Netflix版ドラマを見て、続きを知りたくて原作を読み始めました。以下の3つの点で特に面白かったです。
1. 似た構造の繰り返し
2. 科学のエンタメへの落とし込み
3. Netflix版と比較して明確な説明
1.
これがドラマ版にはない小説の最も良いところだと感じました。同じ話の構造や心象描写
...続きを読むが繰り返し別の状況で登場していて、それによって舞台がころころ変わっても新しい登場人物への感情移入がしやすかったです。
例えば、「物理学はなかった」と自殺していく科学者たちがいましたが、汪は「この宇宙の法則を解くことはできず、今のこの世界はカオスの中のたまたま安定した周期にすぎないのか?」というような疑問を持っていました。これは三体世界の恒期と乱期のパターンを予測できたかに思える度に失敗を突きつけられる三体人の絶望感とリンクしています。
他にも、わかりやすいところだと葉文潔の地球世界への思いと三体人の監視役の三体世界への思いがリンクしていたり、ドラマ版と比較して登場人物に共感しやすくて面白かったです。
2.
ドラマだと多くが省略されていたのですが、ストーリーのサイエンティフィックな描写の説明が丁寧で嬉しかったです。例えば、人列コンピュータの演算ルールや、智子の次元展開の説明、そして太陽による電波の増幅の仕組みなどです。ストーリーにはその詳細はあまり関わりませんが、著者の特徴がよく出ていて、すごく楽しめました。
ニュートン vs. ライプニッツのような、著者が楽しんで書いてるのがわかる展開も好きです。
3.
2とも関わりますが、ドラマで省略されていた説明が科学以外の面でも多くて助かりました。例えば、汪のナノマテリアルがなぜ三体人にとって脅威なのかや、葉文潔がレイチェル・カーソンを読んで何を思ったのかです。特に後者は、ドラマだと環境問題に目覚めただけのようにも見えましたが、「自分が自覚せずに悪になっていることがあるのかもしれない」と感じていたのがわかることで、文潔の人となりの解像度が高まりました。
以上の3点以外にも、最後の大史の行動は胸が熱くなりましたし、やはりストーリーそのものが抜群に面白くて、続きが気になります。今日2作目買ってきます。