作品一覧
-
3.3文学と医業という二足の草鞋を綱渡りのように穿いて四十余年。 総合病院を定年退職し、今は非常勤医師として働く著者が、近年の己を題材に編み上げた四篇。 「畔を歩く」:定年退職を機に、うつ病を発症してから負担の軽い健康診断担当になり、 時に肩身が狭い思いもしながらも、しかし生き延びるためには文筆を止める訳にはいかなかった日々を回想する。 おさまらぬ気持ちを、畔をしっかりと歩いて宥める。 「小屋を造る」:同年配の地元の男らと山から木を伐り出し、簡素な小屋を建て、焼酎で乾杯する。 「四股を踏む」:定年間際の診療で、超高齢の女性患者から、処女懐胎の体験談を聞く。 「小屋を燃す」:六年前に小屋を建てたのと同じメンバーで、老朽化した小屋を壊す。 といっても、二人の男は先に逝ってしまっていた。 解体跡で飲み食いを始めると、死んでいるはずの者たちが次々と現れる。 ※この電子書籍は2018年3月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
-
4.11巻550円 (税込)ようやく新人賞はもらったものの、執筆に行き詰まっている作家の孝夫は、医者である妻・美智子が心の病を得たのを機に、故郷の信州へ戻ることにした。山里の美しい村でふたりが出会ったのは、村人の霊を祀る「阿弥陀堂」に暮らすおうめ婆さん、そして難病とたたかっている明るい娘・小百合ちゃん。静かな時間と豊かな自然のなかで、ゆっくりと自分を回復してゆく二人が見つけたものとは……。極上の日本語で語られる、大人のためのおとぎ話。2002年秋、映画化原作!
ユーザーレビュー
-
Posted by ブクログ
表題作のダイヤモンドダストについて。
主人公の和夫と今この文章を書いてい僕とでは、「死」との距離感がずいぶん違っているよなと思う。僕にとって「死」はまだ遠い存在で、祖父母を除けば自分とごく近しい人の「死」というものを経験したことがない。母方の祖母は「死」というものを理解できていないような時に亡くなってしまったし、2人の祖父の死はあまりにあっけなく、見送りもあまりに静かで、この世で長年生きたとしても最期は結局こんなものかという虚しさだけが残った。「生」の一番端っこにある「死」が虚しいのだとしたら、いったい「生」に何の意味があるというのか。「死」そのものよりも、「死」の前に流れる「生」の時間がか -
Posted by ブクログ
ネタバレ「映画は小説とは全く別のものですから」
南木さんはそれだけ言い、小泉監督に映画化を快く了承したそう。
両方好きな僕には言い方が引っかかる。
寺尾聰を追いかけて、映画→原作と進んだ10数年前とは逆に、今回は、原作→映画と進んでみた。
たしかに、南木さんの言い方もわかる。
でもそれは、映画(映像)と文字(連想)の表現方法の違いかも。
この映画がすごいのは、原作そのままの描写•セリフを点と点にして、その間を、原作を損なわないギリギリの演出で繋ぐ。
原作の延長線上に、キャラクターを創出していたりもする。
これは原作に惚れ込んだ人(監督)にしか成し得ない業。
原作も映画も極上。
でも