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都内美大の映像科に通う芦屋啓介は困っていた。 「写真に男が映る。削除できない」と言う親友の様子がおかしい。 啓介が彼の怪奇現象に巻き込まれそうになった時、日本画科の美しい少女、月浪縁に救われる。 縁には「絵に描いた人間に怪奇現象が起こると絵に異変が現れる」という特殊能力があった。 それを生かして人助けをする彼女に啓介は手伝いを申し出る。 そして啓介は縁を中心に巻き起こる不可思議な世界を知っていき――。 「君にも語るべき怪談があるはずだ」 美大の怪談は、おもしろい。
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Posted by ブクログ
美大生たちの自身の作品に対する作風や姿勢と言うか、解釈やら考え方やら感じ方が実に多種多様。 しかも作品が写真や日本画、立体物など多岐に渡っていながら、前述の通り、その多様さを見事に表現している。 タイトルに『怪談』とあるとおり、これはオカルトの話ではあるのだが、そう言った美術視点から見ても非常に奥が...続きを読む深く、これは経験者でないと描けない作品ではと感じていたところ、後書きを見て納得。 美大出身者でしたか。 うん、そうでないと、あの細やかな美術の話は描けないと思う。 美術好きも楽しめるお話ですぞ。 自身が描いた人物画に異変が現れると、その人自身に怪異が迫っている。 そんな特殊能力を持った美大生の月浪縁と、彼女に親友を救ってもらった恩義から彼女に関わるようになった写真専攻の美大生、啓介が様々な怪異を「怪談」でもって祓っていくお話。 先述の美術描写も細やかなら、彼女の特殊能力のルール、怪異を祓う際のルールも細やかに設定されている。 話の構成も気配り(要は伏線)がなされており、それぞれ単発の話で解決しながら、少しずつ、まるで川底に砂が堆積するように、あることが積み重なっていき、最後の話でそれが爆発するという。 何もかも綿密に練られた物語だったなと感じた。 理詰め、いや詰め将棋を見ている感覚というか。 そもそも月浪縁が「私つえぇええ」系のキャラではない。 頭の回転は確かに早く、ルールに則って相手に「怪談」を語らせることにより怪異を克服させていくのだが、万能ではない。 母親やお兄さんの方が、そういう意味では強いくらい。 事実、彼女の弱さや抱えていたものが、最後の話でがつんっと爆発する。 それを食い止めるのが、今までずっと彼女と行動を共にしていた啓介。 立場が逆転してからの彼女との攻防、不器用ながら全力でぶつかっていく啓介、かっこよかったよ。 オカルトとしても楽しめて、美術ものとしても楽しめる。 最初、一人称と三人称が場面ごとで切り替わるので混乱したところもあったが、慣れると「ああ、ここが日常パート」「ここから怪談パートか」と分かりやすくなった。 すっきり解決できる話もあれば、ぞわぞわっと背筋の凍る話、ついに犠牲者が出る話、大物の「怪異」が登場する話と、とにかくネタが豊富。 先が気になる展開が多くて、ほぼ一気読みしてしまった。 ある意味特殊な魅力の詰まった作品、ゆえに嵌った人は抜け出せなくなるのではと思う。 自分のように。 続編も「カクヨム」連載とのこと、楽しみだ。
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美大生・月浪縁の怪談
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