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Posted by ブクログ
尖閣諸島の帰属問題だけでなく、近年の日中外交にフォーカスした内容。重要な歴史を知る意味でとても良い書籍だと感じた。
尖閣諸島に関しては、日本政府が公式に調査を行った明治時代から現在までの流れがわかる。また特に戦後、米国の動きと関連させ、日中国交回復までの外交上の動きも理解できた。
敗戦国日本が、隣国の潜在的大国中国との関係を回復出来たのは、傑出した政治家や一部官僚の努力があったからこそ。
中国との国交回復には台湾を中国の一部と見なす必要があるが、これには親台派(代表格は岸信介)からの猛反発があった。しかし長期スパンで、また世界的な視点で俯瞰した場合、経済上もアジアの安定上にも国交回復が優先した賜物だったのだろう。
尖閣諸島の帰属については、明朝時代には明の領土だったと言う説(井上清氏)もあるようだが、日本政府の公式見解は、無人島であることを確認した上で1895(明治28)年1月14日、久場島・魚釣島に標杭を建設することを閣議決定し、この閣議決定で尖閣諸島が日本に編入されたとしている。
ただ国外に向けて発信していた訳ではないし、前年に始まった日清戦争は、日本の勝利が明らかになっており、清国の動向に配慮する必要はなくなっていたと言う背景もある。
このようなことを慮ってか、かつて国交回復に東奔西走した日中の代表レベルは、棚上げしようと決めていた事実がある。
最近の中国の覇権主義的な動きは、東アジアの平和と安全を脅かすものだが、力と力の関係ではなく、先人の先を見た外交努力を行ってもらいたいものだ。