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ようやく新人賞はもらったものの、執筆に行き詰まっている作家の孝夫は、医者である妻・美智子が心の病を得たのを機に、故郷の信州へ戻ることにした。山里の美しい村でふたりが出会ったのは、村人の霊を祀る「阿弥陀堂」に暮らすおうめ婆さん、そして難病とたたかっている明るい娘・小百合ちゃん。静かな時間と豊かな自然のなかで、ゆっくりと自分を回復してゆく二人が見つけたものとは……。極上の日本語で語られる、大人のためのおとぎ話。2002年秋、映画化原作!
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Posted by ブクログ
心を病んだエリート医者の妻と作家兼ほぼ主夫の主人公。田舎っていいな。闇雲に頑張り続けることだけが人生ではないと思った。
新人賞だけは取れたがそれ以降鳴かず飛ばずの作家。将来を嘱望される女医。2人はいろいろありながらも寄り添い夫婦として生きて来た。40歳を超え、妻が心を病んだ事をきっかけに生まれ故郷の長野の寒村に移住を決めた。 自分ではどうしようも出来ない心の病と対峙するのではなく、心休まる風景や人々の中で自分を取り...続きを読む戻していく妻の姿にこちらも次第に心の奥がほぐれてきます。実際とっても心が広くて優しくていい女です。緑の山に囲まれていきいきとして来る姿がとってもチャーミングです。 阿弥陀堂のおうめ婆ちゃんが可愛らしく、一度も村を出た事が無く、数十年阿弥陀堂の周辺だけで生きているのに、毎日の生活を大事に生きている姿に胸打たれます。何度読んでもいい本だと思います。また記憶から削除して数年後新たな気持ちで読みたいと思います。そう、いい本であるほど読んだ事は覚えておいて、内容はすっかり忘れる。これがベストです。
読後感がとてもさわやかだった。 救いのあるストーリーで、物語が見事にまとまっている。 間違いなく名作、誰にでもお勧めできる。 この作品に出会えたことに感謝。
南木さんはダイヤモンドダストで芥川賞を受賞していますが、私は今回初めて彼の小説を読みました。 現役のお医者さんのようです。(10年前の古本なのでその時点で・・) 古本屋さんでこの本を手に取ったのは、この小説を原作とした映画 同名の”阿弥陀堂だより”の紹介を小冊子で読んだばかりだったからです。ロケ地は...続きを読む長野県飯山市、日本の原風景と表現される里山の風景がそのまんまで、映画を観ていまだに訪れる人が絶えないようです。 主人公の孝夫は何もない農村地帯の故郷に育ててくれた祖母を残し上京し、高校時代の同級生だった美智子と結婚した。作品が書けない作家の孝夫と有能な医師の妻・・妻のこころの病気をきっかけに故郷の信州の村に移り住むことになる。祖母は死去したが、故郷にはその村人の供養をする阿弥陀堂を守るおうめ婆さんがいた。おうめ婆さんの話を書き留めて村の広報誌にコラムを載せる小百合ちゃん。小百合ちゃんは大学生の頃、病気で声が出せなくなった。筆談でかわす二人のやりとり・・ 妻の美智子の病気は村の自然と人に癒され良くなるが・・ 映画ではおうめ婆さんの役は当時91歳だった北林谷栄さんであるとか。 主人公役は寺尾聡であるようだが、妻の才能を認めて主夫役に徹する辺りはなかなか並みの男性では到達しない心境かと好感を持ちました。果たしてこの作品を書いた南木さんのお人柄と一致するのではないかと想像するのです。 珍しく小説を読んでからDVDを観てみようかと思うのでした。
私が南木さんを読み始めるきっかけとなった作品。SNS「やっぱり本を読む人々」の100冊文庫企画に推薦するために再読しました。 特筆すべきは96歳の老婆・おうめが小百合に答える言葉の数々でしょう。それを語らせるために、この物語は書かれたのではないかと思います。 『目先のことにとらわれるなと世間では言...続きを読むわれていますが、春になればナス、インゲン、キュウリなど、次から次へと苗を植え、水をやり、そういうふうに目先のことばかり考えていたら知らぬ間に96歳になっていました。目先しか見えなかったので、よそ見をして心配事を増やさなかったのがよかったのでしょうか。それが長寿のひけつかも知れません。』 そして、最後の写真。 全体に暗く重い南木作品の中で、これほど一点突き抜けた明るさ、野放図な力強さを感じさせるシーンも有りません。これがこの作品の力の元なのだと思います。 ======前回(05-006 2005/01/12 ☆☆☆☆☆)======= なんか見た題だなと思っていたら、映画化されてたんですね。 孝夫と美智子。そして村の先祖の菩提を弔う阿弥陀堂の老婆・おうめ、難病を抱えた娘・小百合。皆、キャラクターが立っています。おうめの訥々とした言葉も染み込みます。欠点といえば、全体に「出来すぎている」という感じがすることでしょうか。 そしてラスト。明るく大らかで、なんとも美しい一枚の絵。 別の見方ではちょっと不思議な作品でもあります。主人公が売れない作家という設定のせいもあって、「xxxでなければならない」といった小説論が所々に出てきます。そして、それを守るかのようにこの小説は書かれています。ちょっと変わった構成だと思います。
小説家として結果を出せず苦しむ夫。優秀な医師として多忙な妻。都会で支え合いながら生活する中、妻は心を病んでいく。夫の故郷信州の山村に戻る決意をする。そこは、母を亡くし父が家を出た後、祖母と二人、自然と共に暮らした懐かしい場所だった。 都会で傷を負った二人に自然は懐が深い。妻は、以前の笑顔を取り戻して...続きを読むいく。 タイトルの「阿弥陀堂だより」は、地元の病気で声を失った女性が“阿弥陀堂守”のおうめお婆さんに、インタビューし、その言葉を広報誌に連載している小エッセイからきている。お婆さんの飾らない、自然に同化した言葉は、人を導く力がある。 夫婦はこの山村で人生を過ごす土台を作る。生きていく為の足るを知る。 読後感が心地良い。最後に、この女性たちを写真に撮るのだけれど、あらゆる年代が揃って生活できるというのが望まれる社会なんだろうなぁと思う。
難病の小百合ちゃんがおうめ婆さんを取材して村の広報に掲載する『阿弥陀堂だより』の短くも優しい記事文が、疲れた心に沁みてくる。 医師である主人公の妻の心を病むまでの仕事ぶりはすごいし、売れない作家でダメな感じと見える主人公の、故郷の山に移住して妻を再生させるまでの献身ぶりは素晴らしい。 ダイヤモンドダ...続きを読むストと違い、結末が死ではなくそれぞれの障害を乗り越えて生きていく、と言うのがまた良かった。
新聞で南木さんの書いた文章を読み、興味を持って読んだ。 コロナ禍の中で重たい内容ではあったけど、最終的には晴れやかな気分になったのでよかった。生と死、死生観。所詮、人の命も自然の一部の流れ・・。 まあ、でも次は軽めの小説を読みたい気もする。
小さな山奥の村、その山里の山の方の阿弥陀堂に暮らす老婆。祖先の霊を守ってくれる老婆にお礼として、老婆には食糧が運ばれる。 40年、50年この閉ざされた風景から一歩も外に出ないで暮らしてきた老婆。 都会で精神的に病んだ妻と売れない作家の自分。口の聞けない若い女性。圧倒的な大自然のなかで、生きるとは何か...続きを読む、考えさせられる名作。 田舎で暮らし、病気と単なる身体の故障の違いとは、心が病んでるかどうかであると気づく妻。 深いですね。
地に足がつく….というか、土地に根付いて身も心も健全に生きたくなるな。 『器に合った分の、それもなるたけいい話を聞いていたい』 このSNS時代にグッと来る言葉だ。
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