【感想・ネタバレ】君と漕ぐ―ながとろ高校カヌー部―(新潮文庫nex)のレビュー

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ネタバレ

好きだ―青春もの!!さわやか。水しぶき、青空、川の流れ、なびく髪、すべてが美しい(と想像する)。女子だけ、部活だけってのがまたいいなぁ。競技のカヌーがこんなに難しいとは。長瀞のラフティングを、細長い船に変えて・・・なんて想像して読んでいったけれど、当然競技となれば恐ろしく過酷そう。カヌーに乗り込むことも、スタートラインにとどまることも難しいし、500メートル全速力がどんなに苦しいか、武田さんの表現の中でこの競技を知って、魅力的にも感じました。良く知らないからこそ、美しくかっこいい姿が思い浮かびました。
部活動に対する思いはひとそれぞれで、どれが正しいわけでもなく、誰が悪いわけでもない。しかし、それぞれの考えが影響し合うのもまた確かで、4者4様のの在り方に、共感したり、違うなと思ったりしながら、応援するような気持ちで読み進めました。終わりも爽やかです。細かいことは説明いらない!っていう気持ちよさがあります。しかし、この本は序章。4人の部活動生活はまだ始まったばかり。彼女たちの戦いを見守っていきたいと思います。

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2020年10月15日

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大会のシーンでは、自分もその場にいるかのように引き込まれら次のページに行きたい行きたいという気持ちになりました。
君と漕ぐ。この意味がよくわかった気がします。

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2020年04月18日

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ネタバレ

天才肌の1年生が入ってきて、努力型の先輩とのコラボでミラクルが起こるような青春部活物としては、『はねバド!』や『風が強く吹いている』とか、天才肌ではないけれど周りへの影響力がある1年生のパターンでは『響け!ユーフォニアム』や『弱虫ペダル』『僕のヒーローアカデミア』なんかを連想。「プロローグ」によってその他の未来の可能性が狭まっちゃうような気がするし、ない方がシリーズ物として長く続けられそうな気もするけれど、あえて変化球なのかな。プールで一緒に練習しているときの千帆と舞奈とか、希衣と千帆が好きなものを店で注文して取り替えっこする場面とか、繊細な心の動きがいかにも女の子っぽいし、女性作家ならではという感じ。初心者であるがゆえに、努力はしているけれど、力不足をじれったく感じる舞奈は『ユーフォ』の葉月に通じる。

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2019年04月28日

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小学生からのペアが存在する鶴見希衣と今まで一人でやっていた湧別恵梨香が、「"君と"漕ぐ」ことを選択することによって、一方は今までのペア(親友)という呪縛からの解放、もう一方はペアで(他人と)組むことを通して自己を外に向けて解放するお話。
読み始めは初心者の黒部舞奈のお話かと思っていたが、上記の通りのお話であった。
同じ時間を過ごしていても、知ることが増えるだけで、分かりあえるわけではない(pp.246-247)のは、まぁそうだよなぁと思った。
カヌーに対しての基礎的な知識がないため、イメージが少々掴みにくいところはあったが、大会当日、レース前の緊張感は文面を通して伝わってきた。文字を読み進めるごとに、開始の時が近づき、緊張感がピークに達した選手の鼓動の高鳴りを体感した。
個人的にはカヌーの知識がなくても、レース前の緊張感を作中の人物と共有できた部分の評価が高く、ここだけで読んだ価値があったと感じた。
武田綾乃先生の著作では『響け!ユーフォニアム』以外では初めての作品でしたが、武田先生らしい作品で十分楽しめました。
体育座りを「三角座り」と表記するあたり、ユーフォを書いた武田先生らしいと思いました。

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2019年04月06日

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ながとろ高校入学前日に出会った黒部舞奈と湧別恵梨香。二人が入部したカヌー(カヌースプリント)部の先輩で、小学校からオリンピックを目指してカヌーを続けていた鶴見希衣と天神千帆。この4人の少女達の間に生じる人間関係を追う形で話は展開する。

初対面でも興味を持った人には無遠慮に近付いていく天真爛漫な舞奈(カヌー初心者)。小6での不登校を機にカヌーを始め、人と交わらず大会にも出ずたった一人で漕いできた恵梨香。そして、小学生時代からずっとペアを組んできた千帆と希衣。「千帆と一緒に上を目指す」という想いを抱く希衣と、そんな希衣の想いを「重荷」と感じる千帆のすれ違い。そこに、過去はベールに包まれているが圧倒的な実力を持つ恵梨香が入部することで「女の子同士」特有の距離感が、少女小説らしい心情描写の丁寧さ、関係性の変化を追う丹念さで描かれている。

恵梨香に対し最初はどこか疎ましさを感じていた希衣が、大会前日の出来事がきっかけでその夜、自分が向き合うべき者に向き合うことになる。この時に「君と漕ぐ」(恵梨香とのペアで上を目指す)が確信となり、大会当日を迎えるという展開である。物語の方はインターハイと関東大会の予選を兼ねた大会で終わるが、小説の冒頭は、恵梨香が高校3年生の時に東京オリンピックに出場する場面が描かれている。続編にも期待したい。

4人の人間関係だけでなく、カヌースプリントという自然の中で行うスポーツということもあって、練習場所周囲の美しい自然風景の描写が見事である。カヌースプリントのルールや技術的な面も、関係者からの聞き取りが綿密・正確に行われており、初心者にとっても大変参考になる内容である。

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2019年03月09日

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やっぱイヤミスより青春小説。

当然三部作になるんだろうけど、2巻目以降で視点人物が変わるかどうかが気になるところかな。

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2019年01月29日

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カヌーについて全く知らなかったけど、体感鍛えられそうな競技であることは理解できた。
武田さんの紡ぐ青春部活小説は爽やかだ。私は部活に打ち込んだ人間ではないけれど、めちゃくちゃ感情移入したし、読み終わりは目頭が熱くなった。

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2023年10月06日

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1年遅れで2021年に開催された東京オリンピック。そこでは史上最多の33の競技が実施されました。では、その33の競技をすべて挙げてみてくださいと言われたら、あなたならどんな競技の名前を思い浮かべるでしょうか?

水泳、体操、そして柔道…と日本選手がメダルを数多く獲得した競技の数々を思い浮かべる方は多いと思います。しかし、その調子で33の競技の全てを言い当てられる方はそう多くはいないのではないかと思います。そうです。近代五種、テコンドー、そして射撃…と言われてみれば思い出す競技もあります。

では、そんなあなたに質問です。あなたは東京オリンピックでも行われた『カヌー』という競技をご存知でしょうか?

ああ、『カヌー』ね、と思ったあなた。では、そんなあなたにさらに質問です。

あなたは、『カヌーとボートって何が違う』かご存知でしょうか?

さて、どうでしょう。実は東京オリンピックでは、『カヌー』の他に『ボート』という競技も行われています。『カヌー』と『ボート』、あなたは、その違いを説明できるでしょうか?

…えっ?と思ったあなた、そう、あなたです。そんなあなたにオススメしたい作品がここにあります。高校生四人が『カヌー』に青春を見るこの作品。そんな四人がインターハイ出場を目指して練習の日々を送る様を見るこの作品。そしてそれは、読者のあなたが『カヌー』から見える景色に思いを馳せることになる物語です。

『今日からここが我が家になる』と、『線香の匂いのする』祖父の家で思うのは主人公の黒部舞奈(くろべ まいな)。『ほんの数日前に』『両親の離婚が成立し』、『兄と姉はすぐさま母親と暮らすことを選択した』のに対し、『自分までもが見捨てたら、この人は一体どうなってしまうのだろう』と思う中に父親を選んだ舞奈は、『埼玉県大崎郡寄居町』という『三万四千人ほどの人』が暮らすこの町に越してきました。『ちょっとだけ散歩行ってくる』と父親に告げた舞奈は自転車で近くの荒川沿いを走り、そんな中に『流線形の小舟』に乗る一人の少女を目にします。斜面を駆け下り『すごい、ボートだ』と言う舞奈に『ボートじゃなくて、カヌーね』、『全く別物だから』と返す少女は『水面から小舟を引き上げ』ます。そして会話する中に、『秩父郡長瀞町にある私立高校』である『ながとろ高校』に進学する身であることを理解した二人は『黒部舞奈』、『湧別恵梨香(ゆうべつ えりか)』とお互いを紹介し合います。そんな会話の中で『私もやってみたい』『カヌー』をと言う舞奈は、『ながとろ高校』で『一緒にカヌー部に入』ることを恵梨香に提案します。そして、明日自転車での登校を待ち合わせした二人。場面は変わり、家に帰った舞奈は『今日ね、友達ができたの』と恵梨香の名前を伝えると『あそこの子は、ちょっと変わってるから』と祖母は口を濁します。再度場面は変わり、『同じクラスだったね』と一年一組で再会した舞奈と恵梨香。そして舞奈は『部活体験だって』と、『配られたお手製の小冊子』を開き『希望者はプールへGO』とアナウンスのある『カヌー部』のページを見ます。ホームルームも終わり、プールへ二人が向かうと、『わ、本当に人が来た』、『ちょっと千帆、その言い方は失礼でしょ』と話す女子二人が現れました。『私は部長の鶴見希衣(つるみ きえ)。で、こっちが副部長の天神千帆(てんじん ちほ)。なんと、我がカヌー部の部員はこの二人だけです』と言われ、自己紹介をする舞奈と恵梨香。そして、『カヌーって一口に言っても、種目にはいくつかの種類があるの…』と一通りの説明を聞いた後、『とりあえず二人とも乗ってみよっか』と、『練習用の服』を受け取った二人。着替え後、早速プールでカヌーへと乗り込むことになりますが、『足を入れただけで船体が大きくぐら』つく舞奈に対して、『涼しい顔でカヌーを漕』ぐ恵梨香と、対象的な姿を見せます。そんな中に『じゃ、離すね』と千帆に言われるも、あっという間にひっくり返り『うお』と呻く舞奈は、『乗れるようになる気がしない』と思います。場面は再び変わり、学校の帰り道に恵梨香から『カヌー部、本当に入るの?』と訊かれ『う〜ん』と考え込む舞奈。そんな舞奈を恵梨香は翌日の土曜日に、ある場所へと誘います。そして翌日『喫茶せせらぎ』という店に連れて行かれた舞奈はマスターの芦田から『レジャー用のカヌー』を借りる展開となりました。そして、カヌーに再び乗った舞奈は『競技用のカヌー』と違って『全然落ちない』という中に恵梨香と楽しいひと時を過ごしました。『カヌーって、楽しいでしょう?』と訊く恵梨香に『うん、楽しい』と返す舞奈は、『私、部活入るよ』とその決断を口にします。そして、舞奈、恵梨香、希衣、そして千帆という四人がカヌーに青春をかける日々が描かれていきます。

“初心者の舞奈、体格と実力を備えた恵梨香、上位を目指す希衣、掛け持ちの千帆。カヌー部女子の奮闘を爽やかに描く青春部活小説”という内容紹介が間違いのない”ザ・青春物語”を予感させるこの作品。武田綾乃さんというと、代表作「響け!ユーフォニアム」で、吹奏楽部を舞台にした”青春部活小説”の傑作が思い起こされます。そんな武田さんは、弟さんが高校でカヌーをやられていたということもあって、”カヌーをテーマにした小説ってあまり聞かないし、いずれ書いてみたいなあ”という思いをずっと抱かれていたそうです。ご自身が小学校、中学校でユーフォニアムを担当していらしたという経験に裏打ちされた「響け!ユーフォニアム」に対して、執筆への思いはあれど知識はないという中に武田さんは取材を重ねられます。そして、私たちの手元に届いたこの作品には、恐らく多くの方にとって馴染みのない『カヌー』の世界に読者がスーッと入っていけるように数々の工夫がなされています。それがわかるのが四人の登場人物の絶妙な設定です。まずはそんな登場人物からご紹介しましょう。

・黒部舞奈: 高校一年生。中学時代は水泳部でカヌーは全くの初心者。身長148センチ。両親の離婚により祖父母の家で父親と暮らす。スマホを持ちたくない。
→ 第一章、第三章、第五章で視点の主

・湧別恵梨香: 高校一年生。身長170センチ。カヌー経験があり、かなりの実力者。『喫茶せせらぎ』のマスター・芦田と親しくしている。

・鶴見希衣: 高校二年生。カヌー部部長。身長160センチ。小学校からカヌーを始める。中学二年生の妹あり。
→ 第二章、第四章、第六章で視点の主

・天神千帆: 高校二年生。カヌー部副部長。身長155センチ。小学校からカヌーを始める。農園部と掛け持ちしている。

物語では、中学時代もカヌーで大会に出場していた希衣と千帆が高校入学後にそれまで『カヌー部』のなかった『ながとろ高校』に『カヌー部』を設立する経緯も説明されており、一年目はたった二人、物語が始まる二年目にようやく舞奈と恵梨香が入部することで四人となった『カヌー部』の活動が描かれていきます。上記もしましたが、この登場人物の設定に絶妙な工夫が入っています。それが、奇数章で視点の主を務めることになる舞奈が全くの『カヌー』初心者であるという点です。このことによって、舞奈が奇数章でゼロから『カヌー』の指導を受ける過程がイコール、圧倒的大半と思える『カヌー』初心者である読者への『カヌー』の説明となっていくのです。この効果は絶大で、私も『カヌー』を全く知らない身でしたが、読み終わる頃にはその面白さがイメージできるほどになりました。

では、そんな『カヌー』について触れられた部分から少しご紹介しておきましょう。

『欧州では高い人気を誇るカヌーだが、日本ではまだまだマイナースポーツだ。競技人口も少なく、カヌー部を有する学校は限られている』。

まずはそもそも『カヌー』とは?という点に対する説明です。『欧州では高い人気を誇る』、『日本ではまだまだマイナー』という記述は、近藤史恵さんが”自転車ロードレース”の世界を描かれた「サクリファイス」を思い出しました。この世には数多のスポーツがあり、日本人が普段目にするのはまだまだその一部に過ぎないと改めて思います。一方で『カヌー』に似たイメージのスポーツとして『ボート』が挙げられます。では、この両者の違いはどこにあるのでしょうか?

『カヌーは前向きなスポーツです、ってよく言うね。見分け方としては、前に進むのがカヌー、後ろに進むのがボートって感じ』。

なるほど、これは知りませんでした。確かに公園で借りる『ボート』は後ろ向きに進みますね。そうか、『カヌー』は『ボート』と違って前向きに進んでいくもの。なるほどですが、具体的にはどうやって進むのでしょうか?

『ボートだとオールを使って漕ぐでしょ?両手でばしゃばしゃって。でも、カヌーは一本だけで操作するの。パドルって言うんだけどね』。

公園の『ボート』は両方の腕でそれぞれ持つ『オール』で頑張ります。これが『カヌー』では『パドル』という独特な形状のもの一本で頑張ることになるという違いがあるようです。なるほどなるほど。では、そんな『カヌー』には一種目しかないのでしょうか?

『カヌーって一口に言っても、種目にはいくつかの種類があるの。私たちがやってるのはスプリント。フラットウォーターっていう呼び名の通り、障害物のない水を進むスポーツだね』。

これもなるほどです。勝手なイメージで『カヌー』って渓流下りのこと?と思ってもいましたが、それは『スラローム』という全く別の競技のようです。この作品で描かれていくのはあくまで、『陸上の短距離走とかと同じ、直線距離の速さを競う競技』としての『カヌー』となります。これだけの抜き出しでもかなりイメージがついたのではないでしょうか?そして、そんな競技の醍醐味に繋がるのが『カヌースプリントという競技は、その性質からか、しばしば陸上競技に例えられる』という視点から見た競技中に選手が感じる思いについての記述です。

『マラソンのラストスパートが永遠に続く感覚、とでもいえばいいのだろうか。或いは、短距離走のスタートダッシュをゴールまで保ち続ける感覚といった方が近いかもしれない』。

上記した”自転車ロードレース”も独特な考え方の先に展開するスポーツでしたが、この作品で取り上げられる『カヌースプリント』もそんな競技が内包する競技中の苦しみの感覚がレースの場面で物語を盛り上げてもいきます。なかなかに悩ましく、それでいて絵になるスポーツを武田さんは選択されたのだと思います。

そんな物語は、初心者の舞奈が読者が『カヌー』の世界に入っていくことを助けてくれる役割を演じる一方で、スポーツ競技の面白さを演出していくのが部長でもある希衣の役割です。小学校から千帆と共に『カヌー』を始めた希衣ですが、『小学生部門で』『敵なし』という実力を発揮した千帆。『無敵の女王』として活躍してきた千帆と希衣は『相棒』としてペアを組み続けてきました。しかし、大きくなるに連れて負け始めた千帆は、『結果に固執することを止め』ていきます。『勝利に慣れていたが、敗北には弱かった』という千帆。そんな中に新しく入部してきた一年生の恵梨香は高い潜在能力を匂わせます。一学年しか違わないにも関わらず、そんな存在が全く知られてこなかったという謎を秘めた存在でもある恵梨香。そして、希衣はそんな恵梨香を見る中に一つの思いが込み上げます。

『もしも千帆が恵梨香と組めば、きっと ー』

そうです。長年ペアを組んできた千帆との関係を解消し、千帆と恵梨香でペアを組めばインターハイへの出場がより現実的なものとなるのではないかという部長としての想いがそこによぎります。物語はそんな四人が五月に行われる埼玉県の『学総体兼関東大会県予選』、そしてその先にある『全国高校総体 ー 所謂インターハイ』へ向けて練習の日々と予選へと向かっていく姿が描かれていきます。このあたりは同じように県大会を勝ち抜いて全国大会を見据えていく「響け!ユーフォニアム」と同じ構図ではありますが、八十人の吹奏楽部と四人しかいない『カヌー部』では見えてくる景色は当然別物になります。しかし、景色は異なってもその本質にあるのは”ザ・青春”を生きる四人たちの姿です。

・『もしも君と漕いで、そして結果を出すことが出来たならば』。

・『勝ちたい。自分の正当性を証明する手段が、希衣の手の中には既にある』。

そんな先に描かれていく『カヌー』に光を当てる物語。

『「Ready set go!」その瞬間、制止していたパドルが一斉に動き始めた。ブレードを水の中に差し込み、腕に力を込め、そして水面から抜き出す』。

そんな風に描かれていくレースの場面。初心者を向いた武田さんの描写はそんな熱い場面で読者を置いてけぼりにしたりはしません。『カヌー』という競技をほんの数時間前まで全く知らなかった読者をも熱くさせる武田さんの絶妙な描写によるレースの場面を経てそこに読者が見る納得感のある結末。そして、そんな物語は続編として続いていくことを匂わせながら終わりを告げました。

『自分は何になりたいのか、そして何になれるのか。その答えを、希衣はまだ見つけられていなかった』。

小学生の頃から『カヌー』の世界で友人・千帆と共に戦い続けてきた主人公の希衣。そんな希衣が新入部員として入部してきた舞奈、そして恵梨香とともにインターハイへの出場を目指して練習の日々を生きていく様を見るこの作品。そこには四人の高校生が青春真っ只中を生きる姿が描かれていました。『カヌー』のなるほど知識がとても参考になるこの作品。登場人物それぞれの明確な役割付けに武田さんの物語作りの上手さを感じるこの作品。

“カヌーという競技は、知れば知るほど面白いので、この小説をきっかけに興味を持つ人が増えてくれたら嬉しいです!”とおっしゃる武田さんの『カヌー』への熱い想いを感じる、そんな作品でした。

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2023年10月04日

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響け!ユーフォニアムシリーズでお馴染みの武田綾乃が2019年からスタートした「君と漕ぐシリーズ」の第1弾。本作ではながとろ高校カヌー部を舞台に、高校一年生の舞奈、恵梨香、高校二年生の希衣と千帆の4人の活躍と成長を描く部活小説です。カヌーという競技をそもそも知らないので、作中できちんと説明があって良かったです。著者が思春期の学生を描いた時のリアリティの感じられ方はやはり凄い。実際に長瀞に行ったら、4人がそこにいて、日常を積み重ねている感じがします。

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2023年06月28日

Posted by ブクログ

積んでた子達、やっと全巻揃えたので読んであげられました!

切磋琢磨して時々険悪な雰囲気になったり、そしてお互いを受け入れて力を出し切る
良い青春だー!って叫びたくなる
武田先生の描く女の子たちが本当に好きだなって思う
ちょっとした嫉妬心に似た感情といった心の機微がいつも繊細だなぁって感じられる
の、若さというか『女の子』独特の感性の描き方に凄く魅力があるなって

今作は4人の女の子たちが主人公
初心者の子、経験者の子、誰かと漕ぐのが初めての子
色んな子が集まってカヌーについて教えてくれる
1巻ということでカヌーについて教えてくれるような1冊だった
舞奈ちゃんが大会で漕ぐ姿も読めたら良いな!

夏のような暑さと、水のひんやりさが伝わる素敵な青春小説
カヌーのこと全く知らなかったが、初心者には乗るのすら難しいのか…
そして、カヌーが部活動としてあることにも驚いた
実際に切磋琢磨している子達がいるんだなって
知らない分野であるカヌーについて知る機会に、そして興味を持つ機会になって良かったな

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2023年06月01日

Posted by ブクログ

武田さんはやはり高校生の描き方が上手い!
一気読みでした
登場人物、一人一人の人柄も良かった。
続きも絶対に読みます!

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2023年01月05日

購入済み

カヌーか!

読み終わってから気付いたけど、この作者さん「響け!ユーフォニアム」の人なのね!!部活ものっていうか、高校生ものが得意なのかな~

それぞれの人物の描き分けも良いし、気持ちの微妙な動きが現れている言動の描写も上手いです。

利根選手とは、あれしか絡みが無かったけど終わりなのか?…続きがあるのか

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2021年07月14日

Posted by ブクログ

安定しておもしろいしわかりやすい。
希衣視点が多くて舞奈の存在が
薄いがしょうがないのかなと思う。
恵梨香と希衣が会話するシーン全てで読んでて
緊張してしまうが最後らへんは安心して読めたし良かったなぁと思う。

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2020年07月02日

Posted by ブクログ

青春もの。とても・・・・好きです。
キラキラしているスポーツ女子高生物というとおっさんが読んで良いのかなあと不安になりますが、汚れた心の浄化にはやはり青春物だと思います。
僕は秩父から割と近い地域に暮らしているので、ドライブで行く範囲に十分入っています。長瀞辺りの雄大な景色は容易に目に浮かびます。
そこにカヌーを漕ぐ女子高生(繰り返すと若干変態っぽい)が疾走する。もうキラキラしすぎてアンデット系のアラフィフは消滅してしまわないか心配でなりません。
色々訳アリのカヌー部ではありますが、いやな事は無く(いじめ系とか苦手)まっすぐに目標に向かっていく姿を素直に応援できるので、万人におすすめ出来る作品となっています。
これからも続く本のようなので、応援していきたい!

実は私、放浪の旅に出ていた時に、四万十川のカヌー教師の家に居候していたので、一応カヌー乗れます。もうすっかり乗り方忘れてしまったけれど、当時は一時基本を教える位なら出来る位乗っていました。
多分彼女たちが乗っている競技用は相当バランス悪いみたいなんで乗れないと思うのですが、スラロームで使うスラローム艇であればちょっと練習するだけで乗るだけは乗れます。

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2020年02月27日

Posted by ブクログ

最後の方はハラハラしながら読んだ。
展開に、ではない。物理的に少なくなっていくページ数に、ちゃんとレースが描かれるのだろうか?と。

星4つの評価は、青春小説としては及第点ということ。
ただし、この本はシリーズものとして続くことが前提で書かれているので、1冊の本としてのまとまりは、少し薄いかもしれない。

何より残念だったのが、カヌーの描写だ。
それが星1つ減点の要素。

私はカヌーに乗ったことはないけれど、ないからこそ、低い視線であるとか、近い水面であるとか、風を切る感覚や、落水したときの水中の様子をもっと描いて欲しかった。
特に序盤は、もっと、川とカヌーについて描けるハズなのだ。
そして終盤はやはりレースなのだろう。
2分を要するレースが、ほんの数秒で終わってしまうのは、やはり残念だ。

私をカヌーに乗った気にさせて欲しい。
それさえあれば、完璧に近い小説なのに。

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2019年06月10日

Posted by ブクログ

小学校6年生向けの本を探して読んでいる本の中の一冊。女子高生部活動シリーズの第1作め。
評価で★が少ないのは、私が現代作家がすっごく苦手だからということと、続き物の1巻で登場人物紹介のような感じの巻で今は高評価しづらいということで、本が悪いわけではありません。


両親の離婚で父親の実家、埼玉県寄居町に引っ越してきた黒部舞奈(くろべまいな)は、荒川でカヌーを漕ぐ同年代の湧別恵梨香(ゆうべつえりか)と知り合う。二人は新学期から同じながとろ高校に進学することがわかり、友だちになる。
二人はクラブ体験で、カヌー部を訪れる。そこにいたのは2年生の鶴見希衣(つるみきえ)と天神千帆(てんじんちほ)。カヌー部は去年この二人が立ち上げた小さなクラブだった。
まったくの素人のマイナだが(漢字変換が面倒なのでカタカナでいきます)、エリカに川からでないと見られない光景を見せてもらって入部を決意する。
先輩のチホとキエは小学校の時からずっとコンビを組んできていた。だが二人のカヌーへの向き合い方は徐々に変化していた。



ああ、なぜこんな硬いレビューにorz 本当はもっと現代 等身大 青春真っ只中物で、口調も現代的です。しかしわたしはそういうのが非常に読みづらいというか、頭に入ってこないorz 
お話としては群像劇なのか?最初にマイカ中心で家庭事情も書かれているので主人公かと思いきや、実際にカヌーの話になるとキエが主人公らしくなり、でも才能と葛藤があり今後活躍するであろうのはエリカであり…。群像劇という感じでもなく、中心人物の移動がスムーズな感じもせずというのが正直なところ。
まあ私が現代小説に慣れていないので読み取れないだけだかもしれませんか。


シリーズで今は4巻まで出ているようです。
1巻は登場人物紹介のようなものかな。他の登場人物は、孤高の天才少女(なんだが大阪弁で面白い)利根蘭子(とねらんこ)や、ながとろ高校カヌー部顧問の檜原(ひのはら)先生、中学を不登校だったエリナにカヌーを教えた芦田さんなど。
それぞれが目標を持ったり、道を共にしたり別れたり、過去や現在に色々あったりしています。
スポーツへの向き合い方も、楽しみたい、勝つという結果を出したい、上達する喜び、などなど”方向性の違い”もありますが、「君と漕ぐ」ことも、「君とはもう漕がない」ことも、それぞれが悩み決断していきます。

1巻の冒頭では、エリカがオリンピックに複数競技でオリンピック代表に選ばれていることが明らかにされます。1巻の最後では地区予選で勝負がついたところまでです。続きの巻でオリンピックに行くまでの道のりになるのでしょう。初心者マイカは大会に出られるのか?オリンピックでエリカが組む相手は誰なのか?それぞれの家庭環境はどうなるのか?
爽やか精一杯青春物語。

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2022年03月05日

Posted by ブクログ

悪くはないのだけれど、「才能のある人」と「ふつうの人」の間の葛藤というのは、「響け」で追求したテーマの焼き直しに見える。

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2021年10月21日

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