【感想・ネタバレ】ヨギ ガンジーの妖術(新潮文庫)のレビュー

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手品とかまったく興味ないので、あんまり楽しめないかなーと思いながら読んでみたら、笑えて面白かった!
ヨギ・ガンジー、ちょっとハマったかもw

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2020年12月19日

Posted by ブクログ

入手困難だったこの名作がやっと再販されたので再読。装丁は変わっていないが、新保博久氏の解説が追加されている。
改めて凄い短編集だと思った。奇術に相通じるトリックが惜しげも無く使われている。こういう騙し方があるのか、こんな伏線の張り方があるのか、と、前にも読んでいるのに唸ってしまった。
あまりにも斬新なトリックなので、他のミステリ作家がアレンジして使っている例が数多く存在する。泡坂さんは絶対にもっと評価されて良い作家さんだよなあ。

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2018年09月05日

Posted by ブクログ

当初、読みたいと思ったのは「しあわせの書」だが、ガンジーシリーズの第1作であるこちらを優先。

表紙の絵から ヨギ ガンジー は、いかがわしそうな奇術師で、インチキ臭い感じがプンプンしてる。
表紙の絵では「名探偵」と書かれたターバンを巻いているが、しあわせの書では「迷探偵」生者と死者では「酩探偵」と変化するそうだ。
ふざけた野郎だとガンジー像を作って読み始めたが、意外と真面目と言うか癖がなかった。
このへんは亜愛一郎も同じで、主人公のキャラで遊ぶのはほどほどにして、トリックの内容をきちっと語らせることに徹している。

さて、その肝心の作品内容だが、
最初の「王たちの恵み<心霊術>」の謎解きから、まさかそうくるとは!…と予想外の展開だった。
普通は皆が考えがちな判断が実は間違っているという、ごく常識的な決めつけを逆手にとられ「やられた」感を受ける。

「ヨギ ガンジーの予言<予言術>」も勝手な思い込みを利用して騙す手口の種明かしが語られる。
予言の内容を書き留めるために使った、どこにでもある道具にそんな仕掛けをしているとは微塵も思いもしない。

何とかトリックを暴いてやろうと思って読んだのだが、どの話も全く予想できなかった。
全てが明かされた後、もう一度読み直してもトリックがわからないように書かれている。
全編、素直に「へぇ~、そういうこと?!」と、からくりを楽しむ内容だった。

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2024年02月22日

Posted by ブクログ

超常現象を奇術で解決するミステリ

ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひき、ロンドンではヨーガを教え、シカゴではすりの実演、東京では医者を相手に催眠術の講義をする、謎の男ヨギ ガンジー

「しあわせの書」と「生者と死者」が気になり、シリーズものは1作目から読みたい派なのでまずはこれから読んでみた

連作短編で、収録は7編

・王たちの恵み〈心霊術〉
・隼の贄〈遠隔殺人術〉
・心魂平の怪光〈念力術〉
・ヨギガンジーの予言〈予言術〉
・帰りた銀杏〈枯木術〉
・釈尊と悪魔〈読心術〉
・蘭と幽霊〈分身術〉


奇術師が超常現象の裏側を見破るという設定はドラマ「TRICK」を思い浮かべるけど、ドラマのずっと前にこんな発想の物語はあったのですねぇ

使われているトリックに関しては、説明されればミステリではありがちなものだけど
そこに至るまでのミスリードなどが上手い

著者自身が奇術師であり、観客や読者の注視する部分の誘導に慣れているんだと思う

いかにも怪しそうなもの、常識や物語の定番など、読者は思考を誘導されてしまいがち
そんな思い込みをひっくり返す構図はなかなかよい

さて、ヨギ ガンジーとお付の者の概要を知ったので、「しあわせの書」と「生者と死者」も続けて読みます

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2023年02月08日

Posted by ブクログ

 面白かった!でもその魅力を説明するのが難しい(笑)。
 ヨギガンジーと不動丸という、何者なのか説明しづらい男ふたり(一応、師弟関係)が探偵役?のミステリー?ですが、よくよく考えると殺人事件も窃盗事件も怪現象も起こってない…?でもトリックはある!作家でありながらアマチュアマジシャンでもあったというアワツマならではのミステリー、なのかな。ミステリーを読みたいけど怖いの苦手な人におすすめかも。
 ガンジーは、「霞以外は食しませんので」と言いながら出されたご馳走をバクバク食べたり、片言の日本語で登場したと思ったら後できれいな東京弁を話していたり、「陰陽の特性からして助手は女性でなければなりません」と言って女性の手を握ったりと、胡散臭いこと極まりないのだが、「人を喰ったような」というちょっと悪意も滲むような形容はそぐわない。作品全体には下世話なネタもちらほらあるのに、不思議と下品じゃない。なんとなく品がある。どこか星新一味を感じる(最近私、感想でこのワードを使いがち)。
 赤染明子・照子姉妹がなんか好きです。

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2022年08月05日

Posted by ブクログ

ヨギ ガンジー。年齢不詳(意外に若い?)。

陽焼けした顔は鉤鼻で目が大きく、見るからに外国人で、筋肉質に痩せており、ヨーガが得意。

日本語を辿々しく話すときもあるが、各地で講演会をするくらいには、普通に話せる(要するに、わざとそうしているのだ)。

その内容は、ピックアップショウ(すり)、催眠術の講義、心霊術の実験、等々…、非常に胡散臭い(笑)

しかし、それらが彼の持ちうる人間性のほんの一部にすぎないことは、この連作短篇集を読むにつれて、自ずと実感できるようになり、殺人事件は全くなくても、彼は素晴らしい探偵だと納得させられることでしょう。

それは、マジックにタネがあるのと同じように、物事をよく見、かつ、それに心を奪われないことが大切だと、彼自身が話していたことそのものを、実践している点にあり、そこには、いかさまではなく、トリックであると述べる、彼自身の拘りも同時に感じられて、胡散臭い外面は、あくまでカムフラージュの可能性が高いのである。

また、物事だけではなく、人間の内面もよく見ている彼の人の良さも、いくつか見受けられ、「王たちの恵み」の、町の文化の未来を見守る姿勢に、「隼の贄」の、信者たちの将来を気遣う気持ち、「釈尊と悪魔」での、小さな大衆劇団への温かい眼差しなど、こうした一面もあるから、ガンジーの胡散臭さが、より魅力を増して見えてくるのも、作者のマジックであろうか? 

いや、それはないだろう。彼には天の邪鬼だったり、好色の一面もあるし、何より講演会の質をケチったり、関西弁で喋ったりと、やりたい放題ではないか(本当にそう)。

まあ、それが面白いからいいか、と最終的には納得させられるのですがね。
ただ、知性があることも確かで、その境界線がしっかり見えるので、私は彼を信頼しております。

ちなみに、ガンジーと、二作目の「しあわせの書」で登場していた、「不動丸」、「本多美保子」との出会いのエピソードも本書で知ることができ、これが一作目だということに、再度納得しました。

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2022年01月22日

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ネタバレ

連作短編集。飄々とした人柄で、見た目も職業も、いかにも怪しいガンジー先生が、論理的に謎解きするギャップが面白い。日本であって日本ではない、妙な世界に迷い込んだような感じ。登場人物に、珍しい名字の方が多いのも印象的でした。

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2020年12月19日

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ヨギ ガンジー=(亜愛一郎+曾我佳城)÷2 ?
いや、
亜愛一郎 → ヨギ ガンジー → 曾我佳城
かな?
それともベン図であらわすのが妥当か?

そんなこんなを考えさせられる仕掛なし短編集。

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2020年10月28日

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ネタバレ

初・泡坂妻夫。

面白かった!
全然古くない。斬新なくらい。
奇術をミステリに取り入れた人、って聞いてたけど、ご本人が奇術師なのね。
奇術とミステリの親和性をすごく感じる作品だった。

ガンジーの人格が良い。
魔術に見える現象をタネまで披露して、不思議な現象には必ず仕掛けがあるのだという立場を通す誠実な態度とか、物事を荒立てないようにする配慮とか。
傑作だと評価の高い『しあわせの書』を読みたくてまずはこの作品を読んだんだけど、ファンになった。

7つの短編のなかで、「帰りた銀杏」が一番好き。
街の整備が別の目的のためになされていた、とかスケールが大きかったので。

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2019年09月15日

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へんてこりんな主人公の話。一応魔術師?らしいが、詐欺師、ペテン師の方がぴったりくる。ヨギはなんとも楽天家。短編なのに、全体にストーリーがあり、弟子が増えていくのも楽しい。続きが楽しみ。

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2012年02月06日

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著者らしく、マジックのネタが惜し気もなく使われておりとても楽しかったです。
さらりと書かれたエロねたに笑いました。

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2011年03月25日

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以前薦められたことがありますが。なるほどこれは面白いっ!
「妖術」と言ってる割に実は全部トリックあるし(まあミステリとしては当然ですが)、そんなめちゃめちゃ大掛かりでもないんだよなあ。少し考えれば分かりそうな、でも固定観念に邪魔されて気づかない盲点がうまく使われている作品ばかりです。
お気に入りは「ヨギ ガンジーの予言」と「釈尊と悪魔」。特に「釈尊と悪魔」は意外な展開にすっかり騙されてしまったのでした。なるほどなあ、とひたすらに感服するばかりです。

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2009年12月29日

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ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の血をひくというヨギガンジー、超常現象の謎を解明していく短編集。
見た目こそ胡散臭いが、推理や口調はロジカルで、人格も破綻していない。相棒?の不動丸も大柄で吹き矢名人と、キャラ設定は特殊だけど、わりと普通の推理モノって感じ。楽しくさっと読めます。

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2023年02月18日

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ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の混血でヨガの達人という怪しげな男ヨギ ガンジーが、全国を講演しながら出会った謎を解く短編集。
遠隔殺人、念力、予言など超自然を思わせる事件が多いが、ガンジーは胡散臭い行者のような見た目ながら奇跡や超常現象はトリックであるという視点から事件を見て、論理的に解決するのが面白い。ネタはいま読むと古かったりするものもあるが、著者らしいトリッキーで楽しい短編集である。
なお、今出ている新潮文庫には7編入っているらしいが、読んだのが古い単行本で最後の短編が入っていなかったのが残念。

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2020年10月03日

Posted by ブクログ

ヨギ・ガンジーシリーズの連作短編集。
心霊術、念力など怪しげな技を使い、頭にターバンを巻き、長い白衣を着た正体不明の名探偵が、超常現象としか思えない不思議な事件の謎を解く。主人公のヨギ・ガンジー、弟子となる参王不動丸などキャラクターの独特な個性に目がいきがちだが、マジシャンの泡坂さんならではのトリックがちりばめられている。個人的には『ヨギ ガンジーの予言』が好みだった。

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2020年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

〇 総合評価
 ヨギガンジーシリーズは,「驚愕の仕掛けの文庫本」である「しあわせの書」という作品を読んで好きになったので,なんとか「ヨギガンジーの妖術」も読みたいと思っていた。そして,まさに待望の復刊となったので手に入れた作品。思い入れは深い。内容は,長らく絶版になっていただけのこともあり,傑作とまでは言い難い。しかし,「王たちの恵み」はチェスタトン風の逆説的なオチが楽しめた。ほかにも手品で使えそうなアイデアでかかれた小品ともいうべき佳作の作品ぞろい。中にはやや物足りない作品もあったけど,それなりに楽しむことができた。しばらくは手に入るだろうけど,このデキだとそこまで売れないと思われ,更にもう一度復刊されるのは難しそう。大事にしたいところ。★3で。

〇 メモ
〇 王たちの恵み(心霊術) ★★★☆☆
 沢野市のホテルレックスで,沢野市の文化人の集まりソヴリンズクラブが開かれている。ソヴリンズクラブでは毎回,会員から麦の箱という箱に寄付を入れられている。ヨギ・ガンジーの心霊術の実演を含む講演が終わると,麦の箱には寄付金が入ってなかった。誰かが盗んだのか。ヨギガンジーは,そもそも普段から麦の箱に寄付はなかった。世話役の斗米が,ソヴリンズクラブの名誉のために,一人で多額の寄付をしていた。斗米の秘書の寒立は,お金を盗むためではなく,麦の箱にお金を入れるためにやってきていた。寒立という斗米の秘書がどうやって麦の箱にお金を入れたのかという謎と見せかけ,そもそも寄付などされておらず,寒立は麦の箱にお金を入れに来ていたというオチ。なんとも泡坂妻夫らしい,チェスタトン風の逆説的なオチの作品。ヨギガンジーのなんとも言えないキャラクターの相まって,よくまとまった作品に仕上がっている。★3で。

〇 隼の贄(遠隔殺人術)★★★☆☆
 ヨギガンジーの相棒である不動丸との出会いの作品。ヨギガンジーと不動丸との関係は,ブラウン神父とフランボウの関係にちょっと似ている。不動丸は黄金の隼の会という宗教団体を作る。そして,黄金の隼の儀式で予言を行う。ある人物を神の生贄えとして呪い,殺害するという。儀式では「東岡由紀」という女性の名前が発表される。東岡由紀は不思議な事故死をしていた。トリックは封印をした予言書の外側から文字を書いて中に染み込ませるという物理トリック。ポイントは,直前に予言書を預けている信用金庫から予言書を預かりに行くという行為をミスディレクションにして,公衆電話から電話をして,たまたま死亡した人を確認したという行為を隠したというトリック。これもある行為を利用して本命の行為を隠すという手品っぽいトリック。泡坂妻夫らしい,しっかりまとまった作品。★3で。

心魂平の怪光(念力術) ★★★☆☆
 大倉山という地方で,松子という女性から,八木徳三郎という男に騙されたという話を聞く。「猫の学校」の教材にするために,鼠を増やすという触れ込みで鼠のつがいを売りつけると言う詐欺だった。また,八木徳三郎が鼠を飼っていたプレハブでは道に迷った笹川夏子という女性が迷い込んで心臓マヒで死んだが,松子はこれも八木徳三郎の仕業だと思っていた。鼠が増えてしまったので,「七歩丸」という毒団子で鼠を減らしているという。ヨギガンジーと山王丸はただ道に迷ってこの村に来ていただけだった。松子に道を聞いて目的地である聖宝院に行く。ヨギガンジー達は心魂平で大倉山で見かけた鼠と同じ鼠を見る。ここには,矢削徳性という宮司がいるという。また,心魂平はちょいちょいUFOが現れるということで有名になっていた。UFOは人為的な火だった。ガソリンを含ませた脱脂綿を鼠のしっぽに結び,それに火を付けて放していた。八木徳三郎=矢削徳性は,詐欺師ではなく,キャンディ化粧品という大手化粧品会社の下請け会社の社長。女性用の紅筆を鼠の毛で作っているということを知られないようにしていたというオチ。マルチ商法まがいの犯罪や宗教犯罪といった大きな犯罪があるかと見せかけて,単なる化粧品会社の下請け会社が鼠の毛で紅筆を作っていることを知られたくなかっただけであるというオチ。泡坂妻夫らしい構成の話である。★3で。

〇 ヨギガンジーの予言(予言術)★★★☆☆
 ヨギガンジーがハワイで知り合った勝島という男の家で予言をした薬小路車契の予言がウソであることを暴く話。「空飛ぶ鳥が火となり,竜の頭に落ちる」,「唐人が泣いて,その涙が瓢箪に溢れる」,「死神の息が鬼女が池より漏れ,それを吸った者は死ぬ」という3つの予言。これが旅客機の墜落事故,近畿地方の水害を予言し,的中していた。「鬼女池」が勝島の敷地内の池だったので,慌てて国外に逃げたという。真相は,薬小路は盗賊団。勝島がいなくなった後,屋敷の蔵からめぼしいものを盗み出そうとしていた。予言のトリックは色鉛筆の芯と回りの部分の色を変えていたというもの。これにより,あとで書いた予言を先に書いた予言だと誤信させたというもの。トリックは手品のタネのようなもの。シンプルだが面白い。話全体の構成は「赤毛連盟」のパターンでもはや古典。色鉛筆のトリックだけのシンプルな短編。こじんまりまとまった作品であり★3かな。

〇 帰りた銀杏(枯木術) ★★☆☆☆
 開発の最中,伐り倒されるはずの大銀杏があった。しかし,伐ろうとすると市の有力者が死んでしまい,三人死んだところで大銀杏の伐採は取りやめになった。銀杏は移転された。するとこの大銀杏は夜になると「帰りたい,帰りたい」と言うようになったという。真布施典亮という男は八幡クラブという文化人の集まりのメンバー。「王たちのめぐみ」で出てきたソヴリンズクラと姉妹クラブの関係にある。ヨギガンジーはソヴリンズクラブで行った講演と同じ講演をするように依頼を受ける。講演のデキはひどいものだったが,その後,ヨギ・ガンジーは大銀杏に「その場所で辛抱するように」言い聞かせてほしいという依頼を受ける。ヨギガンジーと不動丸は銀杏と話したフリをする。すると翌日,銀杏の樹の葉が1枚残らず落ちてしまう。ヨギガンジーは銀杏の葉を枯らしたのは真布施だということを指摘する。真布施はUFOに傾倒しており,UFOのメッセージとして市を開発していた。得体の知れない人間を連れてきて,何やら不思議な術を見せ,ついでにご神木に呪文でも掛けさせれば樹が枯れてもその人間のせいにできるとしてヨギガンジーを利用したのだった。この話はやや分かりにくい。ヨギガンジーらしいシンプルな仕掛けでもないしミステリとしてのトリックも弱い。★2かな。

〇 釈尊と悪魔(読唇術)★★★☆☆
 ヨギガンジーと不動丸が劇団の手伝いをする。そこには霧丸という若旦那がいた。殺人事件が起きて,霧丸は疑われるような行動を取り,二吉という劇団の男は霧丸が犯人だと思って逃走する。二吉は霧丸の素性を調べるという仕事を持っていた。霧丸はつい先ごろ死亡した歌舞伎の門脇杜若と血のつながりがあった。霧丸は劇団残るために二吉を騙すため,犯人と疑われる行動を取ったのだった。この話を通じ,本多美保子がヨギガンジーの一団に加わる。泡坂妻夫らしい見事などんでん返し。霧丸が殺人犯でどういったトリックが出てくるのか…と見せかけ,そもそも霧丸は犯人でなく,犯人だと思わせて二吉を騙すことが目的だったというオチはそこまでレベルの高い仕掛けではないが,さすが泡坂妻夫と思わせるデキ。こじんまりとまとまっている作品。★3で。

〇 蘭と幽霊(分身術) ★★☆☆☆
 蘭の栽培をしている岩淵という男のところに季貞エメラルドという男が念力栽培の紹介にくる。エメラルドは岩淵が大切にしているランゲリスという花の葉に洗剤を付け,一見ではランゲリスとは分からないようにして盗まれたように見せかける。また,ランゲリスはトリックを使い,市長選に立候補している黒原のポスターを利用して黒原がランゲリスを盗んだように見せかける。黒原はたまたま愛人と不倫をしており,変に疑われないように容疑を認めるような発言をする。最後はヨギガンジーが物理トリック部分も含め,全てを見抜くというオチ。これはちょっと物足りない。泡坂妻夫らしい文体ではあるがアイデアが平凡。シリーズ物の弊害というか,ヨギガンジー物で一つ作品を作る必要があって,無理やりひねり出したという感じがする。★2で。

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2018年08月25日

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