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久々の吉川永青作品。井伊の赤備えといえば、その甲冑が彦根城にも展示されていて、ひこにゃんも着ていて、地元のこんにゃくは赤色というくらいに、近江では有名なものなのだが…これ、元は甲斐の武田に所属していた武士団(備え)の甲冑色。
三方ケ原の合戦で家康を震撼せしめた武田軍団。その中でも最強をもって知られる赤備えは、長篠の合戦で織田・徳川連合軍に敗れた後、徳川に呑まれ、家康直轄の所属ながら井伊長政の指揮下におかれることとなる。
武田から徳川に移った赤備え、その軍団の中にいた男2人の物語。日本史の動くさま、合戦描写の見事さ、武田勝頼・徳川家康・豊臣秀吉・大政所・井伊長政など歴史上の著名人の描写の巧みさ、とにかく読み処満載。上手いし熱量もある、少々詰め込みすぎという部分も感じられるが、作者にとっては初期の作品、気負いも味わいの時期だろう。
何より主人公2人、勘五郎と藤太の人生の岐路とその後の歩みの描き方が見事。「赤備え」を大切にする二人だからこそ、それぞれの価値観で袂をわかつあたり、現代人の生き方にも十分にあることで、共感があふれる。
ラストの、関ヶ原合戦シーンは少々ベタながらもこれ以外はないだろうなという名シーン。NHK大河か劇場映画でやれば、大うけすると思うんだが?
Posted by ブクログ
物語は武田の赤備えとして長篠の戦いに敗れるところから始まる。勘五郎と藤太は戦国最強の山縣昌景の赤備えとして誇りを持っていたが織田徳川の鉄砲の前に敗れてしまう。徳川に降伏後は家康の意向もあり赤備えの再興を図るが赤備えを任されたのが井伊直政。旧主昌景とは違い直政は部下を苛烈に扱い藤太は直政に付いていけず武士を辞める。直政と家康から付けられた家臣との軋轢が深くなるばかり。勘五郎は赤備えとしての誇りを胸に直政に仕える。