【感想・ネタバレ】芸人人語のレビュー

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Posted by ブクログ

太田さんの著作はこれが初めて。

良かった点をたくさん書いて締めたいので、良くない点を先に書くと、まず、本の後半がコロナの話題ばっかで結構飽きる。

そもそもこの本は2019年から2020年の期間で月一連載のエッセイを書籍化したもの。なので、半分過ぎたあたりからコロナの話題が始まるのだが、途中からこの話題一辺倒になる。本人も話題にするの辞めたいけど触れないのも違うとしてるし、且つ、月一連載なので新型コロナの状況にも多少の変化があるため触れられなくもないみたいなニュアンスがあるから仕方がない。この煮えきれなさみたいなものが、文の熱量として直に伝わってくる。ゆえにキレ味も少し悪い。これが一つ目。

そして二つ目が、全体的に政治に触れた箇所は内容が薄いと感じた点だ。視点は面白いなと思うものの、揚げ足取りが多いなと思うことが多々あった。悪かった点は以上だ。

良かった点はとても多い。これは厳密に本の評価ではなく太田光に発見したことと前置きしたいが、一つ目は、やはり引き出しが多くて話として面白いこと。

毒のない優しいお笑いを求める人種が好むチャップリンを、代表作「街の灯」から設定や話のディテールを元に、チャンプリンの笑いに毒がないなんてとんでもないと言い、その他萩本欽一のコント55号や、はじめてのおつかい等の具体例を挙げ、論理を展開していく様は痛快だ。ここまでバラエティ豊かな引き出しを持つ人は、芸人で他に見たことがない。

二つ目に、タブーを言葉にする努力を常にしている真摯な姿勢。

太田さんは世間の顰蹙を買ってしまうキャラだ。しかし、ワイドショーに目をやると、世間の反応を意識し、自分のイデオロギーを曲げてでも迎合主義なコメントを徹するコメンテーターのなんと多いことだろう。太田さんは反論されることをよくも悪くも恐れておらず、本書では自分の考えを形にする気概にあふれていて、私はそういった姿勢を買いたい。

三つ目に根っこにある優しさが感じられたこと。

教師のいじめ問題に触れた記事は、この加害が本質的に誰にでも起こりえる現象であることを指摘していて、そういった言及も本当に色んな人が誤解し、一定数「そんなわけがないだろう」と太田さんを馬鹿扱いするだろうし、今までもされてきたと思うけれど、これをこのポジションにいる人が言ってくれることに視野の広さを感じる。なんと優しくていじらしいオッサンなんだろうと思う。

芸人人語はまだまだ連載が続いてるようなので、2021年の選挙特番でのやらかしの解説を期待し、次巻も読みたいと思う。

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2023年01月22日

Posted by ブクログ

時事ネタの漫才をやり続けて、政治やニュースにも臆さず斬り込む、けどいざバラエティーに出れば手に負えないおじさん的な、独特な雰囲気を持つ芸人、爆笑問題の太田光さん。
先日、たまたまyoutubeで「爆笑問題のニッポンの教養」を見て、太田さんの視点にハッとして、感銘を受け、改めてファンになってしまいました。太田さんの思想や笑いに触れたくて、ラジオを聞いたり、動画を見たり、そして、この「芸人人語」という本を手に取りました。
この本は雑誌「一冊の本」での連載が掲載されているものです。その本を読んで、私が感じた三つのことを書きました。


①感情から入るのではなく、形に感情が宿る、命が宿る。
——
(本文一部抜粋)
まず「形」が決まる。その後に言葉や思考がその形に注ぎ込まれる。生物学的にもそうだろう。初めに「体」ができ、「思考」はその後だ。
神社に参拝するときに重要なのは、例えば二礼二拍手一礼と言った形式である。
神職が唱える祝詞は、神に豊穣するもので、人に向いてはいない。祈祷で重要なのは形式だ。
演技においてもまず形を決める。そこに感情を宿す。
——
50年前と今の生き方の一番大きな違いって、私は「選択肢」の多さだと思います。普通の世間が敷いたレールにのって会社員をやってもいいし、自分で会社を立ち上げてもいい。故郷に住んでも、東京に出ても、縁もゆかりもない土地に引っ越しても、海外に住む選択肢もあります。
例えば、野茂英雄がアメリカの大リーグに行くと決めたとき、当時「無謀」と言われた大リーグでプレーするもいう選択肢は、今なら「あなたの自由」「そういう選択肢もある」と言われるだろう。前例もあるし、経済的にも、政治的にも、あらゆる選択肢をとることへのハードルが低くなっています。それは過去に多くの人が様々な成功のレールを残してくれたことと、その記録を世界中で見ることができるテクノロジーがあり、情報は誰でも簡単に手にとることができます。
今は、選択肢がたくさんあるからこそ、無駄に考えてしまう。「自分の本当にやりたいことはなんだろう」「自分に向いていることは?」、何が最適解なのか。そもそも最適解を取る必要もあるのか。
でも、考えても答えなんて出ない。自分に向いているか。自分のやりたいことは何かなんて、やってみないとわからないし、やってみてもわからないことも多いです。そんな中で自分の運命を受け入れ、形から入って、その中から自分らしさを追求していくのだと、改めて思うことが出来ました。もっと事は単純なんだということを短い言葉でこの本を通して伝えてくれているように思います。



② 自分が好きなものに出会うことはそれを好きな自分を好きになること

川崎の20人の殺人事件の話で、犯人は最後に自殺をしてしまうのだが、「一人で死ねばいい」という世論に対して、太田さんが持論を述べています。
最後にこの犯人は大量に人を殺した後に自分の命を経つ。なんで一人で静かに死なず、沢山の人を殺す必要があったのか。それは自分の命を大切に思えなかったから、だから他人の命も大切に思えなかったのではないか。
太田さんは高校時代、食べ物の味も感じなくなるほどに、無感動になり、無気力、そしてこのまま死んでしまってもなんとも思わない、そんな時期があったそうです。
その時に彼に感動する気持ちを宿らせたのは「ピカソ」の作品だったそう。
それまでも好きなものはあったけれど、本当にそれを好きかどうか自信を持てなかったという。ただ、それが好きな自分に自惚れているだけなのではないかという想いがあったそう。
だけどピカソの作品に出会った時に、好きなもの、感動するものを感じれる自分を愛していいことに気がついたという。
私はこの話にすごく共感しました。先日、青森の美術館に行ったんです。私は美術館に行くのが好きです。でもアートだ、歴史だ、ということは全くわからない。だけど、休みの日は何をしているんですか?と聞かれて、「美術館」といえばなんだか大袈裟な感じがしてしまいまが、現代アートの奈良美智の作品を、青森のは空いている美術館で独り占めのようにみられてとっても嬉しかったのは本当です。
だけど、アート作品はネットで自宅でも見られるし、奈良美智が描いたブスったれた子供の絵を見て喜んでいる私は、奈良美智の作品を見た自分に酔っているだけなのかとつくづく思い、好きだなと思う気持ちに自信を持てずにいました。だって、奈良美智の本質なんて全然わからないし、作品の背景だってなんとなくしかわかっていない。
ただ、太田さんの本を読んで、「ああ、私は美術館を楽しめる自分が好きなんだ」って開き直っていいんだって思ったら、もっと純粋に作品を楽しむことができました。



  
③先生どうにかできませんか?

「先生どうにかできませんか?」この言葉は、千葉で虐待をされていて亡くなった少女が先生に書いた言葉です。太田さんはこの小学四年生にしては大人びた書き方から、この子の置かれた状況や気持ちを推測しています。
虐待をしていた両親を人の心のわからないモンスターのように取り上げて罵ることは容易に出来たでしょう。太田さんはそれは誰の心にも起こり得るし、自分の中にもそういう一面もあるかもしれないというところから考え始めます。
社会で起きたことを、切り取って、「そんなのあり得ないだろう」「私だったら、そうしない」「普通じゃないことが起きた」という言葉で片付けてしまったら、きっとこれからもこういう悲しい事件が起きてしまうだろうと思います。
これは社会のニュースでも、会社の出来事でも、電車の中でも、自分が同じ状況だったらどうするだろうということ。そこにいろんな思慮が溢れているし、受け取り方と見方によって、その言葉を受け取った誰かを簡単に傷つけてしまうこともできるし、状況を知ろうとする過程でたくさんのことを学ぶこともできる。
「芸人人語」は爆笑問題 太田光さんの考えていることの一部が垣間見れる本ではあるが、それはラジオでも、番組でも、著書にも見ることができる。そしてそれは一貫している。それが間違っているかもしれないということも前提において、一貫している。

とても読みやすく、短時間で読むことのできるエッセイになっていて、重くならず、軽く読むことのできる一冊です。

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2021年07月02日

Posted by ブクログ

この本は読み続けると思う。太田さんの主に芸に対する気持ちだったり姿勢を知れるので芸や太田好きにはお勧め。途中からコロナの話題が多くなり飽きもくるので自分に必要なところだけ読むのもあり。

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2021年05月07日

Posted by ブクログ

太田光の主張は一貫しているのでフォロワーだったら目新しい箇所はさほどない。だがそれは欠点にならず、むしろ通底に存在する一貫性が彼を信用させる一助となる。

様々なものに影響され、その培われた持論を守る故に視点が限定されがちで、長年追っていた者からすると既知なものになりがちだ。しかし彼は思想を発表する場に恵まれているので、それ以上を求めるのは贅沢であるし、彼の貫き通すコアな部分は侵される可能性はないだろうということに安心を得られる。

以下メモ

芸能人として太田光は無責任男を標榜するトリックスターとしての一面と、鋭い視点で積極的に社会問題を切り込むオピニオンリーダーとしての一面があるのではないかと思う。(異論はあるだろうが)

統一教会を擁護する彼の存在を見て私を含む世間一般の人達は無責任な発言と太田を糾弾し溜飲を下げようとするだろう。ただ普段はくだらないことをいう芸人に過ぎない彼の一面から公人としての責任は微妙に回避することができる

一方、世間から白い目で見られている信者達にとっては彼をオピニオンリーダーとしての側面から彼の発言によって自身の存在を擁護することが出来る。彼がつくりあげたブランドの賜物だろう。太田の発言に救われ悲惨な道へ進まなかった信者も多いだろうと思う(既に悲惨だと言われれば首肯するしかないが)。

要するに無責任であることが彼の生命を守り、ブランドでもあることが信者の尊厳を守るのである。この微妙なバランス関係が崩れると、太田や信者にとって不幸な結果をもたらしたのではないだろうか。

太田が意図的にやっている訳では無いだろう。しかし植木等を尊敬する彼が目指す無責任男としての一面と、自身の経験による自省から少数派への徹底的な擁護を行う一面によって、彼の存在は世間から攻撃を受けるあらゆる人にとって、自然とその世間との緩衝地帯になる可能性を持つことになるのである。恒等関係になっていると言えばいいのか。(気取って意味をよくわかっていない用語を使ってみました)

反社会的組織の存在を許さないという私たちの意識は、規範的な社会の実現のためには不可欠である。私も統一教会の存在は許し難いと思っている。しかし社会が掬いきれない影の部分を包摂する団体や個人が反社会的であるのは往々にある。
その存在が奪われた時、虐げられた人達は何をよすがにすればいいのであろうか。

太田光の存在は拠り所のない現代の多くの人にとって必要不可欠なものとなりつつあるのかもしれない。(大袈裟)

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2023年11月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

やっぱり好き。久しぶりに文章を読んだけれど、ちゃんとわかっていて嫌われそうなこと言ったりしたりするのだな。 時事ネタなので後半はほとんどコロナだけれど、どうしてこんなことになってしまったのか…悔しいしかない。 色んなこと、終わったこととして考えられるように早くなってほしい。

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2022年10月09日

Posted by ブクログ

たまに、若手のお笑い芸人が「太田さんの本読んでまーす!」とバラエティで話題に出しているのを見かけたりするけれど、バラエティにおける爆笑問題のテイストを想像して読むと予想以上にお笑い要素の少ない、時事ネタ漫才の「時事」部分を漫才要素抜きで話題にした内容で驚くのではないか、と思う。
連載時期が連載時期なだけに後半ほぼコロナ関連の話で(太田さんのエッセイ類の中でもこの構造はかなり異色)かつて阪神淡路大震災やオウム事件が起きた時漫才の内容変更を余儀なくされた話なんかも触れられていて、それだけセンセーショナルな時期なんだと話題だということも、その状況下で締めはやはり志村けんのことになるところも、太田さんなりの思考が見えて興味深い。

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2021年04月01日

Posted by ブクログ

爆笑問題のラジオが好きで、特にカーボーイは毎週欠かさない。くだらないトークで盛り上がるのも好きだが、太田さんが時折熱くなって話し出す内容に、いつもいつも関心し、「この人は、いったい何なんだろう?」と思っていた。

じゃあ著書を読めよということで、今回初めて、著書から太田光という人に会ってみた。

レビで大学教授に食ってかかる姿とは対照的に、その気持ちや思考は落ち着いていて、覚悟を持って世界を見つめ、挑んでいる。優しさと厳しさと純粋さと哀しさと、いろんなものが混ぜ混ぜの状態だけど、ああこの人は世界や人間を愛しているんだ、と思った。

カオスな物事、予定調和を壊して混沌とする状態を楽しむ(楽しんでいるように、私は思う)本人の芸質と同様に、その愛は一辺倒の意味はなくカオスなのだけど、私はこの愛の形が大好きだ。

恋人同士が、良いところだけじゃなく、悪いところ、良い悪いもない混ぜに、ただただ相手の存在を大切に感じ抱きしめていたいと思えることが、ままあるように、太田光という人は、自分が生きている世界と付き合っているし、命を生きている。

とても面白く、支えになり、刺激され、尊敬する姿だ。

ニッポンの教養というNHKの番組も大好きだった。あんなふうに、ディベートとは違う、共同登山のような対談を、もっと書籍化して欲しい。知れば知るほど、爆笑問題は面白い。

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2021年03月21日

Posted by ブクログ

エッセイとしてしっかりした内容だと思う
破天荒に見える太田光の考え方がよくわかるし
そして、この本はコロナ渦での世相がお笑い芸人視点で記された貴重な資料のひとつになる、かもしれない

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2021年01月16日

Posted by ブクログ

太田さんはずっと悩んでいて、自省し自分なりの正しさを探し続けている。コロナの時にこんな文章を読んでいたら気が随分楽になったと思う。
あと文章中に出てくる人物が高田文雄と田中しかいないのが微笑ましくなった。

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2021年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「自己愛」というと、ネガティブなイメージを持つ人が多いと思う。ナルシスト・自己本位・自己中心的など。しかし自己愛を否定してしまうと人は生きていけない。「自己愛」と「自己犠牲」は相反するもののように見えるが実はそうではない。
 自己犠牲の根底には自己愛がある。誰かの為に自分を犠牲にするという行為は、そういう自分でありたい、という美意識から生まれる。自分を好きでいたいという願いが、自分を抑える力になる。他人を犠牲にして生きた自分を、自分はきっと許せない。そんな自分を自分は嫌いになるだろう。その恐れがあるから自分を抑えるのだ。
 何かを好きになるということは、実は自分を好きになるということだ。例えば文学作品に感動した時、人は作品を好きになると同時にその作品に感動出来た自分を好きになる。作品に感動する感性を持つ自分を捨てたもんじゃない、と思える。作品を好きになる前よりも、好きになった後の自分が好きになる。芸術だけじゃない。人を好きになることもそうだ。若い人達の恋愛でもそうだろう。「この人を好きになった自分」を誇らしく思うからこそ、誇りを与えてくれた相手を好きになる。自分だけが気づいた相手の魅力なども自分を好きになる要素になる。相手の魅力に気づけた自分はまんざらでもないと思えるのだ。ましてや好きになった相手が自分を好きになってくれたら、自分は、その人が好きになる程の自分だったのかと、誇らしくなり、また自分を好きになる。
 片思いでも同じだ。「男はつらいよ」の寅さんは好きになったマドンナを必ず楽しませる。相手が笑うと自分を誇らしく思い、更に笑わせようとする。映画の後半では必ずマドンナが別の人を好きだとわかる。この時重要なのが自己愛だ。寅さんは自分が相手に惚れているということを微塵も悟られないようにふるまう。観客も、「くるまや」の人々も、マドンナ以外は皆わかるのだが、意地でもマドンナにはわからせない。マドンナが好きな男とうまくいくように取りもったりもする。最後はふられて旅に出る。その時寅さんの心にあるのは、「自分の大切な人の幸福を、自分が関わらないことによって守った」という誇りだ。マドンナの幸福を喜べる自分でありたいという願いだ。この自己愛があるからこそ、寅さんは堂々と胸を張って、再び人を好きにあり、次の恋が出来る。

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2023年03月19日

Posted by ブクログ

何事にも一家言ある著者。
ちょうど、コロナ禍の真っ只中の頃のエッセイ。
小泉元首相、やっぱ変人ぽい。思い込みで知り合いにように話しかけること多しみたい。
安倍元首相のことにもいっぱい触れていた。
今回の暗殺には驚いただろうな。

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2022年10月24日

Posted by ブクログ

太田光のコラム集
ちょうどコロナが始まる前からのことで世の中の事件とも絡み合ってて読み応えあった
そして知らなかった本や人物を紹介していていい

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2022年10月15日

Posted by ブクログ

前半は氏らしさが文面に出ていて、まるで漫才のネタを読んでいるように面白い。特に爆笑問題の漫才が好きな人にはおすすめ。後半は同じような内容で飽きが出た。

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2022年03月02日

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