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小説家の「僕」は、人からよく相談を受ける。ある同窓生は「13歳のときに死んだ妹が、年老い、中学の制服を着て現れた」と語った。だが僕の記憶と奇妙な食い違いがあり――。常識を覆す全9篇の連作集。
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Posted by ブクログ
面白かった。内容は然る事乍ら、語りが面白かった。地の文の語りも、会話文も自然と頭に入ってくる。どことなくワクワク感があると同時に、クスリと笑えるような面白さがあった。話を読み終わる度にタイトルが頭に浮かんできた。嘘と真実との境界が曖昧になり、本当に現実と価値観が揺らいだ。
「嘘でした」と急に言われても、一体どこから嘘なのか、わからなくなるときがある。この本は、そんな嘘の範囲の曖昧さを巧妙に描いた、短編集である。 あまりに嘘が多過ぎてしまうと、いったい全体この本の内容は、読む価値があるのかしら、と思ってしまうが、そこで読む手を止めることなく進んでいただきたい。 嘘で...続きを読むある、前提をもとに、ではどこからどこまでは本当の話なのか、と考えながら読むことをお勧めする。 とはいえ、この作品はフィクションだから、全て嘘といえば嘘なのだが…。 京極夏彦氏の本を初めて読んだが、なかなかに難しい表現があって面白い。日本語の表現力の可能性を再び、三度感じさせる。
久しぶりに京極夏彦を読みたくなったけど、長編は読み切れる気がしなくてこちらの短編集。「嘘」にまつわる短編集で、三津田信三のシリーズのように、著者がそのまま体験したことのある話のような体で書かれている。 最初からこの話は嘘、と言われているから拍子抜けする部分もあり、でも本当に嘘だか分からないとか、どこ...続きを読むからどこまでが嘘かわからないというのは逆に不気味で良かった。 一番怖かったのは「ベンチ」の仏壇破壊おじさんかなあ。キンゴロー様の話も好みだった。 きっちりと創作された怪談の、因果関係が明確になるタイプの話も好きだけど、この短編集は実話怪談の「腑に落ちなさ」がある。わけが分からない、意味が分からない、だから怖い。私も実話怪談派かも、と認識させられた一冊。
短編でありながら、繋がっています。 この小説は『嘘』なんです。 ・レシピ ・ちくら ・ベンチ ・クラス ・キイロ ・シノビ ・ムエン ・ハウス ・リアル ・コード ゾワッとするが、時々笑える。楽しかったです。 これを読むと…ん?私の記憶は大丈夫か?と疑ってしまう。 『嘘』と『真実』とは…?
京極夏彦らしい不思議なお話の短編集 怖い話はあまり無く よく練られてるなあと思わせる展開の話が多い おススメ
「談」シリーズ(と言うのかな…?)は作品ごとに肌に合う合わないの差が私は激しい。 虚談は面白かったなー。 短編集だけど、それぞれは実は連作になっていて、最後の一行で今までの話を覆したり、読者をちょっと不安にさせたりする。 明確な答えを欲して小説を読む人には勧められないけど、ふわっとした掴みどころ...続きを読むのない話が好きな人は嫌いではない小説だと思う。
何が本当で何が嘘が、すべてがあやふやになっていく 怖いと言うか、不思議という感じ ハウスはちょっと、同じ状況を想像すると気味が悪いかな
嘘を見破るとかそういった気持ちで最初進んでいたら、いきなり真っ暗になって不安に駆られる。そんな作品でした。個人的に「キイロ」という作品が印象的でした。
・京極夏彦「虚談」(角川文庫)を読んだ。これは、「もしかしたら。(原文改行)今、見聞きしているこの現実らしきものこそーー。(原文改行)嘘なのかもしれないのだし。」 (143頁)といふ「クラス」の最後の文章に集約されるのかもしれない。帯には「この現実はすべて虚構だ」とあり、カバー裏には「この現実と価値...続きを読む観を揺るがす連作選。」とある。表現は悪いが、語られる内容が現実であるのかどうかが分からない物語といふことであらうか。例へば安部公房はとらぬ狸とかデンドロカカリヤ、S・カルマとかを使つて「この現実と価値観を揺るがす」やうな作品を書いた。ところが京極はSF的な要素や幻想文学的な要素は排除する。物語はあくまで生々しいのである。安部公房は労働者階級を描いた。京極にもはや労働者はゐない。階級闘争をするわけではない。言ふならば身の上話をしてゐるだけである。ここに時代と作者の志向性、嗜好性の差がある。京極もここまできたかと言ふべきであらうか。 ・本作は9編の連作と付録1編からなる。「クラス」は「妹が来んねん、と御木さんは言った。」(115頁)と始まる。「俺の妹はもうおらんねん」「もうーーって御木さん」(117頁)といふことで御木さんの身の上話となる。その妹の制服姿、死んだ中学校の制服を着た、年取つた妹の姿を最近見たといふ。そこで郷里の石垣島へ供養に行く、といふあたりから話は佳境に入る。いや現実から外れていく。妹はゐないはずなのに、御木さんは死んでゐるはずなのに、同窓会名簿に名前があるはずなのに、似顔絵を描いてゐたはずなのに……結局、「存在しない男の幽霊が、存在しない妹の幽霊に怯えていたということになる。」(142頁)これを「馬鹿馬鹿しいことこの上ない。」 (同前)と言ひ切れるかどうか、あるいは、そんなことはあり得ないなどと書くと、これは作者の掌中に捕らへられてしまつたことになるのであらう。だからといつて、これをそのまま受け入れるのはなと思ふ。読後に違和感が残る。これが作者のねらひかもしれない。ならばこれは見事に成功してゐる。他のも同様である。この次に「キイロ」 が来る。「もう四十年から前の」(147頁)中学校での出来事である。その中学にはいはば裏道があつた。そこにキンゴロー様といのふを、秘密に、祀る(まねをしてゐた?)連中がゐた。それを知つてからちよつといたづらをしてみたら……それが現実的に祟りをなしてゐるらしい。「黄色くて。(原文改行)片足がないって。」(165頁) さうしていろいろあつた後、最後は「まあ、嘘だこれ(中略)何もなかったんだわ最初から。」(174頁)といふことになる。それが収まつてから「僕は釈然としなかった気がする。(原文改行)すぐに忘れたけれど。」(175 頁)となる。読んだ方はこれは一種の怪談話だと思つてゐるが、当の主人公、いたづらをした人間は、それゆゑにか、却つて釈然としないのである。これは「クラス」と逆になりさうである。嘘かもしれないと釈然としないは同義であるのかどうか。釈然としないのは裏が分かつてゐるからであらう。だからそんなをかしなことあるかといふので ある。それが読者には一種の怪談話と思へる。もちろん裏が分かってゐるからである。黄色男は単なる噂でしかな い。しかしそれは本当に単なる噂かといふのがこの主題であらう。嘘かもしれない。ならばここにどんな嘘が隠されてゐるのか。「そう言われてもなあ」(174頁)といふのはいたづらをした人間の偽らざる気持ちであらう。これもまた「この現実はすべて虚構だ」といふことの一つであらうか。その小説はもちろん虚構で……。
すべて三文字のカタカナタイトルが付けられた怪談集。 「レシピ」が本書の華麗なる嘘の世界を開く。 スイートポテトにココナッツミルク。 言葉だけの印象では何も怖くない。 そして出てくるおばけも怖いわけではない。 それより怖いのは、どこまで妄想なのか、どこまで真実なのか、そっちの方だ。 「クラス」も、...続きを読む同じく虚実ない混ぜの物語だ。 妹を失ったクラスメートの話のはずだったのに、そもそもの前提を全てひっくり返される。 「キイロ」も子供の遊びから始まる怪しげな物の存在。 子供の頃はなんとなく見よう見まねで拝んでみたり、あるいは恐れてみたりする。 大人になるに従ってそれが信仰に変わり…ということを考えると、目に見えぬものに対する畏怖という、原始宗教の始まりを思わせる(解説でも同様の指摘がある)。 これは全部嘘ですよ、と言われても、それ自体が嘘なのでは、という迷宮に入るような物語。 著者の語り手としての力を感じられる短編集である。
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