【感想・ネタバレ】スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム)のレビュー

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Posted by ブクログ

「きっとこの人には敵わない」と大尊敬している人生の先輩が「今年読んで一番よかった!」と紹介してくれたので手に取った1冊。勉強になりすぎました。日本から見たアメリカではなく、アメリカの中での辛口アメリカ評。でもそれが愛情ゆえにだということは伝わってくる。すでに日本に置き換えても起こっている問題もあれば、これから起こるかもしれない問題もある。まだ日本の方が極端にならずに済んでいるけど、豊かになるためにはお金だけでなく、それを生み出す源泉が何でどこに注力をすべきなのかを認識できていないと、自分がカモになりえるなと思った1冊でした。

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2021年10月04日

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コロンビア大教授、ノーベル経済学賞。アメリカの格差がここまで広がっているのかという驚きがあった。誰でも成功できる、徹底した個人主義、変化に寛容なアメリカ人という典型的なイメージがもはや神話となっている。アメリカに行くなら読んでおいて損はない一冊。

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2020年09月19日

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今アメリカが直面している問題を客観的視点から分析し、具体的に何をすればアメリカはその問題を解決できるのかを述べた本である。
非常にわかりやすく、なおかつ解決策も、一部政治的な要因で難しそうな部分もあるが、概ね具体的で実効性のあるものであり、読んでいて非常に良い刺激を受けた。

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2020年08月13日

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貧困がどういう仕組みで起こるのかを考える一助になった。クレジットカードによる搾取の仕組みなど、はっとさせられる内容が各所にあった。

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2021年12月16日

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ネタバレ

ケインズ経済学の大家、スティグリッツによる経済面から見たアメリカ社会の問題と解決策の提示。政治と経済の連続性を訴え、新自由主義的な市場原理至上主義を批判している。独占に対する問題点や金融自由化の弊害に対する洞察、批判は見事。ただし、解決策として提示されている政策には(日本の国土の均衡ある発展の展開等を鑑みて)やや疑問のある部分も見られる。政策的な側面が多ければより良かったと思う。
事前準備なしでも読めるが、可能であればやや経済学の知識があると良い。経済学の論理における前提への疑念がより理解できると思う。スティグリッツは市場原理の自然な機能を否定しているが、市場が潜在的に果たすべき役割までは否定していない。概して、スタンスは明確であるが経済学的な目標に対しては常識的な主張と言うべきである。その主張は市場の限界とともに経済成長のための市場の力の解放も包摂している。さらに言えば、同著で提示される解決策には経済学的には自明な多くの前提、単に分配を求める者にとっては不都合な、がある。政治的に使われるような粗雑な再分配のデマゴーグとは一線を引いて考えるべきであろう。

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2021年09月02日

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ジョセフ・E・スティグリッツは米国の経済学者で、2001年にノーベル経済学賞を受賞した。クリントン政権時代の大統領経済諮問委員会の委員長や、世界銀行のチーフエコノミストを務め、現在はコロンビア大学教授。

現代は上位1%が富と政治を独占。中間層が没落し、大きな分断を生んでいる。本書は、経済的、政治的に没落した中間層復活のための提言をまとめている。超富裕層と巨大企業への累進課税と市場競争の促進。そして、より大きな政府の必要性を説いている。

<要約>

現代の米国はこれまで以上に格差が拡大している。世界恐慌以前まで視野を広げても、最富裕層が国民所得をここまで独占したことはない。上位1%の超富裕層が富と政治的な権力を手に入れ、99%の万人との間に大きな分断が生じている。

米国の経済成長は、第二次世界大戦後と比較すると、すでに鈍化している。そのわずかな成長の富を富裕層が奪い取っているのだ。それは国全体での富の創造ではなく、富裕層による富の搾取に過ぎない。

なぜ中間層の没落が起きたのであろうか。それはグローバリズム、脱工業化、テクノロジー化、金融産業の肥大化によって引き起こされた。
グローバリズムによる工場の海外移転、工業(工場労働)からサービス業へのシフト、産業のテクノロジー化などによって未熟練労働者が仕事を失うことになった。
また金融産業の肥大化と彼らの拝金主義的行為の影響も大きい。金融には、富の創造を目的とした長期投資が求められるが、現代では近視眼的な搾取行為のための道具になり果てている。例えば高金利でのクレジットカード融資や学生ローンなど、中間層からの搾取を続けている。また、2008年には金融危機を引き起こし、多くの人々が家と仕事を失った

中間層が没落していく中で、甘い蜜を吸ったのはごく少数の大企業と富裕層だった。2008年の金融危機の中でも、銀行は保護され、経営者たちは多額のボーナスを得た。また、グローバリズムによる労働者の賃金低下は企業に取って有利に働くと同時に、さらなる労働者への支配を高めた。

豊富な資金によって政府への影響力を強め、大幅な減税を実現し、さらには反トラスト法の弱体化にまで成功した。少数の企業が利益を独占し、市場支配力を強めていった。市場支配力が高まれば、市場での競争がなくなり、製品価格をつり上げることができる。こうして少数の大企業は莫大な利益を得ながら、経済的、政治的に支配的な地位を確立していったのだ。

市場原理主義(新自由主義)によれば、市場に任せておけば市場は成長し、富は社会全体に行き渡る(トリクルダウン理論)はずだった。しかしそうはならなかった。
もはや市場に任せるだけでは何も解決できない。政府がより大きな役割を担い、雇用の創出や社会保障、教育、インフラを研究に力を入れるべきである。

まず、グローバリゼーション、脱工業化、テクノロジーの発展によって職を失った人々に対しては、職業訓練など新たな職に就くための支援策が必要である。
マイノリティーや貧困層への支援も欠かせない。差別や貧困の問題から教育や就労に関しての機会が均等でない場合、才能や労働力の大きな損失となる。また誰しもが努力によって大きな成功を手に入れることができるという、アメリカンドリームの価値観に反している。
人々の生活を守るためには、完全雇用が必要である。政府の財政支出によりインフラを開発と整備を行う。また、科学やテクノロジーの研究は国富創出の礎であるため、ここにも支出を行う。
同時に、個人や社会の不安は生産性や経済成長に悪影響を及ぼす。不安があれば仕事に集中できず、またリスクを取って大きな報酬を得るというチャンレジにも踏み込めない。個人や社会の不安を取り除くためのセーフティーネット、社会保障も重要である。

では、これらの政策を行うための財源をどこからもってくるのか。それは寡占的な巨大企業や富を独占している超富裕層への課税によって行われる。現在の逆進税制(所得が高ければ高いほど税率が下がる)を見直し、累進税制へ移行する。そもそも市場の独占はイノベーションのインセンティブを失くし、自由な競争を妨げるものでしかない。

合衆国憲法の序文には「一般の福祉を促進する」という理念がある。「一般の福祉」とは上位1%だけでなく、残りの99%を含めた万人の幸福を意味する。
富や幸福の搾取でなく、富と幸福の創造を目指すための取り組みが求められている。

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2021年03月20日

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非常に良い。トランプなど右派、新自由主義、格差容認の考えが圧倒的な世の中で、富の再配分、教育、医療、オバマケアなどなど、心のどこかでこういう優しい社会、平等な社会が良いなあと思ってることを描いてくれる。
でもトランプは経済運営上手いちゅうネタをよく見かけ、このギスギス感も経済運営の犠牲かと思い込んでしまうが、それも幻想で、スティグリッツ的民主党、中道左派?的な経済運営でうまくいくんじゃないかと自信がつく。
長沼紳一郎の現代経済学の直感的になぜ資本主義は膨張がとまらんのか?それは金利だ的な話があったけど、それと合わせて読むとまたいいと思います。それと、自分も読んだしデジタル界隈で一種神格化されてるピーター・ティールもトランプ主義者てことでディスられてる。彼の有名な、競合のいない市場でビジネスするという言葉は、経営書として読んだときはなるほどなぁと思ったが、スティグリッツに言わせると競争のない独占、寡占のせいで富が偏重し、一般人が困ってるということで、そっちの方がより大きな視点だなあと思いました。

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2021年01月26日

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とても面白かった。神の見えざる手は間違っていた、という主張からはじまり、経済には政府の介入が必要だという。まさにそうだなぁというのと、対処法的な話なのかなと。

資本主義は、資本家が儲かり、総貧困化の限界値を超えると、資本主義を変えるしか方法がなくなるような気がする。

アメリカの政治を見ていると、国家や政府への介入でなんとかなる話ではなく、、(国や政府を動かしているのもまた富めるものであるという事実)10年後前後で世界的な大転換期を迎えるのかもとは思う。

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2021年01月19日

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ネタバレ

アメリカの具体的な話に特化し過ぎてて、日本人読者としては少し寂しい。
もう少し抽象度が高い内容を期待していた。
とはいえ、他山の石とすべき点は多々あるであろう。

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2020年10月02日

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アメリカ社会の現状の問題点を指摘していて、それに対する対策ももっともだなという印象。
ただし、本の中の主張で反共和党が行きすぎている。
現状の格差の問題は民主党政権時の問題も含まれると思う。

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2020年09月27日

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本書は、左派の政治家やヒューマニストではなく経済学者が「格差の拡大が経済発展を蝕む」と主張し「大多数の人々に中産階級の生活を」と訴えた本である。
あくまでも経済学的な主張として格差拡大に反対していることに目を引かれる。
本書の表題を直訳すると「進歩的資本主義」となるが、その内容は限りなく「社会主義の香り」が漂っている。
政治も経済も、今世界中が不安と不満に満ちている。その答えを探して世界中の人々が首を傾げている現在、本書には多くの閃きがあると思った。
2008年リーマン危機後の対策が結果的には富裕層のみを潤した結果となった
。今回のコロナにおいても同じだろう。各国政府の巨額のバラマキは、経済システムを守りつつ果実は上層に集中することが見えてきた。本書の「格差を拡大する行為は成長を鈍化させる」には卓見であると思った。
本書はアメリカ社会についての考察だが、明日の日本の姿でもある。本書の課題は当然日本にも当てはまる。アメリカの多くの人々にとって既に失われた「中流の生活」。「万人にまともな生活を」との主張には強く共感する。
日本においても多くの若者たちが、結婚・子どもをあきらめ、持ち家をあきらめて「中流の生活」をかろうじて維持している。こんな明日のない社会をなんとかしなければと本書を読んで痛感した。本書を高く評価したい。

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2020年06月13日

Posted by ブクログ

左派ケインジアン経済学者であり2001年のノーベル経済学賞受賞者であるスティグリッツによる資本主義の適切な見直しとその実行のために必要な政治改革についてまとめた論考。

スティグリッツが問題視するのは、アメリカで顕著に発生している1%の超富裕層と、低所得者層の格差/断絶である。その原因は、伝統的な共和党及びドナルド・トラソプ政権での政策が、超富裕層を優遇しており、資本力と政治力の相互依存関係を打破すべきと説く。

具体的な処方箋としては、
・累進課税的な税制により富裕層への増税を課す
・民間での投資インセンティブが低く、公的な投資を行わなければならない社会インフラ(教育、基礎研究、医療・社会保障など)へ、富裕層からの増税分を原資とした投資を行う
・フェイクニュースの流通の原因でありながらも、メディアとしての責任を取らないITプラットフォーマーへの規制の強化
などを訴える。

個々の処方箋に目新しさがあるわけではないものの、スティグリッツは経済的・政治的な問題よりも、トラソプ政権移行に顕著になったような「伝統的なアメリカンドリームに代表される機会の平等性を軽視する価値感の変容」こそ、喫緊の課題であるとする点は、慧眼に映る。

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2020年01月02日

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