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森のなかの湖畔近くで暮らす漁師の養女オンディーヌは、ある日馬を休める納屋を借りに来た騎士ハンスに出会い、一目で恋に落ちる。ハンスもまた無邪気で美しい彼女に魅かれ、ともに城での生活を始める。ただ、彼女は人間ではなく、水の精だった――。水の精が「いまの言葉」で生き生きと語りだす。躍動感に満ちた20世紀フランスの国民的作家、ジロドゥの演劇の頂点。
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Posted by ブクログ
ジロドゥの戯曲。 水の精オンディーヌと、騎士ハンスの恋を描く。 オンディーヌの奔放すぎるキャラクターが強烈だが、それは本心とは裏腹な社交辞令や政治に満ちた貴族の社交界と対比させるためのものなのだろうか。 展開が読めずイライラする場面もあったが、大六場、第七場での物語の畳み方は素晴らしかった。最後...続きを読むのセリフが強烈に残る作品。
私にとって一番好きなパターンなので、いつも以上に冷静さを欠いてしまいます。きっと感じたこと全てを誰かに話したら「何言ってんだコイツ?」と思われるのは間違いないでしょう。そのくらい、好きなタイプの物語です。どこか間の抜けたキャラクターたちが笑わせて、その台詞を良く考えると裏があって考えさせられて、気が...続きを読むつけば目が潤んでいる事に気付く結末。喜劇なのか悲恋なのか。オンディーヌとハンスは、私にとって愛すべきキャラクターとなりました。ただ、この戯曲をもし演じる機会があるとすればやってみたいのはベルタの役ですけれどね。
裏表紙の説明文には「究極の愛」とあった。異種婚姻譚という物語のパターン自体が究極の愛と結びつきやすいと思うけど、その中でも確かに「究極の愛」と呼ぶのにふさわしい作品だった。 あまりに純粋で偉大すぎる魂とあまりに卑小な魂とが惹かれあってしまったことがそもそもの悲劇の始まりなんだろう。 でも卑小...続きを読むな魂といっても、それは人として普通にもつ魂。人としてまともであるがゆえに、水の精オンディーヌの魂には及ぶべくもなく卑小なんだと思う。だから、オンディーヌが愛したハンスは、日と一般にまで拡大できて、人それ自体がいかに卑小なものなのかを思い知らされる。 そして、一方の純粋で偉大な魂は、決して神のような絶対的な存在ではなく、どこまでも澄み切った一人の女性として描かれる。悩み怒り悲しむとオンディーヌの言動自体は普通の人とそう変わらないはずなのに、どこまでも純粋さも偉大さも失わないで、かえってくっきりと際立っているように思う。 この越えられないくらいに激しい落差が必然的に悲劇を生むし、だからこそ究極の愛なんだろうなあ、とぼんやり思う。 かなり昔にエッセイか何かでラストシーンが紹介されていて、それ以来読みたい本の一つにずっとなっていた。でも一冊4500円のジロドゥ戯曲全集しかなくてなかなか手が出せないでいた。光文社古典新訳文庫のおかげで、こういう作品がとても手にしやすくなったと思う。「カラマーゾフの兄弟」のように他社でも出ている作品ではなくて、他では手に入らない隠れた名作をどんどん出していってほしい。
ジロドゥといえばルイ・ジュヴェで、解説にはジャン・ルイ・バローも登場するから、「映画に恋して」に配架。王妃に語るオンディーヌの言葉『そこでは最初にむかえた男が、つねにただひとりの男です。』と、ラストが哀しいですね。最初にベルトランに会えたらよかったのに。そうしたら、お話が成り立ちませんが。えっ、ハン...続きを読むスって自然を踏みにじる人類の代表なの!?
水妖記の戯曲版としてあまりにも有名であり、ラストシーンは傑作である。 水の精霊オンディーヌと騎士ハンスの悲劇的な恋愛を描いた物語で、人と人に非ざる者との恋は始まりから破局を予感させる。 これは東西の異類婚の物語同様、予定調和ともいえる筋書なのであろうか。 水の精霊といえば人魚姫を思い出すが...続きを読む、オンディーヌのように悲劇的な結末を辿る。人魚姫ばかりでない。日本の昔話で言えば、「鶴女房」「天女の羽衣」「雪女」など、異類婚の行く先は幸せなものではない。 ハッピーエンドに終わる物語は果たしてあっただろうか?(美女と野獣は元々どちらも人間だし) 人は異種と結ばれるということにロマンを感じる一方、心の底で「禁忌」を覚えるものだ。禁忌だからこそ惹かれ、また、激しく拒絶する。そのような相反した心理が数多くの異類婚譚を生むのではないか。 そしてこの物語は単なる異類婚による祖語だけにはとどまらない。魂というものは決して分かち合うことが出来ない、永遠にわかり合うことの出来ない男女の虚無的な愛がある。 女の純粋さは自らの魂の死を招く。オンディーヌは自分の魂を破壊することにより、愛から救われるのである。 この物語は愛からの救済なのだろうか?冷たく横たわるハンスを艶然とした表情で見つめるオンディーヌ。そこに果たして希望はあるのだろうか。
フランスの文人ジロドゥ(1882-1943)の手に為る恋愛悲劇、1939初演。フーケーの「ウンディーネ」を下敷きにしているが、ジロドゥの描く水の精は、この19世紀ドイツの作家のそれよりも、もっと奔放で天真爛漫で、魅力的だ。幾分砕けた躍動感のある訳文が、ジロドゥ作のオンディーヌの性格をうまく表現してい...続きを読むると思う。僕はオンディーヌのこの口調が好きだ。 幼子のように裏表の分裂のない、"永遠の15歳"である精霊の言動は、「みんなの大きな魂を、ほんとうに愚かに、こまぎれにしてしまった」人間社会に在っては、喜劇的に響いてしまう。この、動物的とさえ云える無邪気さ一途さが、オンディーヌだ。しかし、透明で純粋な魂こそが、我々の社会の中では、悲劇を引き寄せてしまう。 透明で純粋な自他未分離の愛情に忘我することを、人間は一方で求めているようでありながら、他方では確かにそれを恐れている。それは死の際の一瞬に於いてのみ可能となる、成就ならざる成就。 騎士は死に、精霊は忘却する。永遠に隔てられた二人の間に、オンディーヌの嘗てと変わらぬ無邪気な言葉が響くのが、切ない。
先日読んだ或る小説で言及されていて、その引用文がひどく印象的だったので読んでみた。 訳の違いで随分ライトな感じになってはいたけど、最後の展開は凄くドラマチックでロマンチックで、わりと好きです。 愛した人のことをすっかり忘れて生き続けるのと、 何もかも覚えているまま、その記憶とともに死ぬことは、 ど...続きを読むちらが幸せなのだろう。 毎日のあらゆる瞬間の中に刷り込まれたそのしるしさえ、オンディーヌは忘れてしまうのだろうか。 しるしが残ったままだったとして、その意味を、もしくはそこに意味があること自体を、オンディーヌは忘れてしまうのだろうか。 魔法にかかったかのように。 もしくは、魔法が解けたかのように。
恋に落ちた水の精のお話。 新幹線の中で読む本を持っていき忘れたので慌てて選んだこの本。 最初は「この娘あかんわ!」と叫んでしまったくらいだったけど、読み進めるうちに夢中になった。
オンディーヌ、純粋無垢で明るくてキラキラしてて本当にいい子で。 最終的には悲恋だけど愛ってこういうものだよなって思いました。 小説で久々に泣いちゃった。
まさに悲劇の体をした作品。 人間の弱さをとことんまでに 痛感できる作品でしょう。 実際にハンスは欲に負けて オンディーヌ以外の女性に恋をし 婚約してしまいます。 オンディーヌは汚れなき、うそなき 透明な存在。 しかしながら人はそう生きることはできないのです。 別のバージョンも読みたいですね。
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