きを読むではなく、見ている側の人間を語り手にした成果は最後の一行に。 「忘れないで」 日常から終末に接続されるタイプのSF。 「峠の茶屋」 最初の暴走族のあたりは、真面目なのかギャグなのか判断に困った。最後はそう持ってくるのかと面白かった。 「ウラシマの帰還」 栗本さんの「心中天浦島」と同系統の作品。まあウラシマだし。 「走馬灯」 短いんだけど、なぜか印象に残る。これぞワンアイディアもの。 「最後の夏」 作中後半、今いるこの日常が、とある思考によってそのまま人類の終末に反転させられる。栗本さんの終末ものの中では一番好みかもしれない。まさしく「かくもしずかでひっそりとしたほろび」。こうした、今の光景を一変させる作品はいい。 「パソコン日記」 ここから表紙イラスト詐欺(笑) ノリだなあ…… 「隣の宇宙人」 ノリが大事。
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