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フィレンツェの富豪メディチ家のカトリーヌは、フランス王太子アンリ二世に輿入れしたものの、夫は寵妾ディアヌの虜。商家の娘と蔑まれ、子供にも恵まれず、宮廷で影の薄い存在だった。自分を守り、権力を握ろうとするカトリーヌは、預言者として評判になったノストラダムスに手をのばす。権謀術数の宮廷大河ロマン。
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Posted by ブクログ
やっぱり面白かった。 何度読んでも面白い。 この小説のカトリーヌが、私の中でのカトリーヌだから、どうしても悪女とは思えない!可哀想な女性なのよ!! でも、一つこの小説の難をあげるとするならば、表紙の絵がカトリーヌじゃないこと。 これはマリー・ド・メディシス。 紛らわしいから、この装丁はどうかと思い...続きを読むます!
全体的に重厚感のある作品ですが、その中で王から愛情を注いでもらえない王妃と老化に怯える寵妃の、かけ引きや上っ面だけ仲良いフリをしてるのが笑えます。
私はこの人の作品が好きなようだ。これで読んだの何冊目だっけ?今回描かれているのは16世紀のフランス貴族達の宮廷で繰り広げられる陰謀。そのため、庶民の暮らしぶりや民衆の思想描写は少なめ。また、カトリーヌもノストラダムスも結構なお年なので主役陣の若さが足りないとは感じてしまう。別に不満と言うわけではな...続きを読むいが。
藤本さんのは「ブルボンの封印」とか「逆光のメディチ」とか有名作読んだけど、こっちの方がおもしろかった 歴史的背景を生かした、最終的にほとんど想像力に頼る話より、 こういう完璧に歴史上の人物を描ききる方が得意なんじゃないかな? すごく濃密でユーモアに溢れてるのに、知性を失わない作品だと思いまんた ノス...続きを読むトラダムスが食えない好々爺でいいわー 王妃も意外にかわいらしかった
ノストラダムス。誰でも聞いたことのある名前だけど、実は彼が預言者ということぐらいしか知らない。そんな彼の生涯を描いた作品だ。 時代は、13世紀、ノストラダムスは本名がミシェル・ドゥ・ノートルダム。父親はフランスのアヴィニヨンの商人兼金貸しだ。9人兄弟の長男で、町の名士の一人という地位であった。当時...続きを読むでの金貸しは卑しい職業とされており、その職業を聞いただけでも、あーユダヤ人か、と思い浮かぶのである。ただ、ノストラダムスは、祖父がユダヤ教からキリスト教にアヴィニヨンで改宗し、ノートルダムと名乗るようになった。洗礼を受けた教会がノートル・ダム教会であったため、習慣に従って、教会名を苗字に頂いたようだ。 ノストラダムスは医者であった。そしてたいそうな美食家であり、様々な社交界に出入りしていた。また、自分で石鹸や歯磨き粉、若返りの化粧水などを作って販売しており、さらに、それらの販売を促進するため、化粧品についての本も書いている。『顔を美しく見せるための化粧の様々な方法について』では、化粧についてはもちろんのこと、髪を金髪にする方法とか、白髪の染め方、シミを取り除く秘訣などが記載され、『様々な砂糖煮の作り方』では、若返りの効果を持つ牛の干草砂糖煮や、健康を保つための甘口ワインを使った蜂蜜煮の作り方などが詳しく書かれている。 預言者で、美食家の社交的な医者、石鹸や化粧水の製造販売人、加えて化粧法を指南する美容師で砂糖煮の料理人とはいったい何者であろうか。 ノストラダムスは、フランス各地の修道院の医師として滞在したりした日々もある。猛威を振るうペストの治療に力を尽くし、リヨンではペストの医師としても名声を確立した。1550年に向こう1年間の天候や月の出入りの時刻、聖人の祝日などを書き記した『年間占いと暦、および前兆』という本を書き上げ刊行したのが、預言書の最初であると思われる。 占星術には2種類ある。一つは医学占星術。もうひとつは個人占星術だ。人間の体は星の影響を受けているといわれ、医者は患者の体を支配する星を考慮し、病気の見通しを診断するのが普通で、それは、天体の学問に基づく科学的な治療法と考えられていた。 一方、個人の運命を占う個人占星術は、教会からまやかしであると指摘され続けてきた。迷信や魔術の類と一からげにされ、信仰に反するものとして厳しく糾弾された。ノストラダムスは双方を行っていた。診断し、薬を与え、医学占星術によって予後を見通して指導する。そして患者が希望すれば個人の運勢を占った。ノストラダムスに言わせれば、占星術による占いは聖なることであった。占星術は神が存在する天空からもたらされるものであり、結果的に人間の人生における神の存在を明らかにするからである。ノストラダムスの個人占星術については、訴えられたこともあったが、ノストラダムスは聖書からの引用を持って争い、結局は勝訴した。 そんなノストラダムスに目をつけた、ある高貴な人間がいた。それが、フランス国王アンリ2世の王妃カトリーヌ・ドゥ・メディシスだった。 ノストラダムスはカトリーヌに招かれる。そこで、ノストラダムスは尋ねられる。お前は預言者かと。ノストラダムスは、自分は預言者ではなく、予言者だと。神の神託を告げているのではなく、未来を予見して告げているのだと。なぜそんなことができるのか。ノストラダムスはカトリーヌに応える。ノストラダムスが聖書も含む膨大な年代記の中から見つけ出した真実は、歴史は1本の線ではなく、円であるということだった。1周すると元に戻る。つまり、歴史とは一定の周期をもって同じことを繰り返しているということだ。ただ一つの歴史があり、それが色々な人々により繰り返し演じられている。そして、その各々の周期の中では、個人の運命もまた繰り返されている。つまり私たちは自分だけの人生を生きているつもりが、実は誰かの人生を繰り返し、それを自分の人生だと思い込んでいるのだ。歴史とは永遠の再出発なのだ。これはキリストの教えに逆らうばかりでなく、人間の尊厳そのものを否定するようなものだった。 預言書とは、過去の出来事の中からその要素だけを抽出し、それがそのまま未来の出来事となるということだ。ただ、この考えはキリストの教えと反するため、すべての数字を入替たり、固有名詞の文字を入れ替えたり、他の言葉で代用させたりしたために、ノストラダムスの著作は非常に抽象的になり、実際に事件が起きた後でなければわからないようなものになった。 ここで、王妃カトリーヌの置かれている状況を説明する。現在、フランスを牛耳っている人間は2人いる。一人は国王アンリ2世が尊父と仰ぐ大元帥アンヌ・ドゥ・モンモランシー。そしてもう一人は、アンリ2世がこの上ない愛をそそぐヴァランチノワ公爵夫人ディアヌ・ドゥ・ポワティエという愛妾だ。そう、カトリーヌはその愛妾にあたかも第一婦人の地位を与えているようなものだった。この2人に宮廷内の第3の勢力、ギュイーズ一族が続く。ただ、ディアヌもモンモランシーも、アンリ2世があって地位を保証されているようなもので、仮に、アンリ2世がこの世を去った場合、2人の地位は瞬く間に消されてしまうという危ういものであった。つまり、アンリ2世がいなくなれば、ギュイーズ一族の支配が始まり、権力を集中させながら、彼らが最終的に狙うのはフランス国王の地位であった。正当な王位継承者であるカトリーヌの4人の息子たちの運命は、悲惨なものになるだろう。そうはさせじと、カトリーヌはノストラダムスを招致し、未来を予見させたのである。その未来とは、アンリ2世がいつ亡くなるかということだ。その時期を予期し、手を打っておかなければならないというのが、4人の息子を持つ母の切なる願いであった。そのためには、どんな汚い手でも使うことを厭わないと誓うのであった。 ノストラダムスは予言する。アンリ2世の死は3年後の1559年であると。これを聞き、すぐさまカトリーヌは手を打ち始める。が、どうすればよいかわからない。商人の家系の何の後ろ盾もない女が、愛にも実権にも恵まれずして、王妃としていかに生きるか。いかにその人生を全うできるか。カトリーヌは運命に挑む。ノストラダムスは自分の運命にも似たカトリーヌに知恵を授ける。『統治するには分割せよ』と。 ノストラダムスは言う。この王国は滅びようとしている。それは正義が行われていないからだ。国王アンリ2世は蝋と呼ばれるような傀儡であり、国政は愛妾と大元帥の手に握られている。アンリ2世は彼らの機嫌を損ねまいとして、右往左往しているのが実情であった。王家の尊厳は地に落ち、それをさらに踏みにじろうと大貴族ギュイーズ一族が手ぐすね引いている。このため、王国の基礎となるもっとも大切な正義である”王家による国家の統一”が必要であると。 アンリ2世が3年後に死ぬとすると、後継するカトリーヌの息子の王太子フランソワはまだ15歳だ。王太子妃メアリ・スチュアートを通じて、ギュイーズ一族の傀儡になることは必定だ。宮廷にはギュイーズ一族に拮抗するだけの力を持つ人間がいない。ではどうすれば良いのか。それは、ギュイーズ一族と肩を並べうる名家で、しかもギュイーズ一族の信仰するカトリックと反する、プロテスタンを奉じる一族を探し出し、保護を与えてギュイーズ一族およびカトリックに対抗する勢力に育て上げることだ。そんな家系がどこにあるのか。見つけ出したのが、ブルボン・ヴァンドーム家だ。 しかし、カトリック対プロテスタンは宗教同士の争いであり、妥協という点が見出せない。武器と暴力では何も解決しないと分かっていつつも、報復は報復を呼び、泥沼化していく。ではどうすればよいのか。その答えは一つに違いなかった。このフランスのあらゆる人間に尊敬される唯一人の人物、フランス国王である。その絶対権力が率先して正しいやり方を示すことである。民衆が真似をするような迫害をやめること。カトリックの峻厳さを是正し、プロテスタンを認め、一つの国に二つの宗教を許し、カトリック以上に厳格なプロテスタンにも寛容を強いること。それ以外にこの不幸を止める道はないとノストラダムスは考えた。 おそらく、それは困難な道であったが、カトリーヌはやってみるしかなかった。駄目なら駄目でその時にまた考えればよい。常に全力で立ち向かってさえいれば、いつどんなことになっても、あきらめがつくというものであった。 結果的に、カトリーヌは自分の子供を見殺しにすることになるが、フランスを一つにまとめ、フランスの混乱につけ込んだイギリス、エスパニヤの侵入を食い止めた。 ノストラダムスは、改宗ユダヤ人として生きた祖父、また生粋のユダヤ人であった多くの先祖たちに思いをはせる。誰も不遇だったと思う。社会の中でさげすまれ、おとしめられてきたがゆえに、権力を信仰し、その思いを子供に託してきた。しかし、自分たちが一貫して求めてきたものは、地位を得ることではなく、ただ幸せに生きるということに過ぎなかったのではないか。名声や名誉がそれを裏打ちしてくれると信じたからこそ、追い求めたのではないか。今、その目的と手段が逆転してはいないか。不遇な人生に勝利するとは、薄氷を踏む思いを繰り返して名声を轟かせる事ではなく、安定し、落ち着いた毎日を作り出し、その中でじっくりと生きる幸せをかみしめることではないのかと。ノストラダムスはカトリーヌが摂政となって支えるフランス王国の反映を祈って、故郷へと下っていった。 全2巻。
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ノストラダムスと王妃
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藤本ひとみ
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