【感想・ネタバレ】荒野の古本屋のレビュー

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Posted by ブクログ

最高の読書体験だった...!

読書と散歩、そして古い建物が好き......。冒頭のモラトリアム期の著者に共感の嵐で、ぐいぐい読み始めました。
「坑夫」というワードが道を開くポイントになっているのも面白い。こじつけかもしれなくても、それにまつわる出来事や偶然の出会いに運や縁を感じて逃さず、次に繋げる行動力に脱帽。
いつも自分の感じたこと、考えたことをシンプルに大胆に行動に移していて、まるで小説のような展開に次はどうなるのだろうと読んでいてワクワクしました。
今まで勝手に著者に対してお堅い人なのかな...という印象を持っていたのですが、文章からとてもユーモアのある明るい人柄が滲み出ていて、印象がガラリと変わりました。

また、知らない本や人、店などが多々登場し、行ってみたり読んでみたりしたい好奇心をつつかれます。自分の世界に奥行きをもたらしてくれました。
初めて森岡さんの本を読みましたが、他のご著書もぜひ読みたくなりました。

とても面白かったです!

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2023年03月04日

Posted by ブクログ

茅場町で古本屋を開き、今は銀座で週に1冊だけ同じ本を売るという面白い売り方をしている森岡書店を経営している森岡督行さん。

その森岡さんが、神保町の古本屋で修行し、自分の店を開業し、軌道に載せるまでの行動や思考が描かれている。

特にプラハとパリに買い付けに行った場面は、不安と緊張と安堵が伝わってきて、読み応えがある。

ひょんなことから古書店にギャラリーを開くことになり、そこから写真家の平野太呂と繋がり、POOLという傑作を展示することになる。

好きなことを仕事にする。
古本屋を開業し運営していく様子に、きっと勇気をもらえる人も多いはず。

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2021年07月09日

Posted by ブクログ

著者が森岡書店を独立開業するまでの話。とにかくギリギリな状況での著者の幸運を引き寄せる力?に驚かされた。嘘みたいな本当の話が沢山書かれていて面白い。でも運命に向かっている時って、確かにこういう信じられないような展開ってあるよなあ、、と思う。
書店は昔訪問したらお洒落で敷居が高い印象だったけど、本書を読んで、著者の気取らない語り口に親近感が湧いた。

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2021年06月11日

Posted by ブクログ

・森岡督行「荒野の古本屋」(小学館文庫)を読んで、いや読みながら思つてゐたことは、この森岡さんは幸せな人だといふことである。酒井順子の「解説」に、「開業や起業というと、幅広い好奇心を持った野心的な人が踏み切る印象がありますが、 森岡さんの場合は、好きなこと、興味あることだけに没入していった結果として、おのずと独自のやり方を発見しています。」 (235〜236頁)とある。具体的には、古本屋を始めると次にギャラリー、スタジオと手を広げていく。最初からさうしようと思つたわけではなく、結果としてさうなつていつた。それは確かに「興味あることだけに没入していった結果として」そこにできたことであらうと思ふ。普通はなかなかかうはいかない。第一に古本屋でも何でも、商売をはじめるのならばその場所を考へる。人通りがあつてとか何とかをまづ考へるのに、この人は「茅場町で昭和初期の建築を見れば、(原文改行)『ここで古本屋をやりたいです』(原 文改行)という言葉がほとばしり出てきて、本当に独立。」(酒井、235頁)といふやうに、場所ではなく建物が先に来る。これは巻頭の「中野ハウス」でも同様であつた。この時は22歳で己が住み処を求めてであつたが、この中野ハウスもまた「かつて戦前に作られた物件が三棟」(18頁)といふものであつた。この一部屋の「昔は石炭置場として使ってい」(19頁)た一画を「本を収納しておくのに、ちょうどよい構造だ」(同前)と判断し、「ロフトの上に寝転べば、読書に最適な場所となるだろう。」(20頁)として借りることにする。この人は古い建築が好きな人であつた。だから、場所柄も考へずに、部屋、建物の様子だけで開業を決めてしまふのである。開業した当日はともかく、最初は客はほとんど来なかつた。「開業当初のころの、本を仕入れる気持ちすら萎えてしまったという、破れかぶれの状況」(166頁)が一本の電話で好転する。するとスタジオの話が来て……といふことでギャラリーも間もなく始まる。こんな調子で、店が続いていく。
・もちろんすべてがこのやうにうまくいつたはずがない。「破れかぶれの状況」があつた。個人的には、さういふ時のこともまた書いてほしかつた。世の中、誰もがうまくいくことだけで生きてゐるわけではない。どれほどの絶望に襲はれたのか、そしてそこをどう乗り越えたのか。破れかぶれを一度は電話で乗り越えた。では、破れかぶれは1回しかなかつたのか。ならばやはり幸せな人である。他にもあるのならば……本書からはなかつたのかとも思ふが、逆に、きつと乗り越えたはずだとも思ふ。ただ、人は書きたいことは書くが書きたくないことは書かない。編集者も失敗よりは成功を望むだらう。とすれば、このやうに結局はすべてうまくいく、森岡さんは幸せな人だといふところに内容が収斂するのはしかたないのかもしれない。この人のこれまでが正にさうであつた、だからこれ以上は書けないといふことかもしれない。ならば、荒野の古本屋ならぬ、荒野を沃野に変へた古本屋とでも名を改めるべきだ。その方がずつと内容を表してゐる……などと私は考へてしまふのだが、これもこの人とは違つて世の中ままならぬとしか思へない人間ゆゑの感想か もしれない。「興味あることだけに没入してい」ければ良い。それで道が開けば更に良い。本書はそんな見本のやうな人の書であつ た。「一冊の本を売る」(8頁)書店を私は想像できない。これでは読む本を捜す楽しみが奪はれさうだと思ふ。その一方で、書店も様々であれば良いとも思ふ。私の周辺にそんな本屋はできさうにないのだが……。

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2021年02月21日

Posted by ブクログ

 定職に就かずに散歩と読書三昧の日々を過ごしていた若者が、あることを奇縁に神保町の老舗古書店一誠堂書店で勤務することになり、古書との関わりを持つ。数年後、茅場町にある建物・スペースに出会い、ここで古本屋をやりたいと一念発起、古本屋「森岡書店」を開業する、その道行きを描いたもの。
 
 他人からは、やることが決まらずブラブラしているように見えたであろう著者が、一誠堂書店での修業時代を経て、自分のやりたいことをしようと独立開業。プラハやパリでの写真集買付けのバイタリティに感心したし、ギャラリーやスタジオ、対外宣伝誌の古書目録刊行と、既成概念に囚われずに新たな書店の在り方を目指す行き方が、新鮮に感じられた。

 文庫版では、親本刊行後の変化ー特に、銀座で、一冊の本だけを売る書店をオープンさせたことーが、あとがきに綴られている。一度、是非訪れてみたい。

 

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2021年01月18日

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