【感想・ネタバレ】億万長者はハリウッドを殺す(上)のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ヨーロッパの支配下の小国だった19世紀半ばのアメリカに生まれたジョン・P・モルガンと、2歳年下の初代ロックフェラーが、前者は鉄道、後者は石油を手始めに、巨大資本を作り上げ、最後にはすべてを手にする話。
自動車、電気、通信、映画などの発明が相次ぎ、産業化していく時代、両者は犯罪スレスレの手段、というより詐欺と謀略と言った方が早い手段を駆使して並み居る競争相手を飲み込み、廃業させ、独占体制を確立していく。
両者が最初に対決することになるのは、それぞれが石油と鉄道の独占を終えてしまった後。石油を輸送するには鉄道が不可欠だった、というのもロックフェラーが競争相手がパイプラインを敷設するたびに破壊していったため。その運送費の価格交渉で最初に衝突する両者は、その後もさまざまな分野でぶつかり、巨大化していくアメリカを二分支配していく。

意外に知られてないのはエジソンとモルガンの腐れ縁。ドクター中松ばりのインチキぶりを発揮するエジソンは、本書の中では一番長く活躍するキャラクターかもしれない。さすがの彼も、モルガンとの交渉では騙されっぱなしで、最後にはGEエジソン社の社名からも、その名前を削除され、失意のうちに没することになる。

さて、著者の広瀬隆は不思議な癖を持つノンフィクション作家で、膨大な資料を駆使して書いているのが明らかなのにも関わらず、いつも参考文献を示さない。
その理由として、その文献の作者と自分の見解・立場は違うからと言い訳じみたことが書かれ、代わりに毎回抽象的な分析ツール・素材が紹介される。
『クラウゼヴィッツの暗号文』では毎年の世界地図に戦争をマッピングしたもの、『ジキル博士のハイドを探せ』では新聞社のベタ記事データベース、そして本書ではWho's WhoとWho Was Who。そして時事年鑑。
本書のWho's Who路線は後年の『赤い楯』で膨大な閨閥系図に結実することになる。

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2017年07月03日

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