【感想・ネタバレ】夏の流れ 丸山健二初期作品集のレビュー

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日本文学史上の最高傑作の一つだと思う。
無駄の無い削ぎ落とされた文章。看守の息遣いが聞こえてきそうな臨場感。

ただただ、圧倒されるばかり。

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2017年07月05日

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 徹底的に無駄を排除し、最低限の言葉で世の中を俯瞰し、適切なテンポの会話で、最後には読者に「どう思う?」と投げかけられているように感じる。
 これほどまでにシンプルなのに、なぜ複雑な思いを抱かされるのか、これこそ、この作品の持つ大きな力なのだろう。

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2013年07月21日

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中学生の時に読んだ本。 間違いなくお勧め。

もちろん題名になっている「夏の流れ」は面白い。刑務官という職を見事に描いている。死刑制度の論争などをする際には一度読んでみると視点を変えて問題に取り組めるかもしれない。

他の短編も面白い。ぜひ読んでください。

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2011年01月03日

Posted by ブクログ

自分が思い描く理想があったとして、それは現実と地続きな平面の先にあるはずだ。しかし、道は曲がりくねり一方通行となり行き止まりとなる。引き返し、振り返れば、最初の理想はすでに形を変え、遠い追憶の彼方だ。形を変えた理想は今の現実に干渉し、奇形の理想を最初の理想と同一視する錯覚に陥らせる。折り合いをつけられれば幸せ。つけられなければ世界から疎外される。それを従属というのは悲しすぎるけれど、いっそ破滅というのはあまりに文学的すぎる。
「夏の流れ」が23歳で書かれたというのは驚愕に値する。芥川賞受賞はどうでもよいが、23歳でなぜこのディテールが描けるのか?いったいどういう天才なのか。死と生の交わる中、己の役割を忠実に勤め上げようとする刑務官の風景。
「その日は船で」~堕胎の風景。
「雁風呂」~生者のための生活の風景。
「血と水の匂い」~差別の風景。
「夜は真夜中」~こらえきれない思春期の一夜。
「稲妻の鳥」~君は裸足の神を見たか。
「チャボと湖」~ニュータウンの日常風景。
純文学とはストーリーではなく、いかにその状況を描くか、に重きが置かれるものだと思っている。そういう意味で、丸山健二さんは純文学だ。そして、ハードボイルドだ。「夜は真夜中」がとにかく衝撃だった。あの思春期の暑い夏の一夜を思い出してしまった。

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2017年08月21日

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著者の長編をいくつか読んでから、初めて目を通した初期の短編集。

なんとも平凡な感想だけど、すごい。すごい!

圧倒的な語彙の多さで、難しくゴテゴテに鎧われているのが今の丸山健二で、それはそれでやっぱり「すごい!」なのだけど、その人はかつて、こんなにも端正でシャープな(文章を書く)若者であったのかと、むき出しのセンスと才能に驚愕した。無駄のない静謐な文で描き出される人間たちは、どこか痛々しく胸が締め付けられる。

23歳でこんなに完成してしまったら、そりゃあ極端な方向に向かって進化するしかないだろうと。

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2016年08月02日

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日本中の生命が最も盛んに燃ゆる夏。しかし囚人は死刑となる。一つの生命が人の手によって断ち切られる。執行日の夏の大雨が死刑囚の絞首台での死を流していく。翌日は看守たちは特別休暇。海辺で遊ぶ看守の穏やかな家族の日常も変わらず流れていく。生も死も夏の流れとなって海へを静かにそそぐのだ。直接の感情の表現は最小限に抑えられ、自然の描写と人間の仕草で綴ることで深い人間心理を読み取らせる小説である。硬質で静かな文章は涼しくて心地よい。

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2015年03月22日

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ネタバレ

先週読んだ山口果林著「安部公房とわたし」に、
他人の作品を滅多に褒めない安部が珍しく感動し、
わざわざ出版社から著者自宅の電話番号を聞いて
賞賛の電話をしたところ、
丸山健二から「誰ですか、あなた?」と言われて気分を害した、
と書いてあったので、“孤高の作家”丸山健二を読んでみることに。

丸山健二っていうと、映画にもなった「ときめきに死す」が有名だけど・・・

1966年に芥川賞を取った「夏の流れ」。
80数ページの短編というか、中編というか。
刑務官の話で、主人公を含めた中堅刑務官2人と、若手刑務官との話。
若手刑務官は、まだ死刑囚を死刑台に送ったことがない。
初めてそうする場面での、主人公たちのお話。
結局、若手刑務官はそれが出来ず、当日、欠勤し、仕事も辞めてしまう。
テーマとは裏腹に、結構、さわやかに楽しめる中間小説という感じ。

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2021年03月15日

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丸山健二 最初の作品 「 夏の流れ 」 ほか初期作品の短編集。著者の初期作品は 淡々とした人間描写。硬派な文体でないことに驚く。

読後感は悪いが、長編のような単調感がないので、こちらの方が読みやすい。


最初の三作品は、死刑囚と刑務官、中絶する夫婦、死んだおっさんの金を分ける2人 が主人公。

自分の善悪や他人の生死と関係なく、淡々と生きている人間という感じ。日常の風景の中に存在する 傍観者的で残酷な人間を感じる


他の四作品は 爪痕残すような読後感は ない。


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2020年05月21日

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自然のなかでのできごとや、釣りや猟など自然と対する内容の作品が多いのに、海や川に瓶やモノを投げ捨てる描写が頻出するのが気にかかった。猫だってあっけなく殺してしまうし。
例えばヘミングウェイの鱒釣りに関する小説のような、自然に対するあたたかい眼差しのようなものは見当たらない。

まあ、だいたいが主人公は都会育ちで自然にあまりなじめないような人間として描かれてるから、それはいいのだけれど。茂木健一郎の解説にあるように、時に暴力をふるい、自然に美をもたらし管理することを意識的にか無意識的にか作者が志向しているのであるとすれば、僕はその考えにあまりなじめそうにない。

>ふたりは病院を出、国道を横切って、公園に行った。
公園はかなりの広さがあった。平日で人影はない。陽だまりにはベンチがある。中央まで行くと円形の花壇。バンジーを色別にくぎった茶色いレンガの囲いから花があふれ出している。噴水の水が陽にキラついて高くあがり、音をたてる。(「その日は船で」)

こういう描写は行動と行動、間と間をつなぐ埋め草文章。
この手の描写はかなり不用意というか、コダワリないなと思う。端正で無駄のない地の文とあいまってスイスイ読める、ここらへんは純文というよりエンタメ的だな。

「夏の流れ」や「その日は船で」など、はじめのほうの作品は典型的な「だからなに?文学」。
解説に美に耽溺するわけでもないし私小説でもない的なことが書かれているが、確かにどっちつかずの印象が強い。

しかし「夜は真夜中」と「チャボと湖」は良い。

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2012年06月13日

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芥川賞シリーズ ④
死刑執行という仕事人の心を扱った作品。彼の家庭生活がうまく書けていて、主人公を応援したくなってしまう作品でした。
それにしても13階の階段をのぼる死刑囚とそこに向かわせる死刑執行人とのバトルは今もあるのでしょうね。

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2009年10月12日

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