三浦しをんさんの「乙女なげやり」から、よしながふみさんの「愛すべき娘たち」を知り、
その繋がりで萩尾望都さんを知り、本作品を読むに至っている。
萩尾望都さんは手塚治虫さんの影響を強く受けていて、漫画の雰囲気(根底にある思想とか)も似ていると感じる。
この本は、2022年に再編集されて出版された [
...続きを読む完全版] であり綺麗な状態で読むことができる。
しかもA5判のサイズなので文字も大きく見やすい。
[完全版]とした意味は最終ページに記載があった。
「百億の昼と千億の夜」とは、どういう意味なのだろうと思いながら読み始めた。
読み終えた時に、きっと意味が分かる…。
プラトンが1日で消滅してしまったアトランティスの謎を探る旅から物語が始まる。
少女の姿をした阿修羅王が戦っている敵の名は "シ" … それは生命が必ず出会う運命の存在。
ある星雲の千億の恒星…全て消滅
百億の星雲…全て死滅
終末に向かう宇宙
エネルギーの完全な平衡状態 = 完全な熱的死。
その後にはどんな変化も起こらない。
どんな生命も生きられない。
なにゆえに宇宙があり、生命があるのか。
「火の鳥」と「ブッダ」を合わせたような壮大な物語だった。
仏教の持つ宇宙観を描いた物語で、その思想は難解だ。
これを少年チャンピオンで全21回に渡り連載したという事実が凄い(子供たち、たぶん読めていないと思う)。
少女フレンドには馴染まない作品だし、大人のマンガにはあまりSFがないとも言ってるので、相応しい雑誌がなかったのだろう。
人間社会を風刺する発言も出てくる。
「繰り返される戦争 絶えざる経済危機 ――人間は高度な文明を持ち得ても 何一つ解決できなかった」
「進化 発展が人間に何を与えたか」 「破壊につけこまれただけではないか」
漫画だけでなく、本作品に関するエッセイ(光瀬龍さん3本、萩尾望都さん2本)や、萩尾望都さんのSFに対する想いなども書かれていて充実した本に仕上がっている。
影響を受けたSF作品や、自作のSFに対する裏話を知ることができて、また読みたい本が増えました。