【感想・ネタバレ】イギリス帝国の歴史 アジアから考えるのレビュー

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Posted by ブクログ

イギリスの植民地経営、近現代のイギリスと植民地間貿易の仕組み、ロンドン・シティの金融街がイギリス外交政策に与えた影響、コモンウェルスの歴史、インドが果たした役割などが勉強になった。

もともと、香港と他のイギリス植民地の経営方針の違いが知りたくて読んだが、イギリスと植民地の関係は物凄く奥が深くて面白い事がわかった。

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2020年06月07日

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17世紀にはじまる大英帝国の衰亡を、とくにインドを中心としたアジア方面の経済を軸に論じている。世界の四分の一を支配した大帝国も、時の移ろいとともにヘゲモニー(覇権)を米国に譲り渡すととなったが、本書は、そこまでの帝国の確立、膨張、運営、破たん、衰亡に、公式帝国、非公式帝国の観念を織り交ぜながら、いかに経済が大きなウェイトを占めていたか、ということを理解させてくれる。当時のヨーロッパ情勢はほぼ出てこないが、それは、世界最強の軍事力を持った大英帝国が、政戦両略をもってヨーロッパ各国の思惑をはねのけてきたためともいえる。唯一フランスに付け込まれて誕生した米国が、ヘゲモニーを受け継ぐことになるのは、皮肉とも取れる。
また、非公式帝国には、初期の大日本帝国も組み込まれており、これは日英同盟による、日本のジュニアパートナーへの昇格まで、続いていた、という点は、驚きがあった。大英帝国が緩やかに衰退し、帝国+コモンウェルス、最終的にはコモンウェルスのみへ移行し、完全に消滅した今となっても、遺産として残っているものは多い。
やはり、20世紀までは、政治、軍事、文化、どれをとっても、大英帝国こそが、世界最強の覇権国家であったことを再認識させられ、その実像を知る一端となる書だと感じた。

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2016年04月29日

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[唯一無二のヘゲモニー]かつて世界の陸地の約四分の一と海洋を支配したイギリス帝国。帝国から植民地という垂直関係だけではなく、両者の相互関係の中でイギリス帝国がどのような影響力を与え、そして与えられたかを、特にアジア地域との関係性の中で幅広く考察していく作品です。著者は、イギリス関係の著作を幅広く世に送り続けている秋田茂。


イギリス帝国の幅広い顔が見えてくる一冊。単なる歴史の「強者」としてのイギリスではなく、ヘゲモニー国家として世界史的役割を果たした存在として捉える視線が非常に興味深い。特に、自由貿易体制や通信網の整備など、誰にとってもプラスになる国際公共財を提供しながら自国の影響力を高めていくところに(期せずしたものかもしれませんが)「巧みさ」を感じました。


また、あまり知られていないアジア地域とイギリス帝国の関わり合いについての指摘も白眉。特に、物理的な影響力の行使が地理的制約にも伴って限定される中で、シティを中心とする経済・金融体制がアジアをしっかりとイギリス帝国につなぎとめていたことに驚きを覚えました。少し教科書的な記述が散見され、読み進めるのに努力を必要とするところもありましたが、グローバル国家の本格的な考察としてオススメです。

〜ヘゲモニー国家は、世界諸地域に多様な国際公共財を提供してきた。それらは、国際秩序における「ゲームのルール」の形成に直結しており、アジア国際秩序を考えるうえでも不可欠の構成要素であった。〜

新書ですがボリューム感あります☆5つ

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2014年08月26日

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秋田茂氏によるイギリス帝国の構造とその盛衰についての著作です。

本書では「長い18世紀」から現代に至るまでのイギリス帝国について、主に経済面から歴史学の研究成果に触れながら考察を行っていきます。
さらに副題にもあるようにイギリス帝国の経済ネットワークとアジア各国との関わりについても検討を加えていきます。

本書のイギリス帝国についての語りにおいて特徴的なのは、ヨーロッパ中心的な検討から脱した現在の歴史学研究を参照することによって、イギリス帝国の内部について「イギリス本国」と「植民地」といった形骸的な見方の中では隠されていた多様な経済的関係が紹介されていることでしょう。
例えばイギリス本国においても「ロンドン・シティにおける金融資本」と「マンチェスターを中心とした綿工業資本」の間では、植民地政策において求めることが異なります。植民地の側においてもカナダ・インド・南アフリカとそれぞれの植民地においてイギリス本国に対する要求は異なり、更にはインドの中でも現地行政府であるインド政庁とアジア貿易に携わるイギリスや現地インドの商人たちでは望ましい政策は違います。広大なイギリス帝国の内部では、このような様々な利害関係が帝国内貿易というモノ・カネのつながりを通して複雑に絡み合っていたのです。
本書は上記のような多様なステークホルダーについて詳細な分析を行い、イギリス帝国の時代ごとの経済的本質がそのパワーバランスにしたがって、様々に変化して行ったことを明らかにしています。
こうしたイギリス中心の帝国観とは異なる見方を導入することによって、イギリス帝国内において植民地側の主体性が従来考えられていたよりも強く発揮されており、本国と植民地の協調によって帝国が運営されていたことがわかってきます。

更に本書ではイギリス帝国の「正統な」支配地域である公式帝国に関する考察のみならず、その経済的影響下にあった非公式帝国との貿易やこれらの地域に国境を超えて影響力を及ぼす源泉となった「自由貿易体制」や「国際公共財」についても検討していくことによって、イギリス帝国という存在が世界経済に対して及ぼした影響が明らかになります。特にインドに対して大きな経済的紐帯を持っていた東アジア地域について、中国・日本それぞれの近代におけるイギリス帝国の影が見られることを本書では指摘しています。東アジア世界の近代化は、欧米列強による強制的な開国がひとつの契機ではありますが先行して世界経済の中にあったインドと接続することで発生したと考えられます。こうした点からも少なくとも経済的には「西洋vs非西洋」という考え方は必ずしも当てはまらないことがわかります。

本書を読むとイギリス帝国を通じて世界経済がヨーロッパからアジアまで網の目のように関係性が構築されており、植民地の支配費用の負担なども考えると必ずしも西洋にのみ利があるような構造であったわけでもないことがわかります。そこで問題になるのは西洋が主導権を握っていた20世紀前半までの世界のありようの原因が何であったのかを改めて考える必要があると思います。

本書でイギリス帝国の分析に使用された様々な手法は、大日本帝国の構造や現代アメリカを中心とした国際関係の分析に用いて考えてみると、新たな視点が得られると思いますので、そういう点でも面白く読めたと思います。

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2013年08月29日

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イギリス帝国の歴史についてインドをはじめとしたアジア諸国との関係を中心に描いた書籍。近年、どの学問領域においても個々の事象ではなく、その関係性に焦点が当てられてきているが、本書もその潮流に乗ったものである。日本とイギリスの関係についても語られており、経済や貿易、金融などの視点からも近現代を雑観できる良書である。

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2020年09月10日

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これまでの通説を紹介しながら、それを覆してグローバルヒストリーの面白さ、視点の豊かさを提示していく著作。アジア、特にインドの存在が、イギリス帝国の「帝国性」を支えていた。(カナダはどうなの?)

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2018年11月23日

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ネタバレ

P.59-62 七年戦争による財政赤字と負債の増大があまりに急激であったために、その負担の一部を北米植民地に転嫁せざるを得ない状況に追い込まれたのである。
こうして本国政府は1765年に、法律・商業関連の文書だけでなく、新聞や書籍など印刷物全てに本国発行の印紙を貼ることを義務付けた印紙法を導入した。植民地側が「代表なくして課税なし」の論理で同法に激しく反対したことはよく知られている。印紙法は現地植民地の反対で、翌66年に撤廃に追い込まれた。
しかし本国政府は67年に、蔵相タウンゼンドが別の形の増税策として、茶、ガラス、紙、ペンキ、鉛に輸入関税を課した(タウンゼンド諸法)
(中略)
イギリス商品とイギリス的生活様式を拒否することが、植民地側の独自性を主張する手段になった。
(中略)
本国政府は、北米植民地への茶の直送と、その独占販売権を東インド会社に与える茶法を、1773年に制定した。
同年十二月十六日、茶法に反対した商人・急進派市民が先住民(ネイティブ・アメリカン)を装った上で、ボストン港に入港していたイギリス東インド会社船を襲い、積荷の茶を海に投棄するボストン茶会(ティー・パーティ)事件を引き起こした。
(中略)
消費パターンの脱イギリス化、その典型としての紅茶の拒否が、アメリカ人のアイデンティティの確立にとって不可欠となっていったのである。

P.206 ポンドの価値を実勢レート以上に過大評価した旧レートでの金本位制への復帰は、イギリス本国の産業界にとってはポンド切り上げとなり、輸出を困難にして打撃を与えた。他方、ロンドン・シティは、海外のポンド建て資産の価値を温存でき、ニューヨークに対抗する国際金融センターの地位を保つためにも必要な措置であるとして、この政策を歓迎した。

P.257-258 国境を越える広域史(regional history)、広域の諸地域相互の関係史(trans-regional history)など、新たな枠組みを創出する必要がある。その一つの実例として、現在、世界中の歴史家や社会科学者が注目しているのが、グローバルヒストリー(global history)と呼ばれる歴史の捉え方である。

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2017年12月07日

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ネタバレ

 かなり読むのに時間がかかってしまった。中世の終わりから現代までのイギリスを中心とした世界史を駆け足で辿っていく感じ。何年に何が合って…と形式的な記述が多いため世界史の年表がざっくりにでも頭に入っていないと読みにくいし、内容の理解もいまいちになってしまう。
 植民地時代のイギリスは圧倒的な権力で支配していたのかと思っていたが実際には軍事力では解決できないことも多く、外交の駆け引きなど複雑なやりとりがあった。現在はアメリカにヘゲモニー国家の地位をとって代わられたが、イギリス帝国の遺産は現在も世界に大きな影響力を持っていることにも注目したい。
 教科書で教わるような歴史認識が近年見直されているようだ。新たな資料が見つかり、新たな定説がなされて、それが議論される。今確立されている歴史も事実ではなくあくまでひとつの認識ということを意識するべきだろう。

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2014年03月07日

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イギリス帝国歴史を、18世紀から現代まで通説する。東インド会社、北米植民地、ジェントルマン資本主義、コモンウェルス、脱植民地化、そして第2次世界大戦後に。
興隆を極めた帝国支配だが、決定的打撃はスエズ戦争の敗退によりもたらされた。そしてアメリカという新たなヘゲモニー国家のジュニアパートナーたる道を選ぶ。
現代は、世界経済の中心がアジア太平洋経済圏に移行しつつある。そのシステムの基盤を作り上げたのがイギリス帝国であるというのが本書の立場で、グローバルヒストリーという視点を大切にしている。

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2013年10月05日

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 本書は,近年のグローバルヒステリーの研究結果を踏まえながら,18世紀から20世紀末までのイギリス帝国の形成・発展・解体の過程を,主にアジア諸地域(特にインド)との関係性から論ずるというものである.
 また,本書では同時に,今日,環大西洋圏に変わって世界経済の中心となりつつある,アジア太平洋圏の経済システムの基礎が,如何に形作られたかという問題についても,これに対するイギリス帝国の関与とその意義を明らかとする.本書は2013年度読売・吉野作造賞を受賞するに至ったが,一読すれば,それも納得できる内容である.イギリスの一国史という視点を離れ,同時代の諸地域・諸国家間のヨコの関係,つながりに注目しながら,それらとの「比較」と「関係」という観点で歴史を論ずる,グローバルヒステリーの手法は新鮮で,非常に興味深いものであった.今日,TPPやEUの問題を契機として,グローバリズムに関する議論は世界的に高まっているが,本書が提示する,ヘゲモニー国家たるイギリス帝国の,世界の経済システム形成に対する考察は,この点で極めて有意義な観点を読者に与えてくれるものであり,現在の世界を考える上でも,一読の価値は十二分にある一冊である.

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2013年10月19日

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かつては世界の四分の一の土地を支配したイギリス帝国の変遷を、アングロ・サクソン系国家の推移、特にコモンウェルズを形成するアジア諸国(特にインド)との交易から勉強できる一冊。

日本との関係でいえば、日清戦争直前の1893年に神戸と英領ボンベイを結んだ日本郵船社の航路は日本で初の国際定期航路とのこと。
近時、韓国に5,000億円に相当する偽の外債券詐欺があったらしい(今は紙で発行してないw)けど、本物のロスチャイルド・アーカイブ蔵の、日露戦争資金調達向け日本政府外債の写真も掲載されていて迫力がある。

特に興味深かったのは、リヴァプールとアフリカ大陸のガンビア、カリブのジャマイカを結ぶ大西洋の三角貿易。 今のイギリスの音楽文化に繋がるものを感じた。

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2013年09月20日

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ネタバレ

ロンドンオリンピックにかけて、
イギリスの歴史を知ることを目的に本書を取った。

イギリスは、世界の覇権を握った。
その歴史と、その影響力の及ぶ範囲の広大さに驚く。歴史をほとんど勉強してこなかった自分だが、奴隷貿易という重要な問題について、知らなかった自分に驚く。アメリカの独立に対する背景、インドとイギリスの関係、そして、アジア、アフリカ。
歴史を知らずして、グローバルを語れないとつくづく感じた。

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2013年01月05日

Posted by ブクログ

アジアとの関連性に重心を置いたイギリス帝国史の通史。イギリス本国が植民地を支配したという一面的な見方だけではなく、インドをはじめとしたアジア植民地勢力がイギリスに与えてきた影響や、その結果帝国がいかに変容し、解体していったか語られている。こういう経済史の講義だったら、大学でももっと勉強していたかな。

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2013年01月29日

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グローバルヒストリーという手法で、一国の歴史に留まらず、地球的視野で地域間の関係からイギリス帝国の歴史を描いている。17世紀のアジア圏での交易と大西洋圏の交易と密接に関係している様子や、遠隔地交易の決済の必要性からシティが発展していく様子等が生き生きと描かれており面白かった。19世紀のイギリス小説には、インドで成功した人物が良く登場する。その人たちが、個人にも許可されている貿易により財産を築いた東インド会社の文官や軍人らしいと分かったのが、この本を読んだ副産物であった。

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2012年12月08日

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 地球規模での諸地域の連関を考え,各国史を超える新たな世界史を構築しようという「グローバルヒストリー」が近年注目されてるらしい。本書はそれを取り入れた大英帝国の通史。
 特にアジアの視点をメインにしてるのは,二百年にわたって世界経済を支配した欧米世界に変わり,今世紀に勃興してきたアジアを重視したため。大英帝国は,長い18世紀から20世紀まで,アジアとも密接な関係をもってきたため,まさにうってつけの視点でもある。
 大英帝国が19世紀を中心に世界を支配したのは,地球の各地に定住植民地,従属領・直轄植民地,非公式帝国を築いてきた結果。その帝国が,どのように形成され,どのように繁栄して,そして衰退していったのか,興味深く読める貴重な新書。中公新書の歴史物はほんとに良いものが多いな。

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2012年08月15日

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トインビー以来の産業革命が近代への一大転換点であったという見方に揺らぎが出ているという近年の歴史学上の動向や、英国の金融立国はかなり昔から続いていたことなど、従来とひと味違った英国史観が興味深かった。

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2012年07月15日

Posted by ブクログ

帝国の歴史は、いかに宗主国の経済的利益のために、搾取するための植民地を作ってきたのかの歴史である。金のためには何でもありの国家形成政策である。このような帝国主義は一昔前のもののように感じられるが、今まさに帝国化したあるいは帝国化しようとしている国々が世界に猛威を振るっていることには驚きである。いつになったら世界中でウィン=ウィンの関係が構築できるのだろうか。

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2020年09月10日

Posted by ブクログ

その版図を世界各地に広げたイギリス帝国に関する近現代史。
経済やヒト・モノの流れの解説がメインで、
政治や外交に関する話題は少なかったのが残念。
各地方に対する支配形態の多様さが新鮮でおもしろかった。

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2013年04月18日

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