【感想・ネタバレ】正義とは何か 現代政治哲学の6つの視点のレビュー

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Posted by ブクログ

ロールズの正義論をベースに、「正義とは何か」を考える。議論はリベラリズム、リバタリアニズム、コミュリタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズムの6つの思想へ展開されていき、現代社会における位置付けが説明されている。

ロールズの考えがこのグローバル社会においても重要視されていると感じたし、これを批判的に捉えてきたのちの思想家たちの持論も、数多くの政治行動、政策に影響を与えているのがよくわかった。

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2021年05月04日

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正義論を、リベラリズム・リバタリアニズム・コミュニタリアニズム・フェミニズム・コスモポリタニズム・ナショナリズムという6つの立場から纏めている。終章が、名言の塊で熱い。
「社会に生きる哲学者は民主的決定を受け入れなければならない」「社会に生きる哲学者は普遍主義を諦めなければならない」「人間の脳は生まれつき正義のアルゴリズムが実装されているわけではありません」
ここでの哲学者とは、職業としての哲学者だけではなく、社会の中で生きる我々自身のことを指していると思われる。
民主主義をケア・点検しつづけるという視点を持ち続けながら、皆で学びながら「正しさ」を見つけていくことが重要そうだ。

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2021年01月15日

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本書は、政治哲学の大テーマである「正義とは何か」について、ジョン・ロールズをベースにしながら(著者はロールズの『正義の理論 改訂版』2010年の共訳者の一人)、リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、そしてナショナリズムそれぞれの思想から平易に論じたものである。

6つの思想潮流がすべて西欧起源の思想であり、その点、現代のグローバルな諸問題にアプローチする限界がありはしないかという疑問は湧くにせよ、ロールズやノジック、サンデル、セン、ヌスバウムなどの思想がとてもわかりやすく書かれており、ポスト・ロールズの思想について勉強になった。

経済学を勉強する我々にとっても馴染みの深いアマルティア・センは、「人間のアイデンティティはたしかに共同体のなかで形成されるけれども、人間は文化的伝統から離れて合理的判断を下しつつアイデンティティを形成してゆくこともできる」(p.143)とコミュニタリアズムを批判し、また「ロールズの契約説が「閉ざされた不偏性」を伴うものであるとして、それよりもスミスの「開かれた不偏性」にこそ、地域的偏狭性を反省する可能性があるとしています」(p.144)とロールズ批判も展開する。センはスミスを高く評価しているらしいが、まさにその通りだと思う。

しかし、現実のグローバル社会にはたして「公正な社会」は可能なのか(正義は実現されるのか)、その哲学的な基盤はまだまだ確立されたものとはなっていない。

余談:もう17年前になるが、2003年にケンブリッジ大学に遊びに行ったとき、散歩しているセン(当時、トリニティカレッジの学寮長)を偶然見かけてちょっと感動したことを思い出した。

センはインド出身なので、上記に書いたような西欧哲学の本流から少し離れていることもプラスに働いているのではないかと思う。

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2020年05月25日

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そもそもこの本がそういう作り方をしているというのもあるけれど、それを抜きにしてもやはり現代の正義論はロールズを大きなエポックとして捉えて、ロールズ正義論に賛成または反対することを通して自らの主張を訴えてきたのだと思う。
内容は多岐に渡るので一言では言い表せないけれど、コスモポリタニズムはなんとなく理想郷的なことを言っているのかと思い込んでいたけれど、他国の正義と自国の正義の関係をどう捉えるかという点だけでも難しい問題をはらんでいるのだなあということを感じた。
ロールズに対する批評の蓄積はだいぶ進んできた。個人的にはヌスバウムに共鳴する部分が大きかった。とはいえ、彼女にもたくさんの批判があるはず。むしろ、そうしてああでもないこうでもないと言っていることこそが哲学のあり方としてふさわしいんじゃないかと思う。

内容は少なくとも初心者向けではない。多少哲学の素養がないとちょっと辛いかな?という気はした。ただ、内容が理解できるととても面白い。

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2018年11月29日

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ソクラテスの無知の知
論敵トラシュマコスの主張=ポリスの国制を取り上げて、どの国制においても「正義」は支配階級の利益になることだと豪語している。
「支配階級というのは、自分の利益に合わせて法律を制定する。これこそが被支配者たちにとって正しいことなのだと宣言し、これを踏み外した者を法律違反者の犯罪人として懲罰する。したがって強い者の利益になることこそが、正しいことなのだ」

ソクラテスは「国家」でこう述べている。
「そのものが何であるかを知らずに、そのものについて語るもので、大衆自身の集合に際して形作られる多数者の通念以外の何物でもなく、それを詭弁家達は知恵と称している。」

ソクラテスは真理を追求する生き方が正しい生き方であり、また善い人生だと考えた。


ロールズ

「格差原理」=「最も不遇な人々」の最大の便益に資するものであることを要求
逆に言えば最も不遇な人々の最大の便益に資さない社会的・経済的な不平等は認められない。

「正義にかなった貯蓄の原理」=世代間正義のこと。
後世代の人々の便益も考慮して、現在のソーシャルミニマムの水準を調整することを要求している。

アマルティア・センの主張
平等であるべきは基本財でなく「基本的ケイパビリティ」である。

「ケイパビリティ」とは、ある人が何かを行ったり、何かになったりするための、実質的な自由のこと。
個人的選択の自由に価値を置くセンは、各人の財や機能ではなく、ケイパビリティを個人的福利を評価する際の情報的基礎としている。

アダム・スミスの重商主義批判

重商主義とは金銀の蓄積によって国富を増やそうとするもの。
外国から支払われる金銀を目当てにして、自国の輸出業に補助金を出してテコ入れ。
それによって適正な資源配分と価格決定が阻まれる。

スミスの社会的分業の考え方
社会において必要とされる「協力と援助」を誰かの慈悲心ではなく、不特定多数の自愛心に基づく行為の集積場(市場)によって確保することができる

コミュニタリアン(共同体主義者)の主張
→広義のリベラリズムでは人々の善い生を可能にする正義は構想できない。人々の生活に固有の道徳性を与えるとされる共同体の物語に則った政治によって、善い生を再興させるべき。

サンデルによると、どの目的からも独立した自我を想定(無知のヴェールのような)して正義を考えることは誤りであり、それによって正当化される正義は意味を持たない。
想定されるべきは、文化や伝統などの文脈を持たない「負荷なき自我」ではなく、特定の共同体の中で特定の生を生きている人間、つまり人生に意味を付与している「位置付けられた自我」

リベラリズムは善い生を個人的選択の問題としており、中立を気取っている。
手続きの確かさだけを追求する「手続き的共和国」であると批判している。
政治はアリストテレスの目的論に倣って、諸制度をその目的に照らして評価するのが正しいと。

「政治的リベラリズム」=人びとの生の全体をカバーするのではなく、公共的(政治的)事柄にかかわる部分のみをカバーするという意味で、包括的ではなく、政治的である。
政治的にリベラルな社会では、人々は私的事柄に関しては各々の包括的世界観に浸っているかもしれないが、公共的事柄に関しては政治的リベラルとして振る舞う。 

マッキンタイアの善い生
→物語の提供者として彼が持ち出すのは理性でも運命でも自然でもなく、共同体である。
Xにとっての善い生は、その人が属する共同体の伝統の中にある。
そのため、個人の善い生のために、伝統を保守することになる。

アマルティア•センのコミュニタリアニズム批判
→人間のアイデンティティはたしかに共同体のなかで形成されるけれど、人間は文化的伝統から離れて合理的判断を下しつつ、アイデンティティを形成することができる。

コスモポリタニズム

ポッゲの主張→グローバルな貧者はらグローバル•エリートからの積極的な関与によって、彼らが本来あるはずの状態に危害を加えられている。
そのため彼らは貧者を本来あるはずの状態に戻すために、賠償しなければならない。

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2022年08月05日

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かなり面白く読んだ。
ロールズのリベラリズムを大きな軸として、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズムを俯瞰する。

シンプルに、こういう人たちが今の正義論界隈でのメジャープレーヤーなんだ、というのを知ることができ、それぞれの考え方を整理するのに役に立つ。

他方で、正義とは何か、正義はどうあるべきか、という問いは、社会がどうあるべきか、あるいは、どのように私と他者が共に生きていくのか、を問うことであるという「正義論」の意義を語りかけてくるところに温かみがある。神島は、私たちがこの答えの定まらない問いに対して議論を重ねていくこと、考えることを通して、社会で生きていく希望を持ち続けられるとするが、どうだろうか。

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2021年07月23日

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ロールズの正義論を軸に、正義とは何かを論じている。先行研究史にも近い印象をもった。

恥ずかしながら、ロールズの正義論は初めて読んだため、半分以上分からずに終わってしまったが、全体を見渡すという事に於いては良書だと感じた。

勉強しても勉強しても知らない事がある。

悔しいような、楽しいような。

知的好奇心を満たしていきたい。

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2021年07月12日

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ロールズ「正義論」を訳した著者が、ギリシア哲学を確認した上で、6つのアメリカ政治哲学(リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズム)をジャンル別にわかりやすく解説した著作。

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2021年04月01日

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本書は現代政治哲学の概要本である。これまで、現代政治哲学に関してはキムリッカの『現代政治理論』と小川仁志『はじめての政治哲学』を読んだことがある程度だが、それらと比較すると少し違った観点からのまとめ方や考察があり、新たな発見も多かった。
一方で、全体的にまとめ方に関してはもう少しシンプルに分かりやすくまとめる術があったのではないかと思う。
また、(新書だから仕方ないと思うが)現代政治哲学について網羅性という観点からもいささか不十分にも感じる。
ただ、本書で正義論を中心とした現代政治哲学の基礎的な思想は習得できると思う。

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2020年05月03日

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ロールズを中心に、「正義」を民主主義を基盤に、リベラルなものから保守的なものまで6つの視点に分けて述べたもの。各視点の特徴と代表的な論者が分かり面白い。各視点の比較を図解整理すると理解度が増すであろう。著者の真摯な語り口に好感が持てる。

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2019年11月02日

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ロールズの正義論から始まり、その後のリベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、そしてナショナリズムという現代正義論の考え、代表的な論者に対して丁寧に解説されている本でわかりやすいが、咀嚼するには力がいる本である。知識が薄いので分からないところも多いが、基礎を押さえている本であることは確実だと思われるので、何回か繰り返し読んでみよう。

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2019年01月30日

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現代政治哲学の6つの視点ということで、政治哲学初心者の立場で本書を手に取りました。率直な感想ですが、少し中身を盛り込みすぎではないかという印象です。6つの視点(リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズム)を取り上げること自体は非常に有意義かと思うのですが、それぞれの中でさらにかなりの数の識者の主張を盛り込んでいて、正直頭が追いつきませんでした。もしそこまでやるのでしたら新書ではなく、もっと本格的な教科書として丁寧に解説してもらった方がありがたかったかもしれません。多くの政治哲学者の名前を知ることができたのは有意義でしたが、繰り返しになりますが「具を入れ過ぎた鍋」のような印象を持ってしまいました。

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2023年05月02日

Posted by ブクログ

内容は少なくとも初心者向けではない。多少哲学の素養がないとちょっと辛いかな?という気はした。ただ、内容が理解できるととても面白い。

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2019年09月14日

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