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21世紀、世界連邦食糧機構の海務庁牧鯨局は、食用の鯨を海で放牧し、人類の食糧需要量の一割以上をまかなうほどになっていた。その海底牧場で、牧鯨者として鯨を管理する一等監視員ドン・バーリーは、新人として配属されてきたウォルター・フランクリンの訓練をまかされることになった。だが、フランクリンにはひとに言えない過去があった……海に生きる男たちの波瀾に満ちた運命を描く巨匠クラークの感動的な海洋SF
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Posted by ブクログ
なんど読み返しただろうクラークの描く海洋SF。 挫折した宇宙飛行士は牧鯨管理員として再生していく。牧鯨というからにはクジラは食料の対象として管理されるわけで、作品が発表されたベトナム戦争以前の思想と現在の思想の違いもあって興味深い。その後の問題についても先読みした議論や騒動もえがかれており、さすがク...続きを読むラークといまさらながらびっくりする。魚類の和名など翻訳上間違っているものもあったりするけれど、加藤画伯版の表紙はSF男子の心を離さない。 それにしても海に行きたいぞ。
こういうのもSFって言うのか! という目からウロコなところから始まり。 さすがクラーク、 これを捕鯨反対の欧米人に読ませたい!!! という点で非常に興奮した一冊です。 基本的にクラークが書くストーリーは末広がりな気がする。 未来はよりいいものである、 と信じていたんだと思う。 主人公も決して不幸...続きを読むにならない。 ような気がする。 クラーク本人はきっとすごくステキな人だったに違いない。
第2次世界大戦終戦直後のイギリス。 積み重なった戦費は戦勝国イギリスの経済を破綻に追い込み、 大英帝国は消滅した。 連合軍によって開放されたフランスや、敗戦国イタリア、ドイツにおいて 食料の配給制が撤廃された後においても英国は配給制が続く有様。 ビーフ・ステーキの代用品として鯨肉が重用されたものの、...続きを読む 庶民のテーブルには鯨肉さえ上らなかったという。 人口が爆発的に増加し、食糧の確保が困難となった近未来。 馬に跨ったカウボーイが牧場で牛を育てたように、 潜水艇で鯨を追い、育てることで食料問題の解決を図るのが 本作品の基本骨子。 著者であるアーサー・C・クラークには戦争直後の、 長引く食料配給制時代の記憶が肌感覚として沁み込んでいたことと拝察する。 彼にとって鯨肉とは、飢餓と貧困の象徴であったことだろう。 昨今の捕鯨感覚とは別次元の発想だったと思う。
海を主体とする小説は少ないけど、そのすべてがいい。 これは、22世紀の海を管理するようになった人間の話。 思ったより話が面白かったので、そこもいい。 こういう想像力はどこからでるんだろう。
食糧(ほか様々な必要物質)の提供者として鯨が飼育されている未来の地球で、宇宙飛行士としてトラブルが起きて精神的に深い傷を負ったフランクリンが立ち直り、いろんな事件を乗り越えて生きてゆく物語。
解説にある通り、これは失われてしまった”理想の未来”である。そういったものを浮かれすぎず、リアリティに徹して、描けるのがクラークの良いところだと思う。 大規模な環境改変という考え方は、21世紀の今日受け入れられるものではないが、懐かしい未来像でもある。 最後の音もなく宇宙船が空に昇っていくシーン。ク...続きを読むラークの描く無限の上昇を表しているようで良いシーンだと思った。
フロンティアを宇宙ではなく海に求めた作品。クジラを食料とすべく海を牧場として育てている。現在から見ると複雑な気分になるが、この事の是非が問われることになる。また、クジラを守るための調査過程で現れる、正体不明の巨大海洋生物の謎が加わる。挫折した元宇宙航空士の再生と、彼の同僚であり親友の死などのドラマも...続きを読む描かれる。このドラマ部分はとってつけたというような感じがするが、海を舞台とするハードSFの単調さを補う助けとなっている。 もっとも興味深いところは、物語の後半で仏教の最高位の人物と主人公の元宇宙航空士とのやり取りだった。人間のためにクジラを殺し続けるか否かという問題である。未来に出会うであろう人間より高等な生物からの視点を示すことでまったく新たな見方が現れる。
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