【感想・ネタバレ】幻獣の話のレビュー

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Posted by ブクログ

しっかりとした辞典を選ぶとしたら、「幻獣辞典」(ボルヘス)が河出文庫で出ている。原典に挑むとすれば、「東方見聞録」「山海経」などが手に入りやすい。この薄い文庫本は、それらに向かうための先導役としては打ってつけかもしれない。

黄金の国チパングを広めたマルコ・ポーロは、「私はホントに見たんだ」と主張して、ホラ吹きの異名を取った。しかし、今になってみると「樽のような蛇がのし歩いた」「スマトラに棲む一角獣」「犬の顔を持った人間」の正体は、その描写が詳細なだけに容易に推察がつく、ということを実はこの本で初めて知った(答え合わせは本書の一章目を見て)。
※コレ、ゼッタイクイズ番組のネタになる。

大航海時代が終わって、架空の生き物が「博物誌」から消えるのは18世紀後半らしい。反対に言えば、それまでには、立派な学者が大真面目に架空の生物を論じていたということだ。

日本の日光東照宮には霊獣が、種類にして150余、総数約800体、一つの建物を埋め尽くすように刻まれているという。そうか、そういう処だったんだ!突然行きたくなった。鳳凰、龍、麒麟の他に龍馬、猩猩(しょうじょう)、獏、やがて鳴蛇(めいだ)、蜃、息とかかなりマイナーな幻獣のオンパレードである。

それらの主な原典は「山海経」。もとは中国古代の地理書ではあるが、やがて百科全書になったという。紀元前3世紀の戦国時代に成立、その後何度も手を加えられた。小野不由美「十二国記シリーズ」のもとになっているのは御承知通り。

だから、学者が語らなくなっても語り手はなくならない。幻獣の話は古代の専売特許ではない。現代こそ、うごのたけのこ、の如くウヨウヨと蔓延っている。池内紀さんはロボットもその一つだという。

人間はなぜ幻獣を産み出すのだろうか?

明確な答えの出ない、この問いを、池内紀さんは絶えず発している。
私は、さまざまな答えを用意しながら
イメージを宇宙にまで広げている。

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2021年12月27日

Posted by ブクログ

幻獣といってもいろいろな想像上の生物を集めた本ではない。そういう面もあるが、それにまつわる著者の考えを述べたエッセイ集とでもいったところ。最後は畸形からロボットまで及ぶ。著者は、あとがきにある「奇妙な生き物を生み出した人間」について語りたかったもののようだが、全体的にまとまりがないようにも感じられる

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2021年07月31日

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