【感想・ネタバレ】現代経済学の直観的方法のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

マクロ経済学を直感的に理解できる。
1章では簡便な例え話でGDPの本質的な理解をうながす。
中盤で資本主義の宿命を仮想的な装置(燃料を組み上げる装置で、その燃料は自分自身で組み上げる)で説明。
最終章では縮退という概念を導入し、今後の経済への憂いと希望が書かれている。

0
2024年03月17日

Posted by ブクログ

今まで読んだ経済学の本とアプローチが違う。例え話、思考実験で本質を見抜く。専門用語なしに物事を新たに理解し、脳が再構築される感覚。また、素晴らしい本に出会った。

序文から、「粋」である。

歴史や哲学、国際問題に関しては、かなりの読書量を誇っているのに、なぜか経済に関しては教養の空白になってしまっている人が少なくない。また、理系の中にもそういう人が非常に多い。こうした「教養の高い非経済人」を対象にして、本書を書いたと述べる。

で、金利を払うために、資本主義は成長し続けなければならない宿命。この点から解説が始まる。この解説には感動すら覚える。軍隊の近代化、鉄道による兵站の例え、GPSつきの金貨からアプローチする。

鉄道による補給革命が起こるまで、軍隊は基本的に現地調達に頼らざるを得ず、そのため軍隊のサイズは敵も味方もその限度において、指揮官の能力や兵の練度・士気を競った。軍隊は鉄道により、総力戦へ。この軍隊における鉄道の役割を経済世界において担ったのが、銀行。実物資本以上のお金を貸し出す事で、増殖していく仕組みができた。

GPS付き金貨の例は、見事に「国民所得=消費+投資(貯蓄)」のモデルを映し出す。お金の総量が決まっていて、夜に給与が日払い、翌日の昼に食料品を買いにいく夫婦が住む仮想ドーナツ都市。GPSで見ると、朝には、全ての金貨は都市周辺部に存在。昼に都市で買い物するので、この全ての金額は都市に戻る。その金貨を給与として支払い、再び周辺部へ。夫婦が節約すると、金貨は都市と周辺に分かれて存在する事になり、給与も節約した分減る。この節約した金貨は、つまり貯蓄されたわけだが、このままだと経済は衰退。貯蓄が投資に用いられ、還元されていく必要がある。

中盤でもう一つ感動したのは、経済イデオロギーにおける役者の分類。インフレの場合、資産家階層は、財産の目減りで損。企業家階層は、値上げの転嫁と後追いの賃上げのラグによって得。労働者階層は、上記の裏表で損。これらの利害対立構図のバランスが作用する。尚、デフレにおいて、一番得するのは消費者層。しかし、値下がり期待が買い控えを助長し、社会全体がやかで不況に。最終的に誰も得しない。

他にも、紙幣の誕生、グローバルサウス問題の本質、仮想通貨、国際通貨にも踏み込む。どれも読み応えがある。そして終盤は、経済発展の矛盾、つまり、幸福指標にまで辿り着く。短期的に欲望について。原始状態では短期的欲望を満たす事に精一杯だが、発展と共に短期的欲望の充足は所与となり、長期的欲望に目が向く。しかし、やがて長期的欲望すら縮退し、テクノロジーはすぐに手が届くように働き始めるのである。

人間は外面的な幸福それ自体は吸収することができず、人間の心の中で想像力と言う酵素が作用することで初めて吸収できる状態になる。従い、我々にとって皮肉であるとともに重大な事は、欲望や願望に対する制限がなさすぎて、それが物や情報の形で無制限に叶えられてしまうと、想像力という酵素がかえって分泌されなくなってしまうことである。そして、それこそが、現代の不幸の根源だという。

総体としての不幸のベクトルに対し、個が、いかに向き合うか。お金を使わない生活など、擬似的に楽しむ事も可能。精神的アウトドアブーム、ヒッピーやジプシーみたいな世界観もあるだろうと思うが、何だかゲームや漫画でよくある人類二極化の構図を示唆するようだ。

0
2024年02月10日

Posted by ブクログ

経済学の門外漢ですが、説明がわかりやすく理解しやすかったです。ただしかなり込み入った話でこんがらがりやすいので、何度も読み返したいと思います。最後の章で初めて出てくる著者の考えも面白く、とても楽しめました。

0
2023年04月19日

Posted by ブクログ

マクロ経済学を直感的に、かつ丁寧に解説した本です。

なかなか読み応えのある分量で、かつ書かれている内容も平易ではないです。(たぶん私に経済学のセンスがないのだと思います)
しかし直観的でわかりやすい例えを多く使っているからか、そんな私でも読みづらいといったことはなく、確実に内容を反芻しながら読むことで理解することができました。この本は本棚にしまっておき、必要なときに取り出して内容を確認するといった使い方で運用したいと思います。

今までは経済的なニュースや読み物に対して、わからないからと無意識に避けていた傾向がありましたが、これからは臆することなく読める気がしています。確実にこの分野に関するハードルを下げてくれたと思います。オススメです!

0
2023年02月24日

匿名

購入済み

よかった

この作者の本は初めて読みましたが説明がわかりやすく、また工夫も多々あり読んでよかったです。
他の作品も読みたいと思いました。経済学一冊目はこれできまり

0
2023年02月12日

Posted by ブクログ

経済について、色んな表現を使いながら解説してくれるので、理解が早く、インフレや貿易なども、そういうことか!の連続だった。
改めて、資本主義という世界を覆い尽くす主義の、止まらない経済成長という恐ろしさ、縮退、私たちはどこに向かうのかを考えさせられた。
経済とは、政治、社会、宗教、法律、文化、哲学の全ての根幹にあるものということが分かった、なおさら経済学の捉え方をもっと洗練させていかなくてはならない。

0
2023年02月02日

Posted by ブクログ

評判通り面白い。説明の仕方が独特だが分かりやすく、喩えも秀逸。タイトルで言う直感的方法ってのは嘘ではなかった。また、最終章で資本主義経済の行く末をテーマにしているが、意外性のある展開で、読み終わると逆に他の章の印象が薄れてしまった。不可逆的な縮退に陥るコラプサーという考えは初見だったが、ちょっと曖昧な定義が多くて歴史上の国々にも普遍的に当てはめるのはどうかと思ってしまった… 長期的な理想が短期的な利益を律することができるかってのは、まんま倫理観に直結してくるかと思うが、実際はどうあれ国連憲章やSDGsなどの周知を見れば歴史的にもここまで広く道徳が共有されてる時代は無いのでは… 映画やネットなどのメディアも大きな力を秘めているかと感じた。大企業が市場を寡占化していくのが縮退で、生態系の多様性が失われることもそうだとして、そこの共通点も薄く感じた。理系集団の武士が明治維新など、数々の国難を乗り越えさせたってのは、何の話かよく分からなかった。なかなか個性の強い考え方が散見されるが個人的には好き。
ブロックチェーンやビットコインの話は不勉強でほとんど知識がなく、非常に参考になった。改竄防止の方法として大規模なものと小規模なものがあるイメージ。ビットコインについてはマイナーなる、ブロックを作ってコインを報酬として得る人物・組織がいるとは・・ネットの世界に金(ゴールド)を作る発想は、結局は金本位制と同様の、必要な時に飛躍的な供給ができずに行き詰まるという弱点があるとの解説。

0
2022年09月24日

Posted by ブクログ

❶資本主義はなぜ止まれないのか

①資本主義は常に成長をしなければいけない、何なら成長は加速させなければいけない、ということを宿命づけられてる。なぜ、そんなことになるのか。鍵は『金利』にある。

②ここ30年くらいの平均経済成長率は3%程だが、これは24年で2倍になるというとんでもないスピードである。同じペースで仮に100年続くと16倍。
例えば、石油が使われ始めたのが1850年代からだが、統計によると、1865年に1日7000バレルの石油使用量は1945年時に710万バレルに、そして現在9700万バレルの利用まで増えている。ここから経済が拡大するにつれ、同じペースでエネルギー使用が増やせるかといえば難しいだろう。
石油使用を抑えた経済成長をするには、今の使い捨て経済を止めないといけないが果たしてそれが出来るだろうか?

③経済と軍事は極めて密接である。現在でも経済力で勝つ国が軍事でも覇権を握る構図である。特に、鉄道が出来てからは兵站が劇的に変わってしまったため、人、モノ、カネの総力戦の時代になってしまった。日米戦争でも分かる様に経済力に勝るものが戦争に勝つ時代に入ってしまった。『戦争=カネ』である。

④経済世界の鉄道網というべきものが金融機関である。儲かるマーケットがあれば、そこに大規模に迅速に資金を供給して資本の投入量で勝負を決める。

⑤中世ではカトリックにせよ、イスラムにせよ利息、というより貯蓄そのものを望ましいものだと考えていなかったと思われる。カトリックは教会に寄進させ、イスラムは貧しい者に施しをさせるように仕向けた。

⑥貯蓄というものは皆がやると貧しくなる。誰かが持ってる以上に使ってこそ、パイが増えるのだ。

⑦現在の日本は個人消費と政府支出でおおよそ8割。住宅投資3%と設備投資14%、公共投資5 %が変動要因として景気を動かしている。
米国は民間最終消費1555兆円(68%)、政府最終支出322兆円(14%)、民間設備投資307兆円(13.4 %)、住宅投資85兆円(3.7%)、公的固定資本形成78.5兆円(3.4%)、純輸出-67.4兆円(-2.9%)である。
中国は日米と比べて歪。1次産業7.3%、2次産業39.4 %、3次産業51.3%となっている。
具体的には、農林水産8%、製造26 %、建設7.2%、商業・飲食・宿泊11%、運輸・倉庫・通信7.8%、不動産7%となっている。中国は他国と比べて固定資産投資がドライバーとなっており、ここが崩れると成長率が低下しやすい。
一般的な国では、この『製造のための製造』の2割が景気変動要因のキーなのである。

⑧資本主義というものは本質的にカンフル剤の連続投与によって維持されているようなものだ。
所得=消費+投資(貯蓄)と考えるのであれば貧血でジリ貧になるか超高圧状態になるかのいずれかである。この投資と貯蓄が一致しないと経済は一気にバランスを崩す。

⑨西洋の資本主義に影響を与えた人物としてマックスウェーバーがいる。彼は、金儲けに正当性を与えたことが大きい。金儲けは卑しいものというものが宗教的に強かった中で、利潤追求を是としたこの転換は非常に大きい。
また、合理的に生産するために複式簿記が導入され、資本蓄積も進んだ。現代の資本蓄積の礎となった。

❷農業経済はなぜ敗退するのか

①農業経済の泣き所は大きく伸びない需要と、伸ばせる供給量というギャップである。供給過剰に陥りやすく、値崩れしやすい。
商工業は需給が大きくゴムの伸縮みたいに動く。そして、歴史的に過剰生産と新たな需要を起こすイノベーションによって成り立ってきた。

②歴史的には石炭文明→石油文明→半導体文明といっところか。今の半導体文明の難しいところは技術の陳腐化が異常に早いことである。

❸デフレとインフレのメカニズム

①インフレというものは次々に飛び火していく性質を持っている。1ヶ所で値上げが起これば、それがサプライチェーンに沿って値上げが連鎖され、賃金まで波及すれば、そのサイクルは繰り返し起こることも珍しくない。これを学問的に、失業率とインフレ率の関係で見たものが『フィリップス曲線』というやつである。

②インフレのメカニズムを整理すると主に3つである。

ⅰ)紙幣の増刷
これは第一次世界大戦後のドイツが典型

ⅱ)供給不足
これは、コロナ禍のモノの供給不足がわかりやすい。

ⅲ)好景気に伴う供給のボトルネック発生から波及するもの

これが好景気のインフレの典型。現在のインフレはⅱとⅲの複合型ともいえる。

③インフレで得をするのは誰か。『機動性の高い』人が得をして『動きの鈍い』人は損をする。わかりやすくいうと『金を借りる側』は得をして『金を貸す側』は損をする。

④インフレになった時の対処法としては、金利を上げ、金の需要を遮ることで、金の流れにブレーキをかける。

⑤デフレはインフレより恐ろしい。モノの値段が下がっていくデフレ下では買い控えが起きやすくなる。企業も売上が減るので賃金を上げられず、賃金が上がらないのでさらに買い控えが起きるという悪循環に陥るのがデフレである。

❹貿易はなぜ拡大するのか

①貿易のメカニズムは『価格差』である。

②自由貿易の怖いところは一者総取りであり、産業競争力でトップの者が利益を攫っていく。歴史的にこのような例は沢山ある。

③貿易で繁栄した国といえばオランダがあげられる。17世紀後半に英蘭戦争で英国に負けるまでオランダは世界の覇権国にいたが、オランダの稼ぎは東インド会社ではなくバルト海の穀物貿易がメインであった。当時の欧州は人口増加に穀物の供給が追いついていなかった。また、穀倉地帯だったウクライナのあたりがオスマン帝国の勢力圏にあったため、オランダが支配していたバルト海のルートからの穀物供給が使われた。

④米国の南北戦争の戦争の要因として、工業経済であった北部は英国と比べて競争力が低かったので、保護貿易的な政策を採りたかったのに対し、農業経済であった南部は原料輸出がメインであったため、自由貿易的な政策を採りたかったのがぶつかったことが要因。結果は北部が勝つことによって南部がいわばモノカルチャー国のような立場に変わったことで劇的な発展を遂げることになった。同じようなことは、鄧小平時代からの中国にもいえる。農村から安い労働力を大量に動員して発展した。

⑤戦後の1980年代、日本は工業国として世界で最も高い競争力を誇っていたが、戦争で負けた経験からか、保護主義的な政策にこだわった。一方で、米国は逆にナンバーワンから転げ落ちたにも関わらず、自由貿易を掲げ、日本の貿易黒字を数値目標として管理するという客観的には保護主義的政策を採った。

⑥19世紀から20世紀にかけて自由貿易が浸透していったが、その一方で格差の拡大も大きくなった。南北問題である。これを壊しにいっているのがインターネットの存在だ。情報の格差がなくなったこと、経済の形が情報経済になるにつれて、南側諸国にも勝ち目が出てきている。

⑦仕事を南側諸国に奪われた北側諸国の人間が増えるにつれて、貧困も北側諸国に戻ってくる。これが政治のポピュリズム化を促してしまっているところがある。トランプ政権の政策を考えるとわかりやすい。米国の製造業はコスト面などで競争力を無くしているため、大きな部分を中国等に持って行かれた。トランプ政権はブルーカラーの票取りのために保護主義的政策をとり選挙に勝った。

❺ケインズ経済学とは何だったのか

①ケインズ経済学を理解するにあたって重要なのが『乗数理論』であり、政府の財政出動が投入規模の何倍にもなって経済に影響を与えることを級数を使って説いた理論である。

②有効需要の不足を考えるにあたっては2つ考える。1つは使う意志があってもカネがない、もう1つはカネはあっても使う意志がない、である。日本は貯蓄率の高さから考えても後者が強いのかもしれない。

③不況になると、すぐに『財政出動』という言葉が出てくるが、これはまさしくケインズ経済学が浸透しているということを意味する。

④社会全体で富の重心が低所得者側にあると、貯蓄をする余裕がないので消費性向が高くなり、有効需要は減りにくい。一方で富の重心が高所得者層にあると、貯蓄が多くなり、消費性向は低くなりがちである。

⑤経済が縮小均衡に陥りそうな時、ケインズ経済学(突き詰めて財政出動)は常に有効かといえばそうではない。当然、副作用もあり、それは財政赤字とインフレの温床になりやすいということである。

⑥財政赤字は富裕層に増税すれば良いという議論になるが、これをやるとうまくいかない。経済全体が縮小均衡に陥っているときは富裕層がイノベーターとしての消費主導になることも多いからである。
日本が多額の財政出動をしたにもかかわらず、縮小均衡から抜け出せなかったのは、財政出動というアクセルを踏む一方で富裕層や中間層の可処分所得を削ったことも大きい。
財政出動=国債発行であり、これは一種の通貨膨張でありインフレを招く要因となる。

⑦ケインズ経済学の1番のリスクであるインフレは1970年代に爆発した。遠因として、1960年代の公民権運動(キング牧師が有名)を躱すため、少しでも失業者がいればすぐに財政出動をしたのと、ベトナム戦争の財政赤字が大きいだろう。また、ブレトンウッズ体制も1971年に破綻。1973年までスミソニアン協定で頑張ったが変動相場制に移行。ドルの信任が破壊されている状態で1973年のオイルショックが起きてインフレが止まらなくなった。

⑧ケインズ経済学が敬遠されていく中で急激に支持を得たのが自由放任主義を唱えるミルトンフリードマン率いるシカゴ学派のマネタリスト達である。
自然失業率仮説(経済社会においては健全な状態でも一定の失業者がいる)を唱え、過度な救済に疑義を唱えた。

⑨1980年代のレーガン政権には本格的にケインズ経済学が駆逐され、『小さな政府』を主張するマネタリスト達が席巻した。これはリーマンショックまで続くことになる。

⑩歴史的に、投資家層、消費者層(労働者層)、企業家層(生産者層)は組み合わせを替えて2対1の対立を繰り返している。19世紀の資本主義の時代は企業家層と投資家層が同じようなものであり、労働者層と対立をした。企業家層が支持したのは自由放任主義を唱えるアダムスミスから進化した古典派経済学であった。
労働者層に手を差し伸べたのがマルクスであり、ここに、資本主義対社会主義という我々がよく知る対立が生まれた。
ケインズ経済学は、企業家層と労働者層が手を組んで、投資家層に対抗した。大恐慌時代に象徴される大失業時代に要求された組み合わせであった。

1980年代からの新自由主義は、投資家層と消費者層が手を組んで、生産者層に対抗をする。投資家は世界で最も有利な場所に投資をし、消費者は世界で最も安いところでモノを買うことにより、国内の生産者層を駆逐していった。

11)余談ではあるが、今の中国は投資家層を力で圧殺して、生産者層と労働者層を強制的にくっつけている状況でないか。

❻貨幣はなぜ増殖するのか

①貨幣の『自己増殖』という観点から見ると、貴金属から紙切れに変化したときが最も大きい質的変化となった。貴金属のような人間の手で勝手に増やせないものから、その気になればいくらでも増やせるものへの変化、ここをまず押さえたい。

②中央銀行が発券した現代の紙幣はイングランド銀行が発祥と言われているが我々の想像とは違う形で出来た。つまり、国家権力の信用において流通させたという性質ではない。当時は名誉革命時で、カトリックとプロテスタントの争いも絶えず、治安が悪い時代であり、市民は金や貴金属を金細工に預けていた。その預かり証を中央銀行がまとめる形で紙幣が発行されたのだ。

③貨幣は放っておくと級数的な広がりで増えていく。その中心的役割を担っているのが銀行である。銀行が預金者からの預金を又貸しで回転させるため、市中で観測されるお金の量が増えていくのである。これをセーブするために、中央銀行は準備預金という形で強制的に積ませる仕組みを導入している。

④世の中の人間が誰も借金をせずに手元にあるお金しか使わない人たちだけで構成されている場合、その世界では経済の拡大はあり得ない。
誰かが今ある資金以上のお金を使って、そのお金が実際に市中に回ることにより、拡大という概念が生まれるのだ。

⑤金本位制の1番のメリットはインフレを抑えるということである。金の裏付けなく紙幣の発行ができないため、財政難に陥った政府当局が輪転機を勝手に回してインフレになることを防ぐ効果がある。蛇足だが、中央銀行が政府と独立しているのは政治的理由で金融政策をさせないためである。

⑥一方でデメリットもあり、経済が拡大する時は紙幣がうまく回らず経済活動を阻害してしまうのだ。

❼ドルはなぜ国際経済に君臨したのか

①ブレトンウッズ後の米ドルは金の裏付けのある通貨であった。それがニクソンショック後は『世界最強の軍事力』を背景とした通貨に変わった。前ページの話で言えば、イギリス型の金の裏付けがある形ではなく、モンゴル型の軍事力を背景とした裏付けになる。

②米ドルを世界通貨として使っている現状には大きなジレンマがある。それは、各国に十分な量の米ドルを供給するために、米国が貿易赤字を垂れ流さないといけないということである。

③第二次世界大戦後の歴史を見ていくと、1950年代までは米国が貿易黒字であったこともあり、ドル不足であった。これは日本の当時の経済情勢を見ても一目瞭然であった。これが1960年代に入ると、米国が世界にふんだんにドルをばら撒き、今度はばら撒き過ぎてドルの信用不安が出てくる。これが、一気に表面化したのがニクソンショックであり、そこからドル安が止まらなくなった。(そして、高インフレの時代に突入した)

④そもそも米ドルの供給量は、米国の国内の経済情勢によって決められるべきものである。これを国際貿易に必要な量はいくらかという基準によってドル供給を行おうとするから無理が出てしまうことになる。

⑤現代社会において、人類は貨幣の量に対して『ある場合には絶対増やせないが、別の局面では自由に増やせる』という二律背反の要求をしている。現在、この要求に最も応えられているのが米ドルであり、日本円も仮想通貨もその要求には応えられていない。

⑥米ドルが基軸通貨で居続けられた一番の背景はやはり軍事力である。ロジックはモンゴル帝国のロジックと同じである。

⑦金本位制を採用する理由は、2国間で価格差が発生した場合にはアダムスミス的な神の手で修正されるというロジックが根底にあった。

⑧このロジックには落とし穴がある。例えば、貿易赤字になり国内価格が下落、輸出で稼ごうという際、海外から原料を輸入しようという場合、そもそも外貨がなければ何もできない。国内もデフレになってしまうので、経済運営が難しくなる。

❽仮想通貨とブロックチェーン

①仮想通貨の仕組みで最も押さえておきたいポイントは『すぐには増やせないが、ゆっくりなら増やすことができる』という、これはまさに金が持っている性質である。

②ビットコインやその他の仮想通貨がドルなどの法定通貨に取り変わる確率は低いだろう。ただし、ブロックチェーンの技術は法定通貨の補助、例えば地域通貨や企業のポイントなどの形で、うまく使われる展開を想定している。

③ブロックチェーンの直感的な理解としては、ハッシュ関数のハッシュ値が次々書き込まれ、改竄できないように並べた仕組みである。

④ビットコインの場合、10分に1個のブロックが作られており、改竄は難しい。

⑤ビットコインはデジタルゴールドを目指して設計された。リブラはドルもの交換を保証した商品券の拡大版として設計された。ステーブルコインみたいなものである。構造的には、ビットコインは不特定多数に管理させる超大型機タイプ、リブラはフェイスブックが中心となり団体レベルで管理可能な中小型機タイプと分類することが可能だろう。

❾資本主義の将来はどこへ向かうのか?

①1970年代には経済成長と石油使用料がパラレルに動いていたため、化石燃料の枯渇が強く懸念されていたが、現在、そのような懸念は起きていない。これは経済成長の形態が大きく変わったからだと考える。そして、それを考えるにあたって『縮退』という概念を考えたい。

②縮退は『寡占』と言い換えることも出来るだろう。あらゆる業界は札束での殴り合いで上位数社に集約していく。現在の経済は、この寡占に至るまでの過程で誕生した巨大企業がその他の利益を奪う形で富を形成してるように感じる。

③たまにスマホやEVのようなゼロから巨大市場が誕生することもある。ただし、莫大な富が生まれるのはそれが量産されて大衆化と陳腐化が始まりかけた頃である。(今のEVがまさにそのような感じ)そして、これが社会の縮退(競争の激化)と組み合わさった時、巨万の富が生まれる。

④多様化を進めようとすればするほど一強による画一化を招く。政治では、それを回避するシステムが2大政党制であり、例えば天体においても二体問題が安定的でそれ以上になると、軌道の計算が全くできなくなってしまう。

⑤1970年代と経済成長が大きく変わっていないのであれば、以前のような石油消費に依存する量的拡大から何が変わったか、カギを握るのは『金融市場の拡大』であろう。

⑥本来ならば世界のマネーは実体経済にくまなく行き渡るようにすべきものだが、非常に狭い金融市場の中で投機のために回るようになっている。

⑦なぜ、短期の欲望が長期の理想を駆逐するような状態に陥ってしまったのか。資本主義世界、特に米国では『大勢の短期的欲望を集めていけば、それは長期的欲望(全体)に一致する』と思っているフシがある。
物理学の考えで言えば、二体問題であれば、部分の要素を集めていけば全体の動きが分かるが、三体問題以上になると、部分を集めても全体の動きは分からない。

⑧共和制ローマから帝政への移行にかけての出来事は現在我々が抱えている課題に示唆を与える。

共和制の時代、社会は基本的には自作農中心の自由農民で成り立っており、戦時には自由農民が戦力の中心となった。共和制の末期になると、ローマの属領が増えて、そこから安い農作物がローマに流入し、自作農は没落。自作農が手放した土地を金持ちが手に入れ、さらに格差拡大という流れに。同時に、自作農中心の戦力も、雇用、もしくは金持ちの私兵で構成され、歯止めが効かない状態に陥った。
この行き着く先が帝政への移行であった。つまり、カエサルへの権力集中であった。
あるデータによれば、ローマの人口120万人のうち約半数が生活保護者であり、奴隷を除くと自活していたのは1割しかいなかったというデータがある。

⑨われわれの経済は力学として捉えると、その根本原理は『欲望を満足させて、利益を極大化させようとするただ1つの力で動いている』ということである。

⑩われわれが物質的に恵まれているにも関わらず、幸せを感じられない理由は『想像力』を奪われているからであろう。欲望は次から次へと叶えられ、望むものがなくなった結果、幸福を感じることができなくなった。

0
2022年11月18日

Posted by ブクログ

縮退によって富が引き出されている
多様化は縮退に繋がるので、二大政党制の方が良い
多様化は短期的な願望を満たすため縮退を満たす

ドラックとVRによって「幸せ」を感じることができ、社会はそちらに向かっている
ドーパミンコントロールが重要

現代は欲望を満たすという幸せは完全に満たされ尽くしている
能性への想像力が幸せの終着点

本質を見抜く力が理系的思考、文系の特に経済系は短期的な利益を求める
つい思考を二つに分解して考えてしまうが、三つや四つでも良い

0
2023年12月26日

Posted by ブクログ

理系文系問わず、まず読んでほしい。現代の経済の状況を「お金持ちの話」と遠くからみていた自分としてはかなりわかりやす。なぜ、今の状況になったのかが歴史的な事実を踏まえて解説されており、アナロジーの巧みさがすごい。

0
2022年07月21日

Posted by ブクログ

感想はあとで
----

戦争のパラダイムシフトのキーファクター=鉄道
経済においては銀行がお金という資金を融通するいわば鉄道

宗教は資本主義ブレーキ装置
金利の禁止
寄付(キリスト教)、喜捨(イスラム教)の教え
→貧富の差が巧妙につかない仕組み

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
ピューリタンの予定説が資本主義促進のエネルギー
「天国に行ける自分は現世で報われるから稼げるはずだ」

資本主義が必要な理由:
・軍事力の基盤 
・人々が夢を持つ
・他の資本主義から身を守る
→資本主義の代わりを訴えるならこれに対する答えが必要

徳川政権の珍しさ
米が金銀に優先される
商業を抑え込んで農業の地位を押し上げる

なぜ農業は工業 商業より儲からない?
→所得が倍になっても食費は倍にならない
→工業、商はスケールしやすい

一次産業の中でも石油だけ別。
商工業のスケールに対応できる製品であるから。

ケインズ経済学vs古典は経済学
ニューディール政策による景気回復の本当の理由は第二次世界大戦

古典派→ケインズ経済学(大きな政府→新古典派(小さな政府)
ケインズの弱点は国家の赤字、インフレ

基軸通貨:
米国が米国民のためだけに刷ったお金を国際取引で使われることがでファクトスタンダード化した状態にすぎない.


米国ドルの権威=軍事力
純金の権威=物理的希少性
→「これは価値がある」というメッセージを人為的に作るか,不変的事実として作るか.

この貨幣は今日も使えるから明日も使える
→慣性的共同幻想

ブロックチェーン、ビットコインの説明が超優しい

短期的願望・長期的願望

人間を死に至らしめるのは苦難ではなく絶望


愛国心、地域主義→価値判断の拠り所 宗教、神、崇拝

縮退を防ぐ、短期的願望を抑える文化や慣習はそれ自身が資源。

0
2022年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

骨太の経済学の根源解説本です。
理系畑(物理ご専門)の著者が経済に疎い理系読者を念頭に原理原則をつまびらかにしてくれている、そんな印象です。

第1章:資本主義はなぜ止まれないのか
所得=消費+投資(銀行などの貯蓄が設備投資などへ流用)の公式が鉄道のメタファーで視覚的に想像することができた。
利息(貯蓄)の正当性は、カルヴィニズム、予定説による徹底的な禁欲生活、つまりは稼いだ分を消費に回さず貯蓄する、その貯蓄額こそが天国へ行けるという証なのだという論理が発端となっている。

第2章:農業経済はなぜ敗退するのか
まとめると、農業経済は機動性が不足している。一定した需要と漸増する供給の最悪の組み合わせにより、農産物は価格低下の一途をたどり、成長性が見込めない。

第3章:インフレとデフレのメカニズム
ここでは、資産家階層・企業家階層・消費者階層の3層構造でインフレ・デフレの利害関係をまとめているのが新しい知見。インフレは、資産家・昇久階層は損する一方、企業家階層が得している現象という認識でひとまず良いのでは。
どうも最近の暴力的なインフレは、消費者たる私は苦境に直面しております。

第4章:貿易はなぜ拡大するのか
自由貿易体制は関税を撤廃することで先進国の安価で質の良い商品が流入し、発展途上国の自国産業の発展を阻害する危険がある。「先に二階へ上がったものがはしごを引き上げてしまう」制度である。
インターネットの登場で最近では国対国の貿易ではなく、より部分的なつながりで利益を共有する方法というものある。

軽く飛ばして、
第8章:仮想通貨とブロックチェーン
ブロックチェーンの台帳にタグ付け、ハッシュ関数の利用、ナンスの活用という説明で、大方理解が深まった。
マイナーは何してるんだろ?にたいしても、新しいブロックチェーンの創造と報酬としての仮想通貨の入手でだいたいイメージつかめた気がする。

最終章の経済界の縮退に対する危機感は、理論ぽくなってきて理解が難しい。しかし、現在の自由主義経済の中における飽和であるがゆえの虚無感、一般意思(理想)ではなく全体意思(欲望)を追い求めているが故の束縛感というのはまさに自分が感じていることだし、現代人の根本的な課題なのだろうと思もう。徹底的な個人主義ではなく、他社との関係性により吸気口を共有し息詰まりな状態を打破するいった方向性は、非常に共感します。しかし、個々人としてどういった生活を営めばよいか、生きるとは、悩ましいところですし、今話題のポスト資本主義というテーマが注目される現代、一つの転換点なのかもしれません。

0
2022年05月07日

Posted by ブクログ

こんなにわかりやすい本に出会えて感謝。疑問に思っていた貨幣制度や金本位制のことからビットコインまで分かりやすく書かれている。何冊か購入して周りに勧めている。

0
2022年05月03日

Posted by ブクログ

ここ何年かで一番「読んでよかった」と思う本。
感動を通り越してもはや感謝。
もう、ずっと面白かった。
経済に興味がある人も、興味がない人もオススメ。

0
2022年03月30日

Posted by ブクログ

良書。ビットコインのくだりは取ってつけたような印象だがそれまでの章は歴史的背景も踏まえて貨幣経済の成り立ちから核兵器の存在意義まで初めての人にもわかりやすく書かれていた。オーディオブックから入ったが、大変図が多いため更なる理解を深めるため愛読書として書籍を購入することにした。

0
2022年01月05日

Posted by ブクログ

物理学者による経済学の基礎部分の解説書。理系な視点から経済学を捉えるという試みが新鮮で面白かった。
冷静な分析かつロジカルな構成で理解しやすく、経済学の入門書としても使えると感じた。ただし若干乱暴な主張や議論が必要な論もあり、そこは注意が必要かと思う。(裏を返せば読み手に違和感を抱かせて議論に巻き込むという点でも有益な一冊だとも言える)

個人的には第5章のケインズ経済学と古典主義の攻防、最終章の縮退理論が読み応えがあって面白かった。

0
2021年12月14日

Posted by ブクログ

今まで経済についての本を多少なりとも読んできたが、この本が1番わかりやすい。
経済を学ぶ上で最初に出会いたかった一冊。

0
2021年12月09日

Posted by ブクログ

評判どおりとてもわかりやすかった。経済学というより経済的側面からみた社会の成り立ちみたいな話なので、残念ながら資格試験の勉強には使えなさそう。

0
2023年10月15日

Posted by ブクログ

とにかく話が上手というか、メタファー使って引き込むのが上手い。
当然直観的理解に全振りのため、正確性少し不安を感じる部分もあるが、その枝葉を捨ててもなお得るもののほうが大きいのではないか。

気になったのは、伝統的社会は縮退に対応できているのではなく、縮退にたまたま対応できていた社会が残っていただけなのではないかということと、これまでの伝統社会と現代社会というスケールとOSが全く異なるシロモノを同じ土壌で見比べるのが適切なのか?ということ

0
2023年08月24日

Posted by ブクログ

経済学と聞くだけでとっつきにくい印象を受けるが、うまく噛み砕いて具体例もつかって説明してくれているのでわりと抵抗なく(多少詰まる事もありましたが)スルッと入ってきます。とってもありがたいです。
……この本を読む事で確実に経済学に対する苦手意識は減りました。

何回でも読み返したい一冊です。

0
2023年07月30日

Posted by ブクログ

ゆる言語学ラジオで絶賛されていたこちら。最近読んだ「東大生が日本を100人の島に例えたら…」で、経済オンチを自認したので即ポチした。

「東大生が日本を…」を読んだ時も思ったんだけど、余剰の富を蓄積したり、売買や物流を便利にするための手段として機能していたお金が、経済の拡大とともに目的化していく構造が、この本を読んでいてもよくわかる。
一章ごとにそれこそハッとする学びがあり、とてもわかりやすい身近な物理で経済の流れ、構造を例えてくれるので、本当に直観的に理解が進んだ。
それにしてもはしがきからこの点のわかりやすさについて、自らめちゃくちゃハードル上げるなぁ…と、思ってたけど、
著者のまとめとしての考えである9章以外は経済オンチ、物理オンチの私でもそのハードルを難なくクリアできる高解像な内容だったのが凄い。
前評判どおり、ブロックチェーンについてもアレルギーなくするする読めて(わかったとは言ってない)新しい知見も難なく得られたので、前評判の絶賛を信じて本当に良かった。

9章はわたしにとっては他の章に比べるとかなり抽象度が上がったな、という印象で、縮退の話は面白かったけれど正直ピンとこないところもあった。
読みながら「暇と退屈の倫理学」に通じるのかなと思ったり、何度か行き来して読み返すとより理解が深まりそう。

それにしても頭のいい人の文章は凄いなぁ…。
そのうち「物理数学の直観的方法」にも挑戦してみようかな。

0
2023年04月30日

Posted by ブクログ

経済学専攻でない人向けに書いた本。
第1章が秀逸。イメージがわかりやすい。
但し最終章はよくわからなかった。

0
2023年01月28日

Posted by ブクログ

近著「世界史の構造的理解」の底本という位置付けで再読した。本書のポイントは次のとおり。
①暴走中の資本主義の駆動原理は次の3つ。
  軍事力維持(英国)
  未来に夢を与える(米国)
  他国の資本主義から身を守る(日本)
 これらを全て満たす新たな思想が必要。
②縮退(退化)過程で富が引き出されている。
  回復不可能になる前に対応が必要。
  鍵は哲学・物理学等と融合した真の経済学。
  少なくとも新自由主義では話にならない。
 
 読み返してみて改めて名著だと思ったが、第6章で貨幣の増殖を「また貸し」を前提に語っている部分は明らかに間違い。これほどの論考ができる著者がなぜこのような説明をしたのか興味がある。
 単なる無知とは思えないのだが。

0
2022年07月23日

Posted by ブクログ

自分は学がなく頭もあまり良くないので、よくは理解できなかった。それでもスゴいことが書いてあるという感じはあって、興味深く読ませてもらった。

貨幣とか、金本位制などについてその歴史から本質を捉えて未来について語っている気がした。そこから必然的に出来する「縮退とコラプサー化」を扱いまだ産まれていない対抗策の見通しを示す。

どうやら本書は経済に疎い理系の読者を想定している模様。文系の社会発達モデルって、対立する概念の間を揺れ動きながら、螺旋的により高度化していくようなイメージがある。
対して理系のそれでは、「この先にこんな技術がありそう」という方向に一足飛びにジャンプしていく感じ。

個人的には、この本こそ21世紀の資本論と呼ぶに相応しいと思った。

0
2022年07月08日

Posted by ブクログ

経済学素人でも経済学の概要を掴める本。素人なので本当に合ってるかは分からないけれども。
マクロ経済とブロックチェーンのイメージが掴める。

0
2022年04月11日

Posted by ブクログ

著者の語り口、賢い人だなあと思います。
仮想通貨が掴めたのが良かった、最終章の理解が追いつかず再読しよう。

0
2022年02月13日

Posted by ブクログ

マクロ経済
 企業、個人預金、銀行の仕組み
 消費と設備投資は4:1の割合で継続していて、経済が止まることは経済の1/5が止まることである。何かぎトリガーとなって経済が止まったり、加速することでインフレやデフレご起こる。

ミクロ経済
 需要と供給

農業経済から工業・商業経済に移ったことで経済が躍進さした。これらは商材の移動させやすさに起因しいてる。重厚長大から軽薄短小へ。日本の得意は車などの重工工業なので、ITなどをいかに輸出できるかが鍵。

0
2023年09月24日

Posted by ブクログ

経済史を俯瞰しながら、マクロ経済学の基本的なタームが説明されているのが特徴的。
なぜそんな体裁なのかといえば、最終章で、著者が提示する「縮退」という概念を深堀りするためだったとわかる。
学説を並べただけの入門書ではなく、全体がストーリーとして頭の中に入るようになっている、とても素敵に工夫された概説書

0
2022年10月29日

Posted by ブクログ

色々と面白い切り口というか、話はあるんだけど、
いかんせん貨幣感がアウトかなぁ。
ブロックチェーンのとこは単純に勉強になる。

オーディブルで聞き流しならまぁアリ。。

0
2022年04月21日

Posted by ブクログ

大変理論的かつ理解し易い展開で、ざっと読むとなんとなく経済学が分かったように思える。
じっくり読むと更に理解が深まると思う。

0
2022年02月14日

Posted by ブクログ

【感想】
経済学を苦手とする人は少なくない。その理由は、大学で学ぶ「経済学」と社会の中の「実体経済」が往々にして乖離しているせいだと思っている。

大学で学ぶ経済学は、まず「経済の成り立ち」から勉強していく。需要量と供給量と価格、貯蓄=投資、GDPと経済成長率の関係、国際収支と為替レートなど多岐に渡るが、単体の項目だけなら基礎的で単純な内容が多い。しかし、実体経済はこれらが全て組み合わさった複雑な層になっており、個々の事象が全体に通じていることを直感的に理解しにくい。さらに厄介なのは、モデル式は理論上正確だが実態上正しいとは限らないことにある。こうした矛盾を孕んでいても「成り立ってしまう」のが実経済であり、それが分かりづらさを生んでいるのは間違いないだろう。

本書は、そうした曖昧な「経済学」に対して、「なぜ資本主義は暴走していくのか」という一本線を引き、この軸に沿って経済学をカテゴリごとに学びなおすことを目的としている。大学のテキストのような総ざらいの学習ではなく、「資本主義の問題点」に強くフォーカスを当て、本で述べる知識と実体経済の成り立ちが乖離しすぎないよう、丁寧に現代社会の特徴を説明していく。
特に複雑な数式は含まれておらず、思考実験や図解を用いて直感的に理解しやすい本を目指しているため、これから学び始める人の入門書としてとてもオススメだと思う。同時に、物理学や生態学からのアナロジーで得た「縮退」「呼吸口」という概念を使って、今後の資本主義に必要な要素を経済学外に求めていくため、経済学に理解がある人にとっても新たに学ぶことのできる本となっている。とても贅沢な一冊だった。

――――――――――――――――――――――――――――――
本書で私が「なるほどなあ」と思ったのは、現代経済と中世ヨーロッパ・イスラム文明の経済を歴史的に比較している部分だ。

中世ヨーロッパでは教会が商業を危険視していたため、民衆に「金は悪だ」と説くことで教会への寄進を促し、集められた金を教会の地下にしまいこんでいた。(結果的にはその金の誘惑に聖職者が負けてしまったのだが)また、イスラムでも同様に富の集中を悪としていたが、貧しいものへの喜捨という形で市場に流させていた。
2つのうち、原則として金利を禁じていたイスラム文明では、民衆の間に発生していた余剰資金が無闇に貯響に回らないよう、「喜捨」という形で撤退路を与えていた。ところがそれは、ケインズ的観点から見ても結果的に、興味深い機能を果たしていた。
一般にぎりぎりの生活をしている低所得者有層は収入を貯蓄に回す余裕がなく、それらを右から左に生活必需品の消費に使わねばならない。つまり所得の大半が消費に回っており、経済学の用語で言えば「消費性向が高い」ことになる。一方逆に、使い切れないほどの金を稼いでいる高所得者層は所得が消費に回りにくく「消費性向が低い」。つまり社会全体の富の「重心」が高所得者層の中にあるほど、富の大半が貯蓄に回りやすく、経済全体で消費性向が低くなりがちだということである。そして「貯蓄が有効需要を細らせる」という原則に従えば、これは有効需要の不足となって現れる。そしてイスラム経済の場合、この「喜捨」という行為が、実は社会の富の重心を消費性向の低い層から高い層ヘシフトさせ、結果的に有効需要を安定したレベルに維持するという、意外な役割を果たしていたと考えることもできる。要は、金持ちの財産を貧困層に分配する制度が、「教義」という形で内包されていたのである。

こうして見ると、「経済」は(変動為替相場制以降の高速経済だけでなく)古くから存在していたということをはっきりと認識できる。しかも、ある程度現代資本主義との共通点がありながら、解決方法を全く別とするユニークな制度である。こうした歴史的な要素を世界史の上から見つめ直すことができるのも、本書の面白い点だった。
――――――――――――――――――――――――――――――
【まとめ】
1 暴走する資本主義
資本主義にはその速度をどんどん速くしていかなければいけないという強烈な圧力が、宿命として根本部分に組み込まれている。経済活動の5分の1(貯蓄率)が、経済を加速度的に早めるための設備投資に向けられている。

貯蓄という行為は、本質的に経済社会に貧血か超高血圧かの二者択一を強いる。企業は人々の銀行貯蓄をもとに設備投資を行うが、そのスピードを緩めるわけにはいかない。消費と投資を連続的に続けていくと、経済の速度計の針が際限なく上がっていく。

現代社会が資本主義をもはや手放せなくなっている理由は、ほぼ次の3点に要約できる。すなわち
・軍事力維持の基盤としての資本主義(旧英国型)
・人々に未来の夢を与えるための資本主義(米国型)
・資本主義から身を守るための資本主義(日本型)の三つであり、これから何らかの新しい経済体制を設計しようと思った場合、必ずこの3点すべてについてクリアできることを何らかの形で保証できねばならない。


2 農業経済
一般に文明においては、産業は農業から工業へ、工業から商業へ移行していく。その最大の理由は、産業としての機動力の差だ。農業は需要が伸びにくく、供給もやや遅いスピードでしか展開しない。それが弾力性のある工業に負ける要因であった。


3 インフレとデフレ
一般に好景気の状態はインフレを発生させやすい。そして社会全体を眺めると、インフレ状態のもとでは社会にサンドイッチ状の損得が生じ、資産家階層と労働者階層が損をする一方、企業家階層が得をする傾向にある。そのためインフレの功罪は、視点をどの立場に置いて眺めるかで異なってくる。

最気を良くするためには、政策当局は故意にある程度のインフレを期待することがある。ただしその際には大勢の民衆の生活が犠牲になっており、もしそちらへの対応を優先してインフレを防止しようと思った場合には、金利を上げるのが有効なコントロール策だ。これがいわゆる「金融引き締め策」である。


4 貿易
近代になると貿易の世界、というより経済世界全体が「商業」から「産業」の世界へ移行した。中継貿易で生きるオランダやイスラムなどの存在を駆逐し、英国をはじめとする、国内の生産品を官民一体となって強引に売り込む産業国家を貿易の主役とした。
貿易が生み出す利益は、当初は中継貿易勢力が吸い取っていたが、そのような「産業化」に伴って、利益が関税という形で国家政府の金庫に流れ込むことになった。そしてさらに自由貿易の登場によって流入先を変え、その利益は個々の企業にコスト低下という形で広く分散されている。
現代の世界では、コンピューター・ネットワークの発達によるグローバル化によって貿易の常識がかわりつつあるが、自由貿易と保護主義との本当の適正点はまだわかっていない。


5 ケインズ経済学
経済というものは、石油ポンプが自分の汲み上げた燃料で動いているようなもので、何らかの形でひとたび縮小均衡の状態に陥ってしまった場合、外から一度バケツで資金を注ぎ込んでやらないと、自力では拡大が難しい。
そのため、「バケツの役割は、政府の公共事業が果たすのがよい」というのがケインズの考えである。失業救済に対しても経済全体を拡大させることで行うべきというアイデアだ。そのようにバケツで注ぎ込まれた資金は「乗数効果」によって、当初資金の何倍もの最終的効果を伴って経済拡大に寄与する。

ただしケインズプログラムの一般的な欠陥は、公共投資を行うため「大きな政府」を要求する上、その財源としてしばしば国債発行という手段に頼るため、財政赤字とインフレの温床になりやすいことである。


6 貨幣増殖
貨幣の増殖は、銀行などが預かった貨幣をどこかへ「又貸し」した時、又貸しした貨幣と預金者の手元へ渡した「預かり証(預金通帳)」が二重に市中に出回ることで起こる。現代世界では、預金通帳の数字自体が後者に相当して実質的な「虚」の貨幣となっている。

企業も銀行も現金をなるたけ短い間しか自分の手元に置いておきたくないので、それは多数の企業と銀行の間をたらい回しのようにされて、何重にも預金と貸出が繰り返されてしまう。そのため磁石が延々と子孫を作っていくのと同じようにして、オリジナルの何倍もの貨幣が生まれることになる。
その際に増殖の限界を定めているのは「準備率」というもので、銀行が預金全部を貸し出せずに、利用者の引き出し要求に答えるべくある程度を予備として手元に置いておかねばならないことが、無限の増殖に制限を加えている。こうした増殖メカニズムは、一見不健全な制度に見えるが、実は経済社会が好景気などによって拡大したがっている際には、どうしても要求されるものである。逆に言えば、このメカニズムと縁を切るには、経済が全く成長しない絶対的な定常社会でない限りは無理である。


7 国際通貨としてのドル
国際通貨としてのドルの問題の本質は、世界政府も中央銀行も存在しない国際社会に、全員が使える共通通貨が存在してほしいという要求を、しかも成長の宿命を抱えた経済の中で実現しようとしたことにある。つまり前者の部分では、その通貨が誰かの恣意で増やしたりできないという厳格な硬直性が要求されるが、後者の部分ではその通貨が世界全体の経済成長に合わせて量を増やせるよう、ある程度の柔軟性が要求される。つまり「急速には絶対に増やせないが、長期的にはゆっくりと増やすことができる」という、完全に矛盾した要求を課されてしまうことであった。

ドルの場合、本来は米国の国内通貨として整えられたものだったが、周辺諸国は第三国同士の国際貿易でもその支払いにドルを使いたがり、そのため前者が要求するサイズと後者が要求するサイズが矛盾を来たしてしまった。
それでも当初は米国経済の規模が圧倒的に大きかったので、その余裕の分を周辺諸国が利用するという形で何とか継持されていた。しかし周辺諸国が自分も経済成長して、その図体が米国を脅かすほどに大きくなると、それを支え切れなくなってしまった。
当初ドル体制は、金との交換を決まったレートで約束する、実質的な国際的金本位制だったが、そういう事情で支えきれなくなって、その約束を放棄する変動相場制に移行せざるを得なくなった。


8 資本主義の未来
現在の資本主義は縮退という繁栄に向かっている。縮退とは、大小様々な企業が相互作用によって絶妙なバランスの上で生態系を保っていたのに対し、資金の流れなどが超巨大企業と巨大投資家の二者の間だけで回るようになり、末端が生態系に無視される形で衰退していくことだ。
縮退の際は、劣化が起こっているにもかかわらずその過程で富が生まれてくる。
現代社会の富は、単に巨大企業が活発化しているというより、昔の時代からの伝統や習慣で長期的に整っていた社会生活のシステムが、壊れて縮退する過程でしばしば生まれており、むしろ後者がメインとなって富が引き出されている。

現代の資本主義社会では、「大勢の短期的願望(部分)を集めて行けば、長期的願望(全体)に一致する」という勘違いをしてきた。それゆえ、量的変化の増大が質的変化を生み、企業が人々の願望にどんどん短期的に応えることで、経済が加速し続けてきたのだ。

そして、縮退は放っておいても元に戻らない。行きつく先は、短期的願望の塊がすべての長期的願望を押し潰して、恒久的に抜けられなくなる「コラプサー化」だ。
とすれば、寡占へ対抗するために「多様性」を積極的に推進することが有効だ、と思うかもしれないが、そう単純ではない。もし個体が細かい多様性を過剰に主張しはじめると、逆にグループや種としての特性が履曖昧化・希薄化してかえってその多様性の力が弱まり、結果的に短期的願望の巨大な塊をベースに成り立つ単一勢力が勝利することで世界全体が画一化する、というパラドックスが起きるからだ。これは悪い多様化の典型例であり、多様化というのは本来「それを行っても縮退度がさほど増大しない」という局面でのみ許されることだ。

いままでの経済学を一種の力学として眺めた場合、その根本原理とは要するに「われわれの経済社会は、欲望を満足させて利益を極大化させようとするただ一つの力で動いている」ということである。つまりもし経済社会の中に存在する唯一の力がそれで、その力が縮退方向にしか働かないのだとすれば、進行はとまらない。なにか別の力を見つけてこない限りは、回復は望めない。
その力とは短期的な欲望ではなく、「想像力・可能性による幸福」である。即物的な欲望の穴埋めによって希望がまたたく間に塗りつぶされるような息苦しい状況ではなく、空白が生まれる余地を残し、「大きな物語」の実現に向けて呼吸口を残しておける社会が必要になってくる。

0
2022年01月04日

「ビジネス・経済」ランキング