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衝突事故直前の車載AIが最後の審判を繰り広げる八島游舷「Final Anchors」、恋人の死体を盗んだ女が超常の存在へ愛を問う斜線堂有紀「回樹」、大正時代の屋敷で少女二人の運命を怪死事件が結ぶ芦沢央「九月某日の誓い」、徳川光圀の命を受けた学者たちが和歌コンピュータを発明する夜来風音「大江戸しんぐらりてい」など、新世代作家たちによる書籍化前の傑作14篇。伴名練によるSF入門14本を併録の超大型アンソロジー
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SF小説入門書
SF小説に詳しくない人におすすめできる1冊。 14のテーマごとに1作品ずつ掲載し、関連する作品の紹介をしてくれる。 普段SF小説を読まないので様々なジャンルに触れて、気に入った作品に類似するものを知れるのは有り難い。 私も何作品かフォローした。 掲載作は初心者にも読みやすいように感じる。 幾度か...続きを読む検索は掛けたが、難しすぎて挫折することはなかった。 短編小説だが14作品もあると読み応えがある。 当然合わない作品も出てくるが、そこは仕方ない。 ・Final Anchors ・九月某日の誓い ・夜警 この3作品が特におすすめ。 読み進める手が止まらなかった。
#アツい #ドキドキハラハラ #怖い
Posted by ブクログ
SFアンソロジー。 一つ一つの話のテーマが紹介されていて、同じテーマの他の作品も紹介されている。 自分が読んだことのあるタイトルが述べられていると少し嬉しい。 一見同じ世界に思えるけど、少しずつ違う世界の片鱗が見えてくるお話が好きだなと気づきました。
これからのSF界をになっていくであろう14人を編者が選出してテーマを別々に短編を集めたもの。まったく知らない作家のものばかりで、とても楽しめた。それぞれの作品のあとにテーマにかんしての解説があるのがありがたい。
現代2020年代の新進作家のSFを集めている点が興味深い。「SF初心者にこそ読んでほしい」という意図は伝わるが、SF好きが読んでも難しいものが多い。とても一般的とは言い難い。 個人的に楽しく読めたのは、以下4編。 ・八島游舷『Final Anchors』 王道SFど真ん中直球。AI同士の論理対決...続きを読むが熱い ・斜線堂有紀『回樹』 SFはシナリオと設定重視のものが多いがこれは人間の心理と心の機微が描けている恋愛もの ・高橋文樹『あなたの空が見たくて』 最初の数ページで特徴的な異星人が登場し、その世界観が想像される。物語には絡まないがワクワクする ・坂永雄一『無脊椎動物の想像力と創造性について』 クモの生態が、人間よりも環境に順応で進化に適しているという話。人類後の地球はクモ類の世界になるかも 800ページと分厚いが、編者はこれでも足りないそうだ。それを埋めるかのように、各短編のあとにコラムのように大量の同ジャンル小説を紹介している。主に日本のそして最近のものまで網羅しているからスゴイ。そのコラムを読むだけでも価値がある(★プラス1)。さらに、今SFを読むならここという雑誌とウェブも記載。頭が下がる。
圧倒的ボリュームにまずは驚く。なんなら、同じボリュームでもう一冊出しかねない、編者の情熱には拍手だが、SFを巡る出版状況がよほど良くなったようで、これも嬉しい。少し前まで、SFは売れない、と断定口調で語る「識者」がいたものだけれどね。肝心の収録作だが、玉石混交などとは言うまい。とはいえ、作品の傾向が...続きを読むバラバラなので、好みははっきりと出るようだ。息を呑むレベルの傑作もあれば、何が書いてあるか分からないなどと思わないが、物語としての勘所がさっぱり掴めない作も多かった。個人的には「九月某日の誓い」、「大江戸しんぐらりてい」、「くすんだ言語」あたりが好き。「もしもぼくらが生まれていたら」は完全に技巧で、この書き方をしたのならすごすぎる。ベストは「禁断の惑星」を連想してしまった「夜警」。
ここ5年間に発表されたSF短編の傑作集。まだ単著を刊行していない作家限定、新人SF作家たち。70年代以来の黄金時代を迎えつつある日本SF界、その歴史を10年早めるためのアンソロジー。 各作品の後に掲載されているコラム、短編と同じく14点がすごいです。たくさん名前があがっているSF、読んでみたいと思...続きを読むわせられます。コラムは最初の方しか読み切れていませんが。。
全て読み切ったわけではないので、当てにならない評価ですが。 人工知能が登場する小説が好きで、この作品にも収録されていると聞いたのでそこだけ読みました。 期待外れとはいいませんが、イメージしてたのと違うなと思いました。 面白かったといえばそうなのですが、結末が予測できるものだったので、新しいワクワ...続きを読むク感はありません。どんでん返しも無し。 ふむふむ、そうなるよね。という感じで読み終わりました。 全部読めば感想が変わると思いますが、あまり興味が惹かれなかったので読んでません。
超分厚い。新人作家のアンソロジーなので14冊が1冊にまとまっていると思えば。 普段、自分では手に取らないようなものがサブスク的に供給されて読むことは興味深い体験だ。形としてはアンソロジーであるが、様々なSFのジャンルの解説にもなっている。新人作家の気合が入った表現も面白かった。とくに、切れ味の良い...続きを読むオチが優れる作品が多い。
文庫本の800ページ…。久しぶりに一冊で3日目突入してしまいました。SF好きな人や、これから読んだり書いたりしたい人には、同じ系統の過去作品のこれでもか!っていう量の解説ついてるので、超おすすめなんだけど、ちょっと読みにくい作品の方が多かったように感じます。 ◆作品として好きだったのは、 ・斜線堂有...続きを読む紀「回樹」 百合とファンタジーの融合。人体吸収する樹。 これは、SFっていうより、拗れ愛小説。 ・芹沢央「九月某日の誓い」 超能力のある世界で、科学者である父の自殺により奉公することになり、その家のお嬢様の能力、そして意外な結末。 ・琴柱遥「夜警」 夜に空から降る星の話。子どもが願うと叶うのだが、それには秘密があり…。少し宮沢賢治っぽい雰囲気が良かった。 ◆作品ネタとしては面白かったけど、イマイチ入り込めなかったのは ・八島游舷「Final Anchors」 自家用車に搭載されたAI同士の一秒に満たない時間での会話や思考 ・宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」 小惑星が日本に落ちることが分かったことと、高校生の衛星構想コンテストと核のない未来 ・夜来風音「大江戸しんぐらりてい」 実在の数学や天文の天才達を登場させ(安井算哲、関孝和など)柿本人麻呂の歌が実は数式だったというロジックで大演算機構が作られる江戸時代。 ・佐伯真洋「青い瞳がきこえるうちは」 VR技術で仮想スポーツ大会が出来るような未来。卓球に才能のある兄弟の感情。一人は盲目、一人は寝てしまう病。 ・坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」 科学者飼育による蜘蛛生態改変で、蜘蛛に京都を乗っ取られる世界を描いている。この話は凄く面白くなりそうなのに、とても入り辛くてもったいない!と思った。
―― SF入門14本、と打たれているけれどちょっととっつきにくいのはページ数だけが理由ではない… しかし、これからのSFというジャンルを読んでいこう、って思ったとき、きっと何度も繰り返しこの作家たちに帰ってくることになるのは確かだと思う。 「Final Anchors」 八島游舷 進化...続きを読むした自動運転AIを題材に、事故までの0.488秒の間を描く。法廷劇チックに書かれているのが面白く、テンポも良い。 人間同士では解決しきれない問題を解決するためのAIが、より人間らしくなることで合理的解決から遠ざかる。様々なアプローチが出来るテーマだろうけれど、今作は情感のあるSFとしてグッド。 ところでこの作品の状況と似たような自動車保険のCMを海外で見た気がする。 「回樹」 斜線堂有紀 ふむ? と思ったけれど流れに乗ってみればいかにもな斜線堂作品。ひとつのSF的装置を置くことでテーマを掘り下げる形は、その周辺の現代が既にSFと紙一重になっているということなのかしら。或いはずっとそうだったのかな? そしてやはり百合とSFの親和性の高さよ。詰まるところ、それが愛ではないと論理的に説明出来ないわけだよね。 「点対」 murashit うーむ。実験小説…これくらいだと単純に読みにくいだけのような。奇を衒い過ぎ? 「もしもぼくらが生まれていたら」 宮西建礼 これは再読。初見よりもしっくり読めたのは成長かしら。それでも、技術的な部分の緻密さとテーマの安直さとのアンバランスがやっぱり気になってしまうかなぁ。それも青春SF的ではあるけれど。 「あなたの空がみたくて」 高橋文樹 スペオペ感もあってグッド。そして、SFでありながら科学的に上位な存在、或いは科学よりも上位な存在が見え隠れすると突然ホラー要素が増してスパイシィになりますね。 「冬眠時代」 蜂本みさ やっぱりSFと云えば猫だよな、と思いつつ。 動物、をテーマにしたSFの面白さは、その動物の持つ習性を如何にSFと連結するか。この場合熊の冬眠とその間に見る夢をSFチックに設定していて、そのあたりそのままコールドスリープ的な話に繋がりそうでもあるのだけれど、本篇自体はどこか牧歌的なSF。 「九月某日の誓い」 芦沢央 戦争と超能力と百合、って組み上げはこんなにポロポロあるのか?! 確かにどうしたって面白いけれど。 悲壮感と戦争。それが、決して結ばれないけれど結ばれずには居られない少女同士の関係と絶妙にマッチしている。これは良作。 「大江戸しんぐらりてい」 夜来風音 歴史改変系SFはどれだけ緻密な構成で馬鹿をやるかというところが大事だと思ってるのだけれど、これは…すごい… “徳川光圀の命を受けた学者たちが和歌コンピュータを発明する”ってあらすじからしてもう、ねぇ? 演算もの、としても面白いのだけれど、そこから更に古代文明の遺産やらそれを奪い合うエンタメ要素もばっちり。 「くすんだ言語」 黒石迩守 アイデア的には伊藤計劃トリビュートということで良いし、言語SFとしてディティールもしっかりしている。はっきり筋はとおっているのだけれどなんだか、小説としては面白くないなぁ。説明に終始しているような。 「ショッピングエクスプロージョン」 天沢時生 こういうのよ…こういうのなのよ…! 環境激変、というタグがついているけれど、良質なサイバーパンク冒険譚でもある。それでもやはり環境激変SFとしての要素が強いのは、いまの我々にも馴染みのある世界構造のほんの一部に集中してSF的想像力を注ぎ込むことで世界そのものを大きく書き換えていて、そのことが物語自体の中核になっているからだろう。具体的にはド○キだが。 着想ももちろんだけれど、タッチがとても好みで引き込まれました。いい意味で雑な、これくらいでいいだろう? って態度の用語設定だとかルビだとか、シェイキィな会話だとか。小説はこうでなくちゃね、って感じ。 「青い瞳がきこえるうちは」 佐伯真洋 SFには希望が詰まっている。 技術力も想像力も、本当に、それを使う人間の想いに大きく左右される。全体的に悲壮感のあるストーリィなのだけれど、技術をよすがにして出来ないことを出来るようにしようとする、わかりあえないものを少しでも、ほんの少しでもわかりあえるようにしようとする、その前向きさが、静かでけれどしっかりとした歩みのような文体と非常にマッチしていて佳い。 「それはいきなり繋がった」 麦原遼 ポストコロナSFというジャンルも、悲しいかな軌道に乗ってしまった感があるけれど、その中でも特殊な一編。パラレルワールドものでもあるのだけれど、その対となる世界と積極的に繋がろうとする理由のひとつが感染症の蔓延でもあるという部分に面白さを感じた。マイナスの要素に、しかし背中を押されることだってもちろんある。 「無脊椎動物の想像力と創造性について」 坂永雄一 一流のSF作家は一流の研究者である…と思いがちだけれど、或いは研究者としては異端になりやすくもあるのだろう。なんとなく陰謀歴史論とかトンデモ中世史、とかを語っている歴史家と紙一重のようにも思える。 それでもこの作品はやっぱりSFとして本物だなぁと思うのは、簡単に笑い飛ばせない恐怖、畏怖がしっかりあるからでしょう。ある程度の近未来SFには共通して、有り得べきみたい、という恐ろしさが付き纏う。 そんな中で、その未来それも絶望的な未来に対面して希望ばかりを描く主人公の姿に、SFの面白さ楽しさを存分に感じた。 名作であるのはもちろん、このアンソロジーのテーマをいちばん表しているように感じました。 「夜警」 琴柱遥 “物語だけが光の速度を超える” まったく至言である。 ここまで読んできて最後にこの、云わば純文学系SFを配する編者にはさすがのひと言。SFに込められた希望も絶望も、可能性も恐怖も、物語の推進力無くしてどこにも届くことはない。 ほんとうに。 生きるために、読んでいる。 どっと疲れた。けれど本当に、有難く得難いアンソロジーだと思います。 何度も手に取って、また世界が変わったときには戻ってこよう。 ☆4.7
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