【感想・ネタバレ】新装版 戦中派不戦日記のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和20年8月15日、日本国民に戦争の終結が伝えられたいわゆる終戦の日。その日に「山田風太郎」は何を思い、感じていたのかを知りたくて、真っ先に『その日』のページをめくった。そして驚愕。「帝国ツイニ的ニ屈ス」の一文のみ。
読み出したら止まらない、だけどゆっくり読み進めたい山田風太郎が見た昭和20年。民衆側から見た戦中の話は貴重。

0
2023年03月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私の見た「昭和二十年」の記録である。満23歳の医学生で、戦争にさえ参加しなかった。「戦中派不戦日記」と題したのはそのためだ、と記す、歴史と死に淡々と向き合い対峙した克明な記録。    -20090930

0
2022年10月20日

Posted by ブクログ

どういう読み方をするかで、どう感動するかが決まってくるような60年前の日記である。

60年とは遠い昔だし、戦時という異常な状態の記録でもある。私としては私が幼かった時代を知りたかった。戦争も末期、そして終戦と激動の一年、冷静に事実を記してあるその体験をくまなく知ることは出来た、がそれだけではなかった。

毎日のようにB29の爆撃を受けて、いつ死ぬかもしれない東京の一医学生の青春だからではない。貧しい孤独な青年の内的生活の豊かさに感動してしまったのだ。

空襲警報で不安な眠れない一夜を過ごしたとしても、配給制度で食糧の不足、お腹がすいてる日でも、日記の終いには何々を読んだと淡々と括ってある。ツルゲーネフだったり、モーパッサン、チェーホフだったり、医学書、哲学書だったり、と読んだ本の数々に本好きとして感激。(どのようにして本を手に入れたのか?)

当時のラジオ、新聞の報道も克明に日記に記されている。ラジオからの「敵機来襲」「空襲警報」「艦砲射撃ある」こんなに情報があったのかと驚く。新聞から知ったる歴史的事実も間違っていない。いつの時代も見る目に曇りなければ真実に近づくのだという感動!

このような激動にもまれながら、深く、真摯に、率直に考えることの出来た一青年の日記は今でも立派に通じる。風太郎青年の生い立ちと内面の悩みが、この日記に色濃い憂愁をかもす。

孤独で内に秘めた想いが沸々と湧いて思いのたけを述べたく、でも忸怩たる青年は現代もたくさんいるのだ。否、時代が相も変わらずなのかもしれない、というのが杞憂であってほしい。

日記に書かれている田舎の風景描写が涙の出るほど美しい。ところどころの人物活写におかしみがある。

やはり山田風太郎の日記だった。一読の価値あり、いえ再読もすべき。

0
2021年09月05日

Posted by ブクログ

深い洞察力で見つめた昭和20年の1年間。後に作家となる医学生の日記は貴重な一次資料。

歴史は後世により書き変えられていくことがある。学校で習いドラマなんかに出てくる戦前、戦中の日本。まるで8月15日を革命が起きたかのような歴史観は全く違ったことが本書から良く分かる。

日本国民は政府や軍閥に騙されていたわけでもなく、自らの意思で戦争に協力している。日本の勝利を狂信的に信じるところはあるが、ことのほか情報も伝えられている。原子爆弾、ジェット戦闘機などウワサではあっても一般人に伝わっていることが分かる。

昭和20年という一年間。作品化を前提としていない、装飾のない記録だけに貴重であろう。

現在はモーニングでマンガ「風太郎不戦日記」として連載されているようだ。こちらも気になる。

0
2020年05月05日

Posted by ブクログ

"昭和20年1月~12月までの日本が太平洋戦争敗戦へといたる時代、山田風太郎さんが記した日記。当時の雰囲気が現実感を伴って伝わってくる。われわれは終戦の日がいつだかも、原爆が投下された日がいつということも知った上で日記を読み返していることになる。自分がその時代を生きていたらどんな行動をしていたか?いろいろなことに思いをはせる。
敗戦後寒い中寝床を暖めるものがなく、食べるものもなくても、山田さんは本を読んでいる。借りものなのか購入したものなのかわからないが、とにかく本を読み続けている。とてつもない量の本だ。
驚くと同時に、平和な今の時代ではもっともっと学べる環境にあるはずであるが、当時の山田さんの足下にも及ばない。ねじを巻かないといけない気持ちになり背筋が伸びる。"

0
2018年10月28日

Posted by ブクログ

再読
最高潮の東京空襲から大転換へ
昭和二十年で作者が消えてなくなるわけではないのだけれど
その後も全部読んだあとで読み返すと
この日記作品の面白みは急速に薄れていく
個々人の紆余曲折はありながらも戦中の日常から
戦後の平和な日常への切り替わり
戦後生まれだからと戦中を暮らす人々と何も変わらない一方
時代は確かに誰かが動かして転がっていく
自分は平均だとは思っても平凡だとは思っていない皆がつくる大衆がそれを映しているのであり
そのまったく理性的でなく流れ行く先徒ならぬ景色は
それでいて文明技術の変化を表層直ちに受ける
一身にして二世を生きるような転換期にそれは見えるようであり見えないようでもある

0
2018年10月19日

Posted by ブクログ

『敗戦して自由の時代が来た、と狂喜しているいわゆる文化人たちは彼らが何と理屈をこねようと、本人は「死なずにすんだ」という極めて単純な歓喜に過ぎない。』という文が印象的でした。

0
2015年09月19日

Posted by ブクログ

一庶民の視点から見た、敗戦前後の日本の描写と、個人の感慨であり、貴重な史料である。山田が有名にならなければ世にでることはなかっただろう。

0
2014年10月06日

Posted by ブクログ

若き医学生、山田誠也青年による、運命の昭和20年の記録。何に驚くといって、この過酷な世界の中で、ほとんど毎日何かしらの本を読んでいることである。案外戦中派の人達の中には「あの頃が一番本を読んだ」という人が多いらしい。一種の現実逃避だったのかもしれない。ところで、この日記は日々をライブとして記録しているのかと思ったら、実は出版にあたって少し編集しているところがあったらしく(後に出た「焼跡日記」におなじような記述が見られる等)、それに気付いた時にはちょっとだけ興醒めした。とはいえ、若かりし頃の作者の冷静と情熱がひしひしと伝わってくる事には変りはない。しかし、これほど知的探究心に富み、怜悧な洞察力を持った青年が、戦後「うんこ殺人」などという、中島らも氏をして「このミス」で「未読だがタイトルだけで一位」と言わしめる作品を生み出す小説家になろうとは、まさかの運命の変遷を御神もご覧じろ、といったところか。

0
2014年08月30日

Posted by ブクログ

敗戦後の焼土と化した東京の惨状の生々しさに圧倒されました。罹災民の中でも老人や戦災孤児の姿は哀れであります。闇市に群がる人々や買出しの満員列車に揺られる人々の今日を食いつながなければならない逞しさと同居する悲しさに私の親世代の苦労に頭が下がる想いでいっぱいであります。そして、巻末の作者の 「日本は亡国として存在す。われもほとんど虚脱せる魂を抱きたるまま年を送らんとす。いまだすべてを信ぜず。」が辛く悲しい。嗚呼。

0
2013年12月01日

Posted by ブクログ

こんなに透徹した、現実的な眼でみた昭和20年を読めるのは、本当に有難いこと。そのような資料的価値とともに、作者が心に抱える悲しみ孤独にも魅かれてしまう。「この不幸がやがておれの武器となる、とー。」橋本治の解説がまた過不足なくて凄い。文中に註や解説が全然無いので、この解説を先に読んでも良かったな〜

0
2012年07月01日

Posted by ブクログ

まだ読んでる途中だけど相当面白い。小さな物語のリアリティがふんだんに詰まってる。風呂屋の話など、好き

0
2021年01月23日

Posted by ブクログ

1月の初めの日記や8月14日の日記を見ると、愛国心のかたまりのような印象を受けかねないが、むしろ他の山田作品から推してどちらかというと人生・人間世界に対してはニヒルな?、シニカルな厭世的作家と思っていたので、意外であった。むしろこの一時期の愛国的心境は当時の青年がすべからくかかっていた熱病のごときもので、いかに山田風太郎と言えど例外ではなかったものと思われる。解説にもある通り、ややはすに構え客観的で冷徹な視点と熱情的なものとが混在している。
山田風太郎の他作品との比較は非常に興味深いものとなると思われる。

0
2017年06月19日

Posted by ブクログ

山田風太郎 「戦中派不戦日記」 昭和20年 敗戦前後における自分との対話という感じ。当時の著者は 戦争肯定、玉砕上等、復讐のための復興 という思想を持っている


この本の命題は 著者の言葉「戦争の前は憤怒なり。戦争の中は悲惨なり。戦争の後は滑稽なり」にあると思う。

著者は戦後の何に滑稽さを感じたのか 特定できなかった
*死ぬべき世代(戦中派)である著者が 生きようとする姿?
*戦争責任をすべて軍人に押し付けた民衆の姿?
*科学を勉強し 軍事力を上げ 再び戦おうとする姿?


8/15 の日記 「帝国ツイニ敵に屈ス」の一言のみ
*ショックの大きさ、自暴自棄の心情を感じる
*戦争=科学→戦争の敗北=科学の敗北
*負ければ賊軍〜何を言われても耐えるしかない


書評も面白い
*菊池寛 〜職人〜芥川の小説より妖気あり。皮肉に滑稽あり、妖気は 滑稽より発する
*露伴「風流微塵蔵」登場人物の過去、運命を描きつくし〜壮大なる人間の城を描く

「中間に立って動かざるものかえって 幸福なる人生を獲得する」

0
2016年09月25日

Posted by ブクログ

戦争ものに興味があり、自分なりに結構読んで来た……ようなつもりでしたが、こんなのがまだあったとは。

小説はたくさん読んだけど、あの頃を生きた人の「日記」を読んだのは初めてかも。

文語体の文章が少々とっつきにくいので、読み飛ばしてしまった箇所もあったけど、昭和二十年に東京で暮らしていた青年の生活や思ったこと、読んだ本などが書かれていて、とても興味深かったです。

驚いたことがいろいろ。
まず知らなかったのが、医学生は「学生」でいられた、ということ。
勉強不足でした。

東京大空襲があった日でも、大学では試験があったこと。

あんな時代にエイプリルフールで(この人だけかもしれないけど)嘘をついたりしてること。

敵性語で横文字とか音楽とか聴くのダメだったのではと思うけど、外国の本を結構読んでること。

なんとなく、空襲がきたら、家の火を消すとかするよりも、とにかく逃げろ!という感じじゃなかったのかなと思ってたけど、みんな頑張って火を消そうとしたりもしてたこと。

空襲のところと、8月15日以降のことと、戦後の日本のことが、特に熱心に読みました。

高須さん、と勇太郎さんて誰なのかな?と思っていたら、解説でどういう関係なのかを書いててくれて、ありがたかったです。

0
2013年11月20日

Posted by ブクログ

山田風太郎の昭和20年の日記。

兵役検査で合格しなかった事実を知っていると、アメリカに対する敵愾心や、戦争が終わって転向した日本人に対する怒りが、より悲痛に感じられる。

あとがきで小学校の同級生34人中14人が戦死した事実に思いをはせ、

「死にどき」の世代のくせに当時傍観者でありえたことは、ある意味で最劣等の若者であると烙印を押されたことでもあったのだ。

と記している。おそらくは、最期までその劣等感は克服できていない。今で言う医大生だったので、たとえ兵役検査に合格できる体を持っていても一兵卒として徴用されることはないのだが、それを隠れ蓑にしている疾しさが行間から感じられた。

ほんとに本をよく読む人だなというのも印象的だった。

0
2013年09月05日

Posted by ブクログ

戦時中の貧乏医学生の日記 妹尾河童の 少年H を読みまくった私は再び 戦争の中の日常 に取り込まれた どうしようもない怒りや悲しみがそこには確かにあって そうやって皆生き抜いたのだと思うと 自分なんてまだまだだな と思った

0
2011年04月07日

Posted by ブクログ

戦争中のイメージは、毎日が恐怖におののいて、空襲警報が鳴れば防空壕へ駆け込むといったイメージですが
全くの勘違いのようでした。

著者は、戦中でも映画や風呂、芝居を見に行ったりしながらも
空襲を上手く避けながら、過ごした様子がよく分かります。

戦争中のリアルな日記ですので
お勧めですね。

0
2009年10月07日

Posted by ブクログ

戦時中の貧乏医学生の日記としてかかれている本。戦争中っていっても、戦争の話がメインではなくて。お風呂屋へ行き、映画館へ行き。戦争が隣り合わせで、その当時はそんな中に当たり前の日常があったんだなぁと面白く読める本。

0
2009年10月04日

「小説」ランキング