【感想・ネタバレ】森へ行きましょうのレビュー

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Posted by ブクログ

川上弘美はやっぱり天才ですね。

こんなに分厚い小説をどんどん読ませる才能!

川上弘美独特の美しい文章と、「そういう気持ち感じたことある!」と思うものの、うまく言語化できないものを的確に表現する巧みさ。
いつも思いますが、漢字とひらがなの使いわけが絶妙ですよね。あえて「はんぶん」と表記してみたり。

この本では、主に(というのも、最後の方に行くにつれてさらに主人公のパターンが増えるので)ルツと留津という二人が出てきます。

主人公が行う選択。
たとえば女子校か、共学か。
理系に進むか、文系に進むか。
結婚した人生としなかった人生。
結婚したあとの人生の選択について。

どちらの人生にも違ったかたちで同じ人物が現れたりするので、国語の授業のように簡単なメモを取りながら読み進めて行きました。

同じ人でも他の道すじを辿ると、嫌なやつになってたりするんですよね。

ぜひ読んでいただきたい。傑作です。

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2021年03月07日

Posted by ブクログ

これを新聞小説欄で連載していたときはちょうどいいところで切れてしまって続きがよみたいという気持ちが煽られる作品だった。しかも本当いいところで留津とルツが入れ替わるから…
人生の分岐点はいろいろあるけど選択肢は様々。木々の枝分かれや 迷路のような森林を人生に例えたタイトルなのでしょう
皆川さんの描く挿し絵も美しく、主人公など登場人物を馬に例えていたのが印象的。連載しているときはこれも1つの絵本のようで楽しめました

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2020年08月28日

Posted by ブクログ

とても良かった。パラレルワールドと言ってしまえばそうなんだけど、人生って本当のところこんな風なのかも知れないと、読み終わって本を閉じ、しみじみ思ってしまった。

川上弘美って、たぶんもう大御所なのだろうけど、よくこんなこと思いつくなあ。

主人公は表裏みたいな「留津」と「ルツ」。わたしは、さばさばした性格のルツの方により共感できた。誰もが様々な選択をして、何かを得たり何かをあきらめたりしながら、ままならない、と思いながら生きている。

でも物語の終盤近くなって、選ばなかった人生を生きてきた「流津」や「るつ」が少しだけ登場するが、不思議と彼女たちは一様に満たされた表情をしている。どんな選択をしても自分なりに誠実に生きていれば、それなりの充足が得られるということか。

タイトルの「森へ行きましょう」。森って何のことかと思っていた。森の中の道を右へ行くか左へ行くかさんざん迷うけど、自分が自分でいる限り結局は同じ森の中を進んでいる。見えてないだけで。正解も不正解もない、ただ信じて進み続ければよいのだと思った。

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2020年02月11日

Posted by ブクログ

待望の弘美さんの新刊、嬉々として読み始めるもいきなりの❓… あれなんか読み落としたかなの予想外の展開。
改めて読み直すも結果は同じで疑問は消えぬままでページばかり進む。
ストーリーについてもそうでいつものふんわり感やゆらぎもなくふたりの女性のストレートな目線で互いの成長が語られて行く。
そんな絡まり合う違和感が解け始めるのはパラレルワールドに気付く頃でそうなれば後はどっぷりとその世界に身を委ねることになる。
たらればが合わせ鏡のように複雑に交錯する人生の深い森に迷い込む不思議な物語、さてその先に広がる光景は…

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2018年12月13日

Posted by ブクログ

500頁の長編なのだが、面白くて3,4日で読んでしまう。
弘美には珍しく幻想要素の殆どない小説。
恋愛小説と言っていいかどうかは微妙だが、2人の留津=ルツの
人生の物語

川上弘美22冊目

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2024年06月02日

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パラレルワールドに存在する、留津とルツ。同じ日に同じ親から生まれたのに、歩む人生は全くちがう。さらに、分岐点で異なる道を進んだたくさんのるつ、琉都、瑠通、流津、る津…。選んだ道によってたくさんの『るつ』がいて、それぞれの人生を歩んでいる。
こんなふうに、自分の人生も選択肢ごとに見れたら、楽しいかもなぁって思ったり。
でも、結局のところ、分岐点がいっぱいあったとしても、選べる道は一本しかなく、選ばなかった道を選んだらどうなるかなんか、わからない。
いったい、どの『るつ』が一番幸せだったのかって考えると、どの『るつ』もある程度幸せである程度不幸せ。ベストな選択肢なんてものはなくて、どの人生もベターってことなのかな。
私も、森で迷いながら、生きてくんでしょう…。

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2023年07月14日

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ネタバレ

人生を森に例えた小説。
主に二つの人生の小話を代わる代わる見せられる。通している登場人物が、設定が少し変わって登場するので、そこが面白みに繋がるとともに、さーっと読んでいるとわずかな混乱が引き起こされる。

最後一個前のルツの話は良かったなあ。
相手を知り尽くす必要はない、というところと。
だれもが森に迷い込むけど、今度は一緒の森に行こうねっていうあのシーンは白眉でしたね。
最後の最後で、ちくりと毒があるけどね!
いきなり誰だよ!

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2021年09月30日

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人生、パラレルワールド、選び取らなかった未来、これまで歩んできた道、それらを「森へ行きましょう」で昇華させる川上氏。うつくしいです。
ルツか留津かはじめは見分けがつかないけれど、時が進むにつれてルツか留津か、はっきりと区別がつくようになる。はじめはちょっとずつのズレだったのに。昔のことの記憶が曖昧になっていく感じも、まるでルツたちと同じ時間を過ごすようだった。

追記
時間が経ってじんわりと俊郎のことばを思い出すことがふえた。すべてを知らなくて良い、一緒にいたいと思ってくれている、結婚してくれている、嫌いではないでしょう、それで良いよ、そうだよね。

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2021年08月21日

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あの時違う選択をしていれば、そんな人生がどこかで続いていて… そんな妄想が広がっている。
どちらの人生も違うようでどこか似ていて、でも結局は自分のこれまでを自分でどう意味づけるかなんだな。

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2021年08月06日

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物語ももちろん良いが小説の技巧が凝っていて面白い。ミステリー感がある。ちょっとしたきっかけで人生は大きく変わるのだなと。

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2021年05月23日

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ネタバレ

同じ人間のあるかもしれないいくつかの違う人生。生まれてからの長いパラレルな道のりを同時に描く作者の野心作だなと思います。
読み始めは登場人物が主人公の名前の文字が違うだけで、みんな同じ名前なので入り込めないほど混乱する。でも読み進めていくうちに、それぞれの世界の中でそれぞれのキャラが立って行って混乱は収まっていきます。
大きな事件が起こるわけでもない(それぞれの人にとっては人生は大きな事件ですが)けど、少しの選択、少しの変化で誰でもに違う人生があるんだという、それが美しい文体で書かれて悪くない読後感でした。

つくづく思うのは、つらい、幸せ、悲しい、愉しい、虚しい、色々な場面はあれどつまらない人生などない。どれをもって自分と思うかはそれぞれだし、それが人の生。

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2021年03月19日

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生まれてから60歳までの人生を、それぞれの年代ごとに追っていくのは、自分の人生の振り返りにもなり、たまに自分の年齢と照らし合わせたりして、共感しながら進んでいった。途中までは・・
気づいた時には迷路の中。
あ、迷路じゃなくて森の中なんだ。

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2021年02月12日

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1966年同じ日に生まれた二人の女の子留津とルツ。
選ばなかった道をもう一人の誰か(自分)が別の世界で生きている。別の世界で同じ名前の彼、彼女が恋人や友人として関わりあう。
うっかるするとどちらの世界の出来事か分からなくなるほど、複雑に繋がっている不思議な森の中の世界です。

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2021年02月11日

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「僕の前に道はない 僕の後ろに道はできる」と高村光太郎は言ったが、目の前には未来という無限に近い数の細い道が存在し、一つを選んだ瞬間それは過去という一本の太い道に変わるのだと考えた方が理解しやすい。この小説の主人公である「るつ」もたくさんの選択肢がある人生の森に迷い込んでしまう。そしていつまでも続くかと思われた森にもいつか終わりが来る。その時に近くを一緒に歩いているのは誰なのかという点について深く考えた小説だった。

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2021年02月10日

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ネタバレ

タイトル、すごく明るい意味だったんだなぁ
「今度は二人で一緒に、同じ森に行きましょう」って、最上級の愛だ 愛おしさだ

ままならない
人生の中には生きているだけで選択肢が山ほどあって、自分だけの選択ではなくて環境で決まってしまうことや、後になってからそれが選択肢だったのだとわかることもある。どういう道を選んでいても間違いではないし、どうなるかは誰にもわからない。自分でどうにかできる部分もあるし、できない部分もある。
よくあるゲームみたいに、ハッピーエンドルートとバッドエンドルートの2つしかゴールがないのと人生はやはり違っていて、不満もあるけどまあ、幸せかな、みたいなそういう人生になっていく。
という感覚

すごく分厚い本だったから時間はかかったけれどつらくはなかった

殺人の本を書いた話のあとに、殺人をおかすルートの主人公がでてくるのは、目が覚めるというかゾワッとしたのだけど、よくできているな…と思った

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2021年02月09日

Posted by ブクログ

同じ日に生まれた緩やかに大きく違っていく2人の女性の人生の物語。

極端な何かというよりは些細なことの積み重ねが人生を作っていく

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2021年01月06日

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パラレルワールド小説。
生きる道を選択しているようで、流されているようで。
いろんな人生が用意されているようでいて、実はどれもあんまり変わらないのかなとも思った。
それでも、家族を理解したいと努力したり、自分を見つめ直したりしながら、それぞれ真剣に生きている。

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2019年09月23日

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パラレルワールドの設定で、交互にルツと瑠津が出てくる。
登場人物も入り乱れる。

川上弘美さんの味のある世界観、噛み締めたくなるような文章が好きで読み始めたが、
この作品はあっさり読めるもの。
ただ、さすが、書き留めたくなる言葉がたくさんあった。

女の人生、簡単に分けてしまうと、
結婚して子供がいる人生と、独身の人生。
どちらも理解できる、どちらの道を進んでも、
迷いもあるし、別の生き方をしていたらと考えてしまう。
今28歳の自分が読んで共感できる部分と、これから歳を重ねて理解できる部分とあるんだろうな。
歳を重ねても、大きくは変わっていないのかもしれない。歳を重ねてもわからないこと、歳を重ねてもやっと気づくこと、結婚生活のこと、いろいろ考えた。

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2019年08月12日

Posted by ブクログ

相変わらず不思議な小説を書く人です。
ルツという女性が生まれて50才になるまで、どの道を選ぶかで並列世界を各々のルツの人生が変化していくという本でした。結構こんがらがるかなと思ったのですが、エピソード読んで行くうちに、人生が全く違っているので別の人として認識出来たので問題ありませんでした。さらに奥深い所は、ルツだけではなく他の人が選んだ人生にによって、大幅に変わっている人生もあり、無限の並行世界があるという事が感じられる事でしょうか。

自分の人生振り返っても、どこか時点での選択を変えると人生が違っていたのかな?と思うと怖いような、面白いような・・・

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2019年01月31日

Posted by ブクログ

職場の40代の先輩が言っていた
「人生は帳尻が合うようにできているのかもね」
という言葉を思い出した。

あっちを選んでいたら違う人生があるにしても、
違う人生なりの喜びや苦悩があるだろうから。

単行本、分厚いけどていねいなつくりですき。
ぜひカバーを外してみてほしい。
装画や題字は皆川明さん。

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2018年10月24日

Posted by ブクログ

人生の岐路の分、色んなルツの一生があって、どの人生もそんなに悪くないなぁと思いました。パラレルワールドのお話で、結婚して子供を産んだ留津、結婚しなかったルツ、色んな自分の人生があって迷いながら生きることは、まるで森の中で迷いながら歩いてるのと似ているようです。面白かったです!

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2023年11月21日

Posted by ブクログ

題名から、自然に関係するものかと手にしたが、全然違った。1967年生まれの私としては同世代の話が交互に進行しそれなりに共感はいかないものの、すんなりと話しにも入っていけた。
読破日の今日6/2それまで2人の話しかと思っていたが、違う表記のるつさんが6人いることに気がついてしまう。途中でも入り組んだ世界が開けていたのか?
読書は楽しい。

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2023年06月02日

Posted by ブクログ

何かがひとつ違っていれば、また人生も変化していく。

パラレルワールドの世界を留津とルツ、他のるつ達を通して感じる。

本当に些細な選択や、自分の意思とは関係ないことでも、自分の人生はいくらでも変化していた可能性があるんだろうな。

そしてこれからも日々変わっていく。
そう思うと人生ってなんか凄い。

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2021年09月24日

Posted by ブクログ

もしかしたら、もう1人の自分がいるかもしれないパラレルワールド。
主人公とともに、自分もその時代、その年齢を生きている感覚で読みました。
読んでいるこちらも、森に迷いこんでしまう感覚が、心地よい混乱。
どの「るつ」も「としろう」とつながっているように、私も、違う人生を選んでも、結局行き着くところは、ここなんだろうな、と思いました。

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2021年02月26日

Posted by ブクログ

1966年に生まれたルツと留津、ルツは公立の小中を出て理系の大学へ行きある研究所に就職する。留津は、私立の女子中高を出て文系の大学へ行く。裕福な家庭の俊郎と結婚し専業主婦になる。二人の「るつ」が平行して描かれる。周囲の登場人物もシンクロするが、関わりや性格は微妙に違う。この二人を軸に、パラリルワールドは二人が六十歳になる2027年まで続く。

後半、もう三人の「るつ」も現れちょっと混乱した。とても不思議な小説だ。

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2021年02月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

留津とルツという女性のそれぞれの人生が比較するように書かれていて、
これは、一人の女性のパラレルワールド・・
この本を借りたときには、登場人物が森へ行くのかな‥と思っていたのですが、
一人の女性の生まれてから60歳までの人生を(男女、特に夫婦がテーマかな?)
淡々と読み進めていくうちに人生は、森を歩くようなもの・・という言葉で、やっと気が付きました。
森に入っていくときは、1本道だけど、目の前には幾本の道が伸びていて、どこへ向かって歩いていくか、その道がどうだったかなんて、その時はわからなくて、
歩いて行ってみて、振り返り、あれこれと考えあぐねるもの。
小説は、ほとんどが40代半ばまでにページが割かれていて、そのうちに第3、第4のルツが登場してくるので、多少整理が必要になるもの・・
なんといいますが、人生50歳を前にすると、日常に起きることなんて大してなくて、特に男女の色恋なんて、到底、エネルギーも失われていく年代で(大方・・)
少しずつ、森の出口に向かって(人生の終結)身辺を振り返って、少しあがいて見せて・・。
この小説は、60歳で終わっているけれど、今や 人生100年時代・・健康寿命が80歳としても、
このあと20年、健康でいられるという保険がないまま、ルツは、今後どうやって過ごしていくのか・・しら。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

選ばなかった、もしくは選べなかった人生の話。
何を選んでも何かしらの満足と不満はある。
みんな森に行くんじゃなく、森にいるという感じ。

私自身は諦めと見切りが早すぎるのかもしれない。
でもどこかに長い目で見て付き合っている私がいて、何かに悩んで困ってるかも。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

るつの人生がどのように終焉を迎えるのか、最後が気になりながら読み進めた本。

もしあのとき、と誰しもが思ったことがあるはず。
だけど、人生はやり直せないので、あのときああしていたらどうなっていたのかは誰にもわからない。
るつの人生を辿りながら、その点が味わえたのが面白かった。

人生を森に喩えるなら、楽しく森を散歩したいと読後に思わせる1冊だった。

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2021年02月06日

Posted by ブクログ

 「るつ」という音の名前を持つ複数の女性の生涯を、パラレルワールドのように並行して綴った物語。
 前半は「留津」と「ルツ」という二人が登場し、後半になると「るつ」「流津」「瑠通」「る津」「琉都」などというように徐々に主人公が増える。彼女たちはどのストーリーでも同じ家庭に生まれるが、その家族構成は母の生死、父母の関係性などの点で微妙に異なっている。その小さな枝分かれが、やがて森の木々のように入り組んで、後の人生に大きく差をつけていく。
 「るつ」たちの友人や恋人、同僚は、彼女の人生に登場するタイミングを変えながら、それぞれのストーリーに登場する。すなわち、あるストーリーでは友人だった女性が違うストーリーでは夫の不倫相手で、というようなことが起こる。その中で、夫の俊郎だけはどのストーリーでも夫のままだ。それゆえ、彼との関係性が、全ての「るつ」の人生に最も大きな影響を及ぼしている。
 専業主婦になったり、独身を貫いて仕事に専念したり、どっちにしてもいろいろ悩んだり・・・という内容そのものは割とありがちなように感じたけれど、何よりも、同じ名前の人間を主人公に据えて、その人生を並行して綴っていくという形式の小説は初めてだったので、こんな書き方もあるのか!という驚きが強かった。
 全体を通して滑らかで読みやすい文章の随所に、初めて耳にするような文学的な言い回しや慣用表現が鏤められていて、ときどき辞書を引きながら読んだので、語彙の勉強にもなった。

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2020年04月17日

Posted by ブクログ

留津とルツ。
パラレルワールドに生きる女性の物語だ。

二人の人生が交互に現れる。
そして時々、さらにパラレルに、琉通や流津や琉都やるつが登場し、さらに読者は深い森に迷い込む。
時代の変わり目だからそう思うのか、「縁」を思う。
私が今生きている人生は、どこかで過去の私が選択をしてきた結果としてある。
この「私」が生きてきた人生は、辛いことも、悲しいことも、苦しいことも、悔しかったことも、数え切れないくらいあった。
それでも、いくつかの大きな決断については、正しかったし、きっとそれはどんな私であってもそう思うだろうと思うのだ。
前職を辞めて大学に進学したこと(出戻り転職は未だ叶っていないけれど)、子供を産んだこと、今の職場に来れたこと。
出会った人たちの多くは良い人だった。
でも、時々、少し年を重ねた留津が鏡の中の女に問いかけたように、私も鏡の中の女に「そっちの世界を選んで、どうだった?」と尋ねたくなる。
もし、あの時退職しなかったら、あの試験を優先していたら、もう少しだけ早く子供を産んでいたら、もっと早く仕事に復帰したら。
でもきっと、鏡の中の女は同じように、どこかで後悔し、納得し、問いかけてくる気がする。
だから、大事なのは今をしっかり見つめることなのだと思う。

袖振り合うも他生の縁という。
だからこそ、「縁」を大事にしたくなる。
感傷的に過ぎるだろうか、あるいは意識高い系のような言い方だろうか。
だとしても、こうして立ち止まって考えてみた時、「今日も、良い天気である。」(507頁)と言えるのであれば、それは幸せと呼べるに違いない。
迷い込んだ森が、どんな森であっても。

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2019年04月14日

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