作品一覧

  • 高橋和巳・高橋たか子 電子全集 第1巻 高橋和巳 小説1『邪宗門』ほか
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    1~24巻2,200円 (税込)
    高橋和巳の代表作ともいえる宗教団体の破滅を描いた一大長編『邪宗門』を中心に、未完作「古風」を併録した一巻。 高橋和巳の代表作ともいえる一大長編『邪宗門』。 序章+3部構成の体裁をとる物語は、「ひのもと救霊会」なる宗教団体が昭和初期に治安維持法違反や不敬罪といった罪科に問われることで、国体論的国家権力によって徹底的に弾圧され、壊滅の危機に迫られるも、戦後、新たなる世の到来とともに、信徒それぞれが希望と復讐の念を交錯させつつ再起、再興を志しながらも、今度は駐留軍によって弾圧され解体していく宗教団体の破滅までのさまを描いた作品。 当巻では、決定版ともいえる単行本に加え、「朝日ジャーナル」1965年1月3日号~1966年5月29日号まで全74回にわたり連載された初出版も完全併録。 決定版では改稿に加え、特に第3章で、大幅な増補が施されていることも確認できる。 また、併録した未完作「古風」は1957年3月から1958年8月まで、同人雑誌「対話」第一、二、三号に発表され、壮大な構想にもとづく長編小説として書かれたが、中断したまま、未完となった作品で、和巳最後の小説『黄昏の橋』に受け継がれる作品といえる。 解説は、和巳と同じ京都大学文学部卒で関西学院大学文学部教授・橋本安央氏(『高橋和巳 棄子の風景』を執筆)が務め、解題は和己巻の監修を務める作家・太田代志朗氏が担当。 付録として「邪宗門」「古風」の生原稿等も収録する。
  • 亡命者
    5.0
    1巻1,881円 (税込)
    夫と死別し、神とは何かを求めてパリに飛び立った私。極限の信仰を求めてプスチニアと呼ばれる、貧しい小さな部屋に辿り着くが、そこは日常の生活に必要なもの一切を捨て切った荒涼とした砂漠のような部屋。個人としての「亡命」とは、神とは、宗教とは何か。異邦人として暮らし、神の沈黙と深く向きあう魂の巡礼、天路歴程の静謐な旅。 著者を敬愛する芥川賞作家石沢麻依による解説を巻末収録。 "……私は、内部からパアッと照らしだす光の中にいた。生まれて以来、何処にいても、居場所でないと感じつづけた、わけが、わかった。わかった、わかった。と、何かが叫んでいた。逆なのです、わたしたちすべて、人間すべて、あちらからこちらへ亡命してきているのです。あちらへと亡命するのではなく、この亡命地からあちらへ帰っていくのです。かつて、そこに居たのですから。”──本文より 芥川賞作家石沢麻依さん大推薦! 待望の文芸文庫化。 「『亡命者』は私にとっても思い入れの深い作品です。初めて読んだ時は、それまでの作風との違いに困惑したものの、最後のページにたどり着く頃には、深い白と青の光景に言葉を失くしました。入れ子構造の巡礼世界に、こんな領域まで言葉がたどり着けるのか、と畏れも感じた覚えがあります。そして、現在、自分がドイツにいることにより、個人としての「亡命」とは何なのかを考えさせられています。」
  • 彼方の水音
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    1巻660円 (税込)
    真昼のしらじらとした明るさの中にこそ闇を見つめる孤高な眼。平穏な日常の中にこそ死の気配を嗅ぎとる存在の痛み。狂暴な破壊への意志を内に秘め生きる女の虚無……。鋭利な感覚で人間存在の毒と、清冽な〈彼方〉への憧れを描き、特異な文学空間を創り上げた著者の処女作品集。「相似形」「囚われ」「渺芒」など5篇を収録。
  • どこか或る家 高橋たか子自選エッセイ集
    5.0
    1巻1,562円 (税込)
    すべて素顔の私。私らしい文章40篇を厳選――小説の中に表われる作家の分身……。自身そのように小説を書いてきたけれど、それは、<私>という人間そのものでは、決してない。おさない頃の京都の記憶、日々の生活を楽しんだ鎌倉、親しい友との旅、出会い、そしてパリでの霊的体験……。書きつづってきた文章の中から、40篇を選び出してみた、ほんとうの<私>をわかっていただくために。 ◎高橋たか子「今、人生の最終段階にいる私は、私という者が大体どういう者であったかを、すくなくとも、すでに書いたエッセイをざっと並べる形において、わかっていただきたい、と思う。大体、と書いたが、全体は神のみぞ知る。<「著者から読者へ」より>
  • P+D BOOKS 怒りの子
    3.0
    1巻605円 (税込)
    三人の女性の緊迫した“心理劇”。 「あんたの中に、怒りの子が見える……人のうちに、潜んでる、外から見えんけど、何処かにいる、人の奥のほうに。」  自分自身のやりたいこと、望んでいることなどが定まらず、ビジネス学校に通いつつ悶々とした日々を送る主人公・美央子。美央子が姉のように慕う、どこか浮き世離れした雰囲気を持つ初子。そして美央子と同じアパートに住み、親しくするそぶりを見せながら、いちいち美央子の感情を逆撫でしていくますみ――。3人の感情は、初子の義弟・松男の存在を触媒として、大きく揺れ動いていく。  人間の心情を、平易な言葉を使いつつ、豊かな描写力で見事に描ききった、第37回読売文学賞受賞作。
  • P+D BOOKS 誘惑者
    5.0
    1巻880円 (税込)
    鬼気迫る“自殺者と自殺幇助者”の心理葛藤。 噴煙吹き上げる春まだ浅い三原山に、女子大生がふたり登っていった。だが、その後、夜更けに下山してきたのは、ひとりだけ――。 遡ること1ヶ月前、同様の光景があり、ひとり下山した女子大生は同人物だった。自殺願望の若い女性ふたりに、三原山まで同行して、底知れぬ火口に向かって投身させた自殺幇助者の京大生・鳥居哲代。 生きていることに倦んだ高学歴の女学生たちの心理を精緻に描き、自殺者と自殺幇助者の軌跡をミステリー風に仕立てた悽絶な魂のドラマ。高橋たか子の初期長編代表作で第4回泉鏡花賞を受賞。
  • 人形愛 秘儀 甦りの家
    4.3
    1巻1,672円 (税込)
    美しい少年の人形を夜ごと愛撫する女。夢によって浸透された存在になっていく現実の少年。奇妙な透明感と、夢と現実の交歓。高橋たか子の独特な神秘主義を端正な文体で感覚的に描く幻想美の世界。男女の恋愛の、より深く深くと求めた内部の実在を鮮やかに浮かび上がらせた、華麗なる三部作。
  • 高橋和巳という人
    -
    1巻1,650円 (税込)
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 没後25年、たち顕われる高橋和巳の真実!夢と夢の結婚、小説家夫婦の普通の生活と普通ではない生活、そして二人をめぐるさまざまな時代の嵐――歳月に磨かれ、澄明に結実した感動の証言。
  • 亡命者

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    パリで暮らす「私」は極限の信仰を求めてプスチニアと呼ばれる貧しい小さな部屋に辿り着く。そこは日常生活に必要なもの一切を捨て切った荒涼とした部屋だった。プスチニア――ロシア語で「砂漠」を意味するそこで暮らす「私」は沢山の「国境」を越え、「亡命」してきた。「亡命」は「私」を削ぎ落とし、「個」を脱ぎ落とし、透明になる行為だ。「私」の「亡命」の物語は一組の男女の物語へ、そしてある男の手記へと引き継がれていく。深く深く、内なる淵源へと降りてゆき、そこに拓かれた光景は何処までも遠く無限大の静寂に包まれた白と青の世界。神の沈黙と対話し、己の魂の静謐な声を聴く。神秘的な、魂の巡礼の壮大な物語。

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    2022年05月16日
  • 人形愛 秘儀 甦りの家

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    「誘惑者」ですっかり嵌ってしまった高橋たか子2冊目。「人形愛」「秘儀」「甦りの家」の3編いずれも美しい幻想のうちに包まれた官能性にうっとりしてしまう。肉体を通り抜けて果たす男女の性愛は水晶のように透き通りながらも、深いところで血が通っていて酷く生々しい。作中にある「命の闇」はきっとそれを指すのだろう。特に美少年好きにはたまらないであろう「人形愛」がお気に入り。

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    2020年04月30日
  • P+D BOOKS 誘惑者

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    自殺願望を抱く友人二人を三原山まで同行して火口に投身させた自殺幇助者の鳥居哲代。自殺者と自殺幇助になっていく軌跡をミステリー風に描いた作品。高橋たか子は初めて読みましたが、鋭い文章で構築された本作は物凄い緊迫感に充ちており、圧巻でした。人と人の関係は時として意図しない、本意ではなかった行動へと導く。気が付いた時には自分の役割から降りられない。砂川宮子が死の直前に明かした「私はわかってほしくなかったのよ。誰もわかってくれる人がいなければ、わかってくれる人が見つかるまで、きっと私は死ななかったわ。そうなのよ、あっけないほど、あなたはわかってくれたから、もう私はもぬけのからのように安心したのよ」この

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    2020年04月15日
  • 人形愛 秘儀 甦りの家

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    愛ではなかった。
    玉男、澄夫、そして雪生、物語は展開し、やがて繋がっていく。
    「他方、私のほうは、雪生という元型が日に日にはっきりしてきた。その元型はいわば私たちのなかにもあるのであった。二人で、それぞれ自分のなかを井戸を覗くふうに覗くと、いわば共有している、底なしの井戸の水が見え、その水の奥の奥に雪生という元型がちらちらと仄見える。いや、むしろ、雪生と私の関係という元型が仄見える。そうなのだ、関係そのものの元型があるのであった。
    これまで経験したことのないそれを、私は私で発見していった。私自身も、やはり、そのようにして思い出しているのであった。そのことで自分が巨きくなっていく、いうにいわれぬ

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    2019年04月25日
  • どこか或る家 高橋たか子自選エッセイ集

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    「言葉について」の中で私が長い間ときおり考えてしまうことが書いてあって、ああ、同じことを考えている人がいるんだなあと思った。宗教のことはよくわからないし、私は神を求めてはいないのだけれど、こういう風に神とかかわっていく形があるのだということを知れてよかった。

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    2011年09月03日

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