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外交官として北方領土交渉の第一線で活躍した著者が、人間の本性を知り尽くしたインテリジェンスの技法を明かす。「私が体験したハニートラップ」「酒は人間の本性を暴く」「賢いワイロの渡し方」「上司と部下の危険な関係」…。スパイがカネやセックスをどう利用するか。外務省・松尾事件や小渕とプーチンの真剣勝負。ビジネスマンのための実用書としても役に立つ、第一級の教科書。その“実用篇”ともいえる「東日本大震災と交渉術」の一章をあらたに書き下ろした増補版!
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Posted by ブクログ
読んでいて怖くなりました。 日露平和条約の締結と北方領土問題を阻んだものは何であったのか。 あゝ、今少しで失われし国土を取り戻すことができたかもしれず、非常に残念です。 巻末にひっそりと語られている鈴木宗男氏の杉原千畝の名誉回復に始まる国際協調 佐藤氏と築いた、唯一、プーチンにいつでも会える政治家...続きを読むとしての、鈴木宗男氏。 チェルノブイリの支援を含めた、ロシア、中央アジア、アフリカ諸国、イスラエルとの関係を戦略的に強化しようとした鈴木宗男氏の構想。 それらが外務省のアメリカスクールで、いやアメリカそのものを刺激してしまったのでしょうか。 気になったものは以下です。 ・「貴様嘘をつくな!」といえば、相手も「なに!」といってけんかになる。ところが、「お互い正直にやりましょう」といえば、誰も嫌な思いをしない。日本人にはこの使い分けがわかっていない。 ・交渉術は、善でも悪でもない、価値中立的な技法である。したがって、交渉術においては、物事の本質を見極める洞察力よりも、道具的知性の方が必要とされる。 ・インテリジェンスと交渉術は、不即不離の関係にある。 ・ターゲットの論理を深く知ることは、交渉術の要諦の一つである。 ・広義の交渉術には3つのカテゴリーがある。①交渉をしないための交渉術、②暴力で相手を押さえつける交渉術、③取引による交渉術 ・交渉の世界に完全に対等な立場はない。お互いに少しでも有利な立場を獲得するために交渉で、虚々実々の駆け引きが行われる。 ・だます者が悪いのではなく、だまされる者が間抜けなのである。 ・インテリジェンス機関は、心理学、動物行動学を汚い交渉術を組み立てる上での基本として重視している。 ・実際の工作においては、人間は保守的に行動することを前提とする。つまり、動物でありながら、愛や名誉を重んじ、対面を気にかけ、社会的慣習に縛られるという人間の矛盾が、こちらのつけ込むスキとなるのだ。 ・人間が本気で怒るときは、全く事実無根の話で名誉を傷つけられたか、知られたくない事実を暴露されたときかのいずれかである。 ・自分にとって都合の良くない秘密の話の9割は本人の口からもれる。 ・直接カネを渡すより、相手が必要とするサービスに対して、費用を肩代わりするというのが案外効果がある。相手の配偶者や子供が病気になったときの医療支援は人間的信頼関係を強化する上で大きな効果をもつ。命を助けてくれるために協力してくれた人に対する恩義は、たとえ手術が失敗しても忘れない。したがって、熟練したヒューマン・インテリジェンスの専門家は、名医とのネットワークを必ずもっている。 ・拷問のやり方でもっとも効果的な手法は、被尋問者には暴力を一切与えずに、目の前で被尋問者がもっとも愛する人、妻や子供に対して拷問を加え自白を迫る手法である。 ・難しい仕事には2つの種類がある。一つ目は、仕事の内容自体が難しい話、二つ目は、仕事自体は、それほど、困難なことではなないが、政治的な事情で面倒な話だ。 ・嘘が露見したときにとる方法は2つある。第一は、嘘をついたことを認め、相手に詫び、嘘をつかざるを得なかった事情について説明をすること。第二は、嘘はついていないと怒って見せることである。 ・情報屋の修正は私自身が情報屋なので、だいたいわかる。会談相手に関する情報を徹底的に集める。特に相手以上に相手について知っているということが、交渉で有利な立場を確保するためには不可欠だ。 ・トップは孤独に耐えなくてはならない。むしろこのことは裏返しで表現すべきだ。孤独に耐える資質がある者でないと、トップにはなれないのである。 ・何も見返りを求めず、相手の懐に入ることによって、自己の利益を最大化するのが交渉の弁証法だ。 ・ほんとうの取り引きとは、取り引きということを相手に悟られずに行うものだ。 ・ゲンナ元ロシア国務長官に言われたことは2つだ。1つは、過去の歴史をよく勉強しろ。現在、起きていること、また、近未来に起きることは、必ず過去によく似た歴史のひな形がある。それをお押さえていれば、情勢分析を誤ることはない。2つ目は、人間研究を怠るな。その人間の心理をよく観察せよ。特に、嫉妬、私怨についての調査を怠るな。 最後に”大和魂”という言葉を核に という言葉がありました。 明治天皇の御製 「しきしまの やまと心の をゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」、意味は、日本人の勇気は日本国家に一大事が起きた時に発揮されるという意味 東日本大震災の折に、天皇のビデオメッセージは、終戦時に玉音放送に匹敵するとのコメントをしめしています。 目次は以下の通りです。 1 神をも論破する説得の技法 2 本当に怖いセックスの罠 3 私が体験したハニートラップ 4 酒は人間の本性を暴く 5 賢いワイロの渡し方 6 外務省・松尾事件の真相 7 私が誘われた国際経済犯罪 8 上司と部下の危険な関係 9 「恥を棄てる」サバイバルの極意 10 「加藤の乱」で知るトップの孤独 11 リーダの本質を見極める 12 小沢vsプーチンの真剣勝負 13 意地悪も人身掌握術 14 総理の女性スキャンダル 15 エリツィンの五段階解決論 16 米原万里さんの仕掛け 17 交渉の失敗から学ぶには あとがき 東日本大震災と交渉術
私達が気軽に使える交渉術を披露する、という本では決してない。ただ、人間というのは、特にインテリ層はどういう生き物で何を考えているのか、ということを知るには最適な書籍。いつもながらではあるが、著作の、読む人をグイグイ引き寄せる文章力はさすが。 人間を知るには、司馬遼太郎か佐藤優か、というのは確実に言い...続きを読む過ぎだろうが、そのように感じてしまった。
交渉術という直接的な言葉に惹かれて読み始めたが、意識は別方向へと飛ばされていった。 佐藤氏の置かれた立場の当時の隣人として立ち会っているような錯覚にとらわれていた。 また、エッセイを読んでいるような思いも覚えていた。 佐藤氏も書かれていたがこれは失敗が記された書であると‥ この書から交渉術を身につけ...続きを読むようと思ったら何度も熟読せねばならないような気がする。 しかし、面白い!
『交渉に絶対勝利することができる確実な技法を身につけることはできないが、交渉術のある種の原則と具体的な事例を研究すれば、交渉に勝利する可能性はかなり高くなる。 この点について、これからアルコール、セックス、カネ、ポストなど人間がもつ欲望を分析して、交渉能力を強化する方策について考えてみたい。』 ...続きを読む交渉術を「交渉をしないための交渉術」、「暴力で相手を押さえつける交渉術」、「取り引きによる交渉術」に分類して、特に取り引きによる交渉術について分かりやすく説明している。綺麗事やロジカルな話ではなく、人間の感性に働きかける視点での説明は興味深く面白い。
タイトルは交渉術でも、これは ほとんど佐藤優の経験が詰まった実社会の お話、もしくはハードボイルドのような 読み物です。 ロシアでは殺人以外のたいていの犯罪は、秘密警察で もみ消すことができることや、 世間でイメージされているハニートラップなどは 現実にないことなど、情報も満載。 何より、外務省...続きを読むとして働いている雰囲気が ビシビシ文面から感じられてきます。 一国の総理大臣に対して説明をすること、それで 国の流れが変わるのですから、その緊張感や 正確性の必要さなどは相当なものでしょう。 自分の仕事を顧みると、こんな状況下になることなど ありませんからね。 男の仕事とは、を考えさせられる優れた 自己啓発書と言えるのではないでしょうか。 佐藤本でおなじみの、外務省の西村課長が どういう状況でアルマジロになったかも、 リアルにわかります。 嘘を突き通そうとしても、上司(鈴木宗男)に 見破られたときにアルマジロのように転がる。 実は、これも立派な逃げ方(!)だったのですね。 個人的には、佐藤本のベストです。
著者の具体的体験談を中心に述べられており、交渉術のハウツー本では無いが、その具体的事実の背景にある、交渉に関するエッセンスを読み解いていく事で、交渉術のノウハウを見つけていく面白い読み方ができると思う一冊。
読み応えあった。通勤往復の車内のみで読んでいたが、丸々1か月間かかってしまった。交渉術というタイトルだが、ハウツー本というよりは、著者の外務省在勤中のエピソードが中心になっており、一連の佐藤優の自叙伝の一つ。改めて、すごい仕事をしてきたことに圧倒された。
外務省での事例に学ぶ『交渉術』です。応用が効く人なら活用できるだろうが、簡単に適用できるHow to本のつもりで読むと目的とは異なるだろう。 純粋に外務省の外交交渉を垣間見る本としては読みやすく楽しいです。
この本を読むと、日本のインテリジェンス(スパイ術)も結構なものがあるなと思える。ただそれが、外務省にあるのが意外であり、また、主にその力を外交ではなく、自省の権益確保と自らの昇進に消費してしまっているところが残念であった。この本は2009年の本だが、いまでもこのインテリジェンスは保持できているのだろ...続きを読むうか?目に見えないことから、意外と保持できているのかもしれない。というか、そう思いたい。
元ロシア外交官の佐藤優による回顧録。 とかく政治家や官僚に対して潔癖であることを求めがちであるが、実際のインテリジェンスの世界は一筋縄でいかないことがよくわかった。
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