感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
匿名
名作。
これが名作と言われる理由がよくわかった。
日本のアニメやぬるいジュブナイルを振り落とすだろう
圧倒的な熱情と業。
若さや無垢は中心になった若い商人と貧しい大佐の娘のカップルのみならず下手人のオクチエンヌ伯爵にすらあるが、
愛の無垢さを信仰するのは老いた大佐や商家の未亡人にもあるのだ。
物語は美しい花々の抵抗を彼らの全力に関わらず都合好く無知でも無力化でもなかった悪役貴族が完膚なきまでに砕いて游ぶが
冷酷に権力で少女たちが潰されたあと唯世間に流されるだけで生きるかに見えた保護者たちは同じく愛の信奉者ゆえに純愛を侮った者を許さず世俗の知恵を使って伯爵を見事に突き落とす。
なお背景が貴族専制ではなく実力主義の市民が政治に顔を出してゆく時代に移り変わる事も彼らの後押しとして語られ
舞台選びも素晴らしい。
そして伯爵は罰を受け世間の嗜みに気づいても
なお濁った欲望に浸かる癖は変わらず一層内にこもった分淫靡になったことを示唆して物語は終わる。
最期の蛾は永遠に手に入らぬ純粋な死者に誘蛾灯のように惹きつけられる伯爵の魂だと気がつけば深い。