【感想・ネタバレ】イツロベのレビュー

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Posted by ブクログ

1999年7月に刊行された藤木稟作品。

「ホラー・SF・伝奇・ミステリー、あらゆるジャンルを超越した壮大な物語」と、内容説明にありましたが、自分は、SF・伝奇・ミステリーの要素もあるオカルトホラーとして読みましたね。
産婦人科医の間野が、赴任先のアフリカで出会う人類発祥の地なのではないかという森にたどり着くおどろおどろしい、自然人類学と神話伝説とを重ね合わせた前半アフリカ篇。
日本に帰ってきた間野の娘が見えない友達と遊んでいるのではないか、ということに端を発し、徐々に家庭が崩壊。間野の忘れようとしていた過去を思い出すところから、間野の出生の秘密が明かされるというミステリー的な後半日本篇。この後半では、心霊、人怖、幻想ホラー、サイバーSFの要素を盛り込んでいます。

色々と、ジャンルがミックスされた内容ですが、アフリカから日本へ。現在から過去へ、間野が精神崩壊をする過程を、読者が追体験するという一貫した物語が縦糸としてあり、最初から最後まで興味が失せることはありませんでした。

人工知能の恐ろしさは、刊行当時よりも、スマートフォンがこれだけ普及した今の時代のほうが実感できるでしょう。都市伝説的な楽しさもあります、
自分にとっては、今まで読んだ物語の中でも、最高の部類に入ります。

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2021年03月30日

Posted by ブクログ

◆ネタバレがありますので未読の方はご注意ください


間野と理沙のストーリーはおもしろい。呪いから狂気の中の「救い」へ。果たして間野が見たものは呪いだったのか?狂気だったのか? 狂気だろう。そうじゃないと間野が戻った家では理沙が出迎えないのではないか。

アフリカの「熱」がもっと東京を浸食するのではと期待したのだが…。熱帯、熱気、熱病といったアフリカに都市が絡め取られていったらおもしろかったのに。タパトゥーニたちが東京まで来たのも、ストーリー上はあまり大きな意味を占めていない。すべては間野が見た狂気だったといえば、そういえなくもない。

結局イツロベとはなんだったのか? タパトゥーニ→interpritor(文明を翻訳するもの)、ツゥシス→system(ラウツカを統制するもの)、ル・ルイ→error(不完全な者)というのはそのままであるが、博士から出てきたその符号があまりにも唐突で、アフリカとのつながりがわからない。

脳細胞と脳全体の関係をコンピューター端末とネットワーク全体にあてはめ、個々は全体のことなどわかるわけがないが安定がもたらされるというのはなるほどと思った。これまで何となく考えていたことが、巨大な脳Big Brainという単語ですっきり整理できた。

作者が女性だとは思わなかった。

間野のエピソードを榎本の息子の失踪〜発見のエピソードが挟む構成になっているが、間野のエピソードの濃密さに比べ榎本のエピソードは薄っぺらく、また双方の関連性が薄いため、最後がしっくりとこない。冒頭と最後に息子のつぶやきが出てくるが、間野のエピソードとの関係が希薄なため、突然新しい人類が生まれつつあるというような取ってつけたような印象になってしまい、物語を挟み込むモノローグとしてぜんぜん効果的になっていない。少年少女たちはこれまでとは違うDNAプログラムが発現したということをいいたいのだろうが、それが最後のシンポジウムでの演説だけで一方的に語られてしまっており、唐突かつ盛り上がりに欠ける。

ゴスペルというゲームも言葉を象徴する割には物語の中での位置づけが中途半端である。

ゴスペル、言葉、ネットワークゲーム、Big Brain、アフリカ、呪術、熱帯、DNAというキーワードからはもっと「壮大な物語」が創造できそうな気がするのだが…。


ということで、なんだかイマひとつ「突き抜けないなあ」という印象が拭えない。

『テンダーランド』という続編があるらしい。となるとそちらで榎本のエピソードが語られるのだろう。ただしそちらを読んでみて初めて全体が見えてくるということはないだろうな。それだったら最初から上下巻でやってくれい。

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2018年10月15日

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