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Posted by ブクログ
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
美しい題名の『樹下の想い』を読み終え、最初に心に浮かんだうた(百人一首)です。
そして、愛する・浮気はしないと、心に決めて貫いた、三浦友和さんを想った。
格好いい男性はいつの世もいらっしゃいます。
嬉しいことに!
華道家元の娘・絹子を愛する、花材職人の平賀誠吉の儚い恋。
あれから二十六年の月日を経ても、忍ぶ想いは、くすぶり続ける。 忍ぶには、あまりに一途で、甘く、苦く、誠吉にまとわり付く。
それは過去のこと、秘めたはずなのに・・・絹子の夫や誠吉の妻さえも苦しめる。
誠吉の娘・百合子と良介の若い恋とは、対照的に、『山桜が控え目に花を咲かせ』るころ、絹子と誠吉のそれは、終焉へと向かう。
しっとりと・・・そして、美しく、震えながら。
二十六年前の過去と現在が、小刻みに行き交う。回想として誠吉の心理を描いている。
その巧みさに、酔いしれる。
今どき(1997年刊当時でも)珍しい、一途な美しい美しい恋の物語。
華やかな花材の花々、懐かしいジャズのナンバーが、更に、彩りを。艶を。
『生け花が美しいのは、咲き誇る花のうちに死滅の予感が秘められているからだということを、誠吉は身をもって知ったのである。』