【感想・ネタバレ】改訂版 神話と歴史叙述のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

『古事記』と『日本書紀』を中心に考察をおこない、古代の日本人がそのなかに生きていた世界観を解明している本です。

本書は二部構成となっており、第一部「歴史叙述の方法」では、『古事記』と『日本書紀』のそれぞれが、どのようなしかたで歴史を物語っているのかということを主題としています。『日本書紀』は、中国の歴史書のスタイルを踏襲し、編年体というかたちを採用することで、国家の時間と空間を一定の秩序のもとに統一的に語っているとみなすことができます。これに対して『古事記』には、そうした明白な歴史叙述の統一原理が存在せず、むしろさまざまな伝承をそのうちに抱え込むことで、国家の歴史という枠組みそのものを内側から掘り崩してしまうようなスタイルをもっていると論じられています。

また、古代において起きたと考えられる、父系制と母系制の衝突とその帰趨についても、神話の叙述をもとに著者の考えが提出されています。著者は、いわゆる欠史八代の天皇にかんする叙述に、古代の母系制の「残照」を読みとり、さらに推古および持統という二人の女帝が誕生した理由を、古代人の信仰のありかたのうちにさぐろうとしています。

第二部「歴史としての起源神話」では、とりあげられているテーマはさまざまですが、いずれも神話が語っているこの世界の「起源」にせまり、その特質を解明することがめざされているということができます。たとえば、農耕の発生を物語る神話をあつかった章では、自然と文化の対立という構図のもとで農耕の「起源」が「死」を内包しているということが主張されるとともに、供犠にまつわる神話の意義が解明されています。

0
2024年02月06日

Posted by ブクログ

 第一部「歴史叙述の方法」では、日本書紀と古事記という性格を異にする2つの歴史書において、歴史はどのように叙述されているかということを論じている。
 日本書紀では、特に巻三以降の各天皇紀は、編年体により、天皇の時間によって整序されているため、つながりのある出来事でも分断されることとなる。
 これに対し、古事記では、〈混沌→秩序〉のブロックが積み重ねられた伝承群から成り立っている、とされる。

 第二部「歴史としての起源神話」では、起源神話の語り方について考察される。笑いとイケニヘ、そして人間の誕生を語る青人草。

 第一部は、叙述の方法に関しての議論のため、その論理が比較的追い易かったが、第二部は、語に関する国文学的あるいは民俗学的素養がないと、理解が難しい。

 全体の中では、第一部第四章の「母系残照」、第五章「天皇の役割」が面白かった。

0
2020年09月14日

「学術・語学」ランキング