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Posted by ブクログ
マスコミでは中東・中央アジアの混乱の元凶としてのイスラム過激派の残虐行為やテロばかり報道されている中で、その混乱した地域を、巨大な武器マーケット、麻薬との関連、経済格差、そして石油の争奪の観点からスポットを当てて、縺れた糸を解きほぐしていくと、別のものが浮かび上がってくる。
サウジアラビアといえば、「世界最大の産油国」で、「親米の穏健な国家」のイメージがあるが、「世界最大の武器輸入国」であり、「スンニ派に属するワッハーブ派という過激思想によるシーア派社会への抑圧や差別」、「政府批判へは容赦ない弾圧」をする国でもある。
特にシーア派への弾圧は最近(2016・1)のイランとの国交断絶の原因になっているので、ニュースで目にした人も多いと思う。
その「世界最大の武器輸入国」は、アメリカの軍需産業にとっての重要な顧客であり、また中東での「宗派戦争」は英米仏露の軍需産業に好景気をもたらし、こうした戦争によって利益を得ようとする軍需産業の思惑が、中東の紛争を泥沼化させているとも言える。
一方、ワッハーブ派という過激思想は、シーア派を極度に異端視し、1980年代のサウジでの厳格な復古的な神学教育が「イスラム原理主義的」な考えを持つ若者を育成し、過激な潮流を生み、オサマ・ビンラディンらの「アルカイダ」の誕生へと繋がって行った。
このような分かり易い事例を以下の構成で紐解いてゆく。
1章:紛争の陰で暗躍する軍産複合体
2章:新シルクロードを掲げる中国の野望
3章:石油争奪戦争と価格下落の影響
4章:中東を破局に導いた米国の戦略
5章:暴力の拡散と貧困・格差の連鎖
6章:武力で平和はつくれない
マスコミではなかなか掘り下げていない問題に鋭くメスを入れ、昨今の中東の混沌とした世界を理解するのに、最適の書だと思われる。
追記
2016-2-12のフジテレビでの「池上彰緊急スペシャル」でも、「戦争というビッグビジネス」という形で、中東での戦争とアメリカの軍需産業との関連を特集していました。この本の内容と一部かぶっていたので、面白く見ることが出来ました。
池上さんも最近少し過激になってきています???