感情タグBEST3
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単行本未収録の短編集。
溜め込んで持て余した感情はやはりどこかで使い果たせねばならないのだと感じる。それがどう言った結末になるかわかっていても。
時代が古くあっても、その感覚は昔では、と思っても最後まで読み終えるとなんだか納得してしまってこの結末を迎えることに読者が諦めを感じてしまう。
流れ着いたならばそこにいるしかないのかもしれない。
特に好きなものは
致死量の夢
雪の下の殺意
はっぴい・えんど
閉ざされた庭
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幻想的な短編集。一応ミステリ、とされているので。ミステリとして読めるものが多いけれど。一概にくくれるものじゃないですね。しかし幻想にしろミステリにしろ、どの作品も素敵なのは確か。
お気に入りは「致死量の夢」「死化粧」。おそらく収録された作品の中でも一番ミステリとして読める作品かな。だけど物語を取り巻くあまりに危うい美しさに呑み込まれて、酔いしれたまま結末まで一気に運ばれた印象。
「はっぴい・えんど」もいいなあ。ある意味最高に素敵なハッピーエンド……?
そしてラストの「塩の娘」がなんともユーモラスで印象的でした。ちょっとした遊び心も見えて、これが最後というのはなんだかすっきりするかも。
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一つ一つ短い話だが、内容は重たく濃厚な余韻を残す。
まさにこれが皆川博子の世界観。
生々しくも残酷で、それでいて美しい旋律のよう。人によっては後味の悪さを感じるかもしれないが、これが人生というのも一つの真理なのかもしれない。
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カテゴリはミステリなんだけど、実際に取っ組み合うお話はほとんどないんじゃなかろうか。『ほたる式部秘抄』くらい?
ほぼほぼ全編、人、特に女性や少女の心の暗部が繰り返し語られていて、結構胸焼けしてしまった。加えて、権力に対する嫌悪感もひしひしと。
その分、いつもとテイストの違う『ほたる式部秘抄』がやけに良かったのだけど、もっと読みたいのだけれど、残念ながら、やっぱり皆川さんの雰囲気じゃないよなぁ。
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「夜のリフレーン」と対を成す単行本未収録短篇集。76年から96年の16作。
改めて言うが単行本未収録でここまでのクオリティ。全然書き散らしていないのだ。
「小説の女王」と呼ばれる所以もここで、小説への愛が小説を書かせているのだ。
一作ごとに語りの形式を工夫し、作者の好みや興味を突き詰めることで熟成される、短編小説の粋、まさにここにあり。
ある時代のある女性が感じていた感情のフレイバーが、数十年後のおっさんに、ここまでびんびん響くとは。
少女的な厭世観に浸されたいという願望が、あるんだ。それを皆川博子が、満たしてくれるんだ。
しかし皆川博子は甘美な少女時代に読者を封じ込めない。「かつて少女だった成人女性」の視点も忘れないのだ(「閉ざされた庭」)。
そしてまた、「兎狩り」に描かれた、青年をこじらせたおじさんの恐ろしさよ。中高生のころに「兎狩り」を読んでいたらヤバかっただろう。中上健次レベルの毒。
それなのにインタビューを読むと、大変チャーミングな御方なのだ。恋しちゃうよ。
夜のアポロン 兎狩り★ 冬虫夏草★ 沼 致死量の夢★ 雪の下の殺意 死化粧★ ガラス玉遊戯 魔笛★ サマー・キャンプ アニマル・パーティ★ CFの女 はっぴい・えんど ほたる式武秘抄 閉ざされた庭★ 塩の娘
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日下三蔵氏の執念が生んだ短編集、とでも言うべきか、版元を超えてタッグが組まれ、「夜のリフレーン」と対を成す一冊。
いわゆる幻想小説にカテゴライズされる作品が主だった「夜のリフレーン」と異なり、少しヴォリュームがあるミステリーを中心に収められている。
とは言いつつ幻想的なテイストが横溢するものがあったり、古典芸能の裏側を描いた作品があったりと、中世~近代欧州を舞台とする長編群とはまた趣を異にしながら、実に皆川博子氏らしい物語が並んでいる。
個人的には、小粋なタッチで遊び心が満載の「ほたる式部秘抄」が秀逸で、強く印象に残った。
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短編集16編
忘れられていた原稿がみごとに蘇って読むことができた幸い.どれも素晴らしく皆川ワールドである.特に表題作,兎狩り,死化粧が好きだった.ほたる式部秘抄は軽妙でシャレっ気があって結末が明るくこういうのもいい.
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主に1980代に書かれた短編を収めた短編集。
「夜のリフレーン」と対になっているらしい。
昭和の香り高く、近年の著者の作風とはやや違い濃厚で湿り気が強く、「性」と「死」がモチーフとなっている。
最後に納められた一編は最近のもので、他の編との対比が面白い。
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初期作品群が中心の未単行本化の短編を集めた第二弾。こちらはより「こういうのも書いておられたんだ」というまっすぐなミステリや官能色強めなものもあり、やはり作者の懐の広さを感じるものばかりでした。
表題作や「致死量の夢」、「魔笛」あたりが艶めいていて個人的にはとても好きです。幻想混じりというより、人間の業の深さをえぐった話が多いように思います。「死化粧」は謎解きとしての物語の面白さのほかに、飄々とした語り口が良い意味で「らしくなく」、凄く新鮮でした。
近作の技巧と知識と幻惑さが極まった長編作品はもちろん大好きですが、こういった過去作品があってそれらがあるのだと思うと、大袈裟のようですが確かな「歴史」を感じられたような気持ちにもなれました。
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濃密な狂気と性と死の臭いが漂う短編集。さすがの完成度だけど、一つ一つがすごい生々しい臭い(それを毎回品位を落とさず書ききるのはほんとうにすごい)を放っているのでお腹いっぱいになってしまった感じがする。
「はっぴい・えんど」の高揚と墜落の間を行ったり来たりする、迸るエネルギーが読んでいて楽しかった。
幻想的な「夜のリフレーン」のほうが好み。
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「沼」、「致死量の夢」、「雪の下の殺意」が心ひかれました。女、だけじゃないけど、人が隠してたのに、持て余して、どうにもならなくなった感情が染み出てくる瞬間とか、壊れてく瞬間ってこんなんかなと、一般論として怖くもあり、納得してしまう自分に怖くもあり。装幀と表題がロマンチックです。