P＋D BOOKS 怒りの子

高橋たか子

三人の女性の緊迫した“心理劇”。

「あんたの中に、怒りの子が見える……人のうちに、潜んでる、外から見えんけど、何処かにいる、人の奥のほうに。」
自分自身のやりたいこと、望んでいることなどが定まらず、ビジネス学校に通いつつ悶々とした日々を送る主人公・美央子。美央子が姉のように慕う、どこか浮き世離れした雰囲気を持つ初子。そして美央子と同じアパートに住み、親しくするそぶりを見せながら、いちいち美央子の感情を逆撫でしていくますみ――。３人の感情は、初子の義弟・松男の存在を触媒として、大きく揺れ動いていく。
人間の心情を、平易な言葉を使いつつ、豊かな描写力で見事に描ききった、第３７回読売文学賞受賞作。

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内小説
• 出版社: 小学館
• 掲載誌・レーベル: P+D BOOKS
• ページ数: 288ページ
• 電子版発売日: 2021年02月10日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 1MB

[ブクログ · ★★★☆☆]

自分自身のやりたいこと、望んでいることが定まらず、ビジネス学校へ通いつつ悶々とした日々を送る美央子。美央子と同じアパートに住む山本ますみ、美央子が姉のように慕う初子。彼女達の情念は初子の義弟・松男の存在を触媒として渦巻き、決定的な破局へと転落していく。美央子に対して山本ますみが抱く嫉妬が陰湿な蛇のようで、読んでいて息詰まるよう。でもこういう人いるよねって妙な共感と納得をしてしまった。美央子が言語化が上手くできない己の感情に突き動かされて衝動的な行動を取ってしまうのを見ると自分の感情であるのに、捉えきれない心の茫漠さ、とりとめのなさにふと戦慄を覚える。