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Posted by ブクログ
国民国家というシステムの副作用として生まれた民族問題の現実をありありと活写されており、読む方も無力感しか感じ得ない。最後の「おわりに」が本書の全て。
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ミャンマーにおけるロヒンギャ問題の複雑さ。
差別の構造、なぜアウン=サン=スーチーは黙認するのか
そもそも国軍があれほどまでに力を持っているのはなぜか
解決の糸口はあるのか
今まで日本語の文献でこれほど広い視野で客観的に書かれたものを目にすることができなかったので、ミャンマーで起きていることに興味のある人は必読だと思う。
クーデター前に書かれているので、もちろん今とは状況が変わっているが、これを読むとクーデターの背景も見えてくる。
沈黙していることが我々のすべきことではないことだけは確かだ。
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ロヒンギャ迫害、難民がどのような歴史的背景から生じてきたのかということが詳細に描かれている本である。
単なる事件の説明だけではなく、人々の移動、日本の敗戦からの国土の建設、など様々な理由が改訂ある。
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ミャンマー西部に住むイスラーム系民族のひとつであるロヒンギャを巡る2017年の国軍による掃討作戦以降の大量の難民の発生等の一連の危機について、危機がどうして起きたのか、その余波が世界にどう広がっているのかといった点を、歴史的背景の考察も踏まえながら検討し、将来に向けての展望と日本が果たすべき役割についても考察。
ロヒンギャ危機はもちろんのこと、2021年2月に発生した国軍のクーデターに至る歴史的背景等についても理解が深まった。
民主化にもかかわらずロヒンギャ危機が発生したのではなく、民主化したからこそロヒンギャ危機が発生したとの指摘が印象深かった。
アウンサンスーチー氏がロヒンギャ危機に際して受け身のリーダーシップに甘んじていたことについて、国軍との関係悪化の回避を優先していたとの分析も、国軍のクーデターが起きてしまった今から思えば、非常に納得のいくものである。当時、NLD関係者と話をした著者は、彼らが国軍との関係に非常に神経をとがらせ、常に最悪の事態(クーデター)まで想定していることを実感していたということが述べられているが、残念ながらその懸念は現実のものとなってしまったわけである。
ロヒンギャ危機について日本が果たすべき役割についての指摘も、まさに現在、国軍のクーデターに対して日本が果たすべき役割にも通じるところがあり、非常に示唆的であると感じた。欧米の理想主義一辺倒で果たしてミャンマーの現実を動かせるのかどうかというところであろう。著者のいうように、理想主義と現実主義のバランスが問われているのだと思う。また、過去の歴史的背景を踏まえても、ミャンマーの行く末について中国が大きな鍵を握っているのだと思われる。
本書の最後に触れられている、自然権としての人権という理想と、国家あってこその人権という現実との間のジレンマとしてハンナ・アーレントが提示した「人権のアポリア」という概念は、まさにミャンマーの問題に当てはまるものであり、本当に難問だと感じた。
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ミャンマー問題の背景を知ろうと購入。背景はおぼろげに見えてくるも、問題の複雑さと解決困難さに言葉を無くす。ミャンマーは長らくにわたり国内紛争と難民問題を抱えてきた国であり、ロヒンギャ危機もそれらの一つの側面である。民族間の対立、暴走する国軍、多宗教との軋轢等、あらゆるステークホルダーの板挟みに置かれるスーチーさんの立場は困難を極める。
スーチーさんを中心とした民主化運動により、長らく続いた軍事政権は終わらせることができた。しかしめでたしめでたしとはいかず、民主化自体が暴力を生みだしてしまうという皮肉な現実もある(民主化とは「人々」による統治であり、「人々」が民族を意味することになれば、民主主義は特定の民族が支配する理想の社会を目指すことになりかねない。また多数決主義も、多数派を占める主要民族に国家権力が集中する機会を与えやすい)。
ミャンマーにおいては、なによりも仏教徒の僧侶が国民から大きな尊敬を得ている。そして民主化による言論の自由に伴って、他の宗教を徹底的に攻撃することで、国民からの支持を集める僧侶も一部存在する(こういうやつは必ず出てくる)。そういった民族的な対立と宗教的な対立があわさり、問題をより複雑かつ深刻なものに変容させている。
弾圧されたロヒンギャ側から過激なレジスタンスが出てくることは、良い悪いは別として理解はできる。ミャンマー側としてそれらを野放しにすることはできない事情もわかる。かといって、ロヒンギャに対するジェノサイドを容認することはできない。外野からはそれくらいしか言えない。無力である。
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ロヒンギャと呼ばれる人たちがミャンマーでひどい目にあっているというニュースをよく目にするがどういう問題なのかわかっていないと思ったので手にとってみた。現時点、軍がクーデターを起こして政権を奪ってしまいロヒンギャの話をあまり目にしないけれども...。真面目な学者の作品らしくわからないことはわからない、と明記されていて好感を持った。ミャンマーというのは多民族国家で100以上の民族がいるらしい。まず政治経済を牛耳ったインド人、中国人への国民的な反感があり、ミャンマーの土着民族を優位にするという政治決定があったこと、またロヒンギャと呼ばれる人たちがミャンマーの中でも最貧のラカイン州という土地に暮らしており、ラカイン州の主要民族は少数民族のラカイン人で彼らは中央政府に反感を持っており独立運動もあったということ。そしてラカイン州がイスラム国家のバングラディシュと国境を接しておりロヒンギャもムスリムである、ということなどがベースにあったということがわかった。このような複合的な条件で、しかも軍政が民主化に移行したことによる自由化でいろいろな情報を得た一部のムスリムがミャンマーとラカインからの独立をもくろんで警察や軍にテロ行為を行い、その対応において軍の一部が暴走し虐殺を行ってしまった、というのがどうやら事の経緯らしい。虐殺を黙認したと世界的に非難されているスーチーさんも戦争犯罪は認めていた、ということもわかった。そのまま進むと軍の責任を追求せざるを得ず、しかし民主化したといっても軍は微妙な位置づけにいて、ということでスーチーさんも対応に苦慮しているうちに焦った軍が再度クーデターを行ってしまった、というのが現状ということのようだ。いろいろな複合要因を見てみると一方的に軍が横暴とも言えないなと思っていたのだけど...日に日に混乱を増す状況でこの先どうなるかわからないけれどわからない度合いが少しマシになったと思います。
Posted by ブクログ
大変難しい問題だ。
ロヒンギャとはミャンマーのバングラデシュ側にいる少数のムスリム。
宗教、歴史、国籍等多くのファクターが絡み合って、問題を複雑化している。
最後に日本の出来ることとして5つあげているが、たしかにやるべきだと思うがその反面他国に日本1国がそこまで立ち入る権利があるのかと悩む。国際機関が規律を曲げて介入するのが一番だと思うが、その際、差別は差別を生み、暴力は暴力を引き起こすことは教訓として覚えておいてほしい。
Posted by ブクログ
ロヒンギャが抱える問題について、根本底なところから解説をしている。
単に難民を容認すればいいということではなく、もともと持っている偏見や、民族間での問題もあり、
根本的な解決が非常に難しいということではないことがわかった。
ミャンマーの滞在中も、ロヒンギャに対する不満は現地の方から聞いていたので、今回改めて本を読むことで民意という視点からスーチーさんがなかなかロヒンギャ問題に踏み出せないことがわかった。
Posted by ブクログ
アウンサンスーチーさんの言動、豹変かと思ったが、元々、ロヒンギャは、守るべき「国民」の範疇に入ってなかったのか。
国の成り立ちから関係する根幹の問題のようで、おそらくだが、マジョリティ、あるいは、ロヒンギャを抑圧しながらも抑圧されて来た層にとっては、何が問題やねん、という話でもあるのではないか。
外から綺麗事言うのは簡単。
とはいえ、当事者にとっては綺麗事ですらない。
要は、馬鹿みたいに簡単にルール決めて万事幸せになるような世界ではないと言うことだ。
それだけはわかった。
この本の後、またスーチーさんを取り巻く環境も変わっている。
ただ、最終章にあるような、今日本が何をできるか的な主張は、少なくともこの本には不要だったような気がする。
でも、他山の石ではないが、日本で起こされそうとしていることに、考えを至すのは必要かもしれない。
Posted by ブクログ
ロヒンギャ問題を 読んでいる現在は
それどころではなく 国軍のクーデターによって
国内が大変な事になってしまっている。
この問題と今回のクーデターは関係あるかどうかわからないけど
確かロヒンギャの人達も 民主化運動の人たちと共に
国軍に歯向かっている。
この本では まだまだ 解決のめどが立たなさそうだったが
このクーデターによって もしかしたら ロヒンギャの人達と
共に手を取り合って 軍を倒したら
ロヒンギャの人達の 人権を守ろうという流れになるかもしれない。
そうなるように
周りの諸外国も手を差し伸べていければ良いかと思いました。