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1995年、雷都・宇都宮。高2の達也は東京に憧れ、広告業の父はアンプの製作に奮闘する。父の指示で黎明期のインターネットに初めて接続した達也は、ゲイのコミュニティを知り、おずおずと接触を試みる。轟く雷、アンプを流れる電流、身体から世界、宇宙へとつながってゆくエレクトリック。新境地を拓く待望の最新作!
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Posted by ブクログ
短編で川端康成文学賞の受賞経験のある著者。そして今回は芥川賞候補作品の今作。 たしかに捉えどころがない感は川端康成の小説を読んでいるときの、それと近い。 著者とは同い年のため、1995年の頃のバブルが弾けた後の社会のざわついている感じや、インターネット黎明期という未知のものへの期待感、それに逆行した...続きを読む古いものへのノスタルジーは、肌で感じたので懐かしさを感じた。 ただ、著者がこの作品で何を言いたいのかはうまく読み取れず、、、。 著者が哲学者である所以か、再読しないと掴めなそう。
「デッドライン」「オーバーヒート」と進み、今回は主人公が高校生。「デッドライン」で孵化しかけて、「オーバーヒート」で蝶々になって、この「エレクトリック」はさなぎという感じ。高校生なので家族と住んでいて、そのかかわりを丁寧に描く。最後には自らを目覚めつつある性への扉に近づく。 舞台は宇都宮。雷都に雷...続きを読む様、なじみのある土地なので、主人公の鉄道沿線の家とか、最後の繁華街の描写は、あそこらへんなのか?などと想像してしまった。また主人公の家は街の中心部からは少し離れていて、中心部に行くことを「街へ行く」といっているのは、同じだなあ、などと思った。 2023.5.31発売 「新潮」2023.2月号掲載時に読んだ。
まずはじめに否定しておきたいのだが、この作品の紹介で、男性同性愛者と知り合う(かもしれない)男子高校生、という記述があり、この作品はその様な事象を主な題材とした作品なのか?、と捉えてしまいそうになるが、それは作中の主人公の好奇心の一端であり、決してそれが主題では無い。 主題、と言うか時代背景、は1...続きを読む995年という極めてピンポイントな「年」である。この「年」を通過した者なら誰もが実感するように、年初から立て続けに大地震、テロ事件、が起き、そして何よりWindows95が世界中で発売されて一部の者はその「世界中」と繋がりうる「インターネット」の可能性に大いに心震わせた「年」である。 主人公の多感な高校生は、比較的裕福で温和な家庭の中で、父親の職業を通じて、また自分の学校生活、あるいは兄弟(妹)との関係…等と、先に書いたような社会環境、の中で、かつて多感な思春期時代を過ごした者なら誰もが感じ得たような経験、興味、を示して日々を過ごしていく。またそのツールとして今でこそ当たり前になったインターネットが存在し、一般的になろうとしていた、事が実に興味深い。当時はまだ駅に伝言板はあったはずであるし、ファックスは当たり前、カメラも一眼レフかポラロイドくらいでしかなかった。私ごとにはなるが、その様な時代背景を私はちょうど転職をして、一気にデジタル化を進めようとする地方の一企業のデジタル化推進担当社員として、過ごした。この作品の主人公と同じように、時代が、コミュニケーションの方法が、変わっていく事を仕事でも遊びでも、大いに実感していた。その様な私の個人的な思い入れがあるからこの作品を楽しめた、という部分はあるかもしれない。 作中では決してそういった時代背景の描写だけでは無く、個性的な家族、また登場人物一人一人のある種、軽薄なディテール(ポルシェに乗ってやってくる女であるとか)も、読む者が頭の中でそれを思い浮かべるときに興味を抱く事ができる材料なのでは無いかと思う。 最後まで読んで複雑などんでん返しがある様な作品でも無いと思う。ただ決して言いようのない不快感とか、逆に高揚するハッピーエンドといったものもない。では何が面白いのか?、先に書いた様に私が同じ時代を主人公の高校生の様な何か言いようのない高揚感を抱いて過ごしたから、この作品を特別面白く感じたのかも知れない…。
つい先日、金原ひとみさんが編んだ『私小説』で覚えたばかりの著者のことを、ポリタスの石井千湖さんが紹介していたので読んでみることに。 小説の舞台となった時代、大きな出来事が起こったあの年のこと。激しい雷鳴やインターネットの接続音が聞こえ、土地勘のある宇都宮の景色‥当時、暮らしの中で見聞きしたニュース、...続きを読む感じていた希望や不安などが次々に目に浮かぶようで一気に読んでしまった。
ギリ幻想じゃない平成について、懐かしさと憧れを感じてしまった。エヴァをリアルタイムで触れる高校生。それらの固有名詞に一定の距離感を持ってる感じも、潔さがあっていい感じもした
1995年、この年は本当いろんな出来事があった。 地下鉄サリン事件、阪神淡路大震災など、目まぐるしく変わる日常のなか、本作は、そんな時代背景をもとに、東武宇都宮駅中心に物語が進んでいく。主人公達也は、父、母、妹の4人家族で高校生だ。父は、広告業で、自分で会社を経営している。ある時、父は取引先のために...続きを読むアンプ制作を実行するために、インターネット接続を達也にまかせた。当時はネット黎明期、そこで、達也はある コミュニティを見つける。自分の新たな扉が開かれる。第169回芥川賞候補作。
うわ、難しい。勉強ができる男子高校生。実体験に基づいている部分もたくさんありそうな具体的なエピソードの数々。父の会社の動向、自分の性的傾向への疑問、ややヒステリックな母の不可解な怒りのトリガー等。一触即発のような何かが変わりそうな不穏な雰囲気が漂っている。雰囲気は好き。
特に何と起きずに終わる。割とゆったりした話。野村さんは一体どうしたのか。父との微妙な敬愛しているが微妙な関係と揺れ動くセクシュアリティが描かれる。
高2の頃の、子供と大人の間にある不安定な時期に感じる微細な違和感や感覚などが言語化されているように感じた。
バラバラの部品、でも確かに一つの何かを構成するものを都度都度渡されて組み立てる。もちろん順番通りではなく、形にハマらない時は見送って次の機会を伺う。ような、全体を通してエレクトリックなもので、順次増えていく部品のような物語たち。しかし、僕には上手く組み立てることができなかった。
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千葉雅也
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