【感想・ネタバレ】きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読書日記やガイドブックや書評本を読む時、まず目次からわくわくする。
どんな本を読んでいるのかな?
私が読んだ本はどう紹介されているかな?
今回、目次を見て、あまりの既読本の少なさに驚愕した。

歌人である彼が歌集とか句集とか詩集を紹介するのは当然で、この辺は想定内。
日本の近代文学もほぼ読んでいないので、ここも想定内。

だけど、ニアミスに愕然としてしまったのだ。
「そっちか…」
例えば花輪和一だとしたら、普通は『刑務所の中』だろう。
もちろん私もこちらは読んだ。
だけど、穂村弘が紹介するのは『刑務所の前』の方なのだ。
あづまひでおの『失踪日記』(読んだ)ではなく、『失踪日記2』の方なのだ。
読み込みの浅さが悔やまれる。

既読本だとしても、油断はできない。
高野文子の『ドミトリーともきんす』を、私は科学者の目から見た現実世界の興味深さが面白くて、文系の人も面白く読める理系本のブックガイドとしても重宝しているのだけど、穂村弘のこの本の興味はそんなところにはない。

”それは普段は小説しか読まない人が詩を読む時の感覚に似ていると思う。同じ日本語で書かれているのに、文字の量、意味の密度、言葉と言葉の結びつき方、改行の意図などのルールが小説とは違っていて、磁石を持たずに別世界に迷い込んだ感じがするだろう。戸惑いと緊張を覚えずにいられないのだ。”

それ、私のことですか?というのはおいといて、高野文子の作品を読む時にそのような新鮮な感覚を覚えるというのだ。
同じ本を読んでも、感じる部分が違う。捉え方が違う。
だから面白いのだ、この手の本は。
穂村弘の読書日記をもっと面白く読むためには、私がより詩に俳句に短歌に近づけばよいということがわかった。
…ハードル高いな。


直接この本の感想ではないけれど、阿久悠の『なぜか売れなかったぼくの愛しい歌』の引用から。

”蒸気機関車を、日本を豊かにするために汗みどろで働いた男たちだと考えるとよくわかるだろう。その人たちが、はいご苦労さまで捨てられていいわけがない。
 汗をかかない、走らない、力を出さない、汚れない、これだけを求める人間がすべての社会が、活力を発するわけがないのである。不細工に、不細工に、働くとは、生きるとは、そういうことなのである。”

何十年も前から職場で進められてきた、効率化という名前のリストラ。
最近では生活のすべてに、無駄を排し、コスパやタイパを重視し、余白を切り捨ててきた結果が、日本の現状なのだと思う。
あんまりキリキリ絞り切ったら、いざという時の余力がなくなるのでは?と以前から私は思っていたけど(職場でも言ってるけど)、いざという時の余力どころか、今は必要最低限の力すら残っていないのではないかというくらい青息吐息の現実。

無駄は嫌いだけど、余裕がないのも嫌だ。
ほどほどの余裕の中で締めたり緩めたりを自分の判断でできないで、何が一流国だろう。
そして、過去の経緯を大事にしない者は、未来からも受け入れられないのだと思う。
勝ち組のつもりで上へ上へ登ったその足は、今何かを踏みしめているのだろうか。
ってなことを、阿久悠の文を読んで思ったりしたのだけど、それにしても阿久悠、文章下手すぎないか?

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2023年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

美しい言葉を見つける才能はどこにあるんだろう。

そんなことを考えてしまった。

また読みたい本、読み返したくなる本が増えてしまった(^◇^;)

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2021年06月15日

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