【感想・ネタバレ】もっと言ってはいけない(新潮新書)のレビュー

医学部をはじめとする大学入試における性差別。あれってどうしてなのか?得点を調整することなしに試験を行えば募集人員に対する女性の比率が高くなるから。それはそうかもしれないけど、どうして?なんで?そこまで明確に答えているメディアは少ない。つまりは言ってはいけない、人によっては残酷で不愉快な不都合な真実だから。
本書はみんな思っていても口には出せない、タブーとされている事柄を100に近いエビデンスを元に解き明かしているベストセラー『言ってはいけない』の続編です。
前作にはない「ゲイ遺伝子」「自己家畜化が最も進んだ日本人」など、人によっては受け入れ難い理論はもちろんですが、全体的には前作を踏襲した内容になっており、この本だけでも十分な内容です。
また、著者の他作品を読んだことがある方ならわかると思いますが、本書はそんな不愉快な内容を書いて世間を驚かせてやろうというトンデモ本ではありません。「日本人とは何者で、どのような世界に生きているのか。」「残酷で不愉快な真実があるなら、どうやって生きていくべきか。」これをもう少し考えてみようという主旨であり、タイトルとは裏腹に勇気を貰える良書です。もちろん残酷な真実を受け入れる覚悟があるのなら、という前提ですが…。
日本人についてもっと知りたい方は『(日本人)』を、現代社会全般を知りたい方は著作を総まとめした『幸福の「資本」論』がおすすめです!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・言ってはいけない残酷な真実。人種や進化論に触れ差別としてタブーとされてきた領域にたくさんの統計と根拠をもとに語られていく。
・現実を見ないようにするのではなく、現実を知ってその上で自分に何ができるかを考える方が有意義だと私は思ったので、とても勉強になった。

以下ネタバレ
・アイデンティティとして最適なのは自分は最初から持っていて、相手がそれを手に入れることが絶対に不可能なものだ。黒人は白い肌を持てないし、男であることはミソジニーを生み出した。
変更可能なアイデンティティもあるが、自分たちが本物で奴らは偽物という別の問題を引き出す。ISやキリスト教原理主義はそれの最たるもの。国籍も変えることができるが、だからこそ、在日認定や移民を毛嫌いする。こういう変更不可能なアイデンティティに固執する人は、それ以外に自分を表すアイデンティティを持っていない人が多い。

・統計的事実と定義は違う。定義はたった一つの例外です崩れるもの。統計的事実を経験的事実(外れ値)で否定することはできない。

・「氏が半分、育ちが半分」だが育ちは子育てと友だち関係に分けられる。子どもは遺伝的な違いをフックとして、友だち関係のなかで自分を最も目立たせるようなキャラを作っていく。

・同性愛は生産性がないというのは事実として間違っている。ゲイの家族を持つ女性は多産傾向がある。ゲイとは男にモテることであり、その遺伝子を持つ女性も当然男からモテやすく、結果的に多産になる。だから同性愛者は生産性がないと言うのは統計学的に見ても間違っている。

・言ってはいけないではなく、それを前提にどう改善していくかという視点。

・政治的にリベラルな人は保守的な人に比べて知能が高いことがわかっている。
・言語的知能が低いと世界を脅威として感じるようになる。なんらかのトラブルに巻き込まれた時に、自分の行動を相手にうまく説明できないからだ。子供の頃から繰り返していると、言語的知能の高い子供は見知らぬ他人との出会いを恐れなくなり口下手な子どもは親族や友人の狭い交友関係から出ようとしなくなる。

・自分の方がほんの少しできることにすべての可能性を賭けることで、その長所を最大化する。

・旧石器時代以降の人類社会のリーダーは、石槍の発明でジャイアントキリングな起きやすくなったため、仲間を平等に扱わなければあっさり殺されてしまう。現代の石槍はSNSか。

・日本人はセロトニン濃度が生得的に低い。セロトニンはハッピーケミカルと言われ気分の安定に重要な役割を果たす。つまり日本人は鬱になりやすく、合わせて自殺者が多い、国民の幸福度が低いなどに影響を与えていそう。
展開不安感の強い人間は将来を心配し、そのため現在の快楽を先延ばしにする。必死に勉強し、真面目に働いて倹約に勤しむことで経済的な成功を手にする。

・トランプ現象が明らかにしたのは、ほとんどの人は事実など求めていないということだ。右か左かにかかわらず、人々は読みたいものだけをネットで探し、自分たちを善、気に入らない相手に悪のレッテルを貼って、善悪二元論の物語を語る。

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2024年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新書大賞受賞の「言ってはいけない」の続編?で、こちらでは日本人が「自己家畜化」された民族であることを説明する。その過程で知能と遺伝の「もっと言ってはいけない」話、出るは出るは・・・衝撃的な内容の故に、著者のエビデンスに拘った姿勢が印象的。問題は「事実」を突きつけられた読者の方にあるでしょう。必読の書。以下、目次(ネタバレあり)。
<まえがき 日本人は世界でもっとも「自己家畜化」された特別な民族>
<プロローグ 日本語の読めない大人たち>
日本人の3分の1は日本語が読めない?
先進国の成人の半分はかんたんな文章が読めない
無意識は高い知能をもっている
知能とポピュリズム
知識社会に適応できるのは1割強
<1 「人種と知能」を語る前に述べておくべきいくつかのこと>
なぜ知能が問題になるのか?:善悪二元論の平板な世界しか理解できない人々の存在
→知識社会における経済格差=知能の格差
統計的事実とブラックスワン:統計的事実は外れ値で否定できない
差別とは合理的に説明できないこと
遺伝率と遺伝決定論
同性愛は生得的なものか?
「ゲイ遺伝子」の発見
同性愛はなぜ自然選択されたのか?:魅力を上げる遺伝子→子だくさん
リベラルな社会ほど遺伝率が上がる:環境因子が減少するため
<2 一般知能と人種差別>
白人と黒人のIQのちがい
レイシストは誰か?
捏造された知能のデータ
一般知能は「統計的実在」
IQの高い黒人の子どもたち
年齢とともに遺伝率は上がる
教育への投資効果は年率10%?
教育無償化は社会的弱者の子どもたちへ
お金を渡せば教育効果は高まるのか?
先進国の知能は低下しはじめている
極端な男の知能、平均的な女の知能
知能とは知能テストが測ったもの
<3 人種と大陸系統>
すべてのヨーロッパ人の祖先
私もあなたも「天皇家の遠縁」
犬種を論じるのはイヌ差別?
人種は社会的構築物
人類はかつて水生生活していた?
赤ちゃんはなぜ泳げるのか?
サピエンスの誕生は77万~55万年前
覆される通説
サピエンスはユーラシアで誕生した:一度アフリカに渡って再度「出アフリカ」
ネアンデルタール人になにが起こったか?
「出アフリカ」はわずか1000人?
ヒトの「進化」は加速している
遺伝と文化は「共進化」する
<4 国別知能指数の衝撃>
アボリジニのIQは高い
学力ランキングはよくてIQランキングは差別?
知能の基準はサン人
寒冷地への移住で知能が上がる
ヨーロッパはなぜ北にいくほどIQが高いのか?
宗教改革と知能
科挙が東アジア系の知能を上げた?
稲作というイノベーション
産業革命と勤勉革命
アメリカ黒人の知能は高い
ユダヤ人の知能は高くない?
パレスティナ人はイスラームに改宗したユダヤ人
キリスト教の誕生とユダヤ人の知能
差別から生まれた「高知能集団」
バラモンの知能
ヨーロッパ人とインド人は同祖集団
言語的知能が低いと保守的になる?
知能の高い国はリベラルになる?
制度決定論は「空白の石版」
<5 「自己家畜化」という革命>
成功した日本人移民
生き延びるために賭けるもの
日本にはなぜ華僑財閥がないのか?
「遺伝決定論」を否定したヒトラー
弥生人の“ジェノサイド”
「下戸遺伝子」でわかる弥生と縄文の遺伝分布
アメリカ社会でもっとも成功したアジア系移民
アファーマティブ・アクションで「差別」されるアジア系
アジア系は内向型人間
ペットになったキツネ
石槍という「大量破壊兵器」→クリストファー・ボームの「自己家畜化」論へ
道徳の起源は相互監視;娯楽快楽としての「正義」
農耕という第二の「自己家畜化」:攻撃的人間の排除
チワワとドーベルマン:家畜と野生→優劣の問題では無く適応の問題
<6 「置かれた場所」で咲く不幸――ひ弱なラン>
高い所得をもたらす性格とは?:真面目で明るく、落ち着いている
内向的な脳と外向的な脳:扁桃体の感度の違い
セロトニンとうつ病:セロトニン・トランスポーターの遺伝子型との関与
楽観的な脳・悲観的な脳
敏感と鈍感の進化論
日本のリベラルは睾丸が小さい?
なぜ日本人は子どもとまちがえられるのか?:ネオテニーとの関連
日本人は「ひ弱なラン」
咲ける場所に移りなさい
<あとがき>
筆者の立場が「リベラル」と知って一安心。

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2021年12月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遺伝について取りあげ、前作よりも特に人種について深掘りして書かれていました。

社会に適応していくため、私たちが進化してきたことを世界史を交えて話されていました。

日本人にうつ病になりやすいのも稲作を集団で行うムラ社会に適応するため、変化や刺激に敏感になるよう進化したということには驚きました。

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2021年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

再読。
DNA(遺伝子)解析の成果をポリティカル・コレクトネスの配慮無しに著者なりに整理した本。「もしそれが不愉快に感じられたなら、知識社会そのものが不愉快で残酷なのだ」

人種とは、ある母集団内でしか交配してこなかった結果、他の集団と区別できる遺伝的傾向を持った集団。歴史的に、偶然や環境要因から「交雑」が多い集団と少ない集団があって、少ない集団ほど特徴的な傾向が際立つ。ふむふむ。
歴史的には、戦争(侵略)が「交雑」を進めてきたんだろう。グローバル化も「交雑」を促進する機会だとすれば、人種をよりどころにしてる国家や集団は反対するよね。それに反発して民族浄化のようなことをロシアが今やってるんだろうか。

著者が言う真実を知ったうえで社会制度や政策を議論しようよって態度は、理系としては首肯できる。でも、文脈を高度に読む人種だから、雰囲気・感情に流されるから難しいんだろうなあ。

あと、遺伝的に変えられない事実も多々あるけど、逆に変えられる余地も少しはあるよねって事実もあるわけだから、0か100かじゃなくて自分をあきらめずに頑張ろうかなと思う。

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2022年05月04日

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