【感想・ネタバレ】うつし絵 大岡裁き再吟味のレビュー

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Posted by ブクログ

 大岡越前守忠相。還暦を越えてもなお吉宗の計らいで寺社奉行として幕閣に留まる旗本だ。忠相には南町奉行時代に下した裁きの中に引っ掛かりを覚えるものがあり、晩年を迎え内々に再吟味に乗り出すことにした。シリーズ3作目。
         ◇
今回の再吟味は15年前に起きた、大身の旗本同士の間で起きた殺傷沙汰についての顛末である。
 跡取り息子を殺された倉橋家と、殺したとされる内藤家の間で一触即発の状態となったが、嫌疑をかけられていた内藤家当主の斎樹が屠腹して果てたことで倉橋家も矛を収め、一件落着となった。

 当時、南町奉行だった忠相は、そのときのことをかなり克明に覚えている。
 内藤斎樹には、現場から立ち去るのを見たという目撃者がいる一方、そのアリバイを証言する売女もいた。評定所の取り調べは1度行われたものの結論には至らず、吟味は継続ということで斎樹は屋敷に帰されていた。
 だがその夜、斎樹は屠腹して果て、内藤家からは病死として届け出があったため、それ以上の詮議は無用となったのだった。
 
ところが15年経った先日、常陸国は筑波の若葉村で土田半左衛門という絵師が捕縛されたことで、かつて収まっていたはずの事件が息を吹き返す。

 放浪の絵師である半左衛門は諸国を巡っていたのだが、関所を通るさい用いた往来手形が偽造されたものだったことが発覚。半左衛門の身柄はすぐ江戸に送られ、時を置かず詮議にかけられることになった。
 関所破りは磔刑との決まりがあるため、町奉行や与力たちは型どおりの評定を進めていく。だが吟味役の1人として詮議の席にいた忠相は、半左衛門を見て目を疑わずにはいられなかった。

 半左衛門は年齢こそ重ねているものの、死んだはずの内藤斎樹に相違なかったのである。(第1章「関所破り」) 本編4章と序章および結章からなる。

      * * * * *

15年前に死んだはずの男が生きていた。そもそも発端となった殺傷事件についても、沙汰に及んだ理由はおろか、その下手人すら確定されてはいなかった。
 という、なかなかのミステリーです。

 その謎を、丁寧な聞き込みを重ねることで解き明かしていく十一の、地道ながら行き届いた調査能力は見どころでした。

 また序章では、御鷹場鳥見役の役人やその手下どもの卑しく非道な行いが描かれ、百姓を庇う十一との間に緊張感が生まれるのですが、その伏線が第4章及び結章できれいに回収されていくところには胸がすきました。そして吉宗の粋な計らいがそれに華を添えているのもよかったと思います。

 さらに、食事や料理の描写も実に美味しそうで喉がなるほどです。優れた時代小説作家はみなそうですが、辻堂さんの作品にもそういった魅力があるのも楽しくて、満足度を高めてくれていました。

 ただ、忠相の意を受けた十一の探索模様が物語の中心となり、剣戟シーンは最後にお慰み程度に描かれるのみになる点は、物足りなさしかありません。
 このシリーズの特徴なのでしょうが、唐木市兵衛なみの剣の腕を持つ十一なのに、活躍の場が地味な探偵仕事ばかりなのはいかがなものかと感じます。

 また、女岡っ引きのお半も申しわけ程度の登場だし、腕も外見も弥陀之介を彷彿とさせるがま吉も付け足し程度ではかわいそうです。もう少し脇役をうまく使ってもらえれば、作品としてのおもしろさは倍増するのではないかと思うのですが……。

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2024年04月12日

Posted by ブクログ

いつの時代も、金持ちのどうしようもない息子っているものだな。
そして、人は職業によって信用してもらえたりもらえなかったり…これも変わらないな。

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2024年03月25日

Posted by ブクログ

生意気な言い方だけど、読んで行く途中で、だいたいの謎は解けていた。面白かったのは、大岡越前が、意外と幕閣のなかで嫌われいた、ということだ。まあ、あまりに堅い人間は、いつの世も、煙たがれるものか?

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2024年01月25日

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