【感想・ネタバレ】ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)のレビュー

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Posted by ブクログ

解説にも書かれているが、この小説はリアリズムである。であるが故に非常に怖い。現実に起こり得る出来事が描かれている。
東京オリンピックに向けた中で核爆弾によるテロが計画され実行されていく。現実ではコロナにより延期されているが、小説内では予定通り2020年に実施される予定となっている。
テロリストはISの生き残りと日本人デザイナー。日本人デザイナーの動機は、日本に核の説明責任を果たさせる事。
デマの廃絶は現実世界でもまだまだだが、説明する事でしか解決出来ないと思う。

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2021年08月29日

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あぁ、素晴らしい!
緊張感、交錯する正義、実在するけど見てこなかった現実、そして希望。
僕はもうとにかく、この藤井さんの描く、多様な出自、バックボーンを持つメンバーがチームとなって目的をなそうとするところが大好きです!

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2021年06月30日

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One More Nuke。こんな文字を書くと、FBIやCIAからこのサイトが監視されそうです(苦笑)。

One More Nukeとは、「もう一度核を」と言う事。それはすなわち、(今のところ)最初で最後の被爆国の日本において、もう一度核爆弾を爆発させると言う事を意味しています。著者は、元々ソフトウェアエンジニアだった経験もあるので、そういうバックグラウンドのなせる業なのか、工学的な描写にすぐれています。

通常核爆弾は、核燃料を90%以上まで濃縮しなければならないとされていますが、この物語では、それよりはるかに低濃度の20%で核爆発を起こす事が可能な設計の核爆弾を設計し、製造してしまったと言う事が描かれています。(インターネット上の百科事典では核爆弾は20%以上の濃縮度と言う事になっている様ですが)でも、その低濃度核燃料で核爆発を起こす設計で、まぁまぁ高濃度の核燃料を爆発させると、出力が大きくなるんですね。どこまで科学的に正しいのかは知りませんが・・・。

日本が舞台でこの手の物語を描くと、荒唐無稽になりがちですが、この作品ではそんな事はありません。なんか「あるかも」と言う気にさせられます。

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2020年08月15日

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藤井太洋の作品は、本当にありそう、と思えるようなリアリティが感じられるところがすごく好きなんだと思う。
何が正しいのかをきちんと説明させるために、汚染を東京で引き起こそうとするテロリストと、事実を説明できる形に残そうとする科学者を中心に、原子力爆弾を巡って複数の立場の主体が駆け引きし合う物語。
忘れてしまっているだけで、見えなくなっているだけで、偏見の芽はいくらでも残っているのだろう。
200812

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2020年08月12日

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今読むべき本、というのはこういうもののことを言うのだろう。

2011年3月11日から9年、2020年の3月11日を迎えるまでにこの本に出会い、読み終えられたことには本当になにか運命的なものを感じえない。

私たちの中に未だ深い傷を残すあの地震とあの事故にここまで誠実に大胆に向き合わせ、新しい角度から考えさせてくれたこと、強い言い方になってしまうがあの事故に対して安い感動を与えることでそれらを美化するような小説しか発表されてこなかった9年間を脱却したことを評価したい。

また、あの事故とオリンピックを結びつけ、両者の問題をさらけ出すことこの本を2020年2月という時期に文庫化したことは作者の功績であり出版社の功績である。

今、日本人が読むべき1冊であると私は思う。

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2020年03月10日

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ネタバレ

素晴らしい。

SFが大の苦手であるわたしが、全作品抵抗なく読め、一作毎にどんどん面白くなっていく大好きな作家さんなのですが、今回はSFではなく、警察小説、国際謀略小説というまさにどストライク。
近未来小説でありながら、東京オリンピック間近の今読むべき。

デマが人を殺すというのも、今グイグイきます



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2020年02月23日

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ネタバレ

これが、これこそが「本物の震災後文学」
そして、サイエンスフィクションどころか、リアルタイムフィクション。犯行日に間に合うタイミングで読めて良かった。

ただね、このあとの世界、核兵器禁止条約レベルの話じゃ済まなくて、原子力発電の続行が世界的に無理になるでしょ。但馬は間接的に世界中に多数の犠牲者を生むことになると思うよ。

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2020年02月22日

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ネタバレ

2020年3月のオリンピックを控えた東京を舞台に、核テロリストと攻防を描いたサスペンス。

 テロリストの三人は、それぞれの理由から、微妙に異なる状況を作り出そうとするが、それゆえ、思惑が絡み合い事態は二転三転する。一方で、それを追う、警察などの組織も、テロを防ぐという同じ目的を追いながら、それぞれの立場のしがらみや情報の欠落に翻弄される。


 登場人物のバックグラウンドを通じて、読者は、過去と現在における核による被害の対比構造に気づかされる。
 核保有国の初期のウラン採掘に関わった祖先や、核実験に影響を受けた自分自身や家族、それは過去の為政者の「知らせなかった」罪だ。また、一方で、また別の主人公の悩みや苦しみは、3.11のデマや風評被害といった、「正しく理解しようとはしなかった」罪を、現在の我々に突きつける。

 動機の純粋さと、その実現方法の精密さと大胆さ、そして鮮やかさに、読者は目を奪われる。そしてやがて、それらを通じて、著者が訴えようとしているものをくっきりと浮かび上がらせる。これは、物語の中の犯罪者と著者の「共犯」関係だとも言える。


 こういった重いテーマを扱いながら、一方で、登場人物の動作を生き生きと描く。そしてまた、彼らのテクノロジや人種に囲まれた生活を、正確に、そしてポジティブに描く。これらは、我々の時代も良いものにしていけるのだという希望を与えてくれる。

 扱う題材に対して、なんとも言えない爽やかな読後感だった。2011年から9年。この期間の一つの区切りとして、この時代に生きたすべての人に読んでほしい本だと思った。

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2020年02月15日

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なんて気高い…!
著者の誇り高い仕事ぶりに、ただ涙が流れます。
万人に受ける小説ではないかもしれないけど、できるだけ早く(できれば3月11日より前に…!)、多くの人に読んでほしいと思う秀作です。

2020年の東京、3月11日に原爆テロが予告された戒厳令下という、聞いただけでギョッとなる設定。刑事、科学者、テロリスト、それぞれの線が最初は群像劇的に動いていき、やがて絡み合って…というストーリーです。
※文庫の帯にも解説にも「爆心地」が書かれてしまっていたものの、そこまでネタバレ感はなく。
読み終わったばかりの今思うのは、著者から送られているエール。東京を守る人々に対して、核に傷つけられた人々に対して、そして福島の人々に対して。

あと1ヶ月でこの小説はひとつの区切り(悪く言えば、賞味期限)を迎えてしまう訳です。初出の雑誌連載は2015年から2017年だけど、この文庫は2020年1月29日に出版。どうしても2020年に出版したかった、ということなのでしょう。
現実の世の中はコロナウイルスのせいで別の不安に包まれてしまっていますが、本著が持つ希望の力は、全く色褪せないもの。3月11日が良い日で、2020年が良い1年になりますよう。

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2020年02月14日

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2020年3月、東京オリンピックを目前とした日本に、核爆弾によるテロの予告動画が流れる。
複数のテロリストの、それぞれの目的。それを止めようとする、複数の組織の人々。
それぞれの思惑と行動が交差して、常に緊張感のある1冊だった。
作中の時間が過去になる前に、今読まれるべき作品です。

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2020年02月07日

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2020年の3月11日に予告された新国立競技場での原爆テロを巡るリアリズム小説であり、目の前の、過ぎ去った絶望と共にあるが、希望のための物語でもあり、様々なテクノロジーや現実世界とのシンクロ、情報化社会、多層化して断絶する世界、移民と多民族化する日本を描いている。
『ワン・モア・ヌーク』は物語の主軸になる人物(グループ)が4系統に枝分かれしていく。それぞれの物語を読者として読んでいくと、各主要人物たちが知らない他の三つの事柄を読者は破片を集めるように知っていくことになる。
主観ではわからない破片たちは客観性による距離の置き方で物語の全体像が掴めてくる。そして、解説で仲俣さんが書かれているように非常に「フェア」に描かれていように思える。
メインの登場人物たちにしても男女率が同じぐらいであり、ベクデル・テストをしても問題がないはずだ。それらの感覚は藤井さんのツイートなどを見ても意識されていると思う。
前作になる『東京の子』とも地続きのように思えるのは今の東京を舞台にしているからだけではなく、『東京の子』ではパルクールが描かれていた(絶対に映像化したらいいのに、あれができる子がいるのかどうかわからないけども)、今作ではそれはバレエの動きがあって、進化していくテクノロジーを描きつつも、やはり身体性におけるものは対比ではなく、同じようなものとして物語に現出している。藤井さんはかつて舞台美術をしていたそうなので、それもあるのだろう。
最近、小説読んでないなって人には分厚いよって言われそうだが読んでみたらどうでしょう。

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2020年02月06日

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直訳すると「もう一度核を」。恐ろしいタイトルである。
原爆テロを予告する動画が日本政府に届けられた。その時に向かって、各国の組織が、日本の警察が動き出す。
緊迫感溢れるストーリーである上に専門用語がバンバンと飛び交うハードなストーリーだ。かつてテロリストが米国内で核テロを企てる『ピースメーカー』という映画があったが、あれよりもずっとハードで、おまけにサスペンスフルだ。
最初こそ普段触れていない言葉に面食らうかもしれないが、そこを越えてしまえばあとはサスペンスに身を委ねればいい。緊迫感溢れるサスペンス小説だ。

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2023年10月10日

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現代東京、しかも時は2020年3月。
東京オリンピックを目前に控えた国内の混乱を具体的に描写しており、舞台描写はこの上なくリアル。
対して、そこで展開されるイスラム圏やCIAを巻き込んだストーリーは壮大で。
このリアルさと壮大さのギャップにイメージを刺激される。

突っ込み処はいくつもある。
例えば女犯人、超人過ぎ問題。
この人が本気出したら大統領選に出馬しながら自前でロケットつくりそう。
また例えば警官・科学者ペアの、察し過ぎ問題。
あの情報範囲からテロ犯の動機と分裂を見抜くのは第六感に近い。
世界を混乱に陥れ、日本経済に壊滅的ダメージを与えた犯人に、この人たちは事件による死者の「数」を日常のそれと比較して慰めたりもしている。
余波を思うと絶対そんな場合ではない。

ただこうしたザラザラした違和感を呑み下して先へどんどん読み進めるほど、魅力的な物語ではあった。

その魅力の主軸になっているのがおそらく、先述のリアルさに込められたメッセージ性。
3.11以降の原発問題や9.11以降のイスラム圏テロリズム勃興、隣国での核実験と人権侵害など、現代日本が抱える社会問題が多く織り込まれている。
読み進む程に、「我々日本人」は、「日本人だからこそ」、核・原爆を遠い国や過去の問題とせず、原発問題を過ぎ去った出来事としないで、学び続けねばならないと思いを強くする。
読後に余韻を引く物語。

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2023年08月19日

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良質なノンストップサスペンス。専門用語が多いが、犯人側の目的も、止める側の目的も明確。重要人物は経歴などの背景が過不足なく書かれてて感情移入しやすい。ラストも良い!映画化したら面白いと思う。

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2023年04月08日

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ヌークとは「核」。ヒロシマ・ナガサキ・フクシマを経験した日本で、2020東京五輪を目の前にした東京で「核」をもう一度というあらすじで、テロ組織とそれを追う者たちの時限サスペンスの物語構造。
重視されているのは2020東京のリアルタイムであることと、核爆弾の設計製作仕様のリアリティにあるように思う。
原子力や放射能について、今この時代に、正しい科学的知見を持たなければならないという著者のメッセージを感じた。

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2023年02月07日

M

購入済み

おもしろい

藤井さんの小説はこれで3冊読んだが、ハズレ無し。学識的に理解できない内容もあるが、ストーリーがともかく面白い。これからも期待。

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2021年12月17日

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あぁSFエンターテイメントだった。
ワンモアヌーク。
最初はなんか面白くないかもと思ったけれど尻上がりにドキドキしていった。
スマートフォンがこんなに出てくる小説初めてかも。
令和2年発行なんだね。そりゃスマートフォン使ってるよね。

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2021年12月01日

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オリンピックを控えた3月11日に東京で核テロをやろうというお話。物語は核物質が東京に持ちこまれてからの、5日間を描いています。いろいろな人物の思惑が交錯しますが、淡々と進んでいく時間が緊張感をあおります。
藤井さんの小説は技術者目線のお仕事小説の傾向が強いですが、本作はサスペンスに徹している感じ。テーマについては、なかなか考えさせられますね。

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2021年06月20日

Posted by ブクログ

東京に原子爆弾を仕掛けたテロリスト。予告時刻は3月11日の午前0時。それを阻止するため、公安部やCIAが動く。


題名の「ヌーク」とは核という意味。東京に原子爆弾を仕掛けたということで、それぞれの登場人物にスポットをあて、同時進行で物語が進行するので、昔の「24」を見ているような躍動感がありました。危機が迫る中での勢いが読み手にまで伝わり、約600ページという量でしたが、あっという間な感じがしました。ただ、詳細に見てみると、これはどういった状況?といった情報量の多さや今の状況が、頭の中で整理しづらかった部分もありました。登場人物も多く、最初のところで一覧表があってもよかったかなとも思いました。

良いも悪いも、それぞれのプロフェッショナルが活躍していて、その状況下での裏切りや疑惑が二転三転と変化していくので、色々楽しめました。

原子爆弾だけでなく、福島での原発問題も取り扱っていて、重いテーマだなと思いました。風評やデマといった問題が、特定の人々を傷つけ、やがて最悪な状態へと変貌するのは、読んでいて辛かった部分もありました。

そのために爆弾を作ることやその行動においては、理解し難い部分がありました。人それぞれ、色んな考えを持っていますが、人を傷つける行為という点はいかがなものかと思いました。

日本人は平和ボケされていると捉えられているかもしれませんが、その背景には多くのプロに支えられているんだなと改めて感じました。その人たちがいるからこそ、未然に防ぐこともできますし、最小限に抑えることができます。

周りと安易に前へ倣えではなく、きちんとした情報、冷静な判断を常に持つことが大事だなと思いました。
改めて、多くのプロフェッショナルたちに感謝を述べたいです。

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2021年04月07日

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カチッ、カチッ、カチッ……
まるでドラマ『24』のように、短期間で時系列、複数場面の同時進行が、読む人を夢中にする。
夢中になり過ぎて、久しぶりに帰宅時にひと駅乗り過ごすとこだった。

2020年3月6日から11日までの5日間のお話。ーー「東京に核爆弾⁉︎」

多くの人が昨年3月にリアル読書を試みたと思うが、スルーしてしまったので、改めて一年遅れで読んでみた。

読んでみて「東日本大震災後10年」の今年の方が、読む意義が大いにあった。

あの日自身が体験した戒厳令下のような東京のこと。
その後、テレビで伝えられる「ツナミ」や、続々と襲いかかるような「フクシマ」の情報のこと。

あれから10年、「核」の脅威を二度も体験した日本は、今、「核」に対して正しい道を歩んでいるのか……。

まぁ、エンターテイメント性抜群の展開で、意義など考えなくても十分おもしろいから…。

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2021年03月09日

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原爆テロ予告、爆発は2020年3月11日。3Dプリンタやネットワークを駆使した現代ならではの爆弾作成や材料調達を始め、物語は妙にリアルだ。映像を見ているように600頁を夢中で一気に読んだ。テロリスト各々の事情、阻止する側の思惑、面白かった、と素直に言っていいか迷うほどメッセージ性は高い。「One more nuke to fear it.」なんて強い、痛々しい言葉だろう。今はちょうど3月、沢山のことに思いを馳せる。2020年は想像されていたものとは違ってしまったが、これは読んでよかった、読むべき一冊だった。

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2021年03月08日

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東京のど真ん中で原子爆弾を爆発させようと試みる但馬樹(たじまいつき)とサイード・イブラヒムだが、二人の目的は微妙に違っていた.長崎型の原爆を日本で組み立てるという難題を彼らは難なくこなすが、中核になるプルトニウムの純度が問題になる.20 or 70%.但馬は20%でも起爆させることを企画して3Dプリンターなどを駆使しているが、イブラヒムは但馬が放射能汚染だけに留めることを見破る.防御側のシアリー・リー・ナズ、舘野健也らと但馬との攻防が面白かった.原爆に関してかなり正確な仕様が出てきたが、起爆装置で重要なEBW(Exploding Bridgewire)雷管の記述がないのが残念だった.知っている人はいるはずだが.但馬のようなキャラクターが現実に存在するかは疑問だが、近い人物はいるだろうし、このようなテロを誘発した3/11について熟慮が必要だと痛感した.

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2020年09月21日

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オリンピックの年の3.11、オンタイムで読むことを想定された本作は、コロナによってすっかり世界線が変わってしまった後でも十二分に読むべき本、映像化すべき作品である。
世界的に見てぬるくてチョロい国である日本は、これからますます困窮していく世界において、真っ先に紛争ターゲットにされ得るカモ国家だ。
律と従順を十全に発揮できることはわかった、次は理性と知性とリテラシーだ。

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2020年08月20日

Posted by ブクログ

あっこれはこの3月に読むのがリアルタイムベストでしたね…!
「核をもう一度」か…。
テロに関わった彼女らのそれぞれの立ち位置と理由……。
相変わらず藤井氏の長編は映画のようなドラマチックな盛り上がりが良いな。
ぜひ実写化を、といつも読後に感じるのだけど解説・説明が難しいかなあやはり。

東京五輪を控え、人的被害(風評被害含む)を食い止めるべく政府を奔走させるというこの…なんというか非常にリアリティ溢れて感じられるこの現在よ……。

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2020年04月03日

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被爆者として、核の恐怖を世界に知らしめたいムフタール・シェレペット。
途上国の悲惨な現状を先進国に知らしめるため、使命に燃えるイブラヒム。
放射能のプロフェッショナルとして、事態の収束にあたる舘野とそのチーム。
日本国内でのテロ行為を未然に防ぐために奔走する、警視庁公安部。

そんな彼ら/彼女らを全て出し抜いて自らの想いを遂げようとする、最強最悪のテロリストにして美貌の革命家・但馬樹。

エモい。その一言に尽きます。
作中世界は、2020年3月6日から同10日のたった5日間を中心に、もの凄い密度で展開していきます。現実の東日本大震災の9年後、未だ生まれ故郷に帰還し得ていない人の想いをベースに、現実の2020年世界とそれほど齟齬のない、地続きの世界観の中で物語が進んでいきます。人に寄って様々な解釈が可能だと思いますが、鴨的にこの作品は「鎮魂」を目的としたものであり、第三者がとやかく言っても前に進まないものであると理解しました。

藤井作品の特徴である、「登場人物が全員優秀過ぎて鼻白む」側面は、この作品においても顕著です。誰もが自分の信念に基づいて善かれと思ったことをしているだけなのに、あらゆる物事が悪い方に向かってしまう、この悲劇。
特に、物語のドライバーである但馬樹の行動原理が、鴨にはどうしても理解できませんでした。私費を投げ打って地元・福島の除染を果たし、「戻っておいで」と呼びかけた友人がそれをプレッシャーに感じて自死を選択した、それを「自分の責任ではない」と納得するためだけに首都圏の臨界汚染を目論んだ・・・という展開が、ただの自己愛にしか感じられず、物語全体の説得力が一段下がった感じ。まぁでも、この辺は極めて主観的な受け止め方なので、それぞれの想いがあってしかるべきだと思いますし、それを否定できる人はいないと鴨は思います。

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2020年03月18日

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ちょっとイライラすることがあったので、手元にあった小説を読んでみました。
結論から言うと、こういうときに読むべき小説ではなかった、笑。
とういうのも、テーマや著者の問題意識がが重い、重い。。

さらに今現在のロシアのウクライナへの侵攻のタイミングで、
ロシアが核を使うぞという脅しをかけている状況では
まさしく核や放射能の危険性を伝えるタイムリーな小説と言えそうです。

ちょっと重かったけれど、著者は核や放射能について正しく認識してほしいという
問題意識を持っていたのではないでしょうかね。
そういう意味では、著者の目的は達成できている小説家と思います。

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2022年03月14日

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東京オリンピックを目前にした2020年3月、東京で原爆テロが発生する。
世界中が新型コロナ禍にあえぐ中、1年遅れのオリンピックも終わり、イスラム国が息を吹き返したいま読むにはなかなか面白そうだなと思ったのだが、まさかの苦戦。テロの首謀者に本気度が足りなかったせいか、ぼくの頭が熱気でダメになったせいか。ちょっと(いや、かなり)不満の残る読後感だった。

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2021年08月31日

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舞台は五輪開催間近の2020年東京、同年3.11の原爆テロを予告した女性起業家を主軸に、公安、IAEA、そしてイスラムテロによる四つ巴の攻防戦が今始まる―。但馬の『核への正しい恐れと理解を』という動機は大義が飛躍し過ぎた感があるものの、その発端である福島の放射線問題に関し、一部メディアやSNSにより真実が歪められた影響で未だ復興が滞る現状を鑑みると、我々も己の胸に手を当て、今一度問い正すべきなのだろう。情報量が膨大なので本編はサクサク進むが、その分奥行きに欠け、切実さが今一つ伝わってこないのが惜しまれる。

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2020年11月27日

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ネタバレ

題材としては凄く面白いし、作者の他の作品と同様、かなり勉強になる部分が多かった。
メインテーマとなる核兵器や放射性物質、放射線については、これをベースに色々調べてみたい。

ストーリーは、登場人物を増やしすぎてちょっと散らかってしまっている印象。
オチに繋げるための人物描写、展開が弱く感じた。中盤まではかなりワクワクした分、少し尻すぼみ。

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2020年03月29日

Posted by ブクログ

核爆発は防げたものの核汚染の東京.それでも除染してオリンピックは開かれる.だが現実の今,新型肺炎の脅威はオリンピックを延期させる.恐るべしコロナウィルス!と思ってしまいました.二つのアプローチで犯人を追い詰めていくが,みんな協力してといかないところがどんな捜査でも問題だ.そして原子力汚染に少し詳しくなりました.

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2020年03月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「国民に気づきを与えるためのテロ」を軸とするアクションスリラーみたいな。
このカテゴリーは結構あるある。テロの動機として「荒療治で自国民の目を覚まさせてやりたい」っていうのは現代大型活劇作品ではかなりベタな設定だと思う。テロの目的はそもそもそういう「ショックを与えて人々の考えを変える」みたいなことだろうけども。
2020年3月が舞台なのでSF要素はほぼない現代劇。全登場人物の行動と思考を描写するのでミステリーもない。大どんでん返しとかはないが、どう収束させるのか?という点ではハラハラ感はあった。著者のウンチクパワーは放射能解説に費やされたのだが、それにより詩的で美しい放射線描写になった。画的に綺麗だろうなというよいシーンもあった。
前作よりはいい出来だが不満。著者への期待が高すぎるのかもしれないが。オウムの何やらとか設定勝負の短編の方が最近の著者には向いてるというか、長編に関しては才能が枯れたんじゃないかとちょっと心配。期待しすぎかもしれないが今後に期待。星4には何か足りない気がした。

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2020年02月05日

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