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独自の生活様式と思想を持ち、過酷な自然の中で生きる「大自然の民アボリジニ」。そんなイメージとは裏腹に、マイノリティとして町に暮らすアボリジニもまた多くいる。伝統文化を失い、白人と同じような暮らしをしながら、翻弄されて生きる人々……その過去と現在を描く。多文化主義オーストラリアのもうひとつの素顔。
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Posted by ブクログ
人類学者の卵だった著者がオーストラリアに滞在し、街に住むアボリジニとイメージのなかのアボリジニのギャップにショックを受けながら、友情を通して〈理想の先住民〉ではない隣人としての姿を少しずつ知っていく過程を綴った体験記。 管啓次郎の『本は読めないものだから心配するな』で紹介されていたので手に取った...続きを読むのだけど、本当にいい本だった。文章は優しくとても読みやすく書かれていながら、オーストラリアに限らずありとあらゆる文化において他者を尊重するとはどういうことなのか、考えるヒントをくれる一冊だと思う。 文化人類学というものがそもそも西洋のアカデミズムに拠っているという問題がある。先住民に〈野生〉の理想を押しつけながら、同時に資本主義的な観点からは〈役立たず〉のレッテルを貼り、社会から排除する。上橋さんの戸惑いもまずはそこから出発する。 一方で、今はもう街に暮らしているアボリジニも親戚の死などをきっかけに伝統社会に引き戻され、魔術師やトーテムがいる世界に入っていってしまうところはやっぱり面白く、興味を惹かれずにいられない。本書で取材対象になっているのは、日本文化の先生としてオーストラリア西部の小学校に赴任した上橋さんが友だちになったアボリジニの女性たちだ。彼女たちは幼い頃を白人が定めた居留地で過ごし、今は街で生活しており、父や夫はもう狩りをしていない。 面白いのは居留地時代がノスタルジーの対象になっていることだ。居留地はそれぞれの共同体が白人の入植前に暮らしてきた土地とは関係なく決められていたらしいのだが、それでもブッシュで動物や虫を捕っていた日々を語る口ぶりはにわかにいきいきしてくる。言葉や文化の伝授を禁止された時期があるせいで親世代と子世代は精神的な分断を抱えており、ブッシュの記憶はその溝を飛び越える大事なものだったのではないか。 日本でもアイヌや琉球の文化を持て囃す一方で、生活リズムの違いや宗教観・家族観の違いには理解を示さない、歩み寄らないという差別の歴史があると思う。「物質社会 VS 精神世界」だとか、「先住民の生き方こそが"本当"なのだ」とかいう話じゃなく、他者や他文化を理想化せずに尊重するにはこれから世界はどう変わっていかなければならないのか、と優しく問いかける一冊。
上橋菜穂子さんの研究者としての側面がうかがえる本。 実際に何度か現地に滞在して行った調査から、アボリジニの人たちの歴史、文化や民族集団としての復興の労苦などがわかる、 それと同時に、日本人とはまた違った家族のつながりや親族集団の構造などについても説明があり、非常に興味ぶかい。
隣のアボリジニ 上橋菜穂子 筑摩書房 小説家で有名な文化人類学者によるフィールドワークのお話 先住民は遠くに在りて思うもの という意味から上橋さんは学者の調査研究としてではなく 海外派遣の教師という立場でオーストラリアに潜入して アボリジニの生徒がいる小学校を選びました 日々の暮らしの中でで...続きを読むきるだけ対等な関係のお付き合いから 彼らの伝統文化と現状の中での生き方を吸収しようと考えたようです この本の全体を通して 客観性を保ちながらも心の機微に注目している様子がうかがえます 歴史を戻す訳にはいきませんし現状を受け入れた上で 過去も精算しつつ今から迎える未来を個人の単位でいかに棲み分けて お互いを補い合いながら信頼感を育て自由自在性を確保できるかという 壮大で視野の広い意識を目指して 個々の存在と全体の調和を模索し続けることなのだと思う
「守り人」シリーズの上橋さんが文化人類学者とは知っていましたが、そのお仕事ぶりを描かれた本があったとは知りませんでした!守り人シリーズとちがって、ハードでシリアスな現代のアボリジニの生活。しかもこの新版の文庫の解説はなぜか池上彰さんです!
「異文化交流」「異文化共存」。 あまりにも手垢にまみれた感のあるこの言葉。 それぞれの言葉が持つスローガンは高尚なものだと思うし、決してそれらを否定するものではないけれど、その実現となると絶望的なまでに多くの問題を孕むものなんだなぁ・・・・ということを改めて再認識しました。 極論すれば異文化が...続きを読む共存するために必要なことは「侵略なしの相互不干渉」しかないのではないか・・・・と。 だいたいにおいて「農耕民族」と「狩猟採集民族」が同じ道義で生きているはずはないし、「土地を所有する」という考え方がある民族と「土地はみんなのもので個人に属すものではない」という考え方がある民族が同じフィールドに立てば摩擦が起こるのは必至なわけで・・・・・。 (中略) はっきりしていることは、文化が違う者同士が接触する際に、決してそこには誰もが納得する「絶対的な優劣」は存在しないということを自覚するべきであるということだけなんだと思うんですよ。 例えば文化的な生活を営む私たち先進国の人間は、とかく原始的な生活を送っている人たちを「歴史の発展から取り残された可愛そうな人たち」とか「ある種のノスタルジーを感じさせる貴重な(稀有な)人たち」と考えがちだけど、それは自分の物差しだけで物事を見ているちっちゃな考え方だし、彼らからすれば余計なお世話なんだということをきちんと自覚すべきなんだと思います。 でも悲しいことに人類はその歴史の中でこのことに関して無自覚な行動を繰り返してきたし、その結果として今も尚世界のあちらこちらに「民族問題」「人種問題」を抱え続けています。 そしてそれを何とか解決しようとする善意の活動であってさえもその多くは「上から目線」で解決策を模索しようとしているような気がしないでもありません。 (全文はブログにて)
実は現代思想の入門書にもなっている。(勿論「アボリジニ」はそんなもののために存在しているわけではないが) 中学入試でここから出題しても良いのではないだろうか。
この本はアボリジニについて書かれた本ですが、いわゆるステレオタイプのアボリジニではなく、白人社会の中で、白人とともに暮らす人間味溢れるアボリジニの姿が描かれています。 文化も言葉も独自のものが薄れて生きながらも、力強く生きている姿は在日コリアンと重なる部分も多く、心強く感じます。 世界のマイノリティ...続きを読むの存在や先住民の問題にも興味がわきます。 考えさせられる本ですが、とっても読みやすかったのでおすすめです★
この前に読んだ本が、これから日本語(日本文化)が亡びるであろう事を憂いた本でしたが、こちらは現在進行形で亡びの道を歩んでいる、そして既にその一部は亡びてしまった言語・文化についての本。 そしてこの本は、旅行会社の宣伝に登場するような昔からの伝統文化を守っている人々ではなく、白人達と同じ町に暮らす...続きを読む人々を描いたものでした。 非常に興味深く読みました。 まず、“アボリジニ”という言葉が英語の“原住民”という意味の単語から出来た言葉だったという事にとても驚きました。 彼らはそれぞれ250以上もの(方言を含めると600程になるそうです)全く言葉の違う集団であったのに、それを、例えば顔の見分けが付かないからといって、日本人と韓国人を同じ民族だと一括りにしてしまったような、乱暴な言葉だったそうです。 それがだんだん、アボリジニの人々自身が、白人に対して、自分達は言葉が違っても同じ先住民仲間だという自称としても使われるようになったとの事。 彼らと日本人を簡単に重ねる事など本当は出来ないのですが、私は読んでいてどうしても、白人の町に暮らす彼らと、私達の生活が似ているように感じて仕方ありませんでした。 またそれとは逆に、今の白人の若い人たちがアボリジニに対して抱く気持ちが、日本人が中国人・韓国人に対して抱いている気持ちに本当に似ているとも思いました。 さらっと読み終わってしまいましたが、まだまだ書き切れない程、そして上手く言葉にはならないような事も色々と考えさせられました。 でも更に、この3倍も4倍ものボリュームで読みたい本でした。 この本は10年前に書かれたものですが、その後の10年で、町に住み白人達と一緒に暮らしている彼らの生活に、何か変化はあったのでしょうか。 著者は今は作家業の方が忙しく、フィールドワークにはもう殆ど出ていないそうですが、もっともっと、文化人類学者としての著作も発表してくれたらと、強く願います。
本書を読んで、アボリジニのイメージが、非常に変わりました。町に住むアボリジニが、どのように悩み、苦労しながら生活してきたのかがよく分かりました。アボリジニの伝統を抱えながら、白人社会の中で生活する難しさ、そこから生じる様々な問題もありますが、明るく楽しく生活している隣のアボリジニが増えることを望みま...続きを読むす。
上橋さんの描く物語の文化の繊細さや作り込みの奥深さは、こうした異文化との交流の経験とそれに基づいたリスペクトがあるからこそ、生まれているのだと感じた
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隣のアボリジニ――小さな町に暮らす先住民
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上橋菜穂子
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