【感想・ネタバレ】賢者の愛のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

なんか、怖い…と思いました。

何がって、百合と真由子の執着…。
百合の方は、生まれながらにあらゆるものを持っている真由子への執着。
真由子の方は、諒一への執着(これは愛?)。

真由子について怖いとはじめ思ったのは、
真由子の直巳への態度でした。
それは、百合への復讐でもあったようですが、
最後に、実は諒一への執着でもあったのではないかと気づきました。

直巳との関係が百合にばれたと分かったときに、
諒一に電話してしまうところとか、
諒一が倒れたと聞いて、車を飛ばしてかけつけようとするところとか。
私の考え過ぎかな?

最後に百合は亡くなり、
真由子は不自由な体となり、
諒一は新しく若い奥さんをもらって、
なんだか悲しくなりました。

さらに、真由子がこんなに思っていた諒一が、
さっさと若い奥さんをもらっていて、
つまんない男だ、と思いました。

唯一救いなのが、
直巳が真由子の傍で看病しているということ。
ああ、このまま本当に
直巳がずっと真由子の傍にいてくれますように
と思いました。



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2022年09月13日

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普段小説を読まない自分には中々新鮮な文章だった。ドロドロの人間関係の中で、実は…が最後に見えたのが非常に面白かった。

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2021年07月09日

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直巳に出会う前の真里子は私のようで、出会った後の真里子は小田さんのよう。わたしも強い感情があれば小田さんのようになれるのかな。百合への不快感がすごい。文面だけでオエッてなっちゃう。「マユちゃんの言ってること、全然解んない」という幼少期の直巳に、「解りなさい」という真里子がいい女だった、わたしもいつか言いたい。あとヴェルレーヌが読みたくなった。

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2020年06月18日

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ネタバレ

真夜中、一気に読んでしまった。
山田詠美の小説の中で「僕は勉強ができない」と同じくらい好きな小説になった。

好きな人を取られ、敬愛する父をも取られ、精神が崩壊してもおかしくないような仕打ち。
それでも彼女は強く生きていた。取る側になる、罪を犯さない復讐。これ以上美しい復讐はないと思う。できないけど

どうして?と思うところは、解説を読んだら全て納得できた。真由子自身、彼をその程度の男だと無意識のうちに分かっていて、本当によかった。

敬愛している人でも、あることに於いては俗物だったりする。気づけたら少し落ち込んで、次に行けばいい。そう思わせてくれる小説。とても好きでした。

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2020年01月01日

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これでこそ、楽しみにしていた甲斐があるというものである。
やっと文庫化された。やっと。WOWOWでドラマ化された際に見た、あの耽美的な世界に憧れて、もうこの何年も思い出すたびに文庫が出てはいやしないかとヤキモキしていたのだ。
そして、その甲斐はあった。良作、名作である。そしてこの何かの理屈を掴みかけ、しかしそれを本当に掴んで読み解くことなどできないという無力感がかえって心地よい。

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2018年03月03日

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あなたは、『仇討ち』をしたいと思ったことはあるでしょうか?

“主君や直接の尊属を殺害した者に対して私刑として復讐を行った日本の制度”とされる『仇討ち』。有名な忠臣蔵をはじめ、私たちの国には後世まで語り継がれる『仇討ち』の歴史があります。武士の時代には制度化もされていたというその事実は、そんな考え方がこの国の中で多くの人の間に認知されていたことがわかります。

しかし、そんな制度も時代の移り変わりに伴って、ついに明治6年に消滅しました。明治初期まで認められていたことに驚きもしますが、いずれにしても今やそんな行為は犯罪以外の何ものでもありません。しかし、殺人というような究極の『仇討ち』は別にして、何かしらの出来事に対して、それを報いたいと思う気持ちは今の世もあるように思います。形を変えて今も残り続ける『仇討ち』の発想。それは、忠臣蔵が今の世も人気があるように、それは人の心が求める姿なのかもしれません。

さて、ここに、

『これは、仇討ちなのですよ。法を犯さない仇討ちは認められてしかるべきなのです』。

そんな思いの先に『幼な馴染みにして元親友』の息子と二十一歳差の特別な関係を築いていく一人の女性が主人公となる作品があります。『二人の間に性的な交わりは、かなり早い時期からありました』という二人を描くこの作品。その一方で、『実際に交わったのは、ただ一度きり』という結果論を描くこの作品。そしてそれは、そんな女性が二人の関係のその先に『愛を復讐に使う』様をあなたが目にする物語です。

『今日、直巳は二十三になり』、『真由子は、じきに四十五歳の誕生日を迎え』ることを思い、『時のたつのは速いものだ』と『深い溜息をついてしま』ったのは主人公の高中真由子。そんな真由子は『まだ少しもこの可愛い年下の男に飽いてはいない』と、『かつて親友だった女の息子』との関係を『親子のようでもない、きょうだいのようでもない、恋人同士でも、もちろん友達でもない』、『しいて当てはめてみるなら』『先生と教え子に限りなく似ているかもしれない』と思います。一方で『当然、幼な子だった直巳に、そのような自覚は』なく、『思う存分甘えるばかりでした』というその関係。『凡庸で、君子という評判があるくらい堅物に見える主人公の譲治が、自ら見出した美少女のナオミを自分好みに育て上げようとする物語』である『谷崎潤一郎の小説』『痴人の愛』をナオミと同じ十五歳の頃に初めて『ひもといた』という真由子は『二十八歳と十五歳で始めた』『二人の生活』を『彼らにしか価値の解らない宝物のように感じ』ます。そして時が経ち、『臨月の親友に、これから生まれて来る子の名前を相談された』真由子は、『差し出されたリストに』『直巳』という名を見つけます。『真由子が目にした途端』『片仮名の「ナオミ」に変換された』というその名前。『直巳でいいじゃない。絶対に、直巳がいいと思う』と『熱のこもった口調』の先に決まったその名前。場面は変わり、『毎年、マユちゃんは、日付がおれの誕生日に変わる瞬間に一緒にいてくれるね』と『感慨深げな表情を浮かべ』る直巳に『もう何年になるかな』と答える真由子。『中学のあたりから、うちの母親、マユちゃんと距離を置かせようとし始めたんだよね』と続ける直巳に『どうして、ユリは、私とナオを会わせたらまずいことになるって思い始めたのかな』と返す真由子は『馬鹿なユリ』と、『直巳の母であり、真由子の幼な馴染みにして元親友である女の名前』を思い浮かべます。『おれたち、もう、ああいうふうにはならないの?』と訊く直巳に『さあ、たぶんね』と返す真由子は『真由子から直巳への手ほどきと呼ぶべきものがほとんどで、実際に交わったのは、ただ一度きり』という時のことを思い出します。『それは、忘れもしない』直巳が『二十歳の誕生日を迎えた時のこと』、『御祝いという名目で、真由子は、自分の体を彼の好きなようにさせたのでした』。『ひと晩中どころか一昼夜続いた』という時間は『たった一度であったにもかかわらず、その性器の出し入れは、彼に狂おしい妄想の手掛かりを与えてしま』いました。そして、『ねえ、バースデイプレゼントに女の子を呼んであるの』と真由子が語りだすと『部屋のチャイムが鳴り』ます。ドアを開けると、『怖気付いたかのように、部屋を見回し』ながら若い女が入ってきました。『名前は?という直巳の問いに』『香と答え』る女。『ナオは、この娘をどうやって苛めてあげるの?』と訊く真由子に、『見てく?』と吹き出して言う直巳。そして、シャワーを浴びに行った女を見送り、『おれの中で、女の価値と年齢って、あんま関係してない。だいたい、マユちゃん、まだ、おばあちゃんじゃないし…』と言う直巳に『ふふっと笑』う真由子は直巳が『とっても、健やかに育ってる』と思います。『私は私のやり方で、あなたの息子を愛してみせる…愛を復讐に使う』という選択をした真由子の『復讐』劇が描かれていきます。

“幼い頃からの想い人、諒一を奪った親友の百合。二人の息子に「直巳」と名付けた日から、真由子の復讐が始まった。二十一歳年下の直巳を調教し、’自分ひとりのための男’に育てる真由子を待つ運命は ー。谷崎潤一郎「痴人の愛」に真っ向から挑んだ話題作”と内容紹介にうたわれるこの作品。二十三歳になった直巳と、じきに四十五歳の誕生日を迎えるという前提の中に『まだ少しもこの可愛い年下の男に飽いてはいない』という物語冒頭からどこか妖しい雰囲気が漂ってきます。では、〈最終章〉を含む12の章から構成されたこの作品をまずは巧みな比喩表現から見ていきたいと思います。まず一つ目は、誰もが知る偉人の物語に比喩します。

・『少女たちは、自分を疼かせる、ある特定の人物を思い浮かべて、すとんと腑に落ちることでしょう。ああ、これだったのか、と』、という感覚をこんな風に描写します。
→ 『まるで、ヘレン・ケラーが、手に注がれる冷たい水に"water"という単語を当てはめた時のように』。

そうです。まさかのヘレン・ケラーの有名な感覚表現に例えるこの一節。文章の繋げ方とともにとても印象的な表現です。次は、誰もが知るあの童話が登場します。

・百合から衝撃的な告白をされた後、『ひとり銀座の街を当てもなく歩き続け』る真由子は『誰もが幸せそうに見え、あちこちから洩れる温かい灯りの前』にいる自身を思い、その感覚をこんな風に例えます。
→ 『自分が、まるで「マッチ売りの少女」になったかのように感じられる』

これも面白い比喩だと思います。まさかのアンデルセンの童話の登場ですが、雰囲気感含めそんな場に佇む真由子の心情含めよく伝わってきます。

また、この作品の表現としての語り口も絶妙です。淡々と真由子の思いを描いていく作品ですが、〈第二章〉にいきなりこんな表現が登場します。

・『ええ、もうお気付きかもしれませんが、離れに住むことになった作家志望の青年が、直巳の父である澤村諒一なのです…』。

『ええ、もうお気付きかもしれませんが』という一文は完全に読者に語りかけています。これには、いきなり語りかけられた読者は間違いなくビックリすると思います。この作品はどこか不思議な文体で書かれています。やたら丁寧な”です、ます調”が続くかと思ったら、『そのくらいにせつなかった』、『だって、こんなことを言うのですから』という形の文体が入り混じるなど兎にも角にも独特な読み味が一貫しています。これは読み始めてすぐに感じることでもあり、こういった読み味含めてこの作品の一つの魅力だと思いました。

次に、この作品は、『谷崎潤一郎の小説に「痴人の愛」というのがあります』という一文が唐突に登場する点に触れたいと思います。上記した通り内容紹介にも”谷崎潤一郎「痴人の愛」に真っ向から挑んだ話題作”と記載がある通り「賢者の愛」というこの作品は谷崎さんの作品を意識して書かれたものです。残念ながら、谷崎さんの作品を読んだことのない私ですが、そんな読者も置いてけぼりにならないように山田さんは「痴人の愛」の補足を絶妙に入れてくださいます。

『凡庸で、君子という評判があるくらい堅物に見える主人公の譲治が、自ら見出した美少女のナオミを自分好みに育て上げようとする物語。その過程で、ナオミは予想もしなかった怪物に変身をとげて行き、譲治は、その妖艶さに翻弄し尽くされる。そして、ついには、屈服して、まさに「痴人」のようになる』

どことなく分かるような分からないような内容ではありますが、そこに描かれるという『二十八歳と十五歳で始めた譲治とナオミの二人の生活』に、『彼らにしか価値の解らない宝物のように感じられて来た』と真由子は影響を受けていきます。

『痴人を極められる者は、常識的であることに満足する人々よりも、人生をより深く堪能出来るのではないか』

そんな感覚の先に、親友の息子を直巳と名付けることに繋げていく真由子。物語は、

『あなたのそのナオミは、痴人のものではなく、賢者のものになる』。

そんな風に親友とその息子のことを思う真由子の狂気にも似た『復讐』劇を描いていきます。私は女性作家さんの小説のみという絶対条件の元に読書&レビューをしているので、谷崎さんの作品はこの先も読みたくても読むことが叶いません。この作品の内容が非常に面白いこともあって、谷崎さんの作品を読んで比較することができないのがとても残念です。そんな条件のない方(私以外全員ですよね(笑))には、是非両作を比較の上、レビューしていただきたいと思います(他力本願(笑))。

そんなこの作品ですが、内容紹介にある通り、”真由子の復讐”が描かれていくという強烈なストーリー展開を辿ります。

『私は私のやり方で、あなたの息子を愛してみせる…愛を復讐に使うこと。それが彼女の選んだ方法だったのです』

そんな風に語られる『復讐』の物語は、『親友』と思って接してきた真由子の友人・百合との複雑な関係性の中に描かれていきます。物語は〈最終章〉を含めた12の章から構成されていますが、真由子の家の隣に『朝倉百合とその家族が越して』来た小学生の時代以降、真由子が四十代になる今の時代までさまざまな年代の二人の関係性がバラバラに描かれていきます。

『思えば百合は、初めて会った頃から不吉な香りをまとった子供でした』

そんな真由子と百合の出会い。『百合』という名に妖しい関係性も匂わせながら進んでいく物語は、真由子が特別に思っていた存在、作家の諒一のことを、女子大生になった百合がこんな風に話すところから大きく揺らぎ出します。

『マユちゃん、リョウ兄さま、私にちょうだい』、『私、リョウ兄さまの子供が出来た』

もう冗談としか思えない話ではありますが、物語は恐ろしいほどスラスラと読み進めることができる中に展開していきます。百合と諒一の間に出来た子供の実質の名付け親になった真由子。そして、育っていく直巳と『親子のようでもない、きょうだいのようでもない、恋人同士でも、もちろん友達でもない』という関係性を築いていく真由子。そんな真由子の直巳への眼差しは見方によってはゾッとするものがあります。

『とっても、健やかに育ってる。直巳の言動のいちいちが、自分が手塩にかけた成果のように感じされて、真由子は、よくここまでと自身をねぎらいたくなってしまうのです』。

そんな真由子は、百合が自分と息子との関係を訝しがっていることを楽しんでもいます。

『母親の不安に満ちた声が、息子の快楽の溜息と重なるなんて、こんなキッチュな演し物には、滅多にお目に、いえ、この場合はお耳でしょうか、かかれないでしょう』。

恐ろしくもなってくる描写含め物語はそんな真由子の『復讐』の思いの中に物語冒頭には予想もできなかったまさかの真実も明らかにしながら衝撃的としか言いようのない結末へと歩みを進めていきます。読み物としてはそのあまりのかっ飛びぶりがたまらなく面白い!しかし、現実にあるとしたらあまりに壮絶で、あまりに恐ろしくて、そしてあまりに切ない、そんな物語がここには描かれていました。

『これは、仇討ちなのですよ。法を犯さない仇討ちは認められてしかるべきなのです』。

『かつて親友だった女の息子』という直巳と幼い頃から関係を築いてきた真由子の『復讐』の物語が描かれたこの作品。そこには、谷崎潤一郎さんの「痴人の愛」を下地にした物語が描かれていました。独特な文体が、引っ掛かりではなく読みやすさをもたらすのを感じるこの作品。二十一歳差の女と男の関係性を描く中に大量の性描写が強いインパクトを与えるこの作品。

あまりにかっ飛んだ内容の物語の中に、「ぼくは勉強ができない」の『時田秀美』というまさかの名前の登場にも思わずニンマリとしてしまう、山田詠美さんの円熟した筆の魅力を堪能できる作品でした。

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2023年05月24日

Posted by ブクログ

女の憎悪、妬み、執着などをドロドロに煮込んだスープがこちら

ちょうだいお化けもバグってるけどまゆちゃんも相当おかしいっす
ここまで狂気に満ちた物語かけるエイミー恐るべし。他も読むね。

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2023年01月31日

Posted by ブクログ

久しぶりのエイミー。谷崎潤一郎「痴人の愛」へのオマージュ作品ということで、主人公である真由子が直巳を自分好みの男に育てていく話だと思って読み始めましたが、ちょっと想像とは違ってました。タイトルからして痴人の愛と対比してつけられているのでしょうが、じゃあ登場人物たちは一体誰が“ナオミ”で、誰が“ジョージ”だったのでしょうか。
当初はジョージ→真由子、ナオミ→直巳で読んでました。でもジョージとナオミの関係はこの二人にだけ当てはまるものではない。リョウ兄さまと百合、真由子父と百合、リョウ兄さまと真由子。そして最後まで読んで、真由子と百合もまたジョージとナオミだったのではないかと思いました。恐らく真由子は自分を賢者だと思ってるでしょう。でも、百合に翻弄され、憎しみを知り、復讐のためにその元を離れない、そのことこそが“痴人には痴人の幸せがある”ということなのではないかと思いました。
また、「痴人の愛」では立場が逆転してナオミがジョージを屈伏させるというラストでしたが、この作品もそういう終わり方に見せてます。でもちょっと違う。直巳はあくまでも百合があっての直巳なんだろうと思うのです。百合こそが本当の意味でのナオミだったんだと。真由子と直巳が愛し合えるとしたら、このラストこそがスタートなのではないかと思いました。

あと読んでる途中で突然出てきた真由子の後輩、時田秀美。まさか秀美くんに再会できるとは思いませんでした。すっかり大人になってましたね。
「痴人の愛」も「ぼくは勉強ができない」もまた読み返してみたくなってきました。

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2021年06月13日

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父と諒一という2人の愛する男たちを百合に奪われた真由子は、百合の息子の直巳を自分好みの男に調教して復讐しようとします。
山田詠美さんの作品も大好きでたくさん読んでいますが、
山田さんの作品は官能的でセンセーショナルな魅力も持ちつつ、それだけにとどまらない、物語の巧妙さとか、人生哲学も持ち合わせているから面白くて大好きです。

わたしが真由子だったらやっぱり百合に対して憎悪を持つと思う。
谷崎潤一郎の「痴人の愛」をなぞって、「ナオミ」と名付けられた百合の息子を使い、復讐しようとする気持ちもよく理解できる。

真由子は父と諒一と共にいた過去の自分はこの上なく幸せであったというけれど、
その時はきっとそれが真実だった思うのだけれど、
百合によって、父も諒一も、真由子の思い描くような高潔な男たちではなかったことが暴かれてしまった上では、
真由子は彼らと共にいても本当は幸せになれなかったんじゃないかとも思う。

真由子は美しいし、賢いし、努力しているし、思慮深い女性だと思う。
それに見合う男は、やっぱり真由子自身が作り上げた直巳だけだと思う。

真由子を表面だけでなく、深いところまで理解しようとしてくれ、彼女を一途に想い続け、素直な魂を持っている。
きっかけは不幸だったかもしれないけれど、真由子にはつり合わない俗物である諒一と結ばれるよりも直巳を作り上げた方が幸せだったんじゃないかな…。
それでも真由子は直巳ではなく、諒一を求めてしまうのが悲しい。憎いはずなのに。愛と憎悪って境界線は無いのかもしれない。

百合が真由子を作り上げ、真由子が直巳を作り上げ、でもその直巳が最後は勝者のような…。直巳は唯一、愛と憎悪の狭間ではなく、愛をちゃんと愛として全うできたんじゃないかな。

百合自身の不幸が真由子の不幸を生み出したけれど、そこからは直巳という幸福を生み出すことができた。
不幸は連鎖しがちだけど、幸福に昇華できたという意味では真由子は「賢者」だったのかも。

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2021年06月11日

Posted by ブクログ

 一章ごとに読み進めていったが、直巳と真由子の関係、真由子と百合の関係がどうなって行くのかが気になり、物語に入り込めた。
 父とSEXをし自殺に追いやり、大好きな人を奪った百合に対する憎しみは相当なものだと思うが、そんなことがあっても真由子が育てた直巳はある意味ではいびつに、ある意味では純粋に育ったように思う。最終的に百合の策略(百合は真由子の幸せのため直巳を差し出した場面は嫌な女というよりただただ可哀想な女性なんだと感じられた)により、真由子は身体が不自由になってしまい、ずっと直巳に介護されて過ごすのだろうが、真由子がどういう気持ちなのか、賢く尊い女性であるから、察するのが難しい。

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2020年02月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

愛や幸せは与えられるもの?
奪うもの?作り上げるもの?
.
生まれた時から
その人の本質というものは
基本的に変わらない。
きっとそう。
育ちや環境や人間関係など
いろんな事がその人生に影響を与えたとしても。
.
「ちょうだいお化け」いるよね。
あと「マネっこお化け」も。
こーゆーのって
女の子特有のものなのかな?
.
怖いよね、強いよね、女の子って。
でも、
関わらなければ、
そっちに引っ張られなければ、
見てる分には面白い生き物だよね。
って思うのも、女だからかな。笑
.
帯に書かれていた
“もう減点方式で 冷めてしまう恋など したくない”
…ちょっとわからない。
私の感性と合わなかったみたい。

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2019年08月27日

Posted by ブクログ

大好きな部類。
気の毒なマユちゃんの復讐は成功したとも言える。
ドラマverで百合を高岡早紀が演じていて凄いはまり役だったのを覚えている。
強烈で印象的なお話し。凄い。
たまにまた読みたくなると思うからまだ捨てれそうにない一冊。
ハマりすぎて谷崎さんの‹痴人の愛›も購入しました(´∀`)

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2019年06月26日

Posted by ブクログ

『痴人の愛』のオマージュ。
素質のある異性を育て上げて自分の理想に仕立て上げる試みは、『源氏物語』から何ら変わっちゃいない人類の憧れなのかもしれん。

何やかんやで優位に立つ百合は圧倒的だ。後天的に人を翻弄するしぐさを身につけたという意味では主人公と一緒だが、子供ながらに身につけるのと、復讐を期に意識的に身につけようとし始めた付け焼き刃な所作とだと、どうしても主人公は育ちの良さが出てしまう。それでも、家庭に入った痴女とキャリアウーマンの遊び人とだと、前者の方が社会的には良しとされるんだよな。

この本を通して過去の自分の行動思考に納得を与えている。罪深い。

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2024年04月21日

Posted by ブクログ

マユちゃんもなかなかだけど、それ以上に百合という名のちょうだいお化けがとにかくヤバい。登場する男もみんな気持ち悪い。すごく面白かった。

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2021年10月10日

Posted by ブクログ

読み始めからラストに至るまで女の嫉妬、情念、恨みなどの心理描写が巧みに描かれており真由子にも、もちろん百合にも殆ど共感出来ないにも関わらず面白く読めました。

「ちょうだいオバケ」の百合の不気味さ、真由子の百合に対する憎しみから取った行動 。

本文中で諒一が発した言葉「…まったく…女の中には、いったい何人の女がいるんだ…」に集約されている気がしました。

「痴人」の河合譲治に対して真由子ははたして「賢者」と言えるのか。
疑問は残りますが読み応えのある作品です。

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2021年01月31日

Posted by ブクログ

 谷崎潤一郎の『痴人の愛』を下敷きにした作品。真由子は元親友・百合の息子に直巳と名付け、自分の思い通りに育てることで自分から幸せを奪った百合へ復讐する—という話。

 真由子が溜めた幸せを根こそぎ奪った百合から、今度は息子の直巳を奪うことで復讐するのだが、復讐が成功しているかというとそうでもないと思う。生粋のお金持ちで円満家庭で育った者特有の鈍感さを持った真由子に、機能不全の成金家庭で育った百合はこれでもかと男の浅はかさを突き付ける。真由子が奪った気満々でいる直巳も、その名付けを百合からお願いされたあの時点で百合に"奪わせられていた"のではないか。百合という女の底知れなさは確かに怖いが、私は真由子よりも百合にシンパシーを感じてしまった。

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2021年01月17日

Posted by ブクログ

痴人の愛の逆パターンで女性が年下の男性を自分流好みに育てるが。やはり、痴人の愛のほうが小説としては好きかな。

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2019年06月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

急転直下、“ちょうだいお化け”なんて可愛いらしい呼び名を遥かに凌ぐ、百合の怪物級のもの凄い存在感に呑み込まれる。最終章に仄かに漂う幸福感。それは真由子の幸せなのか、直巳の幸せなのか…。それさえも百合という怪物の腹の中で消化された後に残ったスカスカの残骸でしかない気がしてしまう。持たざる者のハングリーさにタジタジ。
グーパンチをくらったような後味だけど、夢中で読むほどおもしろかったのは確か。
脇役で登場のあの「彼」が嬉しいサプライズだった。

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2018年03月17日

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