【感想・ネタバレ】金を買え――米国株バブル経済終わりの始まりのレビュー

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Posted by ブクログ

江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社、2020年)は通貨価値の下落に備えて金を購入することによる資産運用を説く書籍。新型コロナショックで世界各国の政府や中央銀行が行った「野放図な資金供給」がモラルハザードを起こし、通貨の価値が大きく低下すると警鐘を鳴らす。
通貨の発行量を増やせば通貨の価値が低下することは需要と供給の市場原理から当然のことである。日本では元禄時代の荻原重秀の実例がある。野放図な資金供給がモラルハザードをもたらすとの指摘は健全な民間感覚である。著者はコモディティ・ストラテジスト。慶應義塾大学を卒業後に商社で働いた。近時は国家の通貨発行権を特別視して通貨を無尽蔵に発行できるというような無責任な主張がなされている。永久機関を夢見る人と同じである。そこには政治(公務員)が経済をコントロールしようという傲慢さも感じる。それに比べれば著者は健全である。
一方で株価の暴落はどうだろうか。確かに政府や中央銀行の資金供給による株価釣り上げは不健全であり、市場を損なう。しかし、コロナ禍の中で民間の資金が株式投資に向かうことは健全な株高になる。日経平均株価は2020年2月15日に3万円台になった。これは1990年8月以来30年半ぶりである。コロナ禍で実体経済が大きな影響を受けている中で驚くべきことである。これがバブルか、市場の価値を反映した妥当な株価であるか問題になる。
管見は後者である。逆説的であるが、コロナ禍で実体経済が影響を受けているからこそ、株式に資金が流れる。実体経済への支出をせずに株式を購入するようになる。かつてのバブル時代の狂乱は日本中が一つの方向を向いていた異常さであった。コロナ禍で株価どころではない人もいる中での3万円台に逆に健全さを感じる。

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2021年04月05日

Posted by ブクログ

気になってたエネルギー(主に原油)についても書かれていて良い。

各国の政策や態度がどう経済に影響するかという話が多い。

金を買う根拠を淡々と並べるのではなく、各国の金の保有率増加と金の歴史的価値のみ確認し、世界を取り巻く状況を解説し予想した本

暴落が来た時、市場は復活するのかしないのか、資本主義を維持しつつイノベーションが起こるなら、まだ株式に希望はありそう。

金に対して価値が円は唯一上がっているのは意外だった。

とりあえず金を保有することが必須になることは確信した。

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2021年10月26日

Posted by ブクログ

ラジオNIKKEI やら何やらの投資番組でよく名前を聞く江守哲 2020年の著作、コロナ禍にともなう株式市場の大暴落が大幅な金融緩和によって一段落して、米大統領選を目前に控えた頃の出版。コンドラチェフ・サイクルを論拠にオランダ、英国、米国と移り変わってきた覇権が中国に移る(可能性が高い)とともに、基軸通貨としてのドルはその価値を失うだろうと予測する。「通貨は所詮、国家の信用だけが頼りの紙きれに過ぎないから、資産の一部は金で持っておけ」というのが主張なのだが、それを言ったら金を有りがたがっているのも、単なる幻想ではないのかという気もする。

金投資も少し勉強してみようとは思うのだが、ドルが紙屑になるほど金融システムが混乱している時に、CFDやら金価格連動ETFやらがまともに機能するとも思えないので、破綻のときに供えるなら金地金か…。

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2021年04月24日

Posted by ブクログ

令和2年の一年間でピーク時からは下がりましたが、ゴールドの価格がグラムで1000円程度上昇しています。個別銘柄の株式投資は30年続けてきましたが、しなかったら無駄遣いしていたことを考えると勉強になった程度です。

一方で、同じ期間続けてきたゴールドの方は、やり続けていて良かったと思えます。ゴールドの価値は本当は変わらないはずなので、私が使っている通貨の価値が落ちているからだと思います。今年、来年と政府はコロナ対策で多くの国債を発行するので来年もこの傾向が続くのだと思います。

この本には著者が資産対策として最もお勧めするのが「金を買うこと」であることを解説しています。来年以降も、貯金=ゴールドを余裕資金で継続していきたいですね。

以下は気になったポイントです。

・東インド会社は、スペインに海洋貿易で対抗するために、1602ねんに複数の商社をまとめてオランダが作った世界初の株式会社とされている。この仕組みによりオランダは劇的な経済成長を遂げた、株式市場の設立によって多くの事業が可能になり覇権国家となった、オランダが世界中で船を使って大規模な侵略行為を行ったことでオランダ通貨ギルダーが世界初の基軸通貨となった(p52)

・オランダの負債が徐々に増加、貧富の格差が拡大、政治的対立が発生したことが繁栄の終わりに繋がった、軍事力の低下も痛手だった。その間に力をつけたのが英国である。最初は軍事協定をしていたが、海洋貿易での対立が続いたことや軍事力が強大になってきた。第四次英蘭戦争(1780)で英国とオランダの地位は逆転して英国が経済面・軍事面で覇権国として君臨した。オランダと英国の関係が、現在の米国と中国の関係に重なって見えなくもない(p53)

・ナポレオン戦争の戦後秩序を構築するため戦勝国がウィーン会議(1814)を開催した、そこで英国の通貨ポンドが基軸通貨になることが決まり、大英帝国の繁栄が始まった(p55)

・1974年には米国は財政赤字を賄うために、キッシンジャー国務長官と共にサウジアラビアを訪問した、原油をドル建て決済で安定的に供給すること、米国は安全保障を提供する協定(ワシントン・リヤド密約)を結び、オイルダラーを確立することでドル防衛に成功した(p88)

・金のみならず、円も今後は貴重な資産になるだろう。主要通貨の中でこの50年、金に対して価値が上昇しているのは円のみ(p100)

・今後の資産ポートフォリオを組む場合には、株式・金・円を3分割して保有する配分で良いだろう(p101)

・現在世界最大の金生産国は中国である、中国政府は国内で生産された金を国外に出すことなく、国内消費する一方で、国家資産として海外から金を買い入れている(p146)

・2020年6月になって、標準化機構における標準の修正や開発に寄与する場合、米国内企業が華為や関連企業と特定の技術共有を認めることを修正した、これは米国におけるギブアップ宣言である、この瞬間に世界のデジタル覇権は、米国から中国へ移行した(p174)

・バフェット指数(ウィルシャー5000に採用されている企業の株式時価総額を米国のGDPで割る)によれば、コロナ前は150%を超えていて過去最高の水準であった(p193)

・欧州において、貿易赤字国と貿易黒字国が永遠に続く=南北問題が頻繁に取り沙汰されているが、これは為替調整ができないことによって生じている。この問題を早く解消しないと、ユーロ通貨はいずれ破綻するだろう(p206)

・コロナ危機は以前からあった世界経済の4つの症状をさらに悪化させている、1)生産性の伸び悩み、長引くデフレ状態による長期停滞、2)富める国と貧しい国の危機対応力の格差が拡大、3)基軸通貨として米ドルへの過剰依存が是正される、4)経済ナショナリズムの高まり(p217)

・新型コロナウィルス拡大に対する支援として日本は、EUが主導した40を超える国や機関が合計74億ユーロを拠出する枠組みに、7.6億ユーロの拠出をした、米国は参加していない。米国に追随する日本にしては独自の判断で参加を決めている(p227)

・中国がデジタル人民元を2022年2月までに北京で開催する冬季五輪までに発行する方針(p237)従来のキャッシュレス決済手段では災害時に携帯電話の電波が途絶えると決済自体が麻痺しかねないが、デジタル人民元であれば携帯電話の電源さえあれば災害時にも決済可能となる(p238)

2020年12月28日作成

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2020年12月28日

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